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四章 騎双学園決戦

第140話 健気

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 首を本気で絞められました。
 主人公に、ガチで殺されかけました。

 ちょっと怖かったんですけど、トウラク君どうしたん?
 話聞こうか?

 俺で良ければ、話聞くけど。

『どう考えても君にクソデカ感情持ってるからだろ』

 いやぁ、俺のミステリアス美少女レベルが強すぎて狂わせちゃったか☆
 ごめんごめん☆

『ムカつくからそれやめてほしいねぇ』

 傷ついてでもトウラク君を止める俺のヒロインレベルはもはや止まるところを知らない。
 ミハヤちゃん、俺について来れるかな……!

『なんで挑戦的なんだよ。まあ、私としてはトウ×ソルも充分に魅力的だから文句はないが。どうだい、これを機に本気でメインヒロインを目指すというのは』

 俺が?

『うん』

 あのさ……。

 何言ってんだ君はトウラク君はミハヤちゃんとくっつくべきだろ馬鹿にすんなそこに俺が入る余地が無いってのは今更語るべくもないし今回はあくまでミハヤちゃんがいないから出ただけで俺にとってはトウラク君のそばにいるべきはミハヤちゃんなんだよ二人のてぇてぇが三度の飯より好きな俺が自らの手でてぇてぇを壊すわけがあるかそれ遠回しな自殺っていうんだよカップリングするのは勝手だが本気で俺をトウラク君とくっつけようとしたら俺は体から血を噴き出して爆発四散して世界中に美少女粒子として振りかかってやるからなあくまで俺がこういうことをするのは冗談や趣味の範疇の話であってそれは現実には決して存在しない概念だと――

『ごめんごめんごめん! ……えっ、君地雷とかあったの!? オールマイティだと思ってたんだけど』

 あるよ!

 別に思想としては許容するけどさ……最近の君の暴走を見てるとトウラク君とイチャイチャさせかねないじゃん……?

 そういうのは駄目だよ……。
 君の言葉の端に本気を感じたもん……。

『それは、その……すまない』

 ……いいよ♥ 次から気をつけてね♥
 一緒に天使を根絶やしにしようね♥

『うん♥』

 天使をスッパスッパと斬りつつ、俺はちらりとトウラク君を見る。
 あの、ちなみにルトラちゃんがメッチャ黒いんだけど、あれ大丈夫なの?

『一応修復しているが……本来なら封印対象だからねぇ。あの状態で運用するモノではないよ』

 星詠みの杖君に精神的土下座を何度も決め込んで、封印だけは避けてもらった俺はルトラを直す手助けをしてもらった。
 
 代償に、俺はヒノツチ文化大祭で星詠みの杖君を自由にしなければならなくなったが安い物だろう。
 カップリングの化物を解き放つことになったが問題ない。

 星詠みの杖君、お金は小銭で持っていくんだよ?
 五百円玉を沢山用意してね。

『任せたまえ。はぁ、今から楽しみだ!』

 相棒が楽しそうで何よりです。

 そしてルトラちゃんは、たぶんトウラク君がいい感じにしてくれる。
 マジで頼むぞ主人公。
 何故か原作から離れつつあるから、本当に頼むぞ。

 それと、星斬はまだ習得しなくていいから。
 それ、第7巻で会得したやつだからね?
 時間の流れ的にまだ3巻だからね?

 本当なら、この辺りでようやく六波羅さんと騎双学園が強大な敵として出てくるんだから。
 当然のように重力斬ったり距離斬ったりしてたけど、あれまだやっちゃダメだからさ。
 今後出てくる敵が泣いちゃうよ?
 
 最初は敵として出てくるヒロインとかどうすんの君。

『あ、天使がまた出たぞ相棒。全部切り刻んでやろう!』

 任せろ星詠みの杖君!

 俺は天使を鎌で作業的に斬り殺していく。
 気持ち悪い鳥を殺すだけの時間は、正直楽しくない。

 この姿、鎌しか使えねぇから敵が多いと不便だ。
 こういう時こそ、不敵な笑みと共に収束砲撃で一掃したいのだが。
 
 茨は使えば使うほど痛いし……。

 ねえあれ、なんで痛いの?

『君から無理矢理魔力を引きずり出して物質化しているからだ。本来は、乗っ取った相手の抵抗力を奪うために使ったりする魔法の応用だねぇ』

 きちんと侵食しに来てんじゃねえか!

 久しぶりに君がヤバい奴だって思ったよ。
 やっぱり質屋に持ってこうか?
 いや、美少女にもなれる大鎌なら、マニアにアホみたいな値段で売れるしオークションか?

『別にどちらでも構わないよ。だが、帰りに気になっている作家さんの新刊とかシエルのコントローラーの替えを買いたいから、お金は持たせてほしいねぇ』

 帰ってくる気満々じゃねえか。
 それもうお出かけだよ。

『一蓮托生♥ 死がふたりを分かつまで♥』

 最高♥

 トウラク君とは違い、俺と星詠みの杖君はこうして内なる世界で対話を重ねて今もなお進化を続けている。
 もはや俺達を止められるものなどいない。
 本気になれば、全員倒せる気がする。

『やってやんよ! 全員ボコボコにしてやんよ!』

 天使を斬って、また斬って。
 そして時々全身に大激痛が走ってその場に膝をつく。

 そうしてトウラク君を守るのが、今の俺のミッションだ。

 これが終わるのは、六波羅さんが天使を操っている奴を倒した時である。
 リンカちゃん曰く、天使を操って悪さをしている奴がこの領地戦のエリアに潜んでいるらしい。
 
 どういう事?
 俺の知らないところでまた何か起きてんの?

 まあ、その辺はお任せして俺達はミステリアス美少女として健気に自分を殺そうとした相手を守るぞ!
 この健気さがいいんだ!

 そして、圧倒的実力故のボロボロの状態でも戦えちゃうこの強キャラ感。
 ボロボロになって倒れてしまっては意味がない。

 トウラク君を守るために、真っ赤な衣装で戦うソルシエラ……うーん、素晴らしいね。

『えっ、トウ×ソルは地雷なのでは……?』

 いや、これはメインヒロインを奪う行為じゃないから。

『??????』

 いいかい星詠みの杖君。
 ここで俺がトウラク君を救えば、トウラク君はたぶん落ち込む!
 
 そんな彼を誰が立ち直らせると思う?
 そうミハヤちゃんだ!
 
 なんか今は姿が見えねえけど、彼女がトウラク君を立ち直らせてくれるんだよ。

 いわば、これはトウ×ミハのお手伝い。
 ミステリアス美少女をしつつ、原作の恋仲をさらにワンステップ進める行為なのだ。

『そうかな……そうかも……』

 納得してくれたようだね!
 
 それじゃあ次はトウミハの尊さをミステリアス詩で伝え――痛い!?

 九割! これ九割だよ痛み!
 危なくまた来世の美少女チャンスに懸けるところだった。

『ああ、浸食率が最高レベルに達したねぇ』

 それってどうなんの?
 今も滅茶苦茶痛いし、正直俺じゃなかったらのたうち回ってんだけど。

 武器をブンブン振り回しているが、たぶん俺の顔色は今は滅茶苦茶悪いだろう。

『特にこれと言って君自身に変化がある訳ではないよ。ただ』

 不意に左腕の腕輪から茨が飛び出し俺の腕へと巻き付いていく。
 ん、なにこれ。

『これが首まで伸びていくようになる。そして首まで到達したら次は全身に罅が入り始める』

 え、俺の事を殺そうとしてない?

『全部見せかけで本当はなんともないよ^^ 不安なのかい? そんな君も可愛いし、ペロペロしたいナ^^ ナンチャッテ笑』

 君、このタイミングでオジサン構文ラーニングしただろ。
 まだネットサーフィンしてんのかよ。

 まあいいや。
 なんともないなら、心行くまで――苦しむことができるな!

『やった! 0号の浸食で苦しむソルシエラが見れる!』

 それどういう気分で言ってんだ。
 0号は君だし、ソルシエラも半分君だろ。

「ぐぃぎぁっ、ああああああああ!」

 俺は鎌を落とし、左腕を抑えたまま膝から崩れ落ちる。
 辺りを天使が囲むことすら気にせずに、苦悶の声を上げながら、俺は腕輪から伸びていく茨を睨みつけた。
 
 この間も、視線は周囲の天使の位置をチェックしている。
 危なくなったらいつでも暴走した力があふれるふりをして、茨で天使を一蹴するためだ。

「っ、これが代償……!」

 俺は気高いミステリアス美少女なので、茨が巻き付いた左腕で鎌を拾い直し、立ち上がる。
 その時、苦しくても笑う事を忘れない。

 うーん、これはミステリアス美少女。

『いいねぇ。ちなみに首に巻き付くまであと五分だ』

 ならその時は天使の攻撃を一発貰うくらいはしようかしら。
 あのミステリアス美少女が浸食の苦しみから、天使相手に後れを取ってしまう。

 いいね、それもまた美少女だ!
 可哀そうな美少女は、地産地消していこうねぇ!

『素晴らしい。じゃあこっちもトラック割合を』

 それはもういいっす。
 マジで。
 
 君、時々マジで0号みたいなことするよね。
 あれが素じゃないよね?

 俺の事イカれた独占欲で壊したりしないよね?

『………………違うよ^^ 壊そうとはしてないよ^^』
 
 良かった^^

 じゃあ、安心して傷つくミステリアス美少女が出来るね。
 さーて、もう少し健気に戦っちゃうぞー!

『ああその調子で頑張り……む? 相棒、誰か来るぞ』

 え、誰?

『んーこの反応は……クラムか』

 クラムちゃん?
 
『こっちに凄まじい速度で向かってくるねぇ。君の事を心配しているのだろう』

 まあ、クラムちゃんは俺の事が大好きだからね。
 ベッドに押し倒されたこともあるくらいだ。 

『なんで誇らしげなんだよ』

 来るというのなら、歓迎しようか。
 トウラク君はもう倒したし、ここからは侵食に苦しむ薄幸美少女タイムだ。

 観客の一人くらいは必要だろう。
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