かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない~現代ダンジョンのある学園都市で、俺はミステリアス美少女ムーブを繰り返す~

不破ふわり

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四章 騎双学園決戦

第145話 終幕

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 パーリィピーポー、ウェーイ!!!

『ウェーイ笑 お姉ちゃん可愛いねぇ、これから俺と遊ばなーい?』

 悪いが竿役は帰ってくれ。
 ここは神聖な百合の花園なんだ。

 百合の間に挟まる男は、一切合切悉くを例外なく全て殺す。
 倒すじゃなくて、殺す。

『じゃあ君も殺されるだろ』

 俺は美少女だからいいの^^
 TS百合は実在するぞ。
 しないなら、俺が生む。

 領地戦が無事? 終わったのでフェクトム総合学園ではワクワク美少女百合パーティーが開かれていた。

 めんどくせえ後片付けは御景学園と騎双学園でやってくれたので、ラッキーである。
 
 俺たちは豪華な祝勝会だ。
 この準備に掛かったお金は全てミズヒ先輩が出しているらしい。
 
 Sランクすげえ!

『君もSランクでは?』

 そうだったわ。
 ミステリアス美少女だから理事会に顔出してないけど、俺もSランクだったわ。

 あの天使持っていけば歓迎されないかな。

『早くあの天使どうにかしてくれ。拡張領域にずっとアイツいるの不快なんだ』

 もうちょっと待ってくれ。
 せっかくだしあれで武器とか作ってみたい。

 角とか、良さげじゃない?
 天使の死骸で作った武器って、カッコよくない?

『急に男の子出してきたな』

 ソルシエラには、天使で作った武器が似合う……。
 後で一緒に作ろうね。

『うーん、確かに少し面白いか』

 乗り気になってくれたようで何よりです。
 
「ケイ君、楽しんでいますか」

 すこし離れた場所で美少女達を眺めていると、ミロク先輩が俺に声を掛けてくれた。
 今まではこうして一人で離れれば目立つものだったが、大人数になった今はそこまで気にする者もいない。
 
 会話の中心は大体明るいヒカリちゃんかミユメちゃんで、俺が話を回さずとも皆笑顔である。
 ミズヒ先輩やトアちゃんのような古参組とも上手く打ち解けているようで嬉しいね。

 特にトアちゃん……人見知りな筈なのに皆と凄く仲良さそうに話をして……!

 よし、俺は壁になるぞ!

「勿論ですよ、ミロク先輩」

 後輩スマイルと共に、そう答える。
 美少女と一緒にパーティーしてるだけで楽しいねぇ^^

「騎双学園にも勝てて、天使というイレギュラーがあっても無事みんな生きて帰ってきた。……本当に良かったですよ」
「そうですね。中継を見たときは慌ててしまいましたが、ミズヒは上手く対処してくれました。それに……どうやら噂だとソルシエラも助けに来てくれたようで」

 ミロク先輩はそう言って微笑む。
 
 領地戦での俺の活躍は、何故か放送されなかった。
 ミステリアス美少女がボロボロで戦いお茶の間の脳を焼くつもりだったのが、残念ながら放送範囲外で戦っていたようだ。

 まあ、トウラク君にヘイトが向いたら困るし、放送されなくて良かったのかもね。

「俺も、駆けつけることができたらよかったのですが。当日は知っての通りクラムちゃんと一緒にダンジョン攻略中でして」
「ふふっ、そうですね」

 俺の言葉がどこか可笑しかったのだろうか。
 ミロク先輩は、くすくす笑う。

 それから、俺の眼を見て口を開いた。

「ねえ、ケイ君。実は私――」

 と、そこで言葉を止める。
 僅かに何かを考える仕草が見えた。

 それからミロク先輩は、言葉を消し去るように首を振る。

「いえ、何でもないです。ケイ君、私は待っていますから。あなたが自ら言ってくれる日を」
「? ……ありがとうございます」

 よくわからないけど、美少女が微笑んでくれたので礼を言う。
 これこそ礼節を重んじる日本人の心意気である。

『えっ、ここにきてミロ×ソル……?』

 いや、せめてミロ×ケイであれよ。

『私のシックスセンスがミロ×ソルの気配を察知した。……いや! 彼女に限ってはソル×ミロの可能性もあるぞ! 現状、ミロクは無力故にヒロインレベルが高い!』

 シンプル失礼だな君は。

 ミロク先輩は皆のママのような存在なんだぞ!
 あと、皆が嫌がる書類整理を進んでやるこの学園でもトップクラスの人材なんだ!

『それは他のメンバーがそういった事務作業を嫌いすぎているだけでは?』

 それはそう。
 でもクラムちゃんは結構事務作業も手伝っているわよ。
 ミロク先輩とも仲良いし。

『仲が良い……うーん?』

 何に引っ掛かってるんだ君は。
 ミロク先輩に何か思うところがあるなら言ってみろよ。

 ほら、こんなに澄んだ眼の美少女によぉ!
 文句があんならよぉ!

「ケイ君、よかったらまた女の子になってみませんか?」

 なんか言ってるよぉ!
 やっぱ少しおかしいかもしれないよぉ!

『でも美少女に成れるチャンスだよ^^』

 棚からぼたもち^^

 美少女に成れるならそれに越したことはないからね。
 喜んで美少女になるよ^^

 が、俺はあくまで恥ずかしがりながら美少女になりたいので表面上は渋る。
 ミロク先輩、あと数回押してくれれば俺は美少女に渋々なりますよ!

「え、どっ、どうしてですかぁ!?」

 驚いた俺に、ミロク先輩はいたずらっ子のように微笑む。

「せっかくのパーティーですし、何かサプライズでもあったほうが良いでしょう?」

 ミロク先輩はウインクしながらそう言った。

 やばーい!!!!
 ミロク先輩がウインクしてきたぁ!
 きゃわわ!

『美少女のウインクは万病に効く』

 常識だね。

「で、でも俺が女になっても特に面白くなんてないですって」
「そうですかね? ――ミユメちゃん」
「はいっす」

 気が付けば、ミロク先輩の隣にはミユメちゃんがいた。
 というか、全員がこっちを見ている。

 いつの間に……。

『総受け! うおおおおおおおお!』

 星詠みの杖君、うるさい。
 
「はい着替え、それとこれがカツラ」
「ありがとうございます、クラムちゃん」

 クラムちゃんがサッと近寄ってきて、何処からか取り出した衣装をミロク先輩に手渡す。
 それから、ついでのように俺に耳打ちしてきた。

「これならケイも女の子として参加できるよね?」

 美少女の囁き声に、思わず俺は動揺してしまう。
 唐突なASMRは禁止っすよー!

『少しでもソルシエラに日常を味わってほしいクラムちゃんの健気さ……良い……』

 なんで一人で限界化してるんだ君は。

「じゃあ、早速着替えましょうねー」
「ふっふっふー、真理の魔眼の前には無力っすよー!」

 衣装を手にじりじりと距離を詰めるミロク先輩。
 そして隣には、真理の魔眼を両目でガン開きにしているミユメちゃん。

 もう逃げられないね♥

『大人しく美少女になっちゃえ♥ あ、真理の魔眼でもこっちの正体はバレないから安心してね♥』

 最高♥

「ちょ、ちょっと二人とも。止めてくださいよー(棒)」
「大人しくしてるっすよー。すぐに終わるっすからねー」
「ミズヒと並べて写真撮りましょう写真。お姫様と王子様っぽくて似合いますよ!」

 楽し気なミユメちゃんとミロク先輩。
 特に、初めてのトランスアンカーの現場に居なかったミロク先輩は凄く楽しそうだ。

「わ、わかりましたから(棒) まったく、仕方がないですね(棒)」

『普段の演技力はどこいったんだ』

 必死の抵抗も虚しく、俺の体を光が包む。

 そして次の瞬間には俺は美少女へと生まれ変わっていた。
 魂が美少女になったのを感じる……。
 俺の中に内包された力が、溢れてくるぞ!
 凄まじいエネルギーだァ!

『ラスボスかな?』

「……やっぱり見た目には変化があまりないですね。じゃあ、これ着ましょう。あっちに着替える場所がありますから」

 そんな場所も作ってたんすか。

 ミロク先輩に連れられて、俺は着替えるために移動する。
 星詠みの杖君、俺は今から泣きゲーの清楚系ヒロインへと変身してくるよ。
  
『泣きゲー……君が泣きゲー?』

 はわわ~! 皆の前に出るの恥ずかしい~><
 
『なんだコイツ……』

 この後、たくさん美少女した。










 そこは、防衛の最前線であり、死守すべき砦でもあった。
 現人類が持てる全てを使い作り上げた、鏡界唯一の学園。

 名を、星木の学園。

 いくつもの聖遺物を融合させ作り上げた大樹の傍に作り上げられた小さな学園は、今日も影から人々を守護していた。

「よっしゃー! ダウンロード出来たー!」

 学園の校門前で、少女は大きな声でそう言った。
 その手には、画面の割れた数世代前のスマートフォンが握られている。
 
「ここネット回線終わってるからねー。ねえ、ガーデナー君の方でなんとかしてよ。そういうの出来ないの?」

 少女の隣で本を読んでいた青年は、渋い顔で首を横に振った。
 
「理事長も酷いよね! こんなに頑張ってるんだから最新式のゲーム機でも送ってくれればいいのに。まあ、領地戦の映像を送ってくれたから今回は許してやるかぁ」

 口をとがらせ文句を言いながら、少女はのんびりと歩き始めた。
 まるで散歩のような足取り。

 が、彼女の目の前には夥しい数の天使。

「うーん……智天使級もいるなぁ。ガーデナー君、一応サポートの準備しといてね」

 少女はそういうと、スマホの画面を見たまま天使へと接近していった。

 そして。

「よっと」

 何かを握るような動作の次の瞬間には、少女はそれを天使の群れへと投げつけていた。
 不可視の何かが、天使へと迫る。

 天使達がそれを認識し各々が迎撃に入ろうとした次の瞬間には天使の多くが既に死んでいた。
 全身がはじけ飛び、辺りに肉片となって散らばる。

 かろうじて防御がかなった天使の数体だけがその場には残された。

 が、少女にとってはどうでも良い。
 それよりも今は。

「あー! ミズヒめっちゃカッコよくなってるじゃーん。あっははははは、ねえガーデナー君これ見てこれ! これね、私の後輩。どう?」

 明らかに身内ネタで笑っている少女に、青年はまた曖昧な笑みで返す。
 どう? と言われても困ると、言外に伝えていた。

「……てか、なんか強くなーい? え、何この焔。頑張ったんだねぇ……きっと私の残した虎の巻きを見つけてきちんと特訓したんだ。えらいねぇ」

 うんうんと頷きながら、少女は残った智天使級を片手間に殺していく。
 少女の手に握られた不可視のそれが天使に突き刺さると、その血を浴びて僅かに輪郭が見えた。

 簡素で装飾の少ない槍である。
 
「それにこっちは……誰? 新入りかな? いいなぁ、翼って見た目にもわかりやすくてさ。……あっ、六波羅だ! レイはいないのかなぁ? ……うーん?」

 スマホから視線を外さずに、しかし正確な突きが天使を殺していく。

 既に、少女は数百体に及ぶ天使を殺していた。

 少女自身に降りかかってきた血のみが謎の障壁により防がれ辺り一帯は天使の血で染まっていく。

 その時、一体の天使が前に飛び出した。
 鹿の角を持った巨大な天使である。

 少女は初めてスマホから目を離す。
 が、それも数秒の事だった。

「あ、これはもうこっちで殺していい奴か」

 そう言って、少女は手の中で透明な槍をぶんぶんと振りながら天使へと近づいていく。
 あまりにも不用心な接近。

 天使はそれをチャンスだと理解すると、すぐに己の持つ最大級の異能を使用した。

 角を音叉のように震わせて、辺りに音の波が広がる。
 音に乗せられているのは、死そのもの。

 聞けばそれだけで無条件に死を迎える文字通りの必殺の攻撃。

 少女の耳にもそれは確かに届いて――。

「嫌な音。センスがない」

 それだけだった。
 この天使を相手にする場合の主な対処法は二つ。

 自身に音が届かないようにするか、音を発生させる角を破壊するか。

 それ以外は、存在しない。
 音を聞いて生き残る方法など、普通は存在しない。

 故に、少女が生きていることはそれだけで異常であった。

「私はこう見えても、意外とバラード系が好きなんだよ!」

 なんとも理不尽な言葉と共に、少女は槍を放り投げた。
 天使の肌へと、一切の抵抗なく槍が突き刺さる。

 そして次の瞬間には、天使は跡形もなく消え去った。

 少女はその事すら気にせずに、スマホを楽し気に眺めている。

「うんうん、皆きちんと育ってるね。私も鼻が高いよ。……ん?」

 と、少女の動きが止まった。

 青年はそれを見て、心配そうに声を掛ける。
 今まで笑顔だった筈の彼女が、突然表情を険しくしたのだから当然だ。

 が、少女は青年の言葉に答える事もなくスマホを操作している。

 青年は後ろからこっそりと覗き込む。
 どうやら、理事長から貰った動画のシークバーを操作しているようだった。

「……こっちは本物。こっちの場面だと違う……あ、こっちも違う。で、このタイミングは本物」
 
 ぶつぶつと呟きながら、少女は首を傾げる。
 その眼には、天使と相対した時ですら存在しなかった敵意があった。

「うーん」

 少女は頭を掻きながら、困ったように口を開く。

「――トアのフリしてるコイツ……誰? あの子、何を拾ったの?」

 言葉の意味が分からず青年も首を傾げる。
 その問いに答えられるものは、この場にはいない。

 画面の中では、月宮トアが楽し気に笑っていた。


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