7 / 18
♦︎第1章
サイコロの目『6』
しおりを挟む
憎しみってなんだろう。
何人の人と遊んだのだろう。
もうそろそろ疲れたな。
これが最後の一人になるかもしれない。
この子と遊んだ後僕は消えてしまうのかな。
寂しいよ。
でもいいんだ。
もう人が死んでいくのを見たくないから。
「さぁ いってごらん。君は何人殺したい?」
小さな小さな女の子。
短い髪にぱちくりとした大きな目。
僕の半分以上小さい子。
両手で大切そうに抱えているクマのぬいぐるみ。
こんな小さな女の子でも 憎しみを抱いていると思うと、少し悲しくなるよ。
僕はしゃがみこみ女の子の頭を撫でてあげた。
すると、女の子はにこりと微笑み笑顔でこう言ったんだ―――。
「私 みんなが 大好き」
―――驚いた。
この子の心は汚れていない。
どうしてこんなにも心の綺麗な子がここへやってきたのだろう。
「あなたがうわさのピエロさん?」
僕は戸惑った。
はじめてゲーム以外の質問をされた。
少し考えてから、
「そうだよ」
と言った。
すると女の子は僕の頭の上に手を乗せ、母が赤ん坊の泣いている時をあやすようにゆっくりと撫でた。
「ピエロさんは皆の憎しみから産まれたんだよね。
今までずっと心が汚れた人達を見てきたんだよね」
女の子はぬいぐるみを下へ置くと、その小さな体で僕を抱きしめた。
「人間って醜い生き物だよね。
でもね、皆が醜いわけじゃないんだ。
貧しい生活をしていても、必死で生きようとしている人。
殻に閉じこもってしまっている人。
辛い現実を受け入れ、前を向いて歩こうとしている人。
みんな本当は誰かに愛されたいんだ。
みんな何かを背負って生きているの。
好きで誰かを恨んでいる訳じゃない。
それはピエロさんも同じなんだよね?」
―――僕は産まれて初めて心から涙を流した。
女の子のその言葉が僕の心を優しく包み込んでくれた。
人は誰かを憎み、殺し、怨んでこそ人なんだと思っていた。
でもそれは違った。
初めてすべての人間が醜い生き物ではないんだと知った。
本当は僕も誰かに愛してもらいたかった。
でも誰も僕を愛してなどくれなかった。
僕の心は憎しみで汚れきっていた。
だから人を恨むピエロとなり、共感できる仲間を呼び集め、 ゲーム感覚でたくさんの人を殺したりした。
誰かに分かってもらいたかったんだ。
本当の僕の気持ちを。
青い涙が地面へ零れ落ちると、体が光だし、僕の本当の元の姿へと戻った。
「拓也君。
気づいてあげられなくてごめんなさい。
拓也君がこんなにも傷ついていたなんて知らなかった。
でもやっと分かったよ。
本当は誰かに愛されたい、かまってもらいたいから
自殺したんだって・・・・。」
僕には出来すぎる兄が一人いた。
いつもそいつと比べられ、誰も僕を見てはくれなかった。
だから僕は部屋に閉じこもり、毎日のようにこの本を見ていたんだ。
こんなピエロになりたい。
憎しみでいっぱいにしたい。
仲間を増やしたいって。
そして僕は自ら命を絶った。
気づくといつのまにかその願いが叶っていた。
ずーっと僕はここで待っていたのかもしれない。
誰かが僕の気持ちを心から分かってくれるのを・・・。
「もう一人じゃないよ。
私が分かってあげられた。
だからもうあなたは一人じゃない」
僕は女の子の小さな腕の中でずっと涙を流し続けた。
やっと気づいてもらえた僕の気持ち。
そのぬくもりはとても暖かかった。
「ありがとう・・・。僕の心を解放してくれて。
でも君はいったい誰なの・・・?」
僕の知らない女の子。
君が誰なのか、どこから来たのか、名前さえ全く知らなかった。
女の子は地面に置いていたぬいぐるみを再び抱きしめ、にやりと笑みを見せた。
「私・・・?
私は次のピエロとなる者よ。
あなたと同じ憎しみを心に持ったうちの一人。
私の心は綺麗でしょ?
