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四章 騎双学園決戦
第116話 選抜
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ジルニアス学術院での事件から三日が経過した。
終わってみれば、ジルニアス学術院との協力関係を結べたし、美少女もフェクトムに来たし、ダブルミステリアス美少女も会得できたし得たものは多い。
ただTSマシンだけは手に入らなかった。
が、それも時間の問題である。
何故なら、今はTSマシンなんてちょちょいと造れる人がいるからだ!
「では改めて空無ミユメちゃんでーす。はい、拍手ー」
生徒会では、改めて転入生の紹介がされていた。
三人との顔合わせはすでに済んでいるどころか、寮に入って三日経過している。
それでもこうして集められたのは、フェクトムの制服が用意できたので、お披露目したいという事らしい。
ちなみに無料だ。怖ろしい事にこのイベントは、金銭が発生しないらしい。
ミロク先輩、一生ついていきます。
「ど、どうもっす。……なんか、照れますね」
フェクトムの制服を身に纏ったミユメちゃんは恥ずかしそうに頭を下げる。
ちなみにきちんと採寸された制服である。
俺があげたソルシエラ学園生活妄想用の制服ではない。
『結局一回も使わずに上げてしまったねぇ。あれ、そこそこ値段が張るだろう』
頑張って働いてまた買おうね。
時期的には夏服かな。
普段とは違って薄着のソルシエラにドキドキさせてぇ……。
汗ばんだ胸元パタパタさせて、ドキッとさせてぇ……。
『この学園にその対象となる男子生徒はいないけどね』
それはそう。
あー、この調子で男子生徒も来ねえかな。
……いや、転入生で一人だけ来たら血祭り後メス堕ちだから、新入生の男子諸君は来年に期待かなー。
いっぱい来てもらえるように頑張らなきゃね。
「次は私! 私が自己紹介します!!!」
ミユメちゃんの紹介の後に、勢いよく一人の美少女が立ち上がる。
その美少女は金髪を揺らしながら、勢いよく口を開けた。
「八束ヒカリです!!! 騎双学園から来ました! 能力は、光翼! 得意なモノマネはプロフェッサーです!! では、モノマネ行きます! 『レジで財布を忘れたことに気が付いたプロフェッサー』 ……ああ、私としたことが――」
モノマネを始めたヒカリちゃんの頭が叩かれる。
そこそこマジな感じで叩いたその美少女は、ヒカリを睨みつけた。
「ヒカリ、モラルって知ってる?」
「フランスのお菓子ですか?」
「……うん、一旦静かにね。わかったから」
「はい!!!! 後でモラル食べたいです!!」
クソデカ声で返事をするヒカリを呆れた表情で一瞥して、ぺこりと頭を下げる。
「綺羅螺クラムです。……あー、浄化ちゃんの時はお騒がせしました。えっと、爆発する蛙を召喚出来ます。以上です」
クラムちゃんは、真面目にそう挨拶をした。
そこには以前の明るさはない。
どこか落ち着いた雰囲気の彼女は、紫色の髪も相まって少しだけ暗めに見えた。
もしかして、浄化ちゃんって根暗美少女だったのか?
そんなの、俺のデータにはなかったぞ……!
『データキャラ向いてないよ君』
そんなぁ。
「という訳で、三人がフェクトム総合学園の新たな仲間です。……といっても、皆もう知ってますよね」
ミロク先輩の言葉に、俺とトアちゃん、そしてミズヒ先輩は頷く。
「既に寮で暮らしているからな。特にヒカリは既に何度か模擬戦にも付き合ってくれている」
「はい!! ミズヒちゃんと戦いました!! メッチャ強い人だったのでメッチャ強かったです!!!」
ヒカリちゃんはそう言ってうんうんと頷く。
このアホの子加減が骨身に染みるねぇ。こういうタイプは今までいなかったから。
フェクトム総合学園はまともな人しかいなかったので、こういう起爆剤は嬉しい所である。
『まともな人しかいなかった……? え、自分はカウントしていないのかい?』
してるが? なんだ文句であんのか?
「という訳で今回集まってもらったのは、制服のお披露目のほかにも決めたいことがあったからです」
そう言ってミロク先輩はホワイトボードに、何かを書いていく。
「今晩のご飯ですかね……!!!」
「ヒカリ、たぶん真面目なやつだから静かに」
クラムちゃんとヒカリちゃんは並んで座ってコソコソ話し合っている。
さらにその横では、当然のようにミユメちゃんとトアちゃんが仲良さそうにしていた。
あの……俺は……。
一応、ミステリアス美少女枠の子なんですけど……。
『自己申告するミステリアス美少女はもうミステリアスじゃないのでは?』
じゃあどうしろってんだ。
「……ケイ、どうした」
ミズヒ先輩が、俺に気を使って声を掛けてきた。
優しい……。
ミズヒ様……!
『やっぱりミズ×ソルじゃないか! これが王道カプか!! ヒノツチ文化大祭に間に合わせないとねぇ^^』
ぜってえ阻止する。
星詠みの杖君の暴走の阻止を固く胸に誓いながら、俺は誤魔化すように口元に手を当てる。
いかにもミロク先輩の書いている物を真面目に考えてますよ、と言う風に。
「いえ、ここからがフェクトム総合学園にとって重要な時期になると思いまして」
それっぽい事を言うのだけは得意なんです任せて下さい。
「成程……相変わらず真面目だなケイは」
「ミズヒ先輩こそ、最近ずっとダンジョン救援に出ずっぱりでしょう。無理は禁物ですよ」
俺の言葉に、ミズヒ先輩は自信満々に胸を張る。
そして銃を取り出して見せた。
「これのおかげで能力がより制御しやすくなった。無理なんてしている物か。むしろ、無理をさせるくらいの相手に出会ってみたいものだ。と言っても……もうすぐ会うだろうが」
ミズヒ先輩の視線の先にはホワイトボード。
ペンの先でホワイトボードを軽く叩きながら、ミロク先輩は言った。
「御景学園の領地戦に参加する生徒を決めようと思います」
「はい! 質問です!!」
「どうぞヒカリちゃん」
ヒカリちゃんは立ち上がる。
「御景学園の領地戦なのに参加して怒られないですか!!!!」
「私達は既に姉妹校です。よって参加の権利があります。事実、騎双学園の方でも二十三の姉妹校が領地戦に参加するみたいですし」
「数の上では流石に不利っすね……。千界学園とウチの学院が敵に回らなかっただけ良しとするべきっすか」
御景学園の生徒会長様の命令により、先んじてジルニアス学術院と千界学園はこちら側の味方に引き込んである。
原作通りなら、トウラク君が千界学園の方を説得&新たなヒロインをゲットして帰ってくるはずだ。
……いや、あれはヒロインカウントでいいのか?
「流石に直接手を貸してくれはしませんでしたが、ダイブギアのメンテナンスや聖遺物の貸し出しなど、実質的な味方です」
「おかげで既に騎双学園との関係を切った学園も沢山あるしね。むしろ二十三しか残らなかったって考えるべき」
クラムちゃんの言葉にミロク先輩は頷く。
「その通りです。それにこの領地戦は、騎双学園のSランクが一人しか出てきません。なので、御景学園のSランクであるユキヒラ生徒会長とウチのミズヒの二人ならば」
「勝てる。そういう訳だな。六波羅の相手は任せてもらおう……! もうワクワクしてきたな。よし、ちょっとダンジョン救援に行こう」
「私も行きます!!!!」
「はーい、ミズヒ落ち着いて。今日は休みって私言いましたよね?」
「ヒカリ座って。……いや、抵抗すんなし」
それぞれの保護者が引き留めている。
すぐ行動に移すタイプが二人に増えた……。
『ふむ、やはり組み合わせとしては――』
こっちはこっちで楽しそうだね。
「という訳で、ミズヒは参加が決まっています。この時点である程度勝利は決まったのですが、駄目押しで数人送りたいと思います。誰か、立候補はいますか?」
どうやら、これが今日の本題らしい。
確かに駄目押しだ。
この学園の戦力はアホみたいに過剰なので、ミズヒ先輩にプラスで誰かついていくだけで充分だろう。
……いや、マジで凄い戦力だな。
これなら俺達だけでも領地戦に勝てたりしない?
ヒカリちゃんがどれだけ強いか分からないけど、美少女だしたぶん強い。
クラムちゃんは当然あのマーちゃんズが反則過ぎる。あれがあまりにも集団戦闘向けなのだ。
そして何よりもミユメちゃん。
カノンちゃんとの戦いで見せたあの力は、原作を知る俺からしても反則的だ。
この子、将来Sランクになったりしない?
