用済みおじさん異世界狂詩曲(ラプソディ) (旧題)ムカつく上司をぶっ飛ばして会社を追放されたおっさんの異世界冒険譚

ヤスオコウジ

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第三話 貴族の決闘 1

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 よっし、興奮冷めやらぬうちに貴族の決闘について書いとくぜ。ちょっといただきもの上等なワインで喉を湿らせるわ。グビグビっと。よし、じゃ、いこう。

 先に勝負の様子を書いちゃうわ。名前なんて覚えてないから落ち目の爺さん貴族と若手の成金貴族。略してジジイとヤンエグって書くから。

 あとルールっていうほどちゃんとしたものはないんだけどどちらかが死ぬか降参すれば終わり。ただ降参するよりは死ぬまで戦うことが多いらしい。まあ、決闘だもんな。で、噂っていうかノミ屋があおりながらいろいろ事情を吹いて回ってるんだけどさ。それによれば今回はジジイの孫娘と結婚したいヤンエグとさせたくないジジイの決闘らしい。

 ちなみに孫娘ってまだ十三歳ね。政略結婚なんだろうけどジジイのところは戦争で息子が死んじゃって孫娘にはもっとよい縁談を狙ってるってことらしい。ただ、公の場で決闘を挑まれたもんだから受けざるおえなかったと。

 で、キルモンはどちらも中世の騎士が着る甲冑みたいになっている。でその腹の部分がコックピットになっていて、ガラス過ごしに奴らは周りを見てる。まあトラックみたいにでかい乗り物を縦にしたような乗り物に乗って正面衝突したら反動で飛び出して頭打って死ぬって思ったからさ。ほらよく車の衝突実験の映像みたいなのあるじゃない。そこを魔術でどうにかしてるんだね。

 色はジジイのが光沢を消した銀色で成金のほうがピカピカした金色。他にも魔力供給源の召使たちと相性がいい素材とかで工夫がいろいろあるらしい。

 ほらF1のレースカーって俺にはみんなおんなじに見えちゃうんだけど実際は各チームがいろいろ工夫を凝らしてるわけでしょ。あんな感じ。俺にわかる範囲でいうとジジイのほうは赤いマント、武器が槍、なんか閉じた傘みたいな形の奴ね。それに盾。

 ヤンエグのほうは肩から筒が二つ伸びてる。飛び道具の発射台。砲台なんか邪魔臭いものつけるくらいなら普通に岩とか投げりゃいいのにとか思ったから通訳で雇ったマイに聞いてみた。そうしたら投げる動作中に槍をもって突撃攻撃されたらひとたまりもないとのこと。何気にジジイのマントもドラッグレースでパラシュート使って止まるのと同じ意味合いがあるらしい。

 で、人だかりができて見えづらいって思うじゃん? 俺も決闘見物なんて初めてだからそう思ってたらさ。どんな魔術の組み合わせか知らないけど青空にオーロラビジョンみたいに様子が浮かび上がってるんだ。しかも音声も聞こえるしね。アングルもいくつかあって、真上からと両サイドの真横から。で三つ、それにあとジジイと成金たち視点と二人の顔のアップで合わせて全部で七つもある。

 ちなみに魔力を動力にできる素材で俺が知ってるのは火、水、土、植物、金属の五つ。俺が竹を使ってるのは俺の魔力が植物系だからね。おっと魔力が植物系だからってあっちのほうも草食系だなんて決めつけないでくれよなっ。…… ぷぷっ。

 ……なんか、ごめん。僕は酔ってるようだ。

 気を取り直させてください。

 もとい!
 
 何万という見物客がみんな空を見てるっていう傍から見たら花火大会見てるようなもんかな。前夜祭もあって俺は一儲けしようとしてギルドの奴らに声かけてたこ焼き屋の屋台を出してたんだけどさ。そういうのもあって花火大会みたいなもんだったね。前夜祭についてはまた別の機会に書くけどさ。

 んで、それぞれの背後には何十人と人が控えていてさ。ほら甲子園の大会とかで観客席に応援団が陣取るでしょ? あんな感じ。

 ジジイのほうにはオーケストラの楽団とその後ろでおそろいの落ち着いた雰囲気の服着てみんなで社交ダンスみたいなの踊りながら魔力の念を送ってる奴ら。

 ヤンエグのほうはマーチングバンドっていうのかな。特にいろんな種類の太鼓が重低音ですごいリズムを刻んでる。で、こっちは原色の派手な服着て跳んだり跳ねたりしてるし数もジジイたちより多い。

