最強の思い違い

杜鵑花

文字の大きさ
上 下
7 / 8

取材

しおりを挟む
 彼女は、ポケットからペンとメモ帳を取り出した。
いよいよ取材とやらが始まってしまうようだ。

「さて、まず初めに名前を伺ってもいいですか??」

「知ってるだろ??」

「これは、儀式のようなものなんです」

どんなことを訊かれるのか身構えていたが、この程度とは……はっきり言って拍子抜けだ。
まぁ、これからヒートアップしていくのかも知れないが……

香宮麗依かのみやれいだ。これで満足か??」

「座右の銘はなんですか??」

座右の銘か……こんな面接みたいなことを訊かれると予知していなかったため、俺は少し考える。
そして、一番はじめに頭に浮かんだ四字熟語を言った。

「完全無欠だ」

「先生らしいですね」

彼女はスラスラとメモ帳に何かを書いている。
俺の答えに何の価値があるのか、些か疑問だ。

「では、趣味はなんですか??」

「おいおい、まさかこんなのをずっと続けるのか?? お前が知りたいのはきっともっと別のことだろう??」

ちまちました質問に、嫌気が差した俺は問いかけで返す。
何もしないままだと恐らくは優に三時間は越える取材となると予感した故の発言でもあった。

「そうですね……私が知りたいのはもっと別のこと。取材っぽい雰囲気を出すためにあんな質問をしてきましたけど、もうそんなのはどうでもいいですね。では、本命と言っても過言ではない質問をしましょう」

辺りが一瞬静まり返り、空気が緊張を帯びる。
俺はゴクリと唾を飲んだ。

「先生は、どうして最強なんですか??」

少しの間の後、彼女が放ったその質問は、俺をまたもや拍子抜けさせた。

「最強だから最強なんだ。そこに理由はない」

端的に俺はそう答えた。
すると、彼女は得心がいかないような顔をした。

「絶対にそんな理由じゃないですよね??」

「いや、それが答えだ。それ以上でもそれ以下でもない。これを疑われたらもう嘘をでっち上げるしかなくなるわけだが……」

彼女は数秒間、疑うような顔をしていたが、人を見透かしたような態度を取る彼女だ。
俺が嘘を付いていないことに気付いたんだろう。
途端に、溜め息を吐いた。

「はぁ~、もっと深い理由があると読んでいたのに……残念です。新聞が面白くなれば、新聞部は安泰なのに……」

そこには、以前のような見透かしたような態度を取る彼女は居らず、ネタを失ったことに嘆く彼女が居た。
どっちが彼女の素なのだろうか……
恐らくは後者だろう。
家での姿が容易に想像できる。

「まぁ、でも……先生にはもっと多くのネタがあると見ています。だから、これからもお願いしますね! 今度は放課後なんかじゃあなくて……」

結局のところ、彼女には俺の弱みを握られているので、良いように扱われるのは変わらないのだ。
これから彼女に振り回されると考えると目眩がする。
だがまぁ、取り敢えず、第一回目の取材は無事に幕を下ろした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...