156 / 255
五章 決めるぜ! ミステリアスムーブ!
第153話 突き止めろ! ブレスレットの謎!
しおりを挟む「はい、情報取ってきたよ」
十分後、リュウコちゃんはそう言って何食わぬ顔で戻って来た。
俺達は屋上から見ていたのだが、リュウコちゃんはまるで旧友のように道行く人に話しかけ、楽し気に談笑をして情報を取得していた。
なんなら意気投合して一緒に写真撮ってた。
ちなみに、彼女が情報を収集していたのは最初の数分であり、残りは普通にアイスを買っている。
リアクションがあまりにも一般人だから騙されるけど、やっぱり強いよね君。
これでまだ本気の龍位継承もあるんでしょ?
どうしてそんなに無個性キャラを貫けるの?
「まずは、アイスでも食べて落ち着こうよ。はい、二人はどれがいい?」
俺達の分まで買ってくる余裕っぷりだ。
「じゃあ、私はチョコアイスで!」
「あ、私はシャーベットがいいかな」
俺はもうお腹がいっぱいなので出来るだけ胃にダメージのなさそうなものを貰う。
ねえ、どうしてそんなに君たちは食べれるの?
トアちゃん、今日だけで食べ物にいくら使った?
俺の数え間違いじゃ無ければ五万円は超えているよ?
『食事による魔力の回復は意外と効率が良いからねぇ。これからドンパチやるのなら食べておくのは合理的かもしれないよ?』
それ魔力消費していたらの話でしょ。
レイちゃんはわかるよ?
なんかクレープ屋でアホみたいに能力使ってたし。
リュウコちゃんもバルティウスを絶賛使役中だし。
ただ、トアちゃん君は一体……。
『彼女もまたなにかしらの魔法を行使しているのかもしれないよ? 君だって、私の契約者なのだからそれだけで常時魔力を消費しているし。それをむしろ美少女に対する愛だけで補っている分、君の方が異常だよ』
……ま、色んな人がいるよね!
『あ、逃げた』
「それじゃあ、手に入れた情報を発表しまーす!」
リュウコちゃんは手を上げて、そう言った。
その手には、アイス用の小さなスプーンが握られている。
また、ほのぼの美少女百合四コマに戻った?
「えー、あのブレスレットはクローマ音楽院自治区へと繋がるゲートで配られている事がわかりました。アレを持っていると、今日のクローマ音楽院主催のライブに無料で行けるらしいです。中にチップが入っていて、割引のクーポンとしても使えるんだってさ」
「結構本気で配りに来てる……」
特典付きで配る辺り、マジで全員に渡そうという気概を感じる。
が、流石に規模が大きすぎやしないか。
「質問良いかな」
「はい、ケイちゃん」
「ゲート前でそんな物を配っていたら流石に目立つ。それに、割引クーポンが機能しているなら、これは予め準備をされていたように感じるんだけど。背後に巨大な何かがない?」
「そう、その通り。実はこのキャンペーンはもう何か月も前からクロ―マ音楽院で準備していたものなんだ。実は、最初は私も広告塔として出演したりしてね。……まあすぐに人気のアイドル探索者に変わったんだけど」
その場に、少しだけ悲しい空気が流れる。
レイちゃんだけは、黙々とアイスを食べていた。
「つ、つまり何かしら最初から配られる予定だった。それがたぶんブレスレットにすり替わったんだ。きっと、クローマ音楽院の上層部がこれに手を貸している。じゃないと、あり得ない」
リュウコちゃんは言葉を続ける。
「そして、恐らくこれは私達を捕まえるためじゃなくて……何か別の目的があった筈」
リュウコちゃんの言葉に、俺は頷く。
まあ、俺達を捕まえるためにこんな事予め準備するなんて不可能だろうな。
レイちゃんが逃げた際の保険にしても大規模すぎるし、もっとヤバイ事に使うんだろう。
「ブレスレットを全員から取り上げるのは不可能。それに、こっちは一般人を盾にされている。レイちゃんも渡しちゃいけない」
リュウコちゃんが改めて、現状を説明する。
一般人を盾にされ、さらに敵の目的も不明。
こう聞くと、結構ヤバイっすね。
『ちなみに、今の私達ではこの自治区全体を覆う干渉能力の展開は不可能だ。精々、一区画を覆うくらいだろう。さらに言えば、干渉する対象がはっきりしないから時間もかかるねぇ』
まあそうなったら最終手段の転移使うし。
やっぱ転移便利だわぁ。
けど、ここでソルシエラするのは違うよね。
せっかくリュウコちゃんの活躍が見れるかもしれないし。
それに、クローマ音楽院で何かが起きているなら解決しないと。
ヒノツチ文化大祭が台無しになりかねんぞ。
『それだけは絶対に許されない。私達の魂の場所だぞ!』
勝手に俺も巻き込まないでくれよ。
俺の魂は美少女と共にあるんだから。
「という訳で、ここからどうするかもうわかるよね」
リュウコちゃんは、俺達を見てそう言った。
トアちゃんと俺は顔を見合わせて頷く。
覚悟の決まった顔のトアちゃんは口を開いた。
「まず、クローマ音楽院に行って今回の事件に関わっている人を探すんだね。そして最後には、この事態を引き起こした悪い人を倒す!」
「そうだね。これだけの洗脳なら大掛かりな仕掛けもあるだろうし、それも破壊したい」
やはり、解決に向けて行動しなければならないだろう。
トアちゃんも逞しくなったね……!
誇らしい気持ちで、俺はリュウコちゃんを見る。
「えぇ……なにそれ怖……」
「「えっ」」
リュウコちゃんは、俺達を怖いものを見たかのような目で見つめていた。
「なんでそっちに思考がいくの……? 普通は外部に助けを求めて、それから戦力を整えて制圧でしょ? レイちゃんもいるし、まずはここから脱出しないと」
「……そうなの?」
「いや、わからない」
「そうなの!」
リュウコちゃんは叫んだ。
そして俺達を指さす。
「私達はまだ敵の目的を理解していない! ブレスレットは何に使われるのか、敵の規模、そもそもクローンの数は一体なのか。何も分からないのに、どうしていきなりボス攻略に行くんだよぉ!」
「そう言われても」
「それが一番早いし……」
俺とトアちゃんは顔を見合わせて「ねー」と言う。
「いやいや、規模的に助けは必須だって……。どうしてそんなに単身で乗り込むことに躊躇が無いの? そういう経験でもあったの? 君たちは普通の生徒でしょ!?」
「「……」」
「露骨に目をそらされた!?」
いやぁ、だって騎双学園に喧嘩売ったり、ジルニアス学術院も基本は少数だったし……。
そう考えると、俺達は意外と優秀なのでは?
「助けを求めるよりも、私達で解決した方が早くないかな?」
「どこからそんな自信が湧いてくるんだ……」
「大丈夫大丈夫、意外と何とかなるって」
「過去に何があったの?」
「「……」」
「そこだけ黙るなぁ!」
これ、かなり楽しい。
俺達はリュウコちゃんで遊んでいた。
彼女は気軽に突っ込んでくれる。
リュウコちゃんみたいな人材が、フェクトム総合学園にも必要かもしれない。
「とにかく、これからの目標はクローマ音楽院自治区からの脱出! そしてアリアンロッドに助けを求める事! 流石にクローマの上層部がかかわっている可能性があるなら理事会も動かざるを得ないから。それで出来れば私以外のSランクにも来てもらう。この場合だと、六波羅さんかタタリちゃん」
そこまで言われては、逆らう必要もないだろう。
俺達は素直に頷く。
まあ、普通に考えれば頼れる場所があるなら頼るよね。
『0号として分裂した私が探しに行く案もあるよ』
それだと緊急時に君に無茶振り出来ないからさ。
今回は、大人しく逃げよう。
「それじゃあ、方針は決まったし行こう。レイちゃん、アイス食べ終わった?」
「うむ、美味しかった」
満足げにレイちゃんは笑う。
この笑顔を守るために、俺達は戦わなければいけない。
「よし、バルティウス全員乗せて」
バルティウスは再び四人を背中に乗せると、ビルからビルへと跳躍での移動を始めた。
この形態だと、翼は周囲から姿を消すための迷彩としての機能しかないらしい。
クッソ強いカメレオンみたいなものだろう。
「ゲートから逃げれたらそれが一番楽だから。マジで、逃げよう。そして他のSランクに泣きつこう」
真剣な顔でそう言うリュウコちゃんの姿は、やはりSランクとしての貫禄はなかった。
23
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!


Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる