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序章
雨宿り
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僕が家から出て小一時間ぐらいは経っただろうか。
僕は無事に銀行からお金を取り出し、借金を返して今から帰路につこうとしていた。
しかし僕は現在、近くの神社の軒先で雨宿りをしている。理由は簡単で、雨が強くなったり強風が吹いてきたりと天気に弄ばされているからだ。
「さて、どうしようか……風の所為で傘も役に立ちそうにないしかと言って濡れて帰るのは……後が面倒くさいし帰ったとき木陰も心配するしなぁ」
そう悩んでいると、周囲から雨音とは違う音がなった。
気になって辺りを見回すと、一つの大きな傘を持った人影がこちらに接近しているのを視認した。
こんな雨の中に参拝にでもしにきたのだろうか。
まあ、関係ないな。僕はそう思い、また悩みの解決のために脳を使い出した。
しかし、僕の考えとは裏腹にその影は僕に声をかけてきた。
「お主、何をしているのじゃ?? こんなところで」
影の正体は普通の優しそうな老人だった。
やはり参拝に来たのだろう。
「……雨宿りをしているんですよ。ここぐらいしか場所がなくて……」
僕は自分自身似合ってないと思う敬語でそう返した。
慣れないので文法的に間違っていないか少し不安だ。
「しかし、傘を持っているじゃないか」
「そうですけど、小さくて……この風雨は防げそうにないんですよね」
「そうか……それは災難じゃな。そうじゃ! ここで合ったのも何かの縁だ。家に来るといい」
「家って……そこに行くまでに濡れるでしょう?? その傘は大きいですけど流石に大人二人は入れませんよ」
「なぁに、心配することはない。なんせ、儂の家はそこじゃからな」
そう言って彼は僕の後ろ指を差した。
「神主さんでしたか……最初の発言で無意識に選択肢から除外してましたよ」
「この神社に参拝客がいる事自体が珍しいので儂も参拝客という選択肢を無意識に除外していたわい。そんなことより、さあさ、入っておくれ」
そうして、僕は神社の中にお邪魔させてもらうことになった。
神社の中は思ったより広く、きれいで落ち着く空間だった。
「何にもないがゆっくりしてもらって構わないぞ」
「ありがとうございます」
「構わんよ。神様が人を助けるように神に仕える儂も人を助けるのは当たり前じゃろうて。まあ、この神社に神様が居るのかわからんが……」
「それって神主さんが言っても大丈夫な台詞ですか!?」
「事実なんだから仕方がないだろう。ともかく、雨が収まるまではここに居るといい。儂の予想だと夜までには帰れるじゃろう」
「本当にありがとうございます」
僕はそうお礼を言って、外をちらっと見た。
神主さんはああ言っていたがきっとこの様子だと帰りは遅くなりそうだ。
どっちにしろ、木陰に心配かけることになるな。
眠っててくれると助かるんだが……。
僕は心から眠っていてくれと願った。
僕は無事に銀行からお金を取り出し、借金を返して今から帰路につこうとしていた。
しかし僕は現在、近くの神社の軒先で雨宿りをしている。理由は簡単で、雨が強くなったり強風が吹いてきたりと天気に弄ばされているからだ。
「さて、どうしようか……風の所為で傘も役に立ちそうにないしかと言って濡れて帰るのは……後が面倒くさいし帰ったとき木陰も心配するしなぁ」
そう悩んでいると、周囲から雨音とは違う音がなった。
気になって辺りを見回すと、一つの大きな傘を持った人影がこちらに接近しているのを視認した。
こんな雨の中に参拝にでもしにきたのだろうか。
まあ、関係ないな。僕はそう思い、また悩みの解決のために脳を使い出した。
しかし、僕の考えとは裏腹にその影は僕に声をかけてきた。
「お主、何をしているのじゃ?? こんなところで」
影の正体は普通の優しそうな老人だった。
やはり参拝に来たのだろう。
「……雨宿りをしているんですよ。ここぐらいしか場所がなくて……」
僕は自分自身似合ってないと思う敬語でそう返した。
慣れないので文法的に間違っていないか少し不安だ。
「しかし、傘を持っているじゃないか」
「そうですけど、小さくて……この風雨は防げそうにないんですよね」
「そうか……それは災難じゃな。そうじゃ! ここで合ったのも何かの縁だ。家に来るといい」
「家って……そこに行くまでに濡れるでしょう?? その傘は大きいですけど流石に大人二人は入れませんよ」
「なぁに、心配することはない。なんせ、儂の家はそこじゃからな」
そう言って彼は僕の後ろ指を差した。
「神主さんでしたか……最初の発言で無意識に選択肢から除外してましたよ」
「この神社に参拝客がいる事自体が珍しいので儂も参拝客という選択肢を無意識に除外していたわい。そんなことより、さあさ、入っておくれ」
そうして、僕は神社の中にお邪魔させてもらうことになった。
神社の中は思ったより広く、きれいで落ち着く空間だった。
「何にもないがゆっくりしてもらって構わないぞ」
「ありがとうございます」
「構わんよ。神様が人を助けるように神に仕える儂も人を助けるのは当たり前じゃろうて。まあ、この神社に神様が居るのかわからんが……」
「それって神主さんが言っても大丈夫な台詞ですか!?」
「事実なんだから仕方がないだろう。ともかく、雨が収まるまではここに居るといい。儂の予想だと夜までには帰れるじゃろう」
「本当にありがとうございます」
僕はそうお礼を言って、外をちらっと見た。
神主さんはああ言っていたがきっとこの様子だと帰りは遅くなりそうだ。
どっちにしろ、木陰に心配かけることになるな。
眠っててくれると助かるんだが……。
僕は心から眠っていてくれと願った。
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