99 / 112
私、後釜狙ってます!
1
しおりを挟む
私の好きな人には同棲中の彼女がいます。
悔しいので、邪魔してやろうと思います。
あわよくば、別れればいいと思います。
後釜狙ってます。 ←タイトルここまで(笑)
略して「私、後釜狙ってます」
「原田主任! 言われていた書類、机に置いておきましたので」
お昼ご飯を食べに行こうと同僚たちとエレベーターホールで待っていた私は、開いた扉から降りてきた男性社員に気付いて乗り込もうとした足を止めた。
一緒にいた仲のいい同僚は心得たとばかりに、さっさとエレベーターに乗り込んでそのドアを閉める。私に声をかけられた男性社員……原田主任は、ありがとうと言った後エレベーターに目を向けた。
「乗らなくていいのか?」
「はい、大丈夫です!」
「……」
困ったように眉間に皺を寄せる姿も、カッコイイです原田主任!
「あー、と。八坂、さん。書類ありがとう」
「はい! いつでも私に言ってくださいね!」
「……えーと、確か中野さんに頼んだと思ったんだけど」
「忙しそうだったので、私が代わりにさせて頂きました!」
ちなみに、中野さんは別に忙しくない。さっき先に行った仲のいい同僚の中に、その中野さんがいるのである。要するに、私の応援団員なのである。うむ。
「……あぁ、そうか。うん、ありがとう」
「はい!」
原田主任は困ったように首元に手を当てながらそういうと、腕時計に目を落とした。
「あぁ、ごめん。昼休憩が終わっちゃうな。早く追いかけた方がいい」
そうエレベーターに視線を向ける原田主任に、私はにっこりと笑いかけた。
「今からじゃ、どうせ間に合いません」
「え?」
「原田主任は、今から御飯ですか?」
「え、あ、あぁ」
「ご一緒してもいいですか?」
「いや、俺、弁当だから」
その言葉に、思わず口端が引くついた。
そんなの知ってる、いつもお弁当。
私はなんとかひくついた表情を隠して、口端を引き上げる。
「わかってます。私、社員食堂で何か買ってきますからデスクでご一緒してもいいですか? 一人じゃ寂しいですし」
私の申し出にぎょっとした顔をした原田主任は、視線をうろつかせた後、ため息をついた。
「……いや、それなら社食にいこう」
よっしゃ、思い通り!
そりゃそうだよね、デスクで二人仲良くよりは、社食で食べてた方が普通に見えるよね。
なんか悔しいけど、それでもいい。
一緒にご飯食べられるんだから!
私は原田主任を見上げると、満面の笑みを浮かべて頷いた。
「はい! ありがとうございます!」
ため息をついてるのは気づいてるけど、全力でスルーします!
原田主任はどこか諦めたようにもう一度ため息をついて、営業部の方に行こうとしていた足をエレベーターへと向ける。
社食のある最上階に行くためにエレベーターの昇降ボタンを押して、原田主任は階数ランプを見上げた。
私は、斜め後ろでその姿を見つめる。
原田直哉、二十六歳。
営業部法人営業課主任。
私の大好きな原田主任には、同棲中の彼女がいます。
悔しいので、邪魔してやろうと思います。
あわよくば、別れればいいと思います。
後釜狙ってます。 ←タイトルここまで(笑)
略して「私、後釜狙ってます」
「原田主任! 言われていた書類、机に置いておきましたので」
お昼ご飯を食べに行こうと同僚たちとエレベーターホールで待っていた私は、開いた扉から降りてきた男性社員に気付いて乗り込もうとした足を止めた。
一緒にいた仲のいい同僚は心得たとばかりに、さっさとエレベーターに乗り込んでそのドアを閉める。私に声をかけられた男性社員……原田主任は、ありがとうと言った後エレベーターに目を向けた。
「乗らなくていいのか?」
「はい、大丈夫です!」
「……」
困ったように眉間に皺を寄せる姿も、カッコイイです原田主任!
「あー、と。八坂、さん。書類ありがとう」
「はい! いつでも私に言ってくださいね!」
「……えーと、確か中野さんに頼んだと思ったんだけど」
「忙しそうだったので、私が代わりにさせて頂きました!」
ちなみに、中野さんは別に忙しくない。さっき先に行った仲のいい同僚の中に、その中野さんがいるのである。要するに、私の応援団員なのである。うむ。
「……あぁ、そうか。うん、ありがとう」
「はい!」
原田主任は困ったように首元に手を当てながらそういうと、腕時計に目を落とした。
「あぁ、ごめん。昼休憩が終わっちゃうな。早く追いかけた方がいい」
そうエレベーターに視線を向ける原田主任に、私はにっこりと笑いかけた。
「今からじゃ、どうせ間に合いません」
「え?」
「原田主任は、今から御飯ですか?」
「え、あ、あぁ」
「ご一緒してもいいですか?」
「いや、俺、弁当だから」
その言葉に、思わず口端が引くついた。
そんなの知ってる、いつもお弁当。
私はなんとかひくついた表情を隠して、口端を引き上げる。
「わかってます。私、社員食堂で何か買ってきますからデスクでご一緒してもいいですか? 一人じゃ寂しいですし」
私の申し出にぎょっとした顔をした原田主任は、視線をうろつかせた後、ため息をついた。
「……いや、それなら社食にいこう」
よっしゃ、思い通り!
そりゃそうだよね、デスクで二人仲良くよりは、社食で食べてた方が普通に見えるよね。
なんか悔しいけど、それでもいい。
一緒にご飯食べられるんだから!
私は原田主任を見上げると、満面の笑みを浮かべて頷いた。
「はい! ありがとうございます!」
ため息をついてるのは気づいてるけど、全力でスルーします!
原田主任はどこか諦めたようにもう一度ため息をついて、営業部の方に行こうとしていた足をエレベーターへと向ける。
社食のある最上階に行くためにエレベーターの昇降ボタンを押して、原田主任は階数ランプを見上げた。
私は、斜め後ろでその姿を見つめる。
原田直哉、二十六歳。
営業部法人営業課主任。
私の大好きな原田主任には、同棲中の彼女がいます。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる