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1.1 お互いの目標

1話 追放

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「ヘンリー! 今日をもってクビよ」



 突然のことで理解できなかった。そしてすぐ我に返ってすぐ理解するのはクビと言われた一言。



「ライラお嬢様。なぜクビなのでしょうか...」



 今まで最大限ライラお嬢様に魔法を教えてきたつもりだ。それなのになんで...。



「そんなの当たり前でしょ! 毎日毎日基礎魔法ばかリの練習! そんな練習方法じゃいつまでたっても魔法が上達できないじゃない!」



「それはまだライラお嬢様の基礎ができていないからで...」



「基礎魔法は使えているじゃない! あなたが基礎魔法しか使えないからこの練習しかしないんじゃないの? このままだと私はずっと成長できないわ」



「...」



 俺が基礎魔法しか使えないのは理解している。でも公爵家は俺の実績を買ってくれていたから家庭教師をしてほしいと言ってくれたものだと思っていた。それにお嬢様の基礎がまだできていないのは事実だと思っている。



「では基礎魔法の方はどうするのですか?」



「大丈夫よ! さっきも言ったけど私は基礎魔法が使えるもの」



「使えるのと使われているのでは違います」



 魔法の適性があれば誰だって基礎魔法は使える。でも使えるのと使われるのは違う。魔法を使う時、魔素が乱れたりして、今後応用魔法を使う時の障害になる。



「屁理屈は良いわ。それにもう他に家庭教師は雇っているからクビは確定よ」



 すると部屋に知っている人が入ってきた。



「久しぶりだなヘンリー」



「あぁ」



(なんでこいつなんだよ)



 魔法学院で事あるごとにバカにして来ていたアバ・ツーリクだった。



「今日からこの人が私の家庭教師なの。だからもうヘンリーは用済みってこと」



「...」



「やっとあなたから解放されるわ。あなたと違って次の先生はいろいろ教えてくれるらしいからね!」



「今までありがとうございました」



「えぇ。早く出て行って」



 アバが嘲笑っているのを聞きながら公爵家を後にした。今までそれなりにやってこれていたと思っていた。初めての家庭教師であったから大変ではあったけど、それなりにやりがいもあったし、周りからも否定的な言葉を言われたことはなかった。



(それなのになんで...)



 ライラお嬢様に言われたのが悔しくないと言えば嘘になる。それにアバを雇うなんて...。今までの努力がすべて否定された気分であった。でもどうしようもなかった。なんたって俺は雇われている側だから。



(絶対に見返してやる)



 職を失って生きることなんてできない。だから俺は教育委員会に行って職を探すことにした。公爵家の家庭教師をすることになったのもここで招待状をもらえたからだ。だから今回もここで探そうと思った。



 受付嬢に仕事の依頼の話をすると、なぜか来賓室に案内される。中に入るとそこには教育委員会の委員長----オーリス・ガフリーが座っていた。



「ヘンリーくん。まずは座りたまえ」



「はい」



 オーリスさんには申し訳ない気持ちでいっぱいであった。公爵家で仕事がもらえたのもこの人がいたのが大きい。どれだけ実績があっても誰かの招待状がなければ大抵は貴族から仕事をもらうことはできない。



「この度は本当に申し訳ございません」



「ん? なんで謝るんだ?」



「そ、それは...。オーリスさんのおかげで仕事をいただけましたのにクビになってしまいましたので...」



 すると少し笑いながら



「それはしょうがない事じゃないか。遅かれ早かれ誰だっていずれはクビになる。だから気にしなくていい」



「あ、ありがとうございます」



「それでだけど、仕事を探しているんだろ?」



「はい」



「まあ実質公爵家から追放された君はあそこで仕事をすることはできない。だから他の場所で仕事を探していいよな?」



「はい」



 流石に俺から解放されると言われたことがショックだった。流石に公爵家に戻りたいとは思えない。



「そうか。まあ当てならある。数日ほど待ってほしい」



「わかりました。本当に何から何までありがとうございます」



 俺が聞き取れないほど小さな声で言われる。



「いいよ。君は本当に逸材だからね」



「なんて言いました?」



「ん? なんでもないよ?」



 まあ重要な情報ならすぐ言ってくるだろうしいいか...。



「では宜しくお願いします」



「じゃあちょっとだけ待っててくれ」



 話が終わってから宿に泊まり、3日が経った時オーリスさんから呼び出された。



 この仕事で出会う人が今後どれだけ自分にとって重要人物であるかをまだ知らなかった。そしてライラ様がどれだけ魔法で苦しむことすらも。
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