そもそも真理の魔眼って何? 理すら知らなかったのに、勝手に真理になっちゃったし。
「恐らく誰が行っても勝利に変わりはないですから、フェクトム総合学園の宣伝程度に気軽に立候補してくださいねー」
「はい!!! 出ます!!」
「じゃあヒカリちゃん参加決定で」
「やったー!!!」
「私は出ないからね」
喜びから抱きしめられたクラムちゃんは、面倒臭そうにそれを引き剥がしつつそう言った。
ショックでヒカリちゃんが固まっている。
というかナチュラルに抱き着くんだ……!
そういうフレンドリーな百合もいいね……!
『この距離感の近さから無自覚にクラムを煽ってしまい、ある日遂にクラムに我慢の限界が来てしまう。「ヒカリが悪いんだからね……」そう言いながらクラムはベッドに押し倒したヒカリを――』
人の頭の中で勝手に百合あらすじ書かないでくれる?
もう少し真面目にこの会議聞いたら?
『真面目だが? 不真面目度で言うなら今もクエスト周回してるシエルの方が不真面目だろ。なんで許されてるんだアイツ。不平等だろ』
ミロク先輩の傍で、PCに今回の会議を纏めているナナちゃんは、余裕がありすぎてソシャゲの周回をしているようだった。
ふと目が合うと、こちらにニッコリと微笑んでくる。幼女が笑顔ならそれでいいよ。
「他に誰か出ませんか? 今日までに参加メンバーを確定させないといけないので」
「うーん、私は遠慮しておくっす。それよりも、フェクトムの自治区拡大のためのダンジョンコア改造に専念したいっす」
この人だけやっていることが唯一無二すぎる。
本当に来てくれてありがとうね。
「わ、私も遠慮しよっかなー」
トアちゃんが流れる様に手を上げる。
が、その時ミズヒ先輩が目をカッと見開いた。
「駄目だ、トア。お前は私と一緒に来い」
「え」
一人だけ名指しされて、トアちゃんはショックのあまり固まってしまった。
「お前はいずれ、この学園を背負って立つのだ。これからもケイと共に戦うならば、領地戦は経験しておけ。砲撃手は何よりも実戦が命だ。経験を積めるなら、その機会を逃すな」
「ふえっ……でも……」
あたふたとしたトアちゃんは助けを求めるように俺を見つめる。
なので、俺はサムズアップして言った。
「頑張れ」
「えぇ!?」
美少女の戦いを見れるならそれに勝る喜びはない。
カッコよく戦ってる美少女からしか摂取出来ない栄養があるのだ。
「じゃ、じゃあケイ君も一緒に出よう? ね?」
「ケイ君はどうするんですか? 出ます?」
懇願するトアちゃんとミロク先輩を交互に見て、俺はふっと笑みを浮かべる。
トアちゃんが安堵した声を出そうとしたその瞬間に、俺は付け加えて言った。
「遠慮しておきます!」
「……え、ええええ!?」
「じゃあトアちゃんとヒカリちゃんで決定ですね」
「はい!!! お願いしますねミズヒちゃん!! トアちゃん!!!!」
「ああ、よろしく頼む」
「そ、そんな……」
絶望からしなしなになっていくトアちゃんを見て、俺は内心で謝罪した。
すまないトアちゃん。
この領地戦はトウラク君と六波羅さんの重要なイベントなんだ。
トウラク君を「おもしれー男」判定した六波羅が寝返って騎双学園がボコボコにされるという超神回。
ここでソルシエラとかいうクソデカイレギュラーが入ったら何が起こるか分からない。
なので当日俺は観戦させてもらいますね^^
準備期間中もこっそり天使を数体狩って暇つぶしとしよう。
原作にいた天使以外なら俺が殺しても問題なかろう。
天使を華麗に狩るミステリアス美少女……美しい。
「うぅ……戦うの嫌だ……」
崩れ落ちたトアちゃんを、ミユメちゃんが受け止める。
仲良しでいいね。
絆の力でパワーアップだトアちゃん!
「はい、それじゃあ解散。今日も一日元気に頑張りましょうね」
ミロク先輩の笑顔と共に、今日の会議は終了した。
わいわいがやがや(大体一人)と騒ぎながら、生徒会室から美少女たちが出ていく。
残されたトアちゃんの前に立った俺は、力強くうなずいた。
「当日、応援するから!」
「そ、そういうことじゃないよぉ」
プルプルと震えながらそう答えるトアちゃん。
……うん、やはり良いものだ。
どういう事だろうか、トアちゃんを見るとくすぐられるものが――。
『裁判長!』
待て、やめてくれ星詠みの杖君!
終わってみれば、ジルニアス学術院との協力関係を結べたし、美少女もフェクトムに来たし、ダブルミステリアス美少女も会得できたし得たものは多い。
ただTSマシンだけは手に入らなかった。
が、それも時間の問題である。
何故なら、今はTSマシンなんてちょちょいと造れる人がいるからだ!
「では改めて空無ミユメちゃんでーす。はい、拍手ー」
生徒会では、改めて転入生の紹介がされていた。
三人との顔合わせはすでに済んでいるどころか、寮に入って三日経過している。
それでもこうして集められたのは、フェクトムの制服が用意できたので、お披露目したいという事らしい。
ちなみに無料だ。怖ろしい事にこのイベントは、金銭が発生しないらしい。
ミロク先輩、一生ついていきます。
「ど、どうもっす。……なんか、照れますね」
フェクトムの制服を身に纏ったミユメちゃんは恥ずかしそうに頭を下げる。
ちなみにきちんと採寸された制服である。
俺があげたソルシエラ学園生活妄想用の制服ではない。
『結局一回も使わずに上げてしまったねぇ。あれ、そこそこ値段が張るだろう』
頑張って働いてまた買おうね。
時期的には夏服かな。
普段とは違って薄着のソルシエラにドキドキさせてぇ……。
汗ばんだ胸元パタパタさせて、ドキッとさせてぇ……。
『この学園にその対象となる男子生徒はいないけどね』
それはそう。
あー、この調子で男子生徒も来ねえかな。
……いや、転入生で一人だけ来たら血祭り後メス堕ちだから、新入生の男子諸君は来年に期待かなー。
いっぱい来てもらえるように頑張らなきゃね。
「次は私! 私が自己紹介します!!!」
ミユメちゃんの紹介の後に、勢いよく一人の美少女が立ち上がる。
その美少女は金髪を揺らしながら、勢いよく口を開けた。
「八束ヒカリです!!! 騎双学園から来ました! 能力は、光翼! 得意なモノマネはプロフェッサーです!! では、モノマネ行きます! 『レジで財布を忘れたことに気が付いたプロフェッサー』 ……ああ、私としたことが――」
モノマネを始めたヒカリちゃんの頭が叩かれる。
そこそこマジな感じで叩いたその美少女は、ヒカリを睨みつけた。
「ヒカリ、モラルって知ってる?」
「フランスのお菓子ですか?」
「……うん、一旦静かにね。わかったから」
「はい!!!! 後でモラル食べたいです!!」
クソデカ声で返事をするヒカリを呆れた表情で一瞥して、ぺこりと頭を下げる。
「綺羅螺クラムです。……あー、浄化ちゃんの時はお騒がせしました。えっと、爆発する蛙を召喚出来ます。以上です」
クラムちゃんは、真面目にそう挨拶をした。
そこには以前の明るさはない。
どこか落ち着いた雰囲気の彼女は、紫色の髪も相まって少しだけ暗めに見えた。
もしかして、浄化ちゃんって根暗美少女だったのか?
そんなの、俺のデータにはなかったぞ……!
『データキャラ向いてないよ君』
そんなぁ。
「という訳で、三人がフェクトム総合学園の新たな仲間です。……といっても、皆もう知ってますよね」
ミロク先輩の言葉に、俺とトアちゃん、そしてミズヒ先輩は頷く。
「既に寮で暮らしているからな。特にヒカリは既に何度か模擬戦にも付き合ってくれている」
「はい!! ミズヒちゃんと戦いました!! メッチャ強い人だったのでメッチャ強かったです!!!」
ヒカリちゃんはそう言ってうんうんと頷く。
このアホの子加減が骨身に染みるねぇ。こういうタイプは今までいなかったから。
フェクトム総合学園はまともな人しかいなかったので、こういう起爆剤は嬉しい所である。
『まともな人しかいなかった……? え、自分はカウントしていないのかい?』
してるが? なんだ文句であんのか?
「という訳で今回集まってもらったのは、制服のお披露目のほかにも決めたいことがあったからです」
そう言ってミロク先輩はホワイトボードに、何かを書いていく。
「今晩のご飯ですかね……!!!」
「ヒカリ、たぶん真面目なやつだから静かに」
クラムちゃんとヒカリちゃんは並んで座ってコソコソ話し合っている。
さらにその横では、当然のようにミユメちゃんとトアちゃんが仲良さそうにしていた。
あの……俺は……。
一応、ミステリアス美少女枠の子なんですけど……。
『自己申告するミステリアス美少女はもうミステリアスじゃないのでは?』
じゃあどうしろってんだ。
「……ケイ、どうした」
ミズヒ先輩が、俺に気を使って声を掛けてきた。
優しい……。
ミズヒ様……!
『やっぱりミズ×ソルじゃないか! これが王道カプか!! ヒノツチ文化大祭に間に合わせないとねぇ^^』
ぜってえ阻止する。
星詠みの杖君の暴走の阻止を固く胸に誓いながら、俺は誤魔化すように口元に手を当てる。
いかにもミロク先輩の書いている物を真面目に考えてますよ、と言う風に。
「いえ、ここからがフェクトム総合学園にとって重要な時期になると思いまして」
それっぽい事を言うのだけは得意なんです任せて下さい。
「成程……相変わらず真面目だなケイは」
「ミズヒ先輩こそ、最近ずっとダンジョン救援に出ずっぱりでしょう。無理は禁物ですよ」
俺の言葉に、ミズヒ先輩は自信満々に胸を張る。
そして銃を取り出して見せた。
「これのおかげで能力がより制御しやすくなった。無理なんてしている物か。むしろ、無理をさせるくらいの相手に出会ってみたいものだ。と言っても……もうすぐ会うだろうが」
ミズヒ先輩の視線の先にはホワイトボード。
ペンの先でホワイトボードを軽く叩きながら、ミロク先輩は言った。
「御景学園の領地戦に参加する生徒を決めようと思います」
「はい! 質問です!!」
「どうぞヒカリちゃん」
ヒカリちゃんは立ち上がる。
「御景学園の領地戦なのに参加して怒られないですか!!!!」
「私達は既に姉妹校です。よって参加の権利があります。事実、騎双学園の方でも二十三の姉妹校が領地戦に参加するみたいですし」
「数の上では流石に不利っすね……。千界学園とウチの学院が敵に回らなかっただけ良しとするべきっすか」
御景学園の生徒会長様の命令により、先んじてジルニアス学術院と千界学園はこちら側の味方に引き込んである。
原作通りなら、トウラク君が千界学園の方を説得&新たなヒロインをゲットして帰ってくるはずだ。
……いや、あれはヒロインカウントでいいのか?
「流石に直接手を貸してくれはしませんでしたが、ダイブギアのメンテナンスや聖遺物の貸し出しなど、実質的な味方です」
「おかげで既に騎双学園との関係を切った学園も沢山あるしね。むしろ二十三しか残らなかったって考えるべき」
クラムちゃんの言葉にミロク先輩は頷く。
「その通りです。それにこの領地戦は、騎双学園のSランクが一人しか出てきません。なので、御景学園のSランクであるユキヒラ生徒会長とウチのミズヒの二人ならば」
「勝てる。そういう訳だな。六波羅の相手は任せてもらおう……! もうワクワクしてきたな。よし、ちょっとダンジョン救援に行こう」
「私も行きます!!!!」
「はーい、ミズヒ落ち着いて。今日は休みって私言いましたよね?」
「ヒカリ座って。……いや、抵抗すんなし」
それぞれの保護者が引き留めている。
すぐ行動に移すタイプが二人に増えた……。
『ふむ、やはり組み合わせとしては――』
こっちはこっちで楽しそうだね。
「という訳で、ミズヒは参加が決まっています。この時点である程度勝利は決まったのですが、駄目押しで数人送りたいと思います。誰か、立候補はいますか?」
どうやら、これが今日の本題らしい。
確かに駄目押しだ。
この学園の戦力はアホみたいに過剰なので、ミズヒ先輩にプラスで誰かついていくだけで充分だろう。
……いや、マジで凄い戦力だな。
これなら俺達だけでも領地戦に勝てたりしない?
ヒカリちゃんがどれだけ強いか分からないけど、美少女だしたぶん強い。
クラムちゃんは当然あのマーちゃんズが反則過ぎる。あれがあまりにも集団戦闘向けなのだ。
そして何よりもミユメちゃん。
カノンちゃんとの戦いで見せたあの力は、原作を知る俺からしても反則的だ。
この子、将来Sランクになったりしない?
そもそも真理の魔眼って何? 理すら知らなかったのに、勝手に真理になっちゃったし。
「恐らく誰が行っても勝利に変わりはないですから、フェクトム総合学園の宣伝程度に気軽に立候補してくださいねー」
「はい!!! 出ます!!」
「じゃあヒカリちゃん参加決定で」
「やったー!!!」
「私は出ないからね」
喜びから抱きしめられたクラムちゃんは、面倒臭そうにそれを引き剥がしつつそう言った。
ショックでヒカリちゃんが固まっている。
というかナチュラルに抱き着くんだ……!
そういうフレンドリーな百合もいいね……!
『この距離感の近さから無自覚にクラムを煽ってしまい、ある日遂にクラムに我慢の限界が来てしまう。「ヒカリが悪いんだからね……」そう言いながらクラムはベッドに押し倒したヒカリを――』
人の頭の中で勝手に百合あらすじ書かないでくれる?
もう少し真面目にこの会議聞いたら?
『真面目だが? 不真面目度で言うなら今もクエスト周回してるシエルの方が不真面目だろ。なんで許されてるんだアイツ。不平等だろ』
ミロク先輩の傍で、PCに今回の会議を纏めているナナちゃんは、余裕がありすぎてソシャゲの周回をしているようだった。
ふと目が合うと、こちらにニッコリと微笑んでくる。幼女が笑顔ならそれでいいよ。
「他に誰か出ませんか? 今日までに参加メンバーを確定させないといけないので」
「うーん、私は遠慮しておくっす。それよりも、フェクトムの自治区拡大のためのダンジョンコア改造に専念したいっす」
この人だけやっていることが唯一無二すぎる。
本当に来てくれてありがとうね。
「わ、私も遠慮しよっかなー」
トアちゃんが流れる様に手を上げる。
が、その時ミズヒ先輩が目をカッと見開いた。
「駄目だ、トア。お前は私と一緒に来い」
「え」
一人だけ名指しされて、トアちゃんはショックのあまり固まってしまった。
「お前はいずれ、この学園を背負って立つのだ。これからもケイと共に戦うならば、領地戦は経験しておけ。砲撃手は何よりも実戦が命だ。経験を積めるなら、その機会を逃すな」
「ふえっ……でも……」
あたふたとしたトアちゃんは助けを求めるように俺を見つめる。
なので、俺はサムズアップして言った。
「頑張れ」
「えぇ!?」
美少女の戦いを見れるならそれに勝る喜びはない。
カッコよく戦ってる美少女からしか摂取出来ない栄養があるのだ。
「じゃ、じゃあケイ君も一緒に出よう? ね?」
「ケイ君はどうするんですか? 出ます?」
懇願するトアちゃんとミロク先輩を交互に見て、俺はふっと笑みを浮かべる。
トアちゃんが安堵した声を出そうとしたその瞬間に、俺は付け加えて言った。
「遠慮しておきます!」
「……え、ええええ!?」
「じゃあトアちゃんとヒカリちゃんで決定ですね」
「はい!!! お願いしますねミズヒちゃん!! トアちゃん!!!!」
「ああ、よろしく頼む」
「そ、そんな……」
絶望からしなしなになっていくトアちゃんを見て、俺は内心で謝罪した。
すまないトアちゃん。
この領地戦はトウラク君と六波羅さんの重要なイベントなんだ。
トウラク君を「おもしれー男」判定した六波羅が寝返って騎双学園がボコボコにされるという超神回。
ここでソルシエラとかいうクソデカイレギュラーが入ったら何が起こるか分からない。
なので当日俺は観戦させてもらいますね^^
準備期間中もこっそり天使を数体狩って暇つぶしとしよう。
原作にいた天使以外なら俺が殺しても問題なかろう。
天使を華麗に狩るミステリアス美少女……美しい。
「うぅ……戦うの嫌だ……」
崩れ落ちたトアちゃんを、ミユメちゃんが受け止める。
仲良しでいいね。
絆の力でパワーアップだトアちゃん!
「はい、それじゃあ解散。今日も一日元気に頑張りましょうね」
ミロク先輩の笑顔と共に、今日の会議は終了した。
わいわいがやがや(大体一人)と騒ぎながら、生徒会室から美少女たちが出ていく。
残されたトアちゃんの前に立った俺は、力強くうなずいた。
「当日、応援するから!」
「そ、そういうことじゃないよぉ」
プルプルと震えながらそう答えるトアちゃん。
……うん、やはり良いものだ。
どういう事だろうか、トアちゃんを見るとくすぐられるものが――。
『裁判長!』
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大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
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Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
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こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
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