かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない~現代ダンジョンのある学園都市で、俺はミステリアス美少女ムーブを繰り返す~

不破ふわり

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七章 ぞろぞろ偽者ソルシエラ

第192話 モグモグ最強ディスカッション

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 俺のミスでした。
 今回はもう言い訳出来ないくらい俺のミスでした。

 学園都市で出来る人だかり。
 それがSランクによるものだという事は想像できて当たり前だ。
 さらに、事前に文化大祭の下見に来る真面目なSランクともなればその候補は更に絞られる。

「……六波羅」
「おいおい、こうして会うのは久しぶりなんだからよォ、もっと嬉しそうな顔しろよ」

 そうだね、騎双学園との領地戦ではソルシエラとしてだったもんね。
 那滝ケイとしては久しぶりだね。

 じゃ、ねえんだわ。

 お散歩してたら飢えたライオンに出くわした気分なんだけど!

「り、りぃーだー、ギブ、ギブです……」
「うるせェ。黙ってろ」

 必至に六波羅さんのアイアンクローから逃れようとするエイナちゃんは、俺達を見ると手を伸ばした。

「たっ、助げでぐだざい! そるしっ――いだだだだだ!?」
「そうやってすぐに名前を呼ぶんじゃねェよ」

 出来ることなら、今すぐ適当な事を言いながら転移で逃げたいのだが人が多すぎる。
 ここではソルシエラになることが出来ない……!

『くっ……!』
『勝手に縛りを設けているのか? 何故?』

 今の俺はSランクからお尋ね者の身。
 こんな所で会うのは想定外だ。

 中でも六波羅さんはマズいぞ!
 こんな事なら女の子の恰好で来れば良かった。

「俺に何か用か? 執行官様に付き合っている暇はないんだがな」
「言っただろ、お前に会いに来たって」

 六波羅さんがそう言って笑う。
 
 すると、辺りが騒がしくなった。

「六波羅様が会いに来た!?」「誰よあの男!」「顔的に受けね」「あの制服フェクトム総合学園だぞ!」「えっ、あの理事長が秘密裏に作ったエリート学園の!?」

 まずいぞ、変な連鎖が起きてる。
 性癖と噂に尾ひれが付いてとんでもない事になってる。

「つまりあの男の子は六波羅様の■■■ってコト……!?」

 おい誰だ、変な事言った奴!

 俺は辺りを見渡す。
 完全に、悪目立ちしていた。

 こんなのミステリアスじゃない!

『六ソルはまあ王道か』

 内側にも敵がいる……。

「チッ……おい、ここは鬱陶しい奴が多い。場所変えるぞ」
「あ、ああ」

 六波羅さんも鬱陶しそうにそう言った。
 その手の中では未だエイナちゃんがアイアンクローの餌食にされている。

 何をしたんだ君は。








 六波羅さんにほぼ強制で連行されたのは、落ち着いた雰囲気のカフェであった。
 しかも、事前に伝えてあったのか、他に客はいない。

 店内には静かなBGMだけが流れていた。

 これは、ミステリアスポイントが高いぞ。

「ここは貸し切りにした。テメエもその下らねえ演技止めろ」
「……そう、ならお言葉に甘えて」

 俺は恰好こそそのままだが、ソルシエラとして笑みを浮かべる。

 それはそれとして、雰囲気の良いカフェだ。
 ここで読書をする私服ソルシエラとばったり出会うイベントがあるだろう。

『変装のために伊達メガネ付けていると嬉しいねぇ^^』

 文学少女に変装するソルシエラか。
 悪くない。

『メガネを掛けるのか? それはソルシエラの魅力を半減させるのでは?』
『は?』

 は?

 お前……今メガネをデバフだって言ったのか?

『な、なんだ急にそんな。私は当たり前のことを言っただけだろう。アレは人類が視力を補うための道具だろう』
『そこに美少女の輝きがあるんだねぇ! 後で君にもたっぷり教えてあげよう。眼鏡っ子の物静か系ロリシエラを』

 それ俺がロリになる必要あるじゃん。
 だが、同志にメガネの良さを分かって貰う為ならば、一肌脱ごうではないか。
 
「あ、リーダー見て下さい。ここのパフェ前にネットで話題になったやつですよ。食べましょう」
「夕飯を食えなくなるから駄目だ。そっちの小せェケーキにしとけ」
 
 少し前までアイアンクローをされていたエイナちゃんは、今はメニューを見て楽しそうだ。
 だがこっちのヒカリちゃんだって楽しそうレベルなら負けないぞ!

『なぜ張り合うのだろう』

「ケイ、一緒にこのパフェ食べませんか? 二人でなら、カロリーも半分。お財布への負担も半分です……!」
「私は構わないけれど……いいの?」
「はい。こうすることで、次のお店への余裕を残すことができます」

 賢い。
 トアちゃんと一緒にいた時はほぼフードファイトだったからそんな考え浮かばなかった。

 というか……え?
 半分こ?

 美少女と半分こ!?

『流石にギルティだろう』
『これは私でもわかるぞ。粛清が必要だ』

 ま、待て二人とも俺は今美少女なんだ。
 美少女が美少女とパフェをシェアして何が悪い!

『愚かな人類め』

 急に天使の側面が強くなったな。

『最初の半分こはクラムかリンカとするべきだろう! その方がシナリオ的にも美味しいのに!』

 うるさいやい。
 なんでカプ厨の言う通りにしなきゃいけないんだい!

 ほらヒカリちゃん、注文しようねぇ^^

「あー! リーダーぁ、ズルいと思いませんか!? 私もアレがいいですぅ。半分こしましょう! ね? あーんもしてあげますから」
「いらねェ。てか、そういう時は毎回お前が殆ど食うじゃねえか」

 そう言って六波羅さんはさっさと注文をすませてしまった。
 ちなみに彼はコーヒーのみである。

 俺は当然、お紅茶だ。

 カッコイイ……ミステリアス……。
 Sランクの執行官を前にしても紅茶を楽しむ強キャラムーブ……。

『ひざ震えてますよ』

 武者震いってやつだよ。

「……さて、いい加減本題に入ろうか。単刀直入に聞く――最近暴れているソルシエラってのは本当にお前か?」

 鋭い眼光と共に六波羅さんはそう問い掛けてきた。
 成程、どうやらこの人は偽シエラを追って来たらしい。

 六波羅さんにも目をつけられるとか偽シエラ終了のお知らせでは?

「違うわ」
「そうです違いますよ。私達はその調査のために来たんです。……ん? ケイ、六波羅執行官って貴女の正体知っているんですか?」

 今聞くのは遅くない?
 知らないって言っても手遅れじゃん?

「知ってるも何も、一度殺し合った仲だしなァ? 楽しかったぜェ?」
「ふふっ、私もよ」

 俺も楽しかったよ^^
 第二形態のお披露目回作ってくれてマジ感謝^^

「それで、貴方は私の言葉を信じるのかしら? 今、クローマで暴れまわっているソルシエラが偽者だと証明できるものを、私達は持ち合わせていないのだけれど」
「はっ、最初から偽者だってのはわかってんだ。テメエなら、もっと上手くやるだろ。少なくとも、みっともなく動画に姿が残るような真似はしねェ」

 六波羅さん……!
 ソルシエラの事をこんなに分かっているなんて……!

『ソルシエラ冥利に尽きるねぇ』

「だが、万が一があるからなァ。こうして確認しに来たわけだ」
「それで、本物と出会って納得したのかしら?」
「ああ。やっぱ、あれは偽者だな。それも、餌だ。テメエを釣り出すためか、それともSランクが狙いか、あるいは――」

 六波羅さんは少し言葉を溜めて言った。

「聖域使いか」
「聖域……クローマの生徒会長に継承されている力ね」

 って、ヒカリちゃんが言ってました。

「ああ。クローマで事を起こした、この構図に意味があると思ってる。Sランクやテメエを釣り出すなら、中央区が一番都合がいいはずだ。わざわざこんな場所でやる必要はねえ」

 本当に聖域使い狙いなのか……?
 というか、聖域って何……?

「って事で、俺はこれから生徒会長に会ってくる。ここの生徒会長は恰好はともかく言動はまともだからなァ。テメエはどうする?」
「ふふっ、執行官様が動くなら静観でもいいかもしれないわね」
「……おいおい、そんな目でよく言うぜ」

 どうやら俺の偽者に対する熱い殺意が伝わってしまったようだ。
 いけないいけない。

 私はミステリアス美少女なんだから、感情は読まれないようにしなきゃ★

「お互い、楽しい祭になりそうね」
「あァ、そうだなァ。……もしかしたら、偽者と間違えてお前を殺しちまうかもしれねェなァ」

 そんな酷い事しないってわかってるよ^^

 けど、ソルシエラとして返してあげようね^^

「ダンスの誘いかしら? 私でよければ今からでも相手をするけれど?」
「へェ……」

 俺達は互いに笑みを浮かべる。
 楽しいね!
 
「リーダー絶対駄目ですからね! せっかくのお祭りなんですからぁ!」
「ケイ、駄目です! 喧嘩は良くないですよ!」

 俺達の戯れを本気と捉えたのか、エイナちゃんとヒカリちゃんが止めにかかってきた。
 そんなに本気に見えたのだろうか。

「はぁ、また別の機会にしましょうか」
「ははっ、そうだなァ。まだメインディッシュには早ェか」

 この強キャラ同士の会話……楽しすぎる。
 少し前に本気で殺り合った強キャラ達が、喫茶店でクールに会話。

 互いが自分の力を信じているからこその余裕。
 
 なんて美しい構図だろうか。
 トウラク君見ているかい? 君の戦う予定の最強キャラ達は今もカッコよく輝いているよ……!

『トウラクに見えないところでも格を落とさない美少女の鑑』
『トウラクとは誰だ。というか、美少女の格とはなんだ……』

「……あっ、あー! パフェ来ましたよケイ! 食べましょう!」

 ヒカリちゃんが俺の意識を六波羅さんから逸らそうと必死にそうアピールする。
 便乗するように、エイナちゃんもまた六波羅さんに無理矢理ケーキを食べさせようとしていた。

「そんなに慌てなくても、わかっているわよ」

 強キャラムーブも出来たし、美少女とパフェを食べようね!

『ヒカリちゃんとパフェ。……これはこれでクラムの脳を焼けるか? どうだ……?』
『マイロード、お腹を壊さないように気をつけるんだ』

 ふえええ、頭の中の変態共がスイートなタイムを邪魔するよぉ><

「ほら、リーダー! 口開けて下さい! あーん!」
「いや、俺はいらねェ。エイナ、テメエが食え……おい、押し付けんな」

 先程までの恐ろしい雰囲気は霧散し、辺りには穏やかな空気が流れ始める。
 こうして、俺達のパフェ半分こゴールデンタイムは過ぎていくのだった。


 

 
 
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