僕は人を好きになれない

杜鵑花

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破章

奇妙な学校

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 気が付くと、僕は学校の巨大な正門の前にいた。
ゼェゼェと息切れしながらも僕はその門の中に入ろうとした。
しかし、僕より身長が高く体格がいい銀髪の女性に止められてしまった。

「ちょっと、誰ですか?? 不法侵入は許しませんよ」

その女性はそう言うと、少し後ろに下がり臨戦態勢を取った。
その様子を見て焦った僕は急いで弁明しようと口を開いた。

「ち、違います! 僕はこの学校の橋本木陰という生徒の親でして。これを届けに来たんです!」

そう言いながら僕は手に持っていた教科書を見せる。

「そうでしたか! すいません……私の早とちりで……」

「いえいえ、全然大丈夫ですよ。それより、入ってよろしいですか??」

「ええ、あなた自身の手で渡してきて上げてください」

許可を貰うと、僕は足早にその場を去った。
そういえば、この学校は少し変わっているという噂を聞いたことがある。
なんでも、校長が変わっているそうだ。
ならあんなヤクザみたいな門番が居てもなんら不思議では無いのかもしれない。

「木陰は三組って言ってたよな」

無事に屋内に入ってこれた僕は木陰の発言を想起する。
それにしても、学校に来たのは何年ぶりだろうか。
いろいろな想いが頭を巡る。
しかし、今はそれどころではないので僕は木陰が居るであろう三年三組まで向かった。

「ここか……」

三年三組に辿り着いた僕はバレないように窓からこっそり教室を覗いた。
朝学習の時間が始まっているためか教室は静まり返っている。
みんなが読書やらなんやらに勤しんでいる中、一人だけ妙にソワソワしている人物がいた。木陰だ。
僕は彼女を見つけると、コンコンと窓を叩き、すぐに隠れた。
静寂に包まれた教室にその振動が素早く伝わり、みんなの視線がこちらに向けられる。
しかし、その中で一番速かったのは読書に集中できていなかった木陰だった。
他の人は気の所為だと思い、再び読書に戻ったが彼女は僕の存在に気付き、先生にトイレに行ってきますと言い、教室を出てきた。

「な、なんでいるんですか!?」

木陰は驚きながらも冷静に小声で喋る。

「これを渡しに来たんだよ。焦ってただろ??」

「これは……! ありがとうございます!!」

「どういたしまして。おっと、あまり話している時間はないな。後は頑張れよ」

木陰が首肯したのを見て僕は家に帰るべく踵を返した。

 再び丑三つ時のように静かな廊下を歩き、玄関まで戻っていると、僕は緑髪の奇妙な生徒に出会った。
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