 なんとなくだけどそのメンバーの世代から経験のジジイチームと若いパワーのヤンエグチームって感じがする。もちろんノミ屋が出回って賭けになってるんだけどオッズは2対4でヤンエグ優勢。ジジイの突撃は結構定評あったらしいけど落ち目で若い魔術師を雇えなくって人数も少ないし魔術師たちの高齢化が不安視されてる。

 ヤンエグのほうは貴族になったのは金で落ち目の貴族から爵位を買ったらしいんだ。で、さらに家柄をよくしようと良家出身の娘を嫁にしたいと。大金をブっこんで絶対に勝つ布陣でくるだろうと。あ、ちなみに良家の娘ってジジイの孫ね。そのことでパーティでもめて決闘になったと。まあ決闘に持ち込まれた時点で政治的にはジジイの負けなんだろうね。

 で、どっちもどっちですごい音響で響かせあってるからもうわけわかんなくなるから少し離れたところでみんな空を見てるっていう状態。ロックフェスに行ってステージから離れたところでまったりしてる人たちみたいになってる。

 あと決闘の舞台について言っておくよ。古代人の墓所って呼ばれてる場所なんだけどね。石畳が敷き詰められていた大通りがあってその両脇にギリシャとかの神殿っぽい白い建物が立ち並んでいる場所。まあどの建物も崩れかかってるし原型をとどめてないんだけど。乾いた感じで全体的に白っぽい乾いた暑い場所って感じ。ちなみに今は春なんだけどここはすごく暑く感じる。

 で、広さはなんとなく俺は都会の大通り沿いを連想したかな。銀座や新宿とかにあるじゃない? 片道四車線くらいあって両脇にでかい建物が立ち並んでしばらくまっすぐ続く道路。あんな感じ。そこで相撲の力士みたいに両者にらみ合ってるって感じ。

 そして、開始の合図の号砲が鳴らされた。

 ヒュンって感じでジジイが槍もって突撃。ヤンエグの筒から煙幕。ジジイがマントを翻して煙を散らす。そこに頭上から踏みつけようと飛び込むヤンエグ。ジジイ盾を投げた。ヤンエグバランスを崩す。ヤンエグ落下の瞬間マントでコクピット覆って目隠しするジジイ。息もつかせぬまま槍を突き立てた、と思ったら。

 なにか、釣り上げられているジジイのマシン。落ち着いてみてみるとヤンエグの砲台からぶっとい蔦が無数に伸びてた。んで、あとはもうたこ殴り。引くくらいのたこ殴り。でオーケストラとか社交ダンスやってた人たちももう何もできずにただ見守ってる。傍から見ても勝負はついてるしジジイはもう気を失ってる。見せつけるためなのか興奮して周りが見えなくなってるのかヤンエグ陣営はさらに盛り上がってる。

 で、とうとうコクピットにヤンエグのマシンの腕が突っ込まれた。そのときだった。女騎士が立ちはだかった。そして何か叫んでる。

「そんなにいたぶりたいなら代わりに私を!」

「夫となる私に指図するんじゃないっ!」

 で、ヤンエグは蔦で女騎士をつるし上げて鎧をはぎ始めやがった。で、俺は気が付いたら高下駄をジャンピングシューズ的に使って獲物を狙う狼気分で地を描けてったわけ。あっという間に移動して奴のマシンの横っ面めがけてドロップキック。

 カーンといい音が響く中びくともしなかった跳ね返されちまった。転がって口に入った砂を吐き捨てながら、まだまだこれからだぜ、なんて思いながら立ち上がったわけ。

 するとみんながシーンとなってることに気が付いたから言ってやったわけ。

「俺はメキシコ出身の空中殺法使いかっ」って日本語でね。
 
 あと、最後まで書くつもりだったんだけど酔いが回ってきちゃった。今日はこの辺で。え? もしかして怒ってる? ねえ、なんでそんなに怒ってるんだい?

 あれ? 僕、なにかやっちゃいました?

……

 いや、ごめんて。マジ、ゴメンて。

また時間とれたら続きを書いておくよ。じゃ。
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