僕は人を好きになれない

杜鵑花

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注意

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 「ヤバい歴史書ね……まあ予想通りというかなんというか……」

彼女の反応は思いの外冷静なものだった。

「なんだ、知ってたのか。心配して損したよ」

「いや、知ってたわけじゃないわ。何処にでもあるからね。そういった類のものは……。予測することぐらい容易よ。……それより、私のこと心配してくれてたの??」

「まぁ一応、知り合いだからな。存在がバレて実験されるような事態になったら後味が悪いというか……」

「そんな本、信じる人なんてそうそう居ないだろうけどね。まぁ、居たとしてもこの天下の魔女、時雨玲沙しぐれれいさ様は捕まえるはおろか、見つけることさえできないだろうけどね」

彼女は自信満々にそう言った。
どうやら心配する必要は本当に皆無だったらしい。
あまりにも人間らしい見た目や性格をしている所為かこいつが他を圧倒するほどの力や能力を秘めていることをすっかり忘れていた。
今のところ、彼女の本気を見たことがないがきっと捕まる可能性など無いに等しいのだろう。

「まぁ、危険分子には変わりないから注意するだけ注意しとくといい」

「そうするわ。慢心して捕まったんじゃ格好がつかないからね。ま、その歴史書を燃やしに行くって手もあるけど」

「どこにあるかもわからないのによく言うよ。僕も知り合いからその存在を聞いただけだから場所までは知らないが」

「知り合いね……私以外に居たとは驚きだわ」

「ご近所付き合いみたいなもんさ」

そこまで探ろうとは思ってないだろうが彩理のことは一応濁らせることにした。
木陰のことを勘づかれないようにするためだ。

「さて、重要な話も終わったし僕は帰ろうかな」

「あら、もう帰っちゃうの?? お茶とか要らない??」

「今日も遠慮させてもらうよ。他人の家に長居するのは気が引けるんでな」

「そう……まぁいいけど。アンタも気を付けてね」

「お気遣いどうも。せいぜい、背後から刺されないように気を付けるよ」

そう言いながら、僕は椅子から立ち上がる。
しかし、長時間座っていた為か少しよろけてしまった。

「……送ってあげるわ」

「じゃあお言葉に甘えて送ってもらおうかな」

「じゃ、またね」

「次があるかはわからないがまたな」

刹那、幻想世界は崩れ落ち、僕は自分の家の玄関に立っていた。
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