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六章 星詠みの杖の優美なる日常
第170話 ソルシエラの優雅な夜
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俺も使い魔欲しいよぉ……。
ドラゴンとかぁ、かっこいいよぉ。
サソリとか蛇とか、狼とかそういうちょっとダークサイドな使い魔も欲しいよぉ!
『うるさいねぇ。静かにしたまえ。今、作品のチェックをしているんだから。万が一誤字や脱字があってはいけないからねぇ。これは売り物なんだ。フォロワーの皆の期待を裏切ってはいけない』
意思が強い。
君はもう作家の鑑だよ。
『そうかい? はっはっは、照れるねぇ。いやぁ、楽しみだ。まさかデモンズギアである私がこうして無意味なことにも意味を見出せるようになるとは……本当に、感謝しているよ』
へへっ、いいってことよ!
俺もいっつも助けられてるしな!
『相棒♥』
星詠みの杖君♥
「『仲良しいえーい!』」
今日も今日とて絶好調な俺は、自室のベッドでぐだぐだしていた。
クローマでの完璧なスーパーミステリアス美少女タイムには、非常に満足している。
リュウコちゃん、新月の夜に一方的にお茶会開くからね! 君の家で。
……ん、なんかちょっと寒気がするかも。
真夏だからって調子こいてエアコンつけすぎたかな。
『おいおい風邪なんてやめてくれよ? 文化大祭まで体調管理は欠かさないようにね?』
勿論だとも!
俺は体調管理を欠かさないミステリアス美少女。
用事のない日は早寝早起きを徹底し、食事もバランス良く。
当然間食は控えて、スキンケアやウエストを引き締めるための軽い筋トレも忘れない。
脚だって、美しくエッチに保つ為に入浴時のマッサージは必須である。
完璧だ。
俺は究極で完璧なミステリアス美少女だ。
『聞いた限りだと意識の高いアイドルのような……?』
プロデューサーさん! 私はミステリアス美少女ですよ! アイドルじゃないです!
『じゃあプロデューサー呼びするな』
正論ばっかで嫌なプロデューサーだぜ。
さて、そんなプロデューサーさんには今日やって貰いたい事があったんだが、覚えているかな?
『覚えているとも。当然、用意しているさ』
俺の中で新刊を仕上げていた星詠みの杖君は、0号となって俺の中から飛び出してきた。
そして、当然のように俺の横に寝ころび脚を絡ませながら微笑む。顔が良い……。
「ほら、お望みの物だ」
「ん、ありがとう」
星詠みの杖君は息がかかる至近距離で一つのメモリーチップを俺に渡してきた。
これこそ、俺達の次なるミステリアスムーブに必要なアイテムの素である。
「あくまでも私に組めるのは基礎だけだ。出力も能力も私達の望む値には達していない」
「だからこそ、ここからは彼女の力が必要なのよ」
ソルシエラとしてそう返してやれば、星詠みの杖君は満足そうに微笑んだ。
さて、このメモリーチップにぶち込まれているものだが、それは武器の設計図である。
ミステリアス美少女たるもの、鎌だけではなく他のサブ武器をもってこそ。
様々な状況にクールに対応する為には、武器は必要だろう。
使い魔と違って用意もそこまで難しくはない。
それに、極上の武器素材をこれ以上腐らせておくわけにはいかないのだ。
そう、天使の武器を作る計画はここに本格始動した。
「よし、そろそろ行きましょうか」
俺は起き上がり、そう言った。
「そうだねぇ、それじゃあ私は君の中に戻るとしようか」
星詠みの杖君はそう言って俺の頬にキスをして顎先を撫でて消えていく。
……最近、やたらとこういうスキンシップ多くない?
『次の漫画に採用したいから色々と試しているんだ^^』
そっかぁ。
『それよりも早く行こう。いい加減、あれが拡張領域にあるのは耐えられない』
それもそうだね。
部屋に飾ってみたけどしっくりこなかったし、さっさと片付けちゃおう。
『では、武器職人の元へと行こうか』
うん。
行こう、ミユメちゃんの所に!
■
ミユメは悩んでいた。
ディスプレイの明かりだけが照らす部屋の中で、一人唸る。
時刻は既に零時を回っている。
自分が朝食当番でない限りは、最近のミユメはこうして遅くまで起きていることが多い。
朝日が昇る頃に、慌ててベッド兼ソファへと飛び込むのだ。
一分一秒でも長く、少しでも結果を残そうと努力する彼女の目的は、死者の蘇生である。
「……お姉ちゃん」
それは、植え付けられた記憶。
温かい思い出も、優しい笑顔も全てがデータで構築されている。
が、それが紛い物でないことは知っていた。
(あの時のお姉ちゃんの手を、私はまだ掴めてないっす……!)
決戦の後に訪れた悲劇を、ミユメはまだ認めていない。
ミユメは姉に似て諦めが非常に悪かった。
「よし! 頑張るっすよー!」
声を張り上げ、ミユメは頬を叩く。
眠気を無理矢理吹き飛ばしたミユメは、再び仮想コンソールへと手を向けた。
と、その時だ。
「……ん?」
不意に、頬を撫でる感覚。
振り向いてみれば、窓が開きカーテンが揺れている。
「あれ? いつの間に」
ミユメは首を傾げながら、窓を閉めるために立ち上がる。
そして。
「――ごきげんよう、良い夜ね」
「……え?」
突然声を掛けられたミユメは固まる。
そして、ゆっくりと声のした方を見た。
「そ、っそそそソルシエラぁ!?」
ミユメが普段ベッドの代わりにしているソファに、優雅に腰かけるソルシエラがそこにはいた。
いつの間にかソファ前のテーブルがきれいに片付けられており、その上に紅茶の入ったティーカップが二つ置かれている。
「騒がしいわね。星空とは、静かに楽しむもの」
ソルシエラはそういうと、ティーカップを一つ手に取った。
「根を詰め過ぎよ。そんな事では姉のようになるわ」
「……わかってるっすよ」
ミユメは言い返そうとしたが、すぐにそれが無駄だと理解した。
今のミユメには、かつてのカノンの気持ちが痛いほどにわかるからだ。
「ほら、隣に来なさい。せっかくの紅茶が冷めてしまうわ」
「じゃあ、せっかくだし頂くっす」
ミユメはソルシエラの隣に遠慮気味に座る。
自分の部屋で、自分のソファの上だというのに物凄く居心地が悪い。
(な、何が目的なんすかね。ミズヒさん曰く、敵ではないらしいっすけど)
ソルシエラの正体は、未だに誰も知らない。
謎のSランクであり、強力なデモンズギアを使う少女。
そして、ミユメにとっては命の恩人でもあった。
ミユメは紅茶を一口飲む。
爽やかな風味と癖のないさっぱりとした味わいは、素人のミユメでも上等な代物であると理解できるほどであった。
「……美味しい」
「ふふっ、気に入ってくれてよかった」
ソルシエラはふっと微笑む。
そんな彼女の姿を見ていると、何故だか妙にリラックスが出来た。
ミユメ本人には自覚が無いが、彼女はソルシエラを頼れる人間として認識している。
ミユメは、周りから天才として頼られる事が多い。
故に、こうして自分よりも優れた存在に頼れる機会はめったに巡ってこないのだ。
「……あの時は、ありがとうございました」
「何の事かしらね。私、もう覚えていないわ」
「そうっすか……でも、私はずっと覚えているっすから」
「……そう、好きにしなさい」
ソルシエラは、微笑みミユメの頭を撫でる。
髪を梳かし、労わるように優しい手つきで頭を撫でる彼女の姿は、まるでもう一人の姉のようにも見えた。
「――お姉ちゃん」
気が付けば、ミユメはそう口にしていた。
それからハッとして取り繕うように笑う。
「な、なんてね。ははっ、どうっすかこのジョーク!」
「いいわよ、私は別に」
「え?」
ソルシエラは、意外なことに笑みを浮かべたままだった。
それどころか両手を広げて迎え入れるような姿勢をとっている。
「星は全てを優しく照らす光。貴女の事だって、照らして上げるわよ。たまには、弱い自分をさらけ出して見なさい」
「……そうっすか。私なんかが、いいんすかね」
「良いのよ。貴女の頑張りはよく知っているもの」
そう言って、ソルシエラはミユメをそっと抱き寄せた。
ふわりと香る甘い不思議な匂いが、ミユメの鼻腔をくすぐる。
思わず微睡んでしまいそうな、不思議な香りであった。
同時に、自分の中で張りつめていた何かが弛緩していく感覚。
気が付けば、ミユメはソルシエラに抱き着き顔をうずめていた。
「……お言葉に甘えるっす」
「素直な子は好きよ」
ソルシエラはそう言って、ミユメの頭をそっと抱えて自分の膝の上に乗せる。
そして、愛おしそうに撫で始めた。
(……え? 今、もしかしてソルシエラに膝枕されてるっすか!? )
かろうじて残った理性が、この状況に驚愕している。
こんな状況を誰かに見られたらどう弁解すれば良いのだろうか。
天才でも分からない問いであった。
「どうかしら、私の事をもう一度お姉ちゃんって呼んでみるのは」
「いいえ、私にとってお姉ちゃんは一人だけなので」
「ふふっ、そう」
ソルシエラはどこか嬉しそうな声色だ。
言葉の通り、ミユメにとっての姉は追うべき背中は一つだけ。
けれど。
「今は、もう少しだけこのままで」
「……良いわよ。貴女の望むままに」
窓から入り込む静かな夜風に、ティーカップから立ち昇る湯気が揺れる。
穏やかな夜がそこにはあった。
それはそれとして――。
(やっばぁ……武器作って♥って言い出せねえ……!)
『相棒、これそういう空気じゃないって。出直そうって』
(もう少しだけ膝枕してからでいい? てか、夜風が寒い! 窓開けなきゃ良かった!)
『ソルシエラがお姉様するのは解釈違いです。運営が解釈違いな行動しないでください!』
(厄介ファンかな? っていうか、このアールグレイうんめぇ。星詠みの杖君、なんでもできるね。後で俺にも淹れかた教えてよ)
『はっはっは良いとも。ミステリアス美少女たるもの、紅茶くらいは淹れられるようにならないとね!』
騒がしい夜も、同時に存在していた。
ドラゴンとかぁ、かっこいいよぉ。
サソリとか蛇とか、狼とかそういうちょっとダークサイドな使い魔も欲しいよぉ!
『うるさいねぇ。静かにしたまえ。今、作品のチェックをしているんだから。万が一誤字や脱字があってはいけないからねぇ。これは売り物なんだ。フォロワーの皆の期待を裏切ってはいけない』
意思が強い。
君はもう作家の鑑だよ。
『そうかい? はっはっは、照れるねぇ。いやぁ、楽しみだ。まさかデモンズギアである私がこうして無意味なことにも意味を見出せるようになるとは……本当に、感謝しているよ』
へへっ、いいってことよ!
俺もいっつも助けられてるしな!
『相棒♥』
星詠みの杖君♥
「『仲良しいえーい!』」
今日も今日とて絶好調な俺は、自室のベッドでぐだぐだしていた。
クローマでの完璧なスーパーミステリアス美少女タイムには、非常に満足している。
リュウコちゃん、新月の夜に一方的にお茶会開くからね! 君の家で。
……ん、なんかちょっと寒気がするかも。
真夏だからって調子こいてエアコンつけすぎたかな。
『おいおい風邪なんてやめてくれよ? 文化大祭まで体調管理は欠かさないようにね?』
勿論だとも!
俺は体調管理を欠かさないミステリアス美少女。
用事のない日は早寝早起きを徹底し、食事もバランス良く。
当然間食は控えて、スキンケアやウエストを引き締めるための軽い筋トレも忘れない。
脚だって、美しくエッチに保つ為に入浴時のマッサージは必須である。
完璧だ。
俺は究極で完璧なミステリアス美少女だ。
『聞いた限りだと意識の高いアイドルのような……?』
プロデューサーさん! 私はミステリアス美少女ですよ! アイドルじゃないです!
『じゃあプロデューサー呼びするな』
正論ばっかで嫌なプロデューサーだぜ。
さて、そんなプロデューサーさんには今日やって貰いたい事があったんだが、覚えているかな?
『覚えているとも。当然、用意しているさ』
俺の中で新刊を仕上げていた星詠みの杖君は、0号となって俺の中から飛び出してきた。
そして、当然のように俺の横に寝ころび脚を絡ませながら微笑む。顔が良い……。
「ほら、お望みの物だ」
「ん、ありがとう」
星詠みの杖君は息がかかる至近距離で一つのメモリーチップを俺に渡してきた。
これこそ、俺達の次なるミステリアスムーブに必要なアイテムの素である。
「あくまでも私に組めるのは基礎だけだ。出力も能力も私達の望む値には達していない」
「だからこそ、ここからは彼女の力が必要なのよ」
ソルシエラとしてそう返してやれば、星詠みの杖君は満足そうに微笑んだ。
さて、このメモリーチップにぶち込まれているものだが、それは武器の設計図である。
ミステリアス美少女たるもの、鎌だけではなく他のサブ武器をもってこそ。
様々な状況にクールに対応する為には、武器は必要だろう。
使い魔と違って用意もそこまで難しくはない。
それに、極上の武器素材をこれ以上腐らせておくわけにはいかないのだ。
そう、天使の武器を作る計画はここに本格始動した。
「よし、そろそろ行きましょうか」
俺は起き上がり、そう言った。
「そうだねぇ、それじゃあ私は君の中に戻るとしようか」
星詠みの杖君はそう言って俺の頬にキスをして顎先を撫でて消えていく。
……最近、やたらとこういうスキンシップ多くない?
『次の漫画に採用したいから色々と試しているんだ^^』
そっかぁ。
『それよりも早く行こう。いい加減、あれが拡張領域にあるのは耐えられない』
それもそうだね。
部屋に飾ってみたけどしっくりこなかったし、さっさと片付けちゃおう。
『では、武器職人の元へと行こうか』
うん。
行こう、ミユメちゃんの所に!
■
ミユメは悩んでいた。
ディスプレイの明かりだけが照らす部屋の中で、一人唸る。
時刻は既に零時を回っている。
自分が朝食当番でない限りは、最近のミユメはこうして遅くまで起きていることが多い。
朝日が昇る頃に、慌ててベッド兼ソファへと飛び込むのだ。
一分一秒でも長く、少しでも結果を残そうと努力する彼女の目的は、死者の蘇生である。
「……お姉ちゃん」
それは、植え付けられた記憶。
温かい思い出も、優しい笑顔も全てがデータで構築されている。
が、それが紛い物でないことは知っていた。
(あの時のお姉ちゃんの手を、私はまだ掴めてないっす……!)
決戦の後に訪れた悲劇を、ミユメはまだ認めていない。
ミユメは姉に似て諦めが非常に悪かった。
「よし! 頑張るっすよー!」
声を張り上げ、ミユメは頬を叩く。
眠気を無理矢理吹き飛ばしたミユメは、再び仮想コンソールへと手を向けた。
と、その時だ。
「……ん?」
不意に、頬を撫でる感覚。
振り向いてみれば、窓が開きカーテンが揺れている。
「あれ? いつの間に」
ミユメは首を傾げながら、窓を閉めるために立ち上がる。
そして。
「――ごきげんよう、良い夜ね」
「……え?」
突然声を掛けられたミユメは固まる。
そして、ゆっくりと声のした方を見た。
「そ、っそそそソルシエラぁ!?」
ミユメが普段ベッドの代わりにしているソファに、優雅に腰かけるソルシエラがそこにはいた。
いつの間にかソファ前のテーブルがきれいに片付けられており、その上に紅茶の入ったティーカップが二つ置かれている。
「騒がしいわね。星空とは、静かに楽しむもの」
ソルシエラはそういうと、ティーカップを一つ手に取った。
「根を詰め過ぎよ。そんな事では姉のようになるわ」
「……わかってるっすよ」
ミユメは言い返そうとしたが、すぐにそれが無駄だと理解した。
今のミユメには、かつてのカノンの気持ちが痛いほどにわかるからだ。
「ほら、隣に来なさい。せっかくの紅茶が冷めてしまうわ」
「じゃあ、せっかくだし頂くっす」
ミユメはソルシエラの隣に遠慮気味に座る。
自分の部屋で、自分のソファの上だというのに物凄く居心地が悪い。
(な、何が目的なんすかね。ミズヒさん曰く、敵ではないらしいっすけど)
ソルシエラの正体は、未だに誰も知らない。
謎のSランクであり、強力なデモンズギアを使う少女。
そして、ミユメにとっては命の恩人でもあった。
ミユメは紅茶を一口飲む。
爽やかな風味と癖のないさっぱりとした味わいは、素人のミユメでも上等な代物であると理解できるほどであった。
「……美味しい」
「ふふっ、気に入ってくれてよかった」
ソルシエラはふっと微笑む。
そんな彼女の姿を見ていると、何故だか妙にリラックスが出来た。
ミユメ本人には自覚が無いが、彼女はソルシエラを頼れる人間として認識している。
ミユメは、周りから天才として頼られる事が多い。
故に、こうして自分よりも優れた存在に頼れる機会はめったに巡ってこないのだ。
「……あの時は、ありがとうございました」
「何の事かしらね。私、もう覚えていないわ」
「そうっすか……でも、私はずっと覚えているっすから」
「……そう、好きにしなさい」
ソルシエラは、微笑みミユメの頭を撫でる。
髪を梳かし、労わるように優しい手つきで頭を撫でる彼女の姿は、まるでもう一人の姉のようにも見えた。
「――お姉ちゃん」
気が付けば、ミユメはそう口にしていた。
それからハッとして取り繕うように笑う。
「な、なんてね。ははっ、どうっすかこのジョーク!」
「いいわよ、私は別に」
「え?」
ソルシエラは、意外なことに笑みを浮かべたままだった。
それどころか両手を広げて迎え入れるような姿勢をとっている。
「星は全てを優しく照らす光。貴女の事だって、照らして上げるわよ。たまには、弱い自分をさらけ出して見なさい」
「……そうっすか。私なんかが、いいんすかね」
「良いのよ。貴女の頑張りはよく知っているもの」
そう言って、ソルシエラはミユメをそっと抱き寄せた。
ふわりと香る甘い不思議な匂いが、ミユメの鼻腔をくすぐる。
思わず微睡んでしまいそうな、不思議な香りであった。
同時に、自分の中で張りつめていた何かが弛緩していく感覚。
気が付けば、ミユメはソルシエラに抱き着き顔をうずめていた。
「……お言葉に甘えるっす」
「素直な子は好きよ」
ソルシエラはそう言って、ミユメの頭をそっと抱えて自分の膝の上に乗せる。
そして、愛おしそうに撫で始めた。
(……え? 今、もしかしてソルシエラに膝枕されてるっすか!? )
かろうじて残った理性が、この状況に驚愕している。
こんな状況を誰かに見られたらどう弁解すれば良いのだろうか。
天才でも分からない問いであった。
「どうかしら、私の事をもう一度お姉ちゃんって呼んでみるのは」
「いいえ、私にとってお姉ちゃんは一人だけなので」
「ふふっ、そう」
ソルシエラはどこか嬉しそうな声色だ。
言葉の通り、ミユメにとっての姉は追うべき背中は一つだけ。
けれど。
「今は、もう少しだけこのままで」
「……良いわよ。貴女の望むままに」
窓から入り込む静かな夜風に、ティーカップから立ち昇る湯気が揺れる。
穏やかな夜がそこにはあった。
それはそれとして――。
(やっばぁ……武器作って♥って言い出せねえ……!)
『相棒、これそういう空気じゃないって。出直そうって』
(もう少しだけ膝枕してからでいい? てか、夜風が寒い! 窓開けなきゃ良かった!)
『ソルシエラがお姉様するのは解釈違いです。運営が解釈違いな行動しないでください!』
(厄介ファンかな? っていうか、このアールグレイうんめぇ。星詠みの杖君、なんでもできるね。後で俺にも淹れかた教えてよ)
『はっはっは良いとも。ミステリアス美少女たるもの、紅茶くらいは淹れられるようにならないとね!』
騒がしい夜も、同時に存在していた。
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