僕は人を好きになれない

杜鵑花

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破章

歴史書

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 唐突に学校を出た僕は特に急ぐ理由もないので、考え事をしながらのんびり歩いていた。
歴史書の件だが、あの変人に伝えておいた方がいいのだろうか。
アイツが載っている可能性は十二分にある。
もしかしたら、彩理たちに見つかって捕まえられるかも知れない。
今は不老不死とやらにしか興味がないようだがそうなる可能性もゼロではないわけだ。
そうなったとしても、僕が何かしらの被害を被ることはないがアイツには何かとお世話になっているので後味が悪いものがある。
だとしたら伝えに行くべきか。
頭の中で、そう答えが出るといつの間にか僕の足は近くにある幻想世界への綻びへと向いていた。

 綻びはいたるところにあるのでものの数分でその世界に入ることができた。
以前、もう少しちゃんと結界を張ったらどうかと彼女に言ってみたことがある。
しかし、彼女は「周りから見えなくなったらいいのよ。それに、いくら抜け道があるとはいえ、そうそうここには入ってこれないしね」と返した。
まあ強化されても困るのだが……
そうこう考えているうちに僕は彼女の隠れ家に到着した。
僕は案外普通の見た目をしているドアの前まで行き、二回ノックをした。
すると、家の中からトトトトトと何かが走ってくる音が聞こえ、ガチャリという音と共にその音の正体が現れた。

「誰かと思えば、アンタだったのね。こんな時間になんの用かしら?? ニートじゃないでしょ?? アンタは」

「や、少し大事な話があってな」

「まあなんでもいいわ、私も暇してたし……上がりなさい。それと、次にノックするときは三回にすることね」

「……じゃあ上がらせてもらうよ」

僕は靴を脱ぎ彼女の家に入った。
ここに来るのはいつぶりだろうか。
少なくとも、ここ最近は来ていないはずだ。

「それで、なんの用って言ったっけ??」

リビングの椅子に座ると、再びそんなことを訊いてきた。
話を聞いていなかったのだろう。
まあ、平常運転か。

「重要な話だ。さっきも言ったが」

「そうだったわ。……それで、その話って何かしら?? また彼女ができたとかだったらぶっ飛ばすけど」

その言葉に、脳内に木陰の姿がチラつく。
しかし、今後、どうなるかは知らないが今のところ木陰は彼女ではなくただの同居人だ。
それに今はその話ではない。

「いや、そんな話じゃあない。もっと重要だ」

「さっきのもまあまあ重要だけどね。それよりも重要って一体どんな話なのかしら」

僕は一呼吸を置いてからその言葉を告げる。

「ヤバい歴史書が見つかった」
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