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六章 星詠みの杖の優美なる日常
第178話 ケイの純真なる本能
しおりを挟む無垢なるものに人は惹かれる。
心は不可逆的な成長を遂げ、やがて純真さを失う。
故にこそ、人々は無垢の象徴に惹かれるのだ。
そう、ロリという無垢の象徴に。
「……こ、これが小さな頃のケイ」
「かわいい……え、お人形さん? お人形さんになっちゃった? すっごく可愛い……え、可愛過ぎない……? これ取り締まられる可愛さじゃない?」
ベッドの上で、ペタリと座りこむ銀髪の幼女が一人。
子供用のパジャマを身に纏い、ほんのりと朱に染まった顔にのぼせ上がったような表情。
全てが完璧で究極な幼女である。
これなら本物とも戦えるぞ!
というわけで、こんにちは俺です。
そうです、ロリです。
なので他のロリにも触ることができます。
yesロリータ、yesタッチ!
司法は俺に味方した!
「ふわあああああ! やっぱり可愛いよぉ! こっち見てー!」
ネームレスがそう言って取り出したカメラで俺を撮りまくる。
そういえばコイツ、不法侵入だろ。
だが、この姿にしてくれた事には最大級の感謝を……!
やはり敵対していても、ソルシエラの厄介ファンでも美少女は美少女!
美少女とは恵みを齎してくれる存在なのだ。
アステカ文明の壁画にも美少女は太陽神と同格であったと記されている。
ネームレスが俺をロリにしてくれたのなら、俺は感謝をしなければならないだろう。
そして、感謝は行動で示さなければならない。
俺はこれより、残った理性を全て捨てる。
今まで俺は理性で知的に美少女粒子をコントロールしてきた。
が、今こそ本能で美少女粒子を操るべきではないだろうか。
肉体年齢により侵食される本能に身を任せ、ロリとしての責務を全うしてみせよう。
大切なのは無垢ゆえの行動の躊躇のなさ。
その為には大人になりかけの薄汚い理性と常識は一度捨て去るのみだ。
すまない、星詠みの杖君。
俺は一人先に新たなステージへと至ってくるよ。
「ん」
俺は上目遣いでクラムちゃんを見る。
その腕は大きく広げて、精一杯に背を伸ばして。
「ぎゅーってして」
「っ!?!?!?!?」
まずは、この子から情緒ぐちゃぐちゃにしていこうか。
見せてやろう期間限定形態、ロリシエラの性能を!
この瞬間より俺の自我は、一度溶けた。
■
絶対にあり得ない言葉と動作に、クラムの脳は一度スパークした。
「――ぎゅーってして」
そう言ってこちらに腕を広げて待っている姿のケイは、普段よりもずっと幼い。
「え、け、ケイ? もしかして揶揄ってるの?」
「……む」
ケイはクラムの言葉を聞くと、頬を膨らませたあとあからさまに不機嫌になった。
それを見てクラムが慌てているとネームレスが笑いながら答える。
「前に使った時もそうだったんだけど、トランスアンカーはこの子と相性が良くてね。ロリになると精神まで相応になるみたいなんだ」
「じゃ、じゃあ本当に今のケイはロリ……?」
驚愕するクラムを他所に、ケイはリンカへと向き直った。
そして、同じように腕を広げる。
「ぎゅってして」
「え、わ、私ぃ!? ……いいの?」
「うん。クラムはぎゅーってしてくれないから」
「する! するからこっち見て! ほら、ぎゅーってするよ! 触っちゃうよ!?」
クラムはそう言って必死に腕を広げる。
しかし、ケイはそっぽを向いてしまった。
が、これで諦めるクラムではない。
「じゃ、じゃーん! 見てこれ、蛙の玩具だよー!」
そう言ってクラムは人呑み蛙を召喚してケイの周りを飛び跳ねさせる。
殺傷能力マシマシの自律型爆弾は、今や主の為に必死で道化を演じていた。
玩具のように軽快に飛び跳ね、そして無駄に喉を膨らませて鳴いてみせる。
すると、ケイはそれを見て目を輝かせた。
「かえるさん!」
きゃっきゃと笑ったケイは人呑み蛙を捕まえる。
そして、まるでぬいぐるみを抱くようにして頬をすり合わせた。
クラムはこの瞬間より、この個体をエース君と命名し後生大切にすることにしたのだが、それはまた別の話である。
それよりも目下の問題は、幼女になったケイであった。
「……ねえ、これどうするの?」
「どうしよう。私、クラムみたいに子供ウケする玩具持ってないよ……」
「なんの心配してんだ」
長年諜報員として生きてきたリンカには、好きな人の幼い姿は余程刺さったようだった。
銀の黄昏では決して教える筈もない可愛さの暴力、リンカは陥落済みである。
「クラムありがとー!」
「っ!?」
人吞み蛙が気に入ったのか、ケイは無邪気な笑顔でクラムに近寄るとそのまま抱きしめた。
どういう訳か、今のケイからは甘ったるい匂いがしており、温かい体も相まってクラムに凄まじい罪悪感が襲い掛かる。
が、それでもこの手を離す訳が無かった。
否、それどころかクラムはここから加速する。
「ね、ねえケイ。私の事クラムお姉ちゃんって呼んでくれないかな?」
「……え?」
抱き着いたケイが、クラムを見上げる。
それから、首を傾げて口を開いた。
「クラムお姉ちゃん……?」
「ッ!」
クラムは拡張領域から再びエッチ探知ッチを取り出す。
そして力強く握りしめたそれをケイへと取り付けようとした。
が、しかし。
「ま、まーちゃんズ……!?」
残った理性が、人吞み蛙を動かし自分の腕を拘束している。
主の乱心を止めようと必死な蛙達は、クラムに飛びつき、ケイにエッチ探知ッチが取り付けられる寸前で止めた。
「あ、かえるさんいっぱいだー! みんな、私とお友達になろう!」
周りをぴょんぴょんと飛び跳ねる人吞み蛙達を見たケイは、嬉しそうにクラムから離れる。
そして、ベッドの上で蛙たちと一緒に跳ね始めた。
その姿を見て、クラムは一つ息を吐く。
「……危ない。一瞬で正気を持っていかれた」
「大丈夫? 不安なら私がそれ預かっておこうか?」
「いや、大丈夫。どっちが持っていてもたぶん結果は同じだから」
クラムにしろリンカにしろ、このままでは間違いなく理性が溶ける。
普段は決して人を寄せ付けない孤高の存在。
ソルシエラである彼女がかつて持っていたであろう側面を前に、正気でいられるはずがない。
今、辛うじてクラムを繋ぎ止めているのは、ソルシエラとして生きている彼女がどれだけ辛い思いをしているか知っていたからだ。
(やっぱり、ケイも普通の女の子だったんだ。……こんなに無邪気に笑って、楽しそうで。そんな子に、私達の薄汚れた欲をぶつけるわけにはいかない!)
クラムは覚悟を決める。
そして、エッチ探知ッチを構えて。
「――えい!」
自分の首へと取り付けた。
エッチ探知ッチは、首へと巻き付くとクラムへと自動で装着される。
紫色のチョーカーに似たそれは、フェクトムが誇る天才変態メカニックが作り出した世界で一つのドスケベアイテム。
幼女を前にエッチ探知ッチを自らに取り付けたその姿は、あまりにも変態的で、そして勇気ある行動だった。
「クラム……まさか自分に取り付けることで、エッチ探知ッチが使えない様に……!?」
「これで、もうエッチ探知ッチは使えない。外し方を聞いていないから、ミユメに後でお願いするまでは絶対に! 外れない!」
クラムはカッと目を見開く。
その姿を見て、ケイは興味を持ったのか再びクラムに近づいてきた。
そして、クラムの首に取り付けられたエッチ探知ッチを見て、目を輝かせる。
「かわいい。それ、みせてー!」
「えっ……あ、ああいいよ」
クラムは頷き、屈む。
ケイは満面の笑みで顔を近付けると、そのままクラムの首を触った。
「きらきらした鈴ついてる。これ私もほしいー」
「んあっ」
『エッチッチッチッチッチッチッチッチッチ!』
触れられた瞬間、クラムは嬌声を上げてしまう。
同時に、エッチ探知ッチが起動し鈴型のスピーカーから探知音が流れ始めた。
「ねえ何か聞こえるんだけど」
「この鈴かなー? ねえ、クラムお姉ちゃんこれ私もほしい」
「だ、駄目だよ」
『エッチッチッチッチッチッチッチッチッチ――』
首をペタペタと触られている間、クラムは顔を真っ赤にして耐えた。
が、途中で限界が来たのかケイをひょいと担ぐとベッドの中央へとそっと戻す。
そして、後ずさりしてリンカの隣へと来た。
「どうやら、私はケイに触られるとそこが性感帯になってしまうみたい。だから、私は今はもうあの子に触れない」
「真剣な顔で何言ってんの?」
説明するクラムの顔は、至極真面目で、そして悲痛に満ちていた。
その首元では、ようやく探知音が鳴り終わったようだ。
「――どうかな、二人は気に入ってくれたかな?」
不意に、ネームレスはそう問い掛けてきた。
ベッド脇で撮影を続ける彼女は、一度カメラから顔を離して、したり顔で二人を見る。
ここに勝敗は決した。
「どう、中々に可愛いでしょ。ケイちゃん、こっちおいでー」
「うん」
ベッドの上を移動したケイは人吞み蛙を片手にネームレスの前に座る。
ネームレスはニコニコしながら、その頭を優しく撫でた。
ケイはされるがままに頭を撫でられており、くすぐったそうにしながらも決して離れようとはしなかった。
「ケイちゃんがロリになればなる程、魔力の消費が激しくなる。だから、今から私達がやることはただ一つだよ」
そう言ってネームレスは二人を見た。
「ちっちゃなケイちゃんと、遊ぼう!」
「あそぶー!」
既に体の調子が良くなったのか、ケイは人吞み蛙を片手に拳を上げてきゃっきゃと笑う。
そんな彼女達の姿を、部屋の片隅に設置されたカメラが捉えていた。
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