4 / 29
4 蛇足・帰宅、そして自宅にて・こたろー
しおりを挟む
「比奈って、どーしてあんなに頑固なのかしらー」
「あの一刀両断オーラ、こっわいわぁ」
本当にそーですね、春香さん&かーさん。
俺もそう思います。
比奈が俺の話をまともに聞かない事は分かっていたけれど、最終下校時刻に鍵を返しに来たのにはある意味殺意を覚えた。
根つめるなっていったよな?
お前、女だからね?
最終下校時刻って言うのは、うちの学校でいうなれば19時。
十二月の19時。ふざけんな。
まぁ、俺的には助かったんだけど。
「……」
それはおいておいて。
19時に残っているとしたら、教師か届出をしている部活くらい。
どーして俺がこんなに詳しいかと言えば、五年前にここを卒業したOBだからなんだけどね。
そーいう伝手もあって、臨採の事も早めに知る事が出来たんだけど。
担任とは仲良くしておくべきだと、心底思った。
あ、別にコネで入ってないからね。ちゃんと採用試験受けて、トップだったらしいからね?
だってこれで、念願の「比奈の高校生活」に俺が存在できるんだぜー。いえーい♪
あ、ひくな、おいちょっと待て。
だってさー、五歳離れてるとさー。
制服姿は見る事はできても、同じ校舎に存在することはできないじゃん。
あ、まー。
俺の高校時代を比奈に見せたいかといわれれば、それはごめんこうむるんだけど。
ちゃんと、担任には口止め済み☆
ほら、若気の至りって……いうじゃんか。
ま、そんなこんなで19時に鍵を返しに来た比奈を促して、一緒に帰宅したわけですよ。
すんげー、嫌そうな顔をさらす比奈とともにね。
……くすん
んで、うちの母親。
料理が壊滅的でして。たまにどころの頻度じゃなく、比奈の母親である春香さんにおんぶに抱っこ状態。まぁ、俺的にはありがたいけど。比奈と一緒に飯が食えて、母親の料理から逃げられるわけで。
今日も比奈んちにご馳走になりにいけば、キッチンカウンターの向こうに立つ比奈とダイニングテーブルのいつもの席に座る母親と目が合った。
珍しく母親が何を飲むか聞いてきたものだから、比奈が丁度図書準備室に来た時の自分の状況を思い出してビールを頼んだ。
疲れる事があったんだよ。……何があったって? そりゃ、おいおいね。
するとなぜか、春香さんと母親が大爆笑。
比奈にいたってはむすっとした顔のままダイニングに出てくると、手に持っていたビールの缶を一本ずつ俺と母親の前においた。
あれ?
今、冷蔵庫開けたっけ?
基本、俺は平日に酒を飲まない。
今日みたいに疲れてる時とかは、別だけど。
その疑問は、母親が明かしてくれた。
俺がビールを飲む事を予測して、既に用意していてくれたらしい。
愛!
比奈の愛!
なのに、なんでお前はそんなに不機嫌かね。
食事が始まった後も、不機嫌な比奈は相変わらずで。
さっさと食べ終えると、二階の自分の部屋へと上がっていってしまった。
それを見送って、三人で溜息をつく。
そして冒頭に戻るわけですよ。
「やっぱり比奈ちゃん、こたのこと嫌いなのかしらねぇ」
「うわ。かーさんてば、不吉な事言わないでくれよ」
箸でつまんだ餃子を口に放り込みながら眉根を寄せると、階段の方を見ていた母親が俺に視線をうつしてでかい溜息をついた。
「外見はそこそこ良く産んでやったのに、中身がこれじゃね……」
おいなんだ、その失礼な言葉は!
「あんまり構いすぎるのも、比奈の性格的に引いちゃうのかしら」
じゃぁ、構うなよ! 構ってるのは、おたくら二人だ!
「でも五年も言われてれば、情も湧くと思ったんだけど。あてがはずれたわー」
「小太郎くんてば比奈を溺愛しすぎて、ちょっとうざいから……」
……溺愛すぎて、ウザイ……
ピキリ、と身体が固まった。
溺愛しすぎてウザイ……、しかも比奈の母親である春香さんに言われるとか、どーなの俺。
「……かーさんたちは、俺とは反対だと?」
恐る恐る聞いてみれば、にこりとわらう春香さん。
「私は小太郎くん好きよー? ウザイだけで」
「こたに比奈ちゃんはもったいないけど、うちの娘にしたいから妥協」
……俺の存在価値って!!(涙
「あの一刀両断オーラ、こっわいわぁ」
本当にそーですね、春香さん&かーさん。
俺もそう思います。
比奈が俺の話をまともに聞かない事は分かっていたけれど、最終下校時刻に鍵を返しに来たのにはある意味殺意を覚えた。
根つめるなっていったよな?
お前、女だからね?
最終下校時刻って言うのは、うちの学校でいうなれば19時。
十二月の19時。ふざけんな。
まぁ、俺的には助かったんだけど。
「……」
それはおいておいて。
19時に残っているとしたら、教師か届出をしている部活くらい。
どーして俺がこんなに詳しいかと言えば、五年前にここを卒業したOBだからなんだけどね。
そーいう伝手もあって、臨採の事も早めに知る事が出来たんだけど。
担任とは仲良くしておくべきだと、心底思った。
あ、別にコネで入ってないからね。ちゃんと採用試験受けて、トップだったらしいからね?
だってこれで、念願の「比奈の高校生活」に俺が存在できるんだぜー。いえーい♪
あ、ひくな、おいちょっと待て。
だってさー、五歳離れてるとさー。
制服姿は見る事はできても、同じ校舎に存在することはできないじゃん。
あ、まー。
俺の高校時代を比奈に見せたいかといわれれば、それはごめんこうむるんだけど。
ちゃんと、担任には口止め済み☆
ほら、若気の至りって……いうじゃんか。
ま、そんなこんなで19時に鍵を返しに来た比奈を促して、一緒に帰宅したわけですよ。
すんげー、嫌そうな顔をさらす比奈とともにね。
……くすん
んで、うちの母親。
料理が壊滅的でして。たまにどころの頻度じゃなく、比奈の母親である春香さんにおんぶに抱っこ状態。まぁ、俺的にはありがたいけど。比奈と一緒に飯が食えて、母親の料理から逃げられるわけで。
今日も比奈んちにご馳走になりにいけば、キッチンカウンターの向こうに立つ比奈とダイニングテーブルのいつもの席に座る母親と目が合った。
珍しく母親が何を飲むか聞いてきたものだから、比奈が丁度図書準備室に来た時の自分の状況を思い出してビールを頼んだ。
疲れる事があったんだよ。……何があったって? そりゃ、おいおいね。
するとなぜか、春香さんと母親が大爆笑。
比奈にいたってはむすっとした顔のままダイニングに出てくると、手に持っていたビールの缶を一本ずつ俺と母親の前においた。
あれ?
今、冷蔵庫開けたっけ?
基本、俺は平日に酒を飲まない。
今日みたいに疲れてる時とかは、別だけど。
その疑問は、母親が明かしてくれた。
俺がビールを飲む事を予測して、既に用意していてくれたらしい。
愛!
比奈の愛!
なのに、なんでお前はそんなに不機嫌かね。
食事が始まった後も、不機嫌な比奈は相変わらずで。
さっさと食べ終えると、二階の自分の部屋へと上がっていってしまった。
それを見送って、三人で溜息をつく。
そして冒頭に戻るわけですよ。
「やっぱり比奈ちゃん、こたのこと嫌いなのかしらねぇ」
「うわ。かーさんてば、不吉な事言わないでくれよ」
箸でつまんだ餃子を口に放り込みながら眉根を寄せると、階段の方を見ていた母親が俺に視線をうつしてでかい溜息をついた。
「外見はそこそこ良く産んでやったのに、中身がこれじゃね……」
おいなんだ、その失礼な言葉は!
「あんまり構いすぎるのも、比奈の性格的に引いちゃうのかしら」
じゃぁ、構うなよ! 構ってるのは、おたくら二人だ!
「でも五年も言われてれば、情も湧くと思ったんだけど。あてがはずれたわー」
「小太郎くんてば比奈を溺愛しすぎて、ちょっとうざいから……」
……溺愛すぎて、ウザイ……
ピキリ、と身体が固まった。
溺愛しすぎてウザイ……、しかも比奈の母親である春香さんに言われるとか、どーなの俺。
「……かーさんたちは、俺とは反対だと?」
恐る恐る聞いてみれば、にこりとわらう春香さん。
「私は小太郎くん好きよー? ウザイだけで」
「こたに比奈ちゃんはもったいないけど、うちの娘にしたいから妥協」
……俺の存在価値って!!(涙
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中


生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた―――
ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。
それは同棲の話が出ていた矢先だった。
凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。
ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。
実は彼、厄介な事に大の女嫌いで――
元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる