かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない~現代ダンジョンのある学園都市で、俺はミステリアス美少女ムーブを繰り返す~

不破ふわり

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三章 閃きジーニアス

第111話 顕現ミステリアス

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 オデ、ビショウジョ、マモル……!
 タタカウ……!

『姉妹百合を台無しにされてキレてるねぇ』

 ブチギレだよクソがァ!
 なんかいい感じに話が纏まるかなーとか思って見物してたらこれですよ!
 そもそも明らかにミユメちゃんの覚醒回なんだから強い奴が大挙して押し寄せてくるんじゃねえ! 
 
 お約束がわからねえのかバーカ!

「……もしかして、誘いこまれたのかな? 私がカノンを殺しに来ると予想していたりして」
「ふふっ、貴女ってば単純思考だから。予測することなんて容易いわ」

 嘘である。

 俺は完全に『やったぜミユメちゃん大勝利! 姉妹の未来へレディ・ゴー!』を見に来ていたのだ。
 なんならそれを見ながら、星詠みの杖君と一緒に使い魔論議とか、ミユメちゃんの魔眼で見られたら正体バレるんじゃね? とか色々とお話していたのだ。

 つまりは観客だった。
 戦いに出るつもりなんてなかったの!
 それを博士だとか、ネームレスだとかァ……!

 美少女だからって何してもいいと思うなよ。

「うーん、困ったなぁ。……よし、わかった。ミユメちゃんにはもう手を出さない。だからさ、カノンを頂戴。それで手打ちといこう」
「っ、そんな事許すわけないっす!」
「貴女に聞いているわけじゃないよ、ミユメちゃん」

 ミユメちゃんが駄目って言ってるんだから駄目だろうが!
 
「生憎、私は貴女に用があるのよネームレス。そろそろ素顔を見せてくれないかしら」
「あ、私だけが目的なんだ。それじゃあ相思相愛だね!」

 うん♥
 
 じゃなかった、あっぶね。

『美少女と相思相愛で、嬉しいって思っただろ』

 はい。
 どっちがウェディングドレスかな? って思いました。

『想像の十倍は嬉しそうだった』

 しかし、俺は公私混同はしないミステリアス美少女。
 感情に左右されない冷徹な行動こそが、ミステリアス美少女がミステリアス美少女たる所以である。

 こういう子が感情的になるのはメイン回の後半か、ヒロイン堕ちした後なんだよ。

『毎回思うんだが、そこまで自分をコンテンツ化するのもどうなんだ』
『あの……また二人で何か話していますか? 作戦なら共有してほしいです故』
『ああ、すまないシエル。……彼女の持っている剣が気になってねぇ』

 星詠みの杖君のアシストが今日も光る。
 ありがとうね。

『まかせて♥ ――しかし、剣が気になっているのは事実だ。あれは、半ば私達になっている。デモンズギアとは別のアプローチではあるが、確かに人智を超えた兵器だ』

 そう言われて、俺は初めてネームレスの持つ剣を見た。
 配線がむき出しで、時折火花を散らす無塗装の銀の剣。

 成程……まだあれは完成していないのか。
 ………………え、さっきミズヒ先輩の焔とか使ってなかった?

 未完成? 未完成で俺の魔法パクったりミズヒ先輩の焔使うの?
 チートも大概にしろよ。
 こっちは万物への干渉と馬鹿魔力だけで頑張ってんだから。

「その玩具、私気になるわ。もっと近くでよく見せて」
「嫌に決まっているでしょっ!」

 ネームレスが砲撃を放つ。
 俺はそれを片手に展開した障壁で受け止めた。

 骨まで響く衝撃と痛みに意識が飛びそうになるが、俺は既にこれよりも凄まじい痛みを二度経験しているので耐えられる。

 ちなみに片手でガードするのは、それがかっこいいからだ。当然の行動である。

『なぜ那滝ケイは先程から片手で防御しているのですか? 私か姉上で相殺すれば良い物を』
『え? あー……彼女はまだ何かを隠し持っているかもしれないからねぇ。ここでわざわざ私達を使う必要もあるまい。デモンズギアは、あくまでマスターにとっては切札だからねぇ』
『切札……納得しました故』

 ナナちゃんが再び大人しくなる。
 この子と契約したら、ずっとマジレスで一方的に勝っちゃいそうだな。
 ミステリアス美少女とか抜きに、ずっとやたら強い人になっちゃう。

「ふふっ、まるでそよ風ね」

 砲撃を防ぎきって、俺は髪をさらりと払いそう言って微笑む。
 左腕いってー!
 これヒビ入ってない? 大丈夫?

『ヒビ程度すぐに治るだろう』

 それもそっか!
 今の俺はミユメちゃんのカッコ良い姿を見れてエネルギーも満タンだし、軽い傷くらいなんぼのもんじゃい!

「私にも、その玩具を使ってみなさい」
「いやぁ、下手に干渉されて奪われたら嫌だしなぁ。……博士、手伝ってよ。ソルシエラの戦闘データも欲しいでしょ?」
「そうですね。では、等分された死」
「はぁ、もう蝶は見飽きているのだけれど」

 博士がネームレスの隣に並び立つ。
 緑色の蝶を生み出して、俺に放とうとしているようだ。

 どうミステリアスに調理してくれようかと考えていると、不意に俺はその輝きに気が付いた。
 この博士――美少女の輝きを持っていやがる。

『遂に君の眼がイカれたか』

 違う。
 俺の眼は確かにその輝きを視認している! 見間違いなどではない!

「ああ、気が付きましたか」

 俺の態度で察した博士がしたり顔で話しかけてくる。
 モブ顔なのに……美少女に感じちゃう……!

「私達学会は、ネームレスとカノンの情報を元にソルシエラの持つ銘を推測しました。推定『博愛』。私達は貴女の銘をそう呼称しています。貴女は、誰かを愛している人に危害を加えることができない。さらに限定的な条件があるかもしれませんが、おおよそは当たっているでしょう?」
「……さて、どうかしらね」

 博士はべらべらと何かを喋っている。
 何言ってんだアイツ。

「今、私は自身の魂への干渉により博愛を再現しています。仮に私へと危害を加えれば、それだけで貴女の魂は死を迎える。そこの空無カノンのようにね」

 顎でカノンちゃんを示しながら、博士はそう言った。

 博愛とかなんか勝手に言っているが、要するに美少女の輝きを人工的に作り出したってことらしい。
 本能的に俺が美少女と敵対できない事を利用したようだ。

 うーん、詰んでるねコレ。

 逃げるにしても俺一人じゃダメ。
 戦うとなると、本気でやり合う必要があるがその時点で俺は死ぬ? のかも。

「やめなよソルシエラ。戦えば、死んじゃうよ? 今までとは違って、本気の戦いになるんだから」

 ネームレスはそう言って大鎌と剣を構える。
 その口振りはなんだか本気で心配しているように見えた。

「……ソルシエラ、私が手を貸すっす」

 隣にミユメちゃんが並び立ちそう言った。
 しかし次の瞬間には崩れ落ちた彼女を抱き留め、俺はクールに微笑む。

「その気持ちだけで十分よ。それに、これは私の舞台だから」

 いや、正確には――。
 
の舞台だろ?』

 流石分かっているじゃないか星詠みの杖君。

「……っ、この魔力は一体!?」
「ソルシエラ、何をするつもりなの? 戦わない方が良いって言ってるじゃん」
「――ふふっ、博愛の銘? くだらないわね。私をそんな小さな枠組みに収めようだなんて」
「「っ!?」」

 ネームレスと博士が警戒の姿勢を取る。
 が、もう遅い。

「見せてあげるわ、星の輝きを」

 美少女を倒さなければならない状況になった時、どうするのか。
 俺達は既にその解を用意していた。

 行くぞ! 星詠みの杖君!

『アレをやるのか! いいだろう!』

 眼に魔法陣を展開。
 銀色の光が周囲に渦となって集まり、俺を包み込む。
 特に意味はない。

 同時に床に展開される巨大な魔法陣。
 これも意味はない。

 背後に歯車の様に大小様々な魔法陣が噛み合い、回転を始める。
 当然意味はない。

 が、ミステリアス美少女的には大いに意味のある事だ。
 初陣なのだから、これくらい派手にしなければならない。

『行こう、相棒』

 ああ!

 ここからが、ダブルミステリアス美少女タイムだ!






 ミユメの目の前で、ソルシエラは銀の光の渦に包まれた。
 魔眼を用いるまでもなく理解できる規格外の魔力量。
 
 一人の少女が持つには過ぎた力が、今目の前でさらに力を増していく。
 
「これは何……!? 知らない……っ、私はこんなソルシエラを知らない!」

 ネームレスが叫ぶ。
 博士も解析を試みているようだが、いかんせん未知な事が多すぎた。

「正体不明の魔法式に、規格外の魔力。……どれだけ探求心をくすぐってくれるのですか貴女は!」

 光の渦の中心。
 新たな星の誕生を祝うかのように、少女達は詠う。

「「――双星はここに顕現する」」

 重なる二つの声。
 同時に、銀の渦が破裂するかのように辺りに散った。

 魔力が銀色の粒子となって舞う世界の中、姿を現すのは二人の少女。

 蒼銀の髪を靡かせるソルシエラ。
 そして――。

「ふむ、中々に悪くない感覚だねぇ」

 見た目こそ瓜二つだが、赤い眼をした少女は具合を確かめるように拳を開閉すると頷いた。

「貴女は……貴女達は何……!?」

 ネームレスの問いに、一人は蠱惑的に、一人は嘲るように笑みを浮かべる。

「私達は――ソルシエラだ」
「さあ、第二幕を始めましょう?」

 双星は確かにそこに在った。
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