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「それでね、その時ジル様から頂いたお花でポプリを作ったのよ。」
にこにことクローディアお姉様が大切そうに小さな袋を抱えている。
「お姉様とジルフォード様は本当に仲がよろしいですね。ふふ。お花の色もジルフォード様の瞳の薄い青色ばかりではないですか。」
「その際の香水もジル義兄さんからの贈り物だそうだよ。まったく、あの人はすぐに姉様を自分に染めようとするんだから。」
「そ、そんなこと言わないでケヴィン!彼はただ…その…婚約者としての…義務を……」
「はいはい、わかってますよ。あんなにとろけるような瞳で見つめられても、あんなに頻繁に愛を綴った手紙が来ても、あーーーんなにダンスパーティーの時に姉様を離さずぴったりくっついていていたとしても、婚約者殿の義務ですもんね。わかってます。」
「ケ、ケヴィン!!」
「いつでもどこでも惚気られる弟の気持ちも考えてくださいよ。まあお二人が幸せそうなのは良いことですけどね。」
はぁー、っとため息をつくフリをしながらニヤニヤと笑うケヴィン。
クローディアお姉様はわたわたと言い訳をしているが、頬は赤いし満更でもない顔をしている。
「そういえばケイトは婚約者様との関係は順調なのかしら?フォーゲル様から何か頂いたりはしないの?」
「貰ってもガラスペンとかですかね。私達はお互い納得のいく形の政略結婚ですし、お姉様みたいに愛を囁き合ってはいませ…」
ゴーンゴーン、ゴーンゴーン、ゴーンゴーン
唐突に近くの教会の鐘が鳴った。
2連を3回、そして大きく重たい音。
前置きもなくこれだけ鳴った。
その瞬間私達も、馬車も、従者も、全てのものが止まった。
その鐘の音が示すことが、あまりにも衝撃的だった。
聖女様が身罷られたのだ。
にこにことクローディアお姉様が大切そうに小さな袋を抱えている。
「お姉様とジルフォード様は本当に仲がよろしいですね。ふふ。お花の色もジルフォード様の瞳の薄い青色ばかりではないですか。」
「その際の香水もジル義兄さんからの贈り物だそうだよ。まったく、あの人はすぐに姉様を自分に染めようとするんだから。」
「そ、そんなこと言わないでケヴィン!彼はただ…その…婚約者としての…義務を……」
「はいはい、わかってますよ。あんなにとろけるような瞳で見つめられても、あんなに頻繁に愛を綴った手紙が来ても、あーーーんなにダンスパーティーの時に姉様を離さずぴったりくっついていていたとしても、婚約者殿の義務ですもんね。わかってます。」
「ケ、ケヴィン!!」
「いつでもどこでも惚気られる弟の気持ちも考えてくださいよ。まあお二人が幸せそうなのは良いことですけどね。」
はぁー、っとため息をつくフリをしながらニヤニヤと笑うケヴィン。
クローディアお姉様はわたわたと言い訳をしているが、頬は赤いし満更でもない顔をしている。
「そういえばケイトは婚約者様との関係は順調なのかしら?フォーゲル様から何か頂いたりはしないの?」
「貰ってもガラスペンとかですかね。私達はお互い納得のいく形の政略結婚ですし、お姉様みたいに愛を囁き合ってはいませ…」
ゴーンゴーン、ゴーンゴーン、ゴーンゴーン
唐突に近くの教会の鐘が鳴った。
2連を3回、そして大きく重たい音。
前置きもなくこれだけ鳴った。
その瞬間私達も、馬車も、従者も、全てのものが止まった。
その鐘の音が示すことが、あまりにも衝撃的だった。
聖女様が身罷られたのだ。
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