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五章 決めるぜ! ミステリアスムーブ!

第153話 突き止めろ! ブレスレットの謎!

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「はい、情報取ってきたよ」

 十分後、リュウコちゃんはそう言って何食わぬ顔で戻って来た。
 
 俺達は屋上から見ていたのだが、リュウコちゃんはまるで旧友のように道行く人に話しかけ、楽し気に談笑をして情報を取得していた。
 なんなら意気投合して一緒に写真撮ってた。

 ちなみに、彼女が情報を収集していたのは最初の数分であり、残りは普通にアイスを買っている。

 リアクションがあまりにも一般人だから騙されるけど、やっぱり強いよね君。

 これでまだ本気の龍位継承もあるんでしょ?
 どうしてそんなに無個性キャラを貫けるの?

「まずは、アイスでも食べて落ち着こうよ。はい、二人はどれがいい?」

 俺達の分まで買ってくる余裕っぷりだ。
 
「じゃあ、私はチョコアイスで!」
「あ、私はシャーベットがいいかな」

 俺はもうお腹がいっぱいなので出来るだけ胃にダメージのなさそうなものを貰う。
 ねえ、どうしてそんなに君たちは食べれるの?

 トアちゃん、今日だけで食べ物にいくら使った?
 俺の数え間違いじゃ無ければ五万円は超えているよ?

『食事による魔力の回復は意外と効率が良いからねぇ。これからドンパチやるのなら食べておくのは合理的かもしれないよ?』

 それ魔力消費していたらの話でしょ。

 レイちゃんはわかるよ?
 なんかクレープ屋でアホみたいに能力使ってたし。
 リュウコちゃんもバルティウスを絶賛使役中だし。

 ただ、トアちゃん君は一体……。

『彼女もまたなにかしらの魔法を行使しているのかもしれないよ? 君だって、私の契約者なのだからそれだけで常時魔力を消費しているし。それをむしろ美少女に対する愛だけで補っている分、君の方が異常だよ』

 ……ま、色んな人がいるよね!

『あ、逃げた』

「それじゃあ、手に入れた情報を発表しまーす!」

 リュウコちゃんは手を上げて、そう言った。
 その手には、アイス用の小さなスプーンが握られている。

 また、ほのぼの美少女百合四コマに戻った?

「えー、あのブレスレットはクローマ音楽院自治区へと繋がるゲートで配られている事がわかりました。アレを持っていると、今日のクローマ音楽院主催のライブに無料で行けるらしいです。中にチップが入っていて、割引のクーポンとしても使えるんだってさ」
「結構本気で配りに来てる……」

 特典付きで配る辺り、マジで全員に渡そうという気概を感じる。
 が、流石に規模が大きすぎやしないか。

「質問良いかな」
「はい、ケイちゃん」
「ゲート前でそんな物を配っていたら流石に目立つ。それに、割引クーポンが機能しているなら、これは予め準備をされていたように感じるんだけど。背後に巨大な何かがない?」
「そう、その通り。実はこのキャンペーンはもう何か月も前からクロ―マ音楽院で準備していたものなんだ。実は、最初は私も広告塔として出演したりしてね。……まあすぐに人気のアイドル探索者に変わったんだけど」

 その場に、少しだけ悲しい空気が流れる。
 レイちゃんだけは、黙々とアイスを食べていた。

「つ、つまり何かしら最初から配られる予定だった。それがたぶんブレスレットにすり替わったんだ。きっと、クローマ音楽院の上層部がこれに手を貸している。じゃないと、あり得ない」

 リュウコちゃんは言葉を続ける。

「そして、恐らくこれは私達を捕まえるためじゃなくて……何か別の目的があった筈」

 リュウコちゃんの言葉に、俺は頷く。

 まあ、俺達を捕まえるためにこんな事予め準備するなんて不可能だろうな。
 レイちゃんが逃げた際の保険にしても大規模すぎるし、もっとヤバイ事に使うんだろう。

「ブレスレットを全員から取り上げるのは不可能。それに、こっちは一般人を盾にされている。レイちゃんも渡しちゃいけない」

 リュウコちゃんが改めて、現状を説明する。
 一般人を盾にされ、さらに敵の目的も不明。

 こう聞くと、結構ヤバイっすね。

『ちなみに、今の私達ではこの自治区全体を覆う干渉能力の展開は不可能だ。精々、一区画を覆うくらいだろう。さらに言えば、干渉する対象がはっきりしないから時間もかかるねぇ』

 まあそうなったら最終手段の転移使うし。
 やっぱ転移便利だわぁ。

 けど、ここでソルシエラするのは違うよね。
 せっかくリュウコちゃんの活躍が見れるかもしれないし。

 それに、クローマ音楽院で何かが起きているなら解決しないと。
 ヒノツチ文化大祭が台無しになりかねんぞ。

『それだけは絶対に許されない。私達の魂の場所だぞ!』

 勝手に俺も巻き込まないでくれよ。
 俺の魂は美少女と共にあるんだから。

「という訳で、ここからどうするかもうわかるよね」

 リュウコちゃんは、俺達を見てそう言った。
 トアちゃんと俺は顔を見合わせて頷く。

 覚悟の決まった顔のトアちゃんは口を開いた。

「まず、クローマ音楽院に行って今回の事件に関わっている人を探すんだね。そして最後には、この事態を引き起こした悪い人を倒す!」
「そうだね。これだけの洗脳なら大掛かりな仕掛けもあるだろうし、それも破壊したい」

 やはり、解決に向けて行動しなければならないだろう。
 トアちゃんも逞しくなったね……!

 誇らしい気持ちで、俺はリュウコちゃんを見る。

「えぇ……なにそれ怖……」
「「えっ」」

 リュウコちゃんは、俺達を怖いものを見たかのような目で見つめていた。

「なんでそっちに思考がいくの……? 普通は外部に助けを求めて、それから戦力を整えて制圧でしょ? レイちゃんもいるし、まずはここから脱出しないと」
「……そうなの?」
「いや、わからない」
「そうなの!」

 リュウコちゃんは叫んだ。
 そして俺達を指さす。

「私達はまだ敵の目的を理解していない! ブレスレットは何に使われるのか、敵の規模、そもそもクローンの数は一体なのか。何も分からないのに、どうしていきなりボス攻略に行くんだよぉ!」
「そう言われても」
「それが一番早いし……」

 俺とトアちゃんは顔を見合わせて「ねー」と言う。

「いやいや、規模的に助けは必須だって……。どうしてそんなに単身で乗り込むことに躊躇が無いの? そういう経験でもあったの? 君たちは普通の生徒でしょ!?」
「「……」」
「露骨に目をそらされた!?」

 いやぁ、だって騎双学園に喧嘩売ったり、ジルニアス学術院も基本は少数だったし……。

 そう考えると、俺達は意外と優秀なのでは?

「助けを求めるよりも、私達で解決した方が早くないかな?」
「どこからそんな自信が湧いてくるんだ……」
「大丈夫大丈夫、意外と何とかなるって」
「過去に何があったの?」
「「……」」
「そこだけ黙るなぁ!」

 これ、かなり楽しい。
 俺達はリュウコちゃんで遊んでいた。

 彼女は気軽に突っ込んでくれる。
 リュウコちゃんみたいな人材が、フェクトム総合学園にも必要かもしれない。

「とにかく、これからの目標はクローマ音楽院自治区からの脱出! そしてアリアンロッドに助けを求める事! 流石にクローマの上層部がかかわっている可能性があるなら理事会も動かざるを得ないから。それで出来れば私以外のSランクにも来てもらう。この場合だと、六波羅さんかタタリちゃん」

 そこまで言われては、逆らう必要もないだろう。
 俺達は素直に頷く。

 まあ、普通に考えれば頼れる場所があるなら頼るよね。

『0号として分裂した私が探しに行く案もあるよ』

 それだと緊急時に君に無茶振り出来ないからさ。
 今回は、大人しく逃げよう。

「それじゃあ、方針は決まったし行こう。レイちゃん、アイス食べ終わった?」
「うむ、美味しかった」

 満足げにレイちゃんは笑う。
 この笑顔を守るために、俺達は戦わなければいけない。

「よし、バルティウス全員乗せて」

 バルティウスは再び四人を背中に乗せると、ビルからビルへと跳躍での移動を始めた。
 この形態だと、翼は周囲から姿を消すための迷彩としての機能しかないらしい。

 クッソ強いカメレオンみたいなものだろう。

「ゲートから逃げれたらそれが一番楽だから。マジで、逃げよう。そして他のSランクに泣きつこう」

 真剣な顔でそう言うリュウコちゃんの姿は、やはりSランクとしての貫禄はなかった。
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