幼馴染と図書室。

篠宮 楓

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 真剣なその言葉を聞いた時、私の脳裏に浮かんだのは、とても冷めた言葉だった。



 ……そうやって、他の人にも言ってきたの?



 こたろーちゃんの真剣に見えるその言葉を聞いても、私は何も言えずじっと自分の足元を見つめ続けた。



「きっと、ずっと前から比奈の事が好きだった。でも、ちゃんと気が付いたのは高三で。だから、そこから気持ちを伝えてきた。……つもりだった」

 冷めた気持ちで聞いている私を置いてけぼりにしたまま、こたろーちゃんは話し続けてる。

「最初は、年齢差に戸惑った。でも、やっぱり諦めきれなくて」

 そのまま、自分の気持ちを、私への想いをつらつらと話し続けるこたろーちゃん。


 でも、言わないんだね。
 高三の時、自分が何をしていたかなんて。
 そして、聞かないんだね。
 その時、私がどう思っていたかなんて。

 自分の気持ちだけで突っ走って、私を置いてけぼりにする――


 ねぇ。
 何も言わないで、終わりにするの?
 こたろーちゃん。そんなんじゃ、信じたくても信じられないよ。


 穏やかで優しいこたろーちゃんは、私を好きになったと言ったその時、何、してた?




 高校三年生。
 私が中学生になった年。

 その年、こたろーちゃんが私の事を好きになったというのならば。



 思い出す、綺麗な女の人。
 言われた言葉。
 心を抉る、辛辣な願い。



 ねぇ、こたろーちゃん。


 私は、その年にあなたを好きでいる事を諦めたんだよ。
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