キス×フレンド 後日談

あお

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後日談

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俺は今、隆太の家の風呂場の前に立っていた。


中からはシャワーから出る水の音がドアを隔てて聞こえてくる。


風呂場のドアを少しだけ開ければ、カチャッと小さな音が鳴った。


高揚する胸を押さえて、鍵が掛かっていない状態の無防備なドアを勢いよく開け放つ。



「へ……っ、太一、うわっ……え、なんでっ……」



開けた瞬間、ぶわっと蒸気が押し寄せてきて、俺の視界は一気に曇った。


風呂場と脱衣所との温度差のせいだろうが、全く見えない。


しかし俺は特に気にする事なく、一度眼鏡を外して洋服で拭き、もう一度掛け直した。


クリアになった視界に飛び込んで来たのは、狼狽え、目を泳がせながらも必死にタオルで下半身を隠す隆太の姿。



あ、この反応、可愛いかも。



隆太は髪の毛を洗い終えて丁度身体を洗っている所だった。シャンプーの匂いが俺の鼻を掠めて何だかくすぐったい。


金色の髪の毛を伝って滴り落ちる水滴が、どこか艶めかしく感じた。



「鍵かけてないなんて、不用心だよ」


「普段開けられる事ねえんだから、かけねえっつの。いや、それより、なんで開けたんだ」


「ちょっと、思う所があって」


「は……?」



未だ状況が理解出来ていないのか、隆太は少しだけ眉を寄せて首を傾げた。


俺がここを開けた理由はまあ、ちょっと置いておくとして。


自分から開けておいてなんだけど、これはちょっと、危ないな。




付き合って一カ月半が経ったとはいえ、まだまだ見慣れない隆太の裸。


首から鎖骨にかけてのライン、薄っすらと割れた腹筋、肌に吸い付くように張り付いたタオル。


俺は隆太を頭の天辺から爪先にかけてゆっくりと視姦した後で、これはまずかったかな、と自然と目を逸らした。


なんと言うか、直視、出来ない。


隆太が頑なに一緒に風呂には入りたくないと拒んでいた意味が、なんとなく理解出来た気がする。



「太一、寒い。早くドア閉めろ」


「ああ、ごめん」



まだ洋服を着たままの俺は気付かなかったが、隆太は裸で、しかも浴槽に浸かっている訳ではないからこの状況はかなり寒かったみたいだ。


隆太は全身に鳥肌を立たせながらも、下から俺を睨んでくる。


俺はそれにごめんと謝って、風呂場へと足を踏み入れた。


後ろ手にドアを閉めて、反対の手で自分が着ているシャツのボタンへ手をかける。



「なっ……、おま、なんで入ってきてんだっ」


「だって閉めろって」


「お前は外に居ろよ。洋服だって、着たままじゃねえか」


「そんなの直ぐに脱げばいい。ねえ、俺も入っていいかな」


「は……ちょ、まっ……」



いつもは俺の方が先にお風呂に入るんだけど、今日はわざと隆太が先に入るように仕向けた。


つまりこれは、計画的な犯行なのだ。


前にも同じように一緒に入ろうと誘ったんだけど、その時はギリギリの所で逃げられてしまった。


それから何回かアタックはしてみたものの、悉く断られていて、結局最終手段を使う羽目になってしまった。


こうでもしないと、きっといつまでも一緒に入ってはくれないだろう。




だって俺達、恋人同士なんだし。



一緒に入りたいって、思ってもいいじゃん。




「ダメかな」


「ダメって言うか、いきなり言われると、困る……心の準備とか」


「俺は出来てる」


「俺は出来てねえよっ、てか……マジで、入んの」


「うん」


「一緒にか」


「うん」


「俺の理性が崩れたら、誰が止めんの」


「止めなくていいんじゃない」



だって、恋人同士だろ。


俺だって、性欲が無い訳じゃない。


隆太に触れたいと思ってるし、今だって、キスがしたい。


俺は隆太と、もっと恋人同士がするような事、沢山したいんだ。




ダメ元で、もう一度聞いてみる。


首を傾けて隆太の顔を覗き込めば、隆太は一瞬目を丸くした後、降参だと言わんばかりに頭を抱え、盛大な溜息を漏らした。





「……っんとに、知らねえからな」

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