でもそれは偽りの心。
自分が持ってる憎しみなんて、他人には分からないもの。
嘘をつくなんて簡単なこと。
誰にでも黒い心はあるものよ。
そろそろ交代する時みたい。
今から私はピエロとなる。
あなたは成仏するときが来たみたいね。」
そういうと、女の子の体がみるみるうちに白くなり
僕が着ていた服を、今度は女の子に着せられた。
口元に真っ赤な口紅が塗られ、 両目には黄色い猫の目のようなメイクが塗られた。
そして腰元にはあの、サイコロが入った袋が提げられ、 彼女は僕にこう言った。
「さぁ 私と一緒にゲームをしましょう」
第一章 END
何人の人と遊んだのだろう。
もうそろそろ疲れたな。
これが最後の一人になるかもしれない。
この子と遊んだ後僕は消えてしまうのかな。
寂しいよ。
でもいいんだ。
もう人が死んでいくのを見たくないから。
「さぁ いってごらん。君は何人殺したい?」
小さな小さな女の子。
短い髪にぱちくりとした大きな目。
僕の半分以上小さい子。
両手で大切そうに抱えているクマのぬいぐるみ。
こんな小さな女の子でも 憎しみを抱いていると思うと、少し悲しくなるよ。
僕はしゃがみこみ女の子の頭を撫でてあげた。
すると、女の子はにこりと微笑み笑顔でこう言ったんだ―――。
「私 みんなが 大好き」
―――驚いた。
この子の心は汚れていない。
どうしてこんなにも心の綺麗な子がここへやってきたのだろう。
「あなたがうわさのピエロさん?」
僕は戸惑った。
はじめてゲーム以外の質問をされた。
少し考えてから、
「そうだよ」
と言った。
すると女の子は僕の頭の上に手を乗せ、母が赤ん坊の泣いている時をあやすようにゆっくりと撫でた。
「ピエロさんは皆の憎しみから産まれたんだよね。
今までずっと心が汚れた人達を見てきたんだよね」
女の子はぬいぐるみを下へ置くと、その小さな体で僕を抱きしめた。
「人間って醜い生き物だよね。
でもね、皆が醜いわけじゃないんだ。
貧しい生活をしていても、必死で生きようとしている人。
殻に閉じこもってしまっている人。
辛い現実を受け入れ、前を向いて歩こうとしている人。
みんな本当は誰かに愛されたいんだ。
みんな何かを背負って生きているの。
好きで誰かを恨んでいる訳じゃない。
それはピエロさんも同じなんだよね?」
―――僕は産まれて初めて心から涙を流した。
女の子のその言葉が僕の心を優しく包み込んでくれた。
人は誰かを憎み、殺し、怨んでこそ人なんだと思っていた。
でもそれは違った。
初めてすべての人間が醜い生き物ではないんだと知った。
本当は僕も誰かに愛してもらいたかった。
でも誰も僕を愛してなどくれなかった。
僕の心は憎しみで汚れきっていた。
だから人を恨むピエロとなり、共感できる仲間を呼び集め、 ゲーム感覚でたくさんの人を殺したりした。
誰かに分かってもらいたかったんだ。
本当の僕の気持ちを。
青い涙が地面へ零れ落ちると、体が光だし、僕の本当の元の姿へと戻った。
「拓也君。
気づいてあげられなくてごめんなさい。
拓也君がこんなにも傷ついていたなんて知らなかった。
でもやっと分かったよ。
本当は誰かに愛されたい、かまってもらいたいから
自殺したんだって・・・・。」
僕には出来すぎる兄が一人いた。
いつもそいつと比べられ、誰も僕を見てはくれなかった。
だから僕は部屋に閉じこもり、毎日のようにこの本を見ていたんだ。
こんなピエロになりたい。
憎しみでいっぱいにしたい。
仲間を増やしたいって。
そして僕は自ら命を絶った。
気づくといつのまにかその願いが叶っていた。
ずーっと僕はここで待っていたのかもしれない。
誰かが僕の気持ちを心から分かってくれるのを・・・。
「もう一人じゃないよ。
私が分かってあげられた。
だからもうあなたは一人じゃない」
僕は女の子の小さな腕の中でずっと涙を流し続けた。
やっと気づいてもらえた僕の気持ち。
そのぬくもりはとても暖かかった。
「ありがとう・・・。僕の心を解放してくれて。
でも君はいったい誰なの・・・?」
僕の知らない女の子。
君が誰なのか、どこから来たのか、名前さえ全く知らなかった。
女の子は地面に置いていたぬいぐるみを再び抱きしめ、にやりと笑みを見せた。
「私・・・?
私は次のピエロとなる者よ。
あなたと同じ憎しみを心に持ったうちの一人。
私の心は綺麗でしょ?
