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♦︎第1章
サイコロの目『6』
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憎しみってなんだろう。
何人の人と遊んだのだろう。
もうそろそろ疲れたな。
これが最後の一人になるかもしれない。
この子と遊んだ後僕は消えてしまうのかな。
寂しいよ。
でもいいんだ。
もう人が死んでいくのを見たくないから。
「さぁ いってごらん。君は何人殺したい?」
小さな小さな女の子。
短い髪にぱちくりとした大きな目。
僕の半分以上小さい子。
両手で大切そうに抱えているクマのぬいぐるみ。
こんな小さな女の子でも 憎しみを抱いていると思うと、少し悲しくなるよ。
僕はしゃがみこみ女の子の頭を撫でてあげた。
すると、女の子はにこりと微笑み笑顔でこう言ったんだ―――。
「私 みんなが 大好き」
―――驚いた。
この子の心は汚れていない。
どうしてこんなにも心の綺麗な子がここへやってきたのだろう。
「あなたがうわさのピエロさん?」
僕は戸惑った。
はじめてゲーム以外の質問をされた。
少し考えてから、
「そうだよ」
と言った。
すると女の子は僕の頭の上に手を乗せ、母が赤ん坊の泣いている時をあやすようにゆっくりと撫でた。
「ピエロさんは皆の憎しみから産まれたんだよね。
今までずっと心が汚れた人達を見てきたんだよね」
女の子はぬいぐるみを下へ置くと、その小さな体で僕を抱きしめた。
「人間って醜い生き物だよね。
でもね、皆が醜いわけじゃないんだ。
貧しい生活をしていても、必死で生きようとしている人。
殻に閉じこもってしまっている人。
辛い現実を受け入れ、前を向いて歩こうとしている人。
みんな本当は誰かに愛されたいんだ。
みんな何かを背負って生きているの。
好きで誰かを恨んでいる訳じゃない。
それはピエロさんも同じなんだよね?」
―――僕は産まれて初めて心から涙を流した。
女の子のその言葉が僕の心を優しく包み込んでくれた。
人は誰かを憎み、殺し、怨んでこそ人なんだと思っていた。
でもそれは違った。
初めてすべての人間が醜い生き物ではないんだと知った。
本当は僕も誰かに愛してもらいたかった。
でも誰も僕を愛してなどくれなかった。
僕の心は憎しみで汚れきっていた。
だから人を恨むピエロとなり、共感できる仲間を呼び集め、 ゲーム感覚でたくさんの人を殺したりした。
誰かに分かってもらいたかったんだ。
本当の僕の気持ちを。
青い涙が地面へ零れ落ちると、体が光だし、僕の本当の元の姿へと戻った。
「拓也君。
気づいてあげられなくてごめんなさい。
拓也君がこんなにも傷ついていたなんて知らなかった。
でもやっと分かったよ。
本当は誰かに愛されたい、かまってもらいたいから
自殺したんだって・・・・。」
僕には出来すぎる兄が一人いた。
いつもそいつと比べられ、誰も僕を見てはくれなかった。
だから僕は部屋に閉じこもり、毎日のようにこの本を見ていたんだ。
こんなピエロになりたい。
憎しみでいっぱいにしたい。
仲間を増やしたいって。
そして僕は自ら命を絶った。
気づくといつのまにかその願いが叶っていた。
ずーっと僕はここで待っていたのかもしれない。
誰かが僕の気持ちを心から分かってくれるのを・・・。
「もう一人じゃないよ。
私が分かってあげられた。
だからもうあなたは一人じゃない」
僕は女の子の小さな腕の中でずっと涙を流し続けた。
やっと気づいてもらえた僕の気持ち。
そのぬくもりはとても暖かかった。
「ありがとう・・・。僕の心を解放してくれて。
でも君はいったい誰なの・・・?」
僕の知らない女の子。
君が誰なのか、どこから来たのか、名前さえ全く知らなかった。
女の子は地面に置いていたぬいぐるみを再び抱きしめ、にやりと笑みを見せた。
「私・・・?
私は次のピエロとなる者よ。
あなたと同じ憎しみを心に持ったうちの一人。
私の心は綺麗でしょ?
でもそれは偽りの心。
自分が持ってる憎しみなんて、他人には分からないもの。
嘘をつくなんて簡単なこと。
誰にでも黒い心はあるものよ。
そろそろ交代する時みたい。
今から私はピエロとなる。
あなたは成仏するときが来たみたいね。」
そういうと、女の子の体がみるみるうちに白くなり
僕が着ていた服を、今度は女の子に着せられた。
口元に真っ赤な口紅が塗られ、 両目には黄色い猫の目のようなメイクが塗られた。
そして腰元にはあの、サイコロが入った袋が提げられ、 彼女は僕にこう言った。
「さぁ 私と一緒にゲームをしましょう」
第一章 END
何人の人と遊んだのだろう。
もうそろそろ疲れたな。
これが最後の一人になるかもしれない。
この子と遊んだ後僕は消えてしまうのかな。
寂しいよ。
でもいいんだ。
もう人が死んでいくのを見たくないから。
「さぁ いってごらん。君は何人殺したい?」
小さな小さな女の子。
短い髪にぱちくりとした大きな目。
僕の半分以上小さい子。
両手で大切そうに抱えているクマのぬいぐるみ。
こんな小さな女の子でも 憎しみを抱いていると思うと、少し悲しくなるよ。
僕はしゃがみこみ女の子の頭を撫でてあげた。
すると、女の子はにこりと微笑み笑顔でこう言ったんだ―――。
「私 みんなが 大好き」
―――驚いた。
この子の心は汚れていない。
どうしてこんなにも心の綺麗な子がここへやってきたのだろう。
「あなたがうわさのピエロさん?」
僕は戸惑った。
はじめてゲーム以外の質問をされた。
少し考えてから、
「そうだよ」
と言った。
すると女の子は僕の頭の上に手を乗せ、母が赤ん坊の泣いている時をあやすようにゆっくりと撫でた。
「ピエロさんは皆の憎しみから産まれたんだよね。
今までずっと心が汚れた人達を見てきたんだよね」
女の子はぬいぐるみを下へ置くと、その小さな体で僕を抱きしめた。
「人間って醜い生き物だよね。
でもね、皆が醜いわけじゃないんだ。
貧しい生活をしていても、必死で生きようとしている人。
殻に閉じこもってしまっている人。
辛い現実を受け入れ、前を向いて歩こうとしている人。
みんな本当は誰かに愛されたいんだ。
みんな何かを背負って生きているの。
好きで誰かを恨んでいる訳じゃない。
それはピエロさんも同じなんだよね?」
―――僕は産まれて初めて心から涙を流した。
女の子のその言葉が僕の心を優しく包み込んでくれた。
人は誰かを憎み、殺し、怨んでこそ人なんだと思っていた。
でもそれは違った。
初めてすべての人間が醜い生き物ではないんだと知った。
本当は僕も誰かに愛してもらいたかった。
でも誰も僕を愛してなどくれなかった。
僕の心は憎しみで汚れきっていた。
だから人を恨むピエロとなり、共感できる仲間を呼び集め、 ゲーム感覚でたくさんの人を殺したりした。
誰かに分かってもらいたかったんだ。
本当の僕の気持ちを。
青い涙が地面へ零れ落ちると、体が光だし、僕の本当の元の姿へと戻った。
「拓也君。
気づいてあげられなくてごめんなさい。
拓也君がこんなにも傷ついていたなんて知らなかった。
でもやっと分かったよ。
本当は誰かに愛されたい、かまってもらいたいから
自殺したんだって・・・・。」
僕には出来すぎる兄が一人いた。
いつもそいつと比べられ、誰も僕を見てはくれなかった。
だから僕は部屋に閉じこもり、毎日のようにこの本を見ていたんだ。
こんなピエロになりたい。
憎しみでいっぱいにしたい。
仲間を増やしたいって。
そして僕は自ら命を絶った。
気づくといつのまにかその願いが叶っていた。
ずーっと僕はここで待っていたのかもしれない。
誰かが僕の気持ちを心から分かってくれるのを・・・。
「もう一人じゃないよ。
私が分かってあげられた。
だからもうあなたは一人じゃない」
僕は女の子の小さな腕の中でずっと涙を流し続けた。
やっと気づいてもらえた僕の気持ち。
そのぬくもりはとても暖かかった。
「ありがとう・・・。僕の心を解放してくれて。
でも君はいったい誰なの・・・?」
僕の知らない女の子。
君が誰なのか、どこから来たのか、名前さえ全く知らなかった。
女の子は地面に置いていたぬいぐるみを再び抱きしめ、にやりと笑みを見せた。
「私・・・?
私は次のピエロとなる者よ。
あなたと同じ憎しみを心に持ったうちの一人。
私の心は綺麗でしょ?
でもそれは偽りの心。
自分が持ってる憎しみなんて、他人には分からないもの。
嘘をつくなんて簡単なこと。
誰にでも黒い心はあるものよ。
そろそろ交代する時みたい。
今から私はピエロとなる。
あなたは成仏するときが来たみたいね。」
そういうと、女の子の体がみるみるうちに白くなり
僕が着ていた服を、今度は女の子に着せられた。
口元に真っ赤な口紅が塗られ、 両目には黄色い猫の目のようなメイクが塗られた。
そして腰元にはあの、サイコロが入った袋が提げられ、 彼女は僕にこう言った。
「さぁ 私と一緒にゲームをしましょう」
第一章 END
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