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事件前:地下鉄の騒動【PART③】
しおりを挟む────2017/9/20/Wed────
自由の女神像展望管理施設-PM7:25-
少女はニューヨークのリバティ島に来ていた。自由の女神像が眼前に聳える。しかし少女はそれに目もくれず、展望台に登るための受付へ足を進める。
「いらっしゃいませ。予約は取っておられますか?それともチケットをお持ちですか?」
受付けの綺麗な女性が笑顔で問いかける。
「…エージェント・アイズ。Ω-0。台座が見たいな」
淡々とそう答える少女、アイズ。
「はい。では、このチケットを持って1番左端のエレベーター前でお待ちください」
受付けは笑顔を崩さずに答える。
アイズはその言葉にならって左端のエレベーター前に行くと、その前に立つ女性にチケットを手渡した。女性は無言で受け取ると、すっと脇にどける。
アイズがエレベーターに近寄ると、すんなりと開き、アイズを迎え入れた。そのままエレベーターは、上ではなく下へと降りていった。
エレベーターが開いた時、目の前には白衣を纏った人物が何人も動き回る大きな白いロビーが広がっていた。そのロビーの中には人だけでなく、檻に入れられた奇形の動物や、目玉がついた涙型の跳ねる生き物、白いボードにはられた不思議な現象の写真が見られる。
そう、ここは財団の所有する、未知の物体を保管する為のサイトだ。公へは、自由の女神像として偽装されている、大規模な管理区である。そして、Ω-0の設立ど同時に建てられた最新のサイト、セクター-0。
アイズは、ポーチに手を伸ばしロリポップキャンディーを取り出そうとした…しかし、そこにはキャンディーは入っていなかった。
「やぁアイズくん!おかえり!どうだった任務は」
肩を落とすアイズに話しかけたのはひとりの恰幅のいい博士であった。その博士は大きな鼻とチェシャ猫のような笑みを浮かべた男で、シナモンの香りが少し漂ってくる。
クレフ博士は財団の博士の中でも変わり者で、やることなすことは自由奔放で酷い虚言癖があるのだが、その迅速かつ正確な外科的な手で多くのSCPを終了させてきたため、その腕を見込まれて彼はエージェントの訓練、開発に携わっている。
エージェントに施される改造手術を行った人物で、アイズは特にこの博士に気に入られている。
「クレフ博士。えぇ、任務は達成しました…ただのグールの群れでした」
アイズは博士にそう回答した。
「ふむなるほど、グールの群れか。まぁ妥当なところだろうか…まったく、O5の連中の考えることは分からん。君をグールなんぞのためだけに連れ出すとは!あ、そうだアイズ君、丁度キャンディーの新しい味を開発したんだがね、試しにどうだい?」
クレフ博士は流れるように言葉を並べる。
「本当ですか?…一体どんな味を?」
アイズはクレフ博士に尋ねた。アイズは普段から、このクレフ博士にキャンディーを作ってもらっている。ほかの博士が言うには、「クレフ博士がキャンディーの味の開発に没頭してくれているお陰で、研究的に助かっているよ」とのことだ。
キャンディーが好きなアイズにとって、クレフ博士は悪い人ではない。
「ふふふ、それは食べてのお楽しみだ。さ、私の研究室に来たまえ」
クレフ博士はアイズの背中を押して自室へと連れ込んだ。
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