でもそれは偽りの心。
自分が持ってる憎しみなんて、他人には分からないもの。
嘘をつくなんて簡単なこと。
誰にでも黒い心はあるものよ。
そろそろ交代する時みたい。
今から私はピエロとなる。
あなたは成仏するときが来たみたいね。」
そういうと、女の子の体がみるみるうちに白くなり
僕が着ていた服を、今度は女の子に着せられた。
口元に真っ赤な口紅が塗られ、 両目には黄色い猫の目のようなメイクが塗られた。
そして腰元にはあの、サイコロが入った袋が提げられ、 彼女は僕にこう言った。
「さぁ 私と一緒にゲームをしましょう」
第一章 END
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
元魔王おじさん
うどんり
ファンタジー
激務から解放されようやく魔王を引退したコーラル。
人間の住む地にて隠居生活を送ろうとお引越しを敢行した。
本人は静かに生活を送りたいようだが……さてどうなることやら。
戦いあり。ごはんあり。
細かいことは気にせずに、元魔王のおじさんが自由奔放に日常を送ります。
君へ捧ぐ献身
坂本雅
ファンタジー
マーリャは地方都市より更に田舎の農村・リジー村で暮らす粉挽き小屋の娘。
水を運び、作物を育て、家畜の世話を焼くごく普通の農民として暮らしていた。
都市に越したり、旅に出て命をかけたりする気にはなれない。現在の安定した暮らしを維持すればそれで良い。
一生に一度の成人の儀を終えれば村に帰り、そのまま永住するはずだった。
だが徐々に身体が変調をきたし、人間にはない鱗や牙が生え始める。
優れた薬師だった旅の神父ジョサイアの協力を得て儀式当日まで耐え抜くも、彼もまた裏を持つ者だった。
これは平々凡々を願う主人公が安らかな生活を送りながら、
後にその生まれを否定され、自分の在り方を探す物語。
毎週日曜日更新予定です。
異世界国盗り物語 ~野望に燃えるエーリカは第六天魔皇になりて天下に武を布く~
ももちく
ファンタジー
天帝と教皇をトップに据えるテクロ大陸本土には4つの王国とその王国を護る4人の偉大なる魔法使いが存在した
創造主:Y.O.N.Nはこの世界のシステムの再構築を行おうとした
その過程において、テクロ大陸本土の西国にて冥皇が生まれる
冥皇の登場により、各国のパワーバランスが大きく崩れ、テクロ大陸は長い戦国時代へと入る
テクロ大陸が戦国時代に突入してから190年の月日が流れる
7つの聖痕のひとつである【暴食】を宿す剣王が若き戦士との戦いを経て、新しき世代に聖痕を譲り渡す
若き戦士は剣王の名を引き継ぎ、未だに終わりをしらない戦国乱世真っ只中のテクロ大陸へと殴り込みをかける
そこからさらに10年の月日が流れた
ホバート王国という島国のさらに辺境にあるオダーニの村から、ひとりの少女が世界に殴り込みをかけにいく
少女は|血濡れの女王《ブラッディ・エーリカ》の団を結成し、自分たちが世の中へ打って出る日を待ち続けていたのだ
その少女の名前はエーリカ=スミス
とある刀鍛冶の一人娘である
エーリカは分不相応と言われても仕方が無いほどのでっかい野望を抱いていた
エーリカの野望は『1国の主』となることであった
誰もが笑って暮らせる平和で豊かな国、そんな国を自分の手で興したいと望んでいた
エーリカは救国の士となるのか?
それとも国すら盗む大盗賊と呼ばれるようになるのか?
はたまた大帝国の祖となるのか?
エーリカは野望を成し遂げるその日まで、決して歩みを止めようとはしなかった……
陰キャラモブ(?)男子は異世界に行ったら最強でした
日向
ファンタジー
これは現代社会に埋もれ、普通の高校生男子をしていた少年が、異世界に行って親友二人とゆかいな仲間たちと共に無双する話。
俺最強!と思っていたら、それよりも更に上がいた現実に打ちのめされるおバカで可哀想な勇者さん達の話もちょくちょく入れます。
※初投稿なので拙い文章ではありますが温かい目で見守って下さい。面白いと思って頂いたら幸いです。
誤字や脱字などがありましたら、遠慮なく感想欄で指摘して下さい。
よろしくお願いします。
公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
LIVE FOR HUMAN
mk-2
ファンタジー
完結済み。
どこかの世界にある島国・レチア王国。
ある日、太古の昔に在った災厄の化身・魔王を封印した宝玉『憎悪の泪』が盗賊により盗み出されてしまった。
窮した王国は、武勇と叡智の誉れ高き勇者・ラルフ=フィルハートに、宝玉奪還の勅命を下す――――
『魔王』とは何か。
『勇者』とは何か。
『人間』とは――――何か。
カラフルな個性を持つ仲間たちと共に、盗賊の潜む遺跡を目指す。
その中で見えてくる人生模様。
人の為に生き、人の為に死す。総ては己の為。
誰かと共に生きることを描いた冒険活劇です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる