9 / 47
序章
帰宅
しおりを挟む
僕は家の裏庭の何も無いただの空間から現れた。
ここも何故か結界の綻びがあるのだ。
そのため、いつも利用させてもらっている。
例えるならば家にワープ土管があるようなものだ。
僕は家の軒下を通り、雨に濡れないように玄関まで回った。
そして、ポケットから鍵を取り出し、ガチャリとドアを開けた。
「ただいま」
僕は少し大きめの声でそう言ったが返事はなかった。
木陰は寝ているのだろうか。
僕はそう思い、忍び足でリビングまで向かった。
「……よかった眠ってる……」
リビングを覗くと、ソファーですやすやと寝息を立てて眠っている木陰が見えた。
僕はホッと安堵の息をもらした。
「……さて、時間もいい頃だし晩ごはんでも作っておくかな。帰ってきたばかりだが」
そうしておいた方が僕がさっき帰ってきたということもバレないだろう。
「さてと、材料は何があったかな……」
僕は慣れた手つきでエプロンを装備し、キッチンにある冷蔵庫を開ける。
その中にある物を見て僕は少し安心し、料理を始めた。
緑黄色野菜をよく研がれた鋭い包丁で切り刻む。
その度にトントンと包丁とまな板とが衝突する音が響く。
暫くそのようにしているとソファーの辺りが動いたのを確認した。
少し騒々しくしてしまったから木陰が目を覚ましたのだろう。
「うーん……あれっ? 皐月さん帰ってきてたんですか」
「ああ、割とすぐに帰ってこれたよ。……起こしてしまったか??」
しれっと嘘をついたが、この程度の嘘ならバレる心配もないだろう。
嘘も方便だ。
「いえ、全然そんなことはないです。結構眠っていましたからね。もうそろそろ起きる頃合いだっただけです」
「そうか。それはよかった。てっきり色々と物音を立ててしまったから起こしてしまったかと思った」
「私は眠りが深い方ですからその程度では起きませんよ。それより、料理しているんですか??」
「ああ、もう七時だからな。夕食の準備をしなくちゃいけないだろ」
「すいません……今からでも代わっていいですか??」
木陰は寝起き相応の声でそう言うとソファーから立ち上がってふらふらとこちらに向かって歩き出した。
「いや、大丈夫だ! おとなしく座って待っていてくれ!」
木陰のその様子を見て、今任せたら絶対に大変なことになると思った僕は少し大きな声で彼女を制止する。
「住まわせてもらう身なので、何か一つでもお手伝いでも……」
「大丈夫だって! 寝起きの人間に料理を任せる程僕は鬼じゃないし馬鹿でもない。それに、中途半端なところで任せてもわからないだろ?!」
「ですが……」
「いいから僕にやらせてくれ」
「……わかりました。でも明日からは私が作りますからね……」
木陰は念を押すように言うと倒れるようにソファーに座った。
その様子を見て僕は安心して再び料理に取り掛かった。
ここも何故か結界の綻びがあるのだ。
そのため、いつも利用させてもらっている。
例えるならば家にワープ土管があるようなものだ。
僕は家の軒下を通り、雨に濡れないように玄関まで回った。
そして、ポケットから鍵を取り出し、ガチャリとドアを開けた。
「ただいま」
僕は少し大きめの声でそう言ったが返事はなかった。
木陰は寝ているのだろうか。
僕はそう思い、忍び足でリビングまで向かった。
「……よかった眠ってる……」
リビングを覗くと、ソファーですやすやと寝息を立てて眠っている木陰が見えた。
僕はホッと安堵の息をもらした。
「……さて、時間もいい頃だし晩ごはんでも作っておくかな。帰ってきたばかりだが」
そうしておいた方が僕がさっき帰ってきたということもバレないだろう。
「さてと、材料は何があったかな……」
僕は慣れた手つきでエプロンを装備し、キッチンにある冷蔵庫を開ける。
その中にある物を見て僕は少し安心し、料理を始めた。
緑黄色野菜をよく研がれた鋭い包丁で切り刻む。
その度にトントンと包丁とまな板とが衝突する音が響く。
暫くそのようにしているとソファーの辺りが動いたのを確認した。
少し騒々しくしてしまったから木陰が目を覚ましたのだろう。
「うーん……あれっ? 皐月さん帰ってきてたんですか」
「ああ、割とすぐに帰ってこれたよ。……起こしてしまったか??」
しれっと嘘をついたが、この程度の嘘ならバレる心配もないだろう。
嘘も方便だ。
「いえ、全然そんなことはないです。結構眠っていましたからね。もうそろそろ起きる頃合いだっただけです」
「そうか。それはよかった。てっきり色々と物音を立ててしまったから起こしてしまったかと思った」
「私は眠りが深い方ですからその程度では起きませんよ。それより、料理しているんですか??」
「ああ、もう七時だからな。夕食の準備をしなくちゃいけないだろ」
「すいません……今からでも代わっていいですか??」
木陰は寝起き相応の声でそう言うとソファーから立ち上がってふらふらとこちらに向かって歩き出した。
「いや、大丈夫だ! おとなしく座って待っていてくれ!」
木陰のその様子を見て、今任せたら絶対に大変なことになると思った僕は少し大きな声で彼女を制止する。
「住まわせてもらう身なので、何か一つでもお手伝いでも……」
「大丈夫だって! 寝起きの人間に料理を任せる程僕は鬼じゃないし馬鹿でもない。それに、中途半端なところで任せてもわからないだろ?!」
「ですが……」
「いいから僕にやらせてくれ」
「……わかりました。でも明日からは私が作りますからね……」
木陰は念を押すように言うと倒れるようにソファーに座った。
その様子を見て僕は安心して再び料理に取り掛かった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説


甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる