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七章 ぞろぞろ偽者ソルシエラ

第222話 クロクロ輝くお星さま

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「――あっちも終わったみたいだね」

 ネームレスは不意に顔を上げてそう言った。
 
 身に纏う漆黒の外套は、明かりの少ない洞窟では彼女の輪郭を朧気にしている。
 だからだろうか、目の前で腰を抜かしたその男はネームレスに対して焦点が合っていなかった。
 その眼は、ネームレスとその向こうに倒れ伏した仲間達へと向けられている。

 血にまみれ、あるいは焼け焦げて、そしてまた別の死体は体の中心から真っ二つにされていた。

「ひぃっ」

 恐怖と混乱に支配された男は、必死に地面を這おうとして自分の手首から下が無くなっていることに気が付いた。
 そして次の瞬間には、その首は地面にごとりと落ちる。

 ネームレスはそれを一瞥すると、興味を失ったように前を見た。

 視界の先に広がる闇は、まるで怪物が口を開けているかのようだ。
 滅多に人が立ち入らないためだろうか、その場は妙な静けさに支配されていた。

「君たちにとっても丁度良かったんじゃない? 偶然、クローマで騒ぎが起きたから、ここで何が起きても分からない。仮に知っても、移動に優れた異能を持つリュウコちゃんとタタリちゃん、そして六波羅さんはクローマの中」

 水が滴り落ちる音が響く薄暗い道は、大昔に掘られた道をそのまま使っているのだろう。
 点々と続く蝋燭の火だけが目印だった。

 進むネームレスの影が幾重にも壁に映し出される。
 やがて彼女は、目的の場所に辿り着くとその足を止めた。

「すぐにに駆けつける事ができる者はいない。ねえ、そうでしょ? 良かったじゃん、那滝家の秘宝を手に入れられて」
「……今日はツイていると思ったんだがな」

 薄暗い洞窟を進んだ先、その終着点はやけに開けた空間だった。

 ネームレスに話しかけられた男は、振り返ると顔を顰める。

「お前も同業か?」
「さて、どうでしょう」

 辺りは異様な光景だった。
 巨大な縄に、数えきれない程の札。
 それが何かを縛り上げ、封じていたのだという事は誰の目に見ても明らかである。
 そして、縄が千切れ、札が焦げた今、ソレが解き放たれたのだという事も。

「御三家の持つ秘宝の一つ。那滝家は原初のダンジョン主だったっけ? 名は確か……」
地絃天星埜御霊ちいとてんせいのみたま。日本で起きた幻獣大戦を終わらせた怪物だ。那滝家と周辺の村の奴は神として扱っているがな。俺にはただのダンジョン主にしか見えん。これは、相当な力を持っている。流石は、秘匿された唯一ののダンジョン主だな」

 男の背後、従うかのように一匹の怪物が鎮座している。
 闇を切り取ったかのような漆黒の巨鳥は、そのくちばしに何かを咥えていた。

 それが人だと誰が分かるだろうか。
 そして、赤黒い肉塊となったそれが、那滝家の現当主だと誰が信じられるだろうか。

「それ、死んでる?」
「ああ。俺が殺した」
「そっかぁ。まあ、救えたら救っとこう程度だったしいいや」

 ネームレスはそう言うと、男の背後に座す地絃天星埜御霊を指さした。
「それ、今はお前の物なの?」
「ああそうだ。コイツの操作権は代々那滝家の当主が引継ぐ事になっているらしい。そして、俺はその操作権を奪取した。それがこの勾玉だ」

 男はそう言うと勾玉をネームレスへとかざす。
 その背後で、地絃天星埜御霊はその翼を大きく広げた。
 男の感情に同期して、ネームレスを威嚇しているのだ。

「随分とお喋りだね。同業ってことは、敵になる可能性が高いとは思わない? 余計なことは言わない方が良いと思うけど」
「そうだな。だから、交渉といこう」
「へぇ」
「ここまで来れたということは相当な実力者であることは間違いない。それに、殺してきたのだろう? 俺の部下を。でなければ今、俺の前に五体満足ではいられないはずだ」
「そうだね。ごめん、殺しちゃった」

 あっさりと認め、頭を下げるネームレス。
 しかし、男の反応は意外にも淡白なものだった。

「別に良い。使えん部下などいらない。それに、今俺の手には最強のダンジョン主があるのだから。どうだ、俺と一緒に世界を獲らないか」
 
 男はそう言って手を広げる。
 その顔には、自己陶酔の色が強く出ており、実に心地よさそうであった。

「俺達はメフィスト。銀の黄昏や理事会を潰し、世界の頂点に立つ真実の強者だ」
「そっか。それは凄いねー」

 ネームレスは拡張領域からサンドイッチを取り出すと片手間に食べ始めた。
 その態度に、一瞬眉をひそめた男だったがすぐに気を取り直し言葉を続ける。

「ここだけではない。つい先ほど、三ヶ嶋家と牙塔家の秘宝も俺の仲間が奪った所だ。天使の警戒で学園都市に人員を送りすぎたな。哀れな事だ」
「確かにザルだよね。お前らみたいな程度の低い組織でも侵入できるんだから」
「……お前は支配者となる男を前に随分と強気なのだな」
「そりゃあ、お前はそんな器じゃないし?」

 そう言うと、ネームレスはエクスギアを取り出す。
 切っ先を男へと定め、片手には新たなサンドイッチ。

 どう見てもバカにしているその姿に男は遂に怒鳴り散らした。

「バカにしているのか! そもそも何処の組織の人間だ! この俺が仲間に引き入れてやろうと言っているのがなぜ分からない!」
「子供相手に怒鳴らないでよ。……あ、所属組織だったっけ?」

 気が付けば、男を囲むように無数の重砲が召喚されていた。
 全てが魔力の充填を終えて、いつでも発射できる状態である。

「なっ――」
「今は、一応銀の黄昏なんだよねー」

 軽い調子で、ネームレスは「ばーん」と言って舌を出す。
 瞬間、男へと数十に及ぶ収束砲撃が放たれた。

「っ、俺を守れ!」

 男の命令に従った怪物はその翼を広げ男を包み込む。
 そして収束砲撃から身を挺して守り始めた。

「っ、なんだこいつは。銀の黄昏は天使にお熱じゃなかったのか!?」

 誤算だった。
 メフィストは組織としての規模は小さい。
 故に、緻密な計算と準備の上でこの作戦を開始した。

 御三家の行動パターンを把握し、それぞれに効果のある聖遺物を用意して挑んだのだ。
 事実、ネームレスが来るまでは順調だったと言って良いだろう。

 いや、正確には銀の黄昏が来るまでは、だろうか。

「たすけ『こちらメフィスト3! 攻撃を受けている! 作戦は失敗だ!』……は?」

 男が助けを求めるよりも先に、通信が来た。

 突如繋げられた通信回線。
 それは、仲間だけが知る緊急連絡用である。

 切羽詰まった叫び声と共に繋げられたその通信に、男は恐る恐る返答した。

「何があった」
『銀の黄昏だ。奴らがここに来やがった! 助けてくれ! 三ヶ嶋家に行った奴らは通信が繋がらない。そっちで秘宝を入手したら至急応援に来て欲しい!』

 それは、男の持つ地絃天星埜御霊に期待しての言葉だった。

 確かにこの怪物であれば日本列島程度なら移動は容易い。
 仲間を連れて逃げ出す事も可能だったかもしれない。

 しかしそれは、数分前までの話だった。

「ほらほらー、早く降参しないと死んじゃうよー? ま、降参しても殺すけど」

 常に放たれ続ける収束砲撃。
 その轟音の中で、ネームレスは楽しげにそう言った。
 
(……流石はSランクのダンジョン主なだけの事はある。これだけの砲撃を耐えることができるとは)

 男が未だに冷静に思考しているのは、偏に地絃天星埜御霊が完全に攻撃を防いでいるからに過ぎない。
 かつて日本の滅亡を阻止した最強の怪物にとって、この程度は造作もないのだろう。

「メフィスト3、もう少し待て。こちらも銀の黄昏と交戦中なんだ」 
『なんだと!? くそっ、どこから情報が漏れやがったんだ……! そっちは大丈夫なのか!?』
「幸い、地絃天星埜御霊は入手した。凄いぞコイツは。収束砲撃をいくら喰らってもびくともしねえ。すぐにそっちに合流できるだろうよ」
『ああそうか。なるべく早くしてくれ。……そうだ、こっちに来るなら蝶に警戒を――』

 そこで通信は途切れた。
 切らざるを得ない状況だったのか、あるいは第三者による介入か。
 いずれにせよ、急がなくてはならない。
 
 気が付けば、砲撃は既に止んでいた。
 
「よく耐えきった。流石はSランクだ」

 そう言って男に翼を撫でられた地絃天星埜御霊はゆっくりと防御の姿勢を解く。
 ネームレスを警戒して男は辺りを見渡し、そして呆然とするほかなかった。

「こ、これは……」

 洞窟であった筈のその場所が巨大なクレーターと化していたのだ。
 男のいた場所以外は抉れ、滑らかな地表となって大空の下に晒されている。

「やばい、なんてレベルじゃなさそうだ」

 どれだけの数の収束砲撃を放ったのだろうか。
 地形を変えるだけの攻撃が、自分ひとりに迫っていたという事実に背筋がぞっとした。

(まだ近くに居るはずだ。恐らくは、不意打ちを仕掛けてくる!)

 男は警戒し、地絃天星埜御霊の傍でネームレスを探す。
 そして、すぐにその姿を見つけた。

 遥か上、青空の中。
 一際目立つ黒い星。

「――第零術式、解放。臨界出力『アルテミス・ノヴァ』への移行を開始」

 禍々しい凶星へと集うように、辺りから魔力が漆黒の粒子と成って立ち昇っていく。

「第一術式から第百術式までを強制連結。収束開始――」

 男の耳に、確かに世界が軋む音が聞こえた。
 本来この世界にあってはならない、そんな埒外の力がただ一人の少女の元へと集まっていく。

「っ、おいおい冗談じゃねえ!」

 男はすぐに逃走を選択した。
 このままここに残れば殺されるであろうことは想像するまでもない。

「おい、早く逃げるぞ。俺を乗せて飛びやが……れ……」

 地絃天星埜御霊を見て、男は口を開けたまま呆然とすることしかできなかった。

 今まで従順に従っていたそれが、自我を取り戻したかのように翼を広げ空へと吠えていたのだ。
 まるで、眠っていた生存本能が呼び起こされたかのように、怪物はネームレスへと敵意をむき出しにする。

「ま、まさかやるってのかよ……!」

 既に、男に成す術はなかった。
 今はもう、地絃天星埜御霊が勝つことを願う事しかできない。

 そんな彼の前で、地絃天星埜御霊は広げた翼を起点としていくつもの魔法陣を展開させた。
 翼の中でいくつもの魔法陣が組み合わさり、より大きな魔法陣へと変化する。
 やがてそれはいくつも重なり、ネームレスへと続くロングバレルのような見た目へと変化した。

 同時に再び世界が軋みを上げる。

「っ、頼むから勝ったら言う事を聞いてくれよなぁ!」

 男は地絃天星埜御霊の影に隠れながら心からそう叫ぶ。
 それに応えるように再び吠える怪物に対して、ネームレスは淡々とその星を作り上げていた。

「黒星形成完了。発射シーケンスへ移行」

 青空を一瞬にして黒の魔法陣が染め上げる。
 夜が訪れたと錯覚してしまうほどに巨大な魔法陣の中心では、黒い魔力の塊が胎動していた。

 ネームレスは、エクスギアの切っ先を地絃天星埜御霊へと向ける。
 まるで照準を合わせるかのような動作と共に、空に浮かぶ魔法陣を起動した。
 
 そして。

「――星に祈りを」

 それが最後のトリガーだった。
 ネームレスの謳うような言葉と共に、黒星から闇が放たれる。

 光を飲み込み、全てを塗りつぶす漆黒の闇。
 嵐のような旋風と共に向かってくるそれに対して、地絃天星埜御霊もまた砲撃を放った。

 放たれたのは、黄金の光。
 人類が分析、その一部を解明し収束砲撃と名付けた魔法の最奥に位置する、原初の砲撃である。
 放っただけで、辺りの物質に含まれる微量の魔力が活性化し輝き放ち始め、共鳴し合い威力が段階的に増していく。

 それは闇に対抗するには十分すぎる威力であった。

 空中で光と闇が衝突する。
 その余波は、さらにクレーターを広げ辺りから雲を一瞬にして散らした。

 まさに天変地異と呼ぶほかない攻撃同士の拮抗。

 男には何が起きているかなど分からない。
 既に理解の外の出来事であった。

(どうすればいい。どうすればここから生きて帰れる……!?)

 ただ震える男の耳に、それは聞こえた。

「Act6」

 その瞬間、漆黒の中に一際濃い闇が生まれた。
 砲撃に比べると随分と小さいそれは、砲撃の中を突っ切って真っ直ぐに男へと向かってくる。

「な、なんだよ今度はぁ!」

 闇を裂き黄金を突き抜け落ちてくるそれは、まるで流れ星のようだった。
 いかなる攻撃にもびくともせず、向かってくるそれが目前まで迫ったその時男はそれがネームレス自身であった事に気が付く。

 黒い外套に、エクスギアを刺突の形で構え、そして足には

「はい勝ちー」
「……ぁがっ」

 躊躇なく、ネームレスは男へとエクスギアを突き刺した。
 そしてその手に持っていた勾玉を取り上げるとすぐさまその操作権を奪取、地絃天星埜御霊を強制的に停止させる。

 砲撃を放っていた地絃天星埜御霊は、体を一度震わせると光の粒子となって消えた。
 すると、ネームレスの足元へとコアのような物が転がり落ちてくる。

「よーし、ゲットゲット」

 それを拾い上げたネームレスは、満足そうに頷くと男からエクスギアを引き抜く。
 そして雑に蹴り、地面に転がした。

 もう興味はないのだろう。
 その視線は地絃天星埜御霊のコアへと移っている。

「これが那滝家の秘宝かぁ。やっぱり強かったね。え? なに、ビビっちゃったの? 相変わらず私のくせに臆病だなぁ」

 ネームレスはまるで誰かに話すように独り言を呟きながらふわりと浮く。
 そして、丁度砲撃が衝突した辺りまで移動した。

「ん、やっぱり私の見立て通り。今、この辺は脆くなってるね」

 ネームレスは空中へと手をかざす。
 すると、景色へとひびが入り、まるで硝子のように割れた。

 その向こうには、極彩色の世界の中心にそびえたつ巨大な一本の木と、古びた学校が見える。

「よーし、こっからが本番だ。下手すれば死ぬから、気張って行こうか」

 ネームレスはそう言うと、その中へと消えていった。
 彼女が通過した後すぐに、その割れ目は消失し辺りには今まで通りの景色が広がっている。

 巨大なクレーターに、血まみれの死体が一つ。
 それだけが、今ここにある事実であった。







 その日は、桜庭ラッカにとっては退屈な日常であった。
 いつも通りに天使を殺し、時々後輩の面倒を見る。

 不可視の槍をくるくると回しながら屋根の上でボーっとしていたラッカだったが、突然「お」と声を漏らし跳ね起きた。
 その顔には、ワクワクが溢れている。

「どうかしたんですか?」

 ラッカの様子を見て、隣で本を読んでいた少女ガーデナーは首を傾げる。
 そして伸びてきた手にわしゃわしゃと頭を撫でられて、ますます首を傾げた。

「ガーデナーちゃん、下がってて。とんでもないのが来た」
「熾天使級ですか? なら私も手伝います」
「いや、そんなものじゃない。というか、あれと戦うには君はまだ足手まといだ」

 はっきりとそう告げるラッカの顔には笑みが浮かんでいる。
 まるで特上のごちそうを前にしたかのような本能的な喜びの浮かんだ笑みを見て、ガーデナーは緊張から生唾を飲み込む。

 暫くの間ラッカと一緒に暮らしてきたが、彼女がこんな笑みを浮かべるのは決まって強敵が現れた時である。
 それが意味することは、これからここに桜庭ラッカという怪物が期待するだけの何かが現れるという事。

「来たっ! わーい!」

 無邪気に喜ぶラッカの視線の先、世界が割れて小さな影が飛び込んできた。
 その光景を見て、ガーデナーは目を剥く。

「えっ、あっちから!? そんなの世界の原則に反しているんじゃないの!?」
「そうだね、マジヤバイね。ってわけで、ここからは私のお楽しみだから引っ込んで」

 そう言ってラッカは、たんっと跳ぶと校門の前に降り立った。
 桜色の髪がふわりと舞い、スカートが揺れる。
 
「や、初めましてかな?」

 フレンドリーにそう声を掛ける先には、外套を纏った少女。
 手に握った機械的な剣の先からは血が滴り落ちていた。

「あ、そうだ。命のやり取りはアリ? それともお遊び? 最初に言ってくれると嬉しいなぁ」

 槍を片手に陽気に告げるラッカを見て、外套の少女は首を横に振った。

「違うよ、初めましてじゃない」
「え、本当に? そんな陰気臭い恰好の子知り合いにいたかなぁ」

 首を傾げてうんうんと唸るラッカを前に、外套を被った少女はそのフードを取って顔を上げた。
 黒い髪に鋭い目、しかしその顔だちをラッカが忘れる訳もない。

「……トア?」
「久しぶりだね、ラッカちゃん。会いたかったよ。ま、今はネームレスって名前だけど」

 笑顔を浮かべ、ネームレスはそう答える。
 すると、すぐにその眼前に槍が突き立てられた。

「で、誰?」
「だから、トアだって」
「こんな子に育てた覚えはないなぁ。それに、何か混じってるだろ」
「流石にわかるかぁ。凄いね、ラッカちゃんは。……色々あったんだよ、本当に色々ね」
「へぇ、それでグレちゃったんだ。ここに来たのは家出かな?」
「はは、まさか」

 不可視の槍を前にしても、ネームレスは余裕の笑みを絶やさない。

「私は、これからの人類存亡の話をしに来たんだ。ラブ&ピースのため、みたいな」
「いいね、私好みのワードチョイスだ」
「そりゃあ知ってるもん」

 そう言うと、ネームレスは槍を剣で弾き距離をとる。
 そして、白亜の太刀と大鎌を顕現させて言った。

「話す前に、一つテスト。ラッカちゃんが、私に付いて来られるか試してあげる」
「私を……トアが……?」

 予想外の言葉だったのだろうか。
 ラッカは初めて笑顔を崩してネームレスを見た。

 が、すぐに再びその口元が歪んだ。

「っはははははははは! いいねぇ! まさか最初に育ったのがトアだったとは! 潜在能力的にミズヒかと思っていたよ!」

 その笑みは、人類の守護者には到底似つかわしくない獰猛なものであった。

「じゃあ、少し遊ぼうか。トア」
「お手柔らかに」

 世界の外。
 二人の最強が激突した。
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