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三章 閃きジーニアス
第87話 実験ゴースト
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ジルニアス学術院は、ヤバい奴しかないのかもしれない。
原作キャラ、モブキャラ問わず。
俺は目の前の彼等を見てそう思った。
「――ダンジョン攻略スキップ部?」
「はい。楽したい同志が集まった部です」
「で、寝ながらダンジョン攻略の実験?」
「はい」
カノンちゃんの等分された死によって、無事倒された生徒たちを起こして事情を聴けば、彼等は確かにそう言った。
俺とカノンちゃんは二人で首をかしげる。
マジでなに言ってんだ?
「夢遊病からヒントを得たんですよ。予め行動をパターンとして入力し、魔力によって操作。そうすれば、当人に意識が無くともダンジョン攻略が可能なのではないかと」
「可能じゃないでしょ、なに言ってんの君」
カノンちゃんが至極真面目にそう言った。
そりゃそうだ。
「これが成功すれば、俺達は寝たままダンジョン攻略を出来ることになります。昼は研究に没頭して、夜中は寝ながらの睡眠ダンジョン攻略。どうですか!」
「失敗だね」
「失敗ですよ、それ」
俺とカノンちゃんの言葉に、生徒は悲しげな表情を浮かべた。
泣くなって。ごめんて。
「今はまだ実験段階で、滅多に人が来ないこの3棟で夜中に試していたんですよ。幽霊の噂まで流して、人が来ない様にしていたのに……」
えぇ……幽霊ってこれかよ……。
なんなんだよ……メッチャガッカリしたんだけど……。
『トアちゃんの気絶損だねぇ』
「どうしてこんな大人数でいたのさ」
「部員たちでそれぞれ役割りをゲームのように分担して、ダンジョン攻略を行うことにしたんです。そのデモンストレーションというか」
複数人の部員達は頷く。
成程……睡眠中は複雑な挙動は出来ないから、それぞれ簡単なパターンのみでダンジョン攻略をしようとしていたと。
え、これ幽霊が増えた噂って、単にこうやって役割を増やしていったからじゃ……。
「ですが、こうして他の生徒に襲い掛かってしまうようでは駄目ですね。ダンジョンの魔物か、ダンジョンの主相手にのみ反応できるようにプログラムを組んだのですが。流石に一時間で組んだプログラムでは精度が甘かったようです」
「よくそれでやろうと思ったね……。というか生徒会に申請は出したの? 明らかに馬鹿で危険な実験だけど」
すると、生徒はサッと眼を逸らす
カノンちゃんがさらに一歩近づいて、じーっと見つめると生徒は観念したように息を吐きだした。
ずるい、俺も美少女にジーって見られたい!
「一週間前に申請したのですが、ルカ副会長に「んな意味わかんねえことしてる暇あるなら、さっさとソルシエラの魔法式を解析しろ」って却下されて」
「あー、ルカ相手じゃそうだねぇ。ニコとかヒショウ会長だったら即OKだったのに」
「そうですよ! 一か月前にヒショウ会長にお願いした時は「虹色発光ってメッチャカッコいいね! よっしゃ、俺からも予算上げちゃう!」って快諾してくれたのに」
「そう言えばアレも君たちかぁ……。なんか、見覚えある顔だとは思ったけどさ……」
カノンちゃんは額に手を当てて、天を仰ぐ。
この人とミユメちゃん、毎回こんな事件を解決してたんだ……。
「まあ、今回は私からいい感じに報告しとくからさ、これ以上はいったんやめときなよ? 今のルカってピリピリしてるからさ。マジで、怒ると怖いよー!」
ぶるぶると震えるカノンちゃんを見て、生徒達は皆うんうんと何かを思い浮かべながら頷く。なんで全員が経験あるんだよ。
「わかりました。それじゃあ今回は大人しく引き下がりましょう。行こう、皆」
「はい部長」
生徒達は立ち上がると俺達に謝罪をして、踵を返した。
「次はダンジョンコアの整理がしやすいようにダンジョンコアを自在に発光させるあの研究をしようか」
「おーい、私が庇える範囲での研究にしてねー!」
アレがジルニアス学術院で部で成立している辺り、たぶんここってあんなのばっかりなんだろうな……。
さっさと行ってしまったイカれた部の彼等を見送って、カノンちゃんはため息を吐く。
「全然ロマンも何もなかった。幽霊って、いないんだね……」
「そうですね……。あ、トアちゃん、起きて」
俺は、重砲に抱き着いたまま気絶したトアちゃんを起こす。
「う、うーん…………はっ、ゆ、っゆうれいは!?」
「幽霊はダンジョンを寝ながら攻略したい人たちだったよ」
「????」
目覚めてすぐで、脳が覚醒していないのだろう。
トアちゃんは頭いっぱいに疑問を浮かべているようだった。
また後できちんと説明してあげるからね。
「さて、というわけで――解決しちゃいました。おめでとう!」
「お疲れ様です」
「えっと、どういう事……?」
「ダンジョン攻略スキップ部が幽霊だったんだよ」
「????」
もー、寝ぼけているのかしら。
確かにトアちゃんったらいつもはもう寝ている時間だものね。
ナイトキャップとパジャマでも作ってもらう?
虹色発光するやつ。ついさっきそういうの得意そうな人たちと知り合ったからさ。
「今回の事件の真相を暴いた功績で、私は後一ヶ月は粘れるよ。予算もゴネてバッチリゲットするし。よーし! 今日は私がお夜食を奢っちゃうぞー! ジルニアス学術院は徹夜がデフォだから、夜もやってる飲食店が多いのだー!」
俺とトアちゃんの肩を抱き寄せて、カノンちゃんはそう言って笑う。はい、1ギルティ。
というか、そのお夜食のお金って研究予算っすよね。
『美少女から奢られる飯は美味いか?』
そりゃ美味いでしょ。
そうして事件解決でおしまいムードだった俺は、ふと思い出した。
幽霊の噂は一つだけではなかったのである。
「そう言えば、幽霊が生徒を食うっていう噂は……?」
噂が彼等の物だとしたら、食うっていうのはおかしいのではないだろうか。
「うーん、そうだなぁ」
カノンちゃんは考えることもなく、すぐに笑って答えた。
「デマだよ。そんな事がある訳ないでしょ。近寄らせないように怖がらせるための嘘」
「嘘、ですか」
そう言われれば、もう疑うことは無い。
実際に幽霊問題は解決したのである。
「ステーキ食おうぜステーキ! あ、夜中の食事とか気にするタイプ? そういうのが気になっちゃうお年頃?」
「え、あ、食べれるなら別に私は夜とか関係ないです……」
「いいねぇ。私もなんだよー」
うーん、緩いな。
この緩さから、俺はスピンオフについて確信を持った。
これはアレだ。
ジルニアス学術院で起きるギャグ的事件をミユメちゃんが解決するタイプのスピンオフだ。
もしかしたら四コマ漫画かもしれない。
ジルニアス学術院のコメディ物だわ。
追放後になんか美少女2、3人のグループに助けられてそこから一緒に事件を解決したりするんだろ?
または、最初はカノンちゃんとミユメちゃんの二人だったけど徐々にメンバーが増えていくか。
俺はそういうのに詳しいからわかるんだ。
あのダンジョン攻略スキップ部とかも、絶対に準レギュでしょ。
モブキャラであの濃さはあり得ないもん。
それなら後はそれっぽいキャラを探して、ミユメちゃんとくっつければ良いな!
簡単だ、勝ったわよ。
『そう単純でいいのかい? カノンの様子が一瞬おかしかったんだろう』
別に忘れたわけじゃない。
俺は、それをネームレスが何かしたのだと思っている。
アイツが余計なことをして、ドタバタギャグコメディに水を差したんだ。
カノンちゃんの様子も見ながら、ミユメちゃんの真の仲間も探す。
やれやれ、ミステリアス美少女ってのはやることが多くて困るねぇ。
『ネームレス、一体何者なんだ……!』
それ止めろ、負けた気になるから。
■
機械的な音が規則的に小さく鳴り響く病室で、ソレは突然起き上がった。
時刻はすでに零時を回っている。
「……」
何かが足りない。
そう思った。
この不快感があっては眠ることもできない。
やがて、ソレは無意識の内にお腹を撫でて不快感の正体に気が付いた。
口の中に唾がたまり、胃が鳴いている。
そうだった、自分は空腹だったのだ。
「……おなかへった」
既に、一日食べていない。
生きるとは食べる事である。
ならば、私は食べて生きなければならない。
「ごはん、たべなきゃ」
ソレの行動を支配しているのは本能だった。
靴も履かずに、裸足でぺたりと床に降り立つ。
そして、ふらふらとおぼつかない足取りで病室を後にした。
原作キャラ、モブキャラ問わず。
俺は目の前の彼等を見てそう思った。
「――ダンジョン攻略スキップ部?」
「はい。楽したい同志が集まった部です」
「で、寝ながらダンジョン攻略の実験?」
「はい」
カノンちゃんの等分された死によって、無事倒された生徒たちを起こして事情を聴けば、彼等は確かにそう言った。
俺とカノンちゃんは二人で首をかしげる。
マジでなに言ってんだ?
「夢遊病からヒントを得たんですよ。予め行動をパターンとして入力し、魔力によって操作。そうすれば、当人に意識が無くともダンジョン攻略が可能なのではないかと」
「可能じゃないでしょ、なに言ってんの君」
カノンちゃんが至極真面目にそう言った。
そりゃそうだ。
「これが成功すれば、俺達は寝たままダンジョン攻略を出来ることになります。昼は研究に没頭して、夜中は寝ながらの睡眠ダンジョン攻略。どうですか!」
「失敗だね」
「失敗ですよ、それ」
俺とカノンちゃんの言葉に、生徒は悲しげな表情を浮かべた。
泣くなって。ごめんて。
「今はまだ実験段階で、滅多に人が来ないこの3棟で夜中に試していたんですよ。幽霊の噂まで流して、人が来ない様にしていたのに……」
えぇ……幽霊ってこれかよ……。
なんなんだよ……メッチャガッカリしたんだけど……。
『トアちゃんの気絶損だねぇ』
「どうしてこんな大人数でいたのさ」
「部員たちでそれぞれ役割りをゲームのように分担して、ダンジョン攻略を行うことにしたんです。そのデモンストレーションというか」
複数人の部員達は頷く。
成程……睡眠中は複雑な挙動は出来ないから、それぞれ簡単なパターンのみでダンジョン攻略をしようとしていたと。
え、これ幽霊が増えた噂って、単にこうやって役割を増やしていったからじゃ……。
「ですが、こうして他の生徒に襲い掛かってしまうようでは駄目ですね。ダンジョンの魔物か、ダンジョンの主相手にのみ反応できるようにプログラムを組んだのですが。流石に一時間で組んだプログラムでは精度が甘かったようです」
「よくそれでやろうと思ったね……。というか生徒会に申請は出したの? 明らかに馬鹿で危険な実験だけど」
すると、生徒はサッと眼を逸らす
カノンちゃんがさらに一歩近づいて、じーっと見つめると生徒は観念したように息を吐きだした。
ずるい、俺も美少女にジーって見られたい!
「一週間前に申請したのですが、ルカ副会長に「んな意味わかんねえことしてる暇あるなら、さっさとソルシエラの魔法式を解析しろ」って却下されて」
「あー、ルカ相手じゃそうだねぇ。ニコとかヒショウ会長だったら即OKだったのに」
「そうですよ! 一か月前にヒショウ会長にお願いした時は「虹色発光ってメッチャカッコいいね! よっしゃ、俺からも予算上げちゃう!」って快諾してくれたのに」
「そう言えばアレも君たちかぁ……。なんか、見覚えある顔だとは思ったけどさ……」
カノンちゃんは額に手を当てて、天を仰ぐ。
この人とミユメちゃん、毎回こんな事件を解決してたんだ……。
「まあ、今回は私からいい感じに報告しとくからさ、これ以上はいったんやめときなよ? 今のルカってピリピリしてるからさ。マジで、怒ると怖いよー!」
ぶるぶると震えるカノンちゃんを見て、生徒達は皆うんうんと何かを思い浮かべながら頷く。なんで全員が経験あるんだよ。
「わかりました。それじゃあ今回は大人しく引き下がりましょう。行こう、皆」
「はい部長」
生徒達は立ち上がると俺達に謝罪をして、踵を返した。
「次はダンジョンコアの整理がしやすいようにダンジョンコアを自在に発光させるあの研究をしようか」
「おーい、私が庇える範囲での研究にしてねー!」
アレがジルニアス学術院で部で成立している辺り、たぶんここってあんなのばっかりなんだろうな……。
さっさと行ってしまったイカれた部の彼等を見送って、カノンちゃんはため息を吐く。
「全然ロマンも何もなかった。幽霊って、いないんだね……」
「そうですね……。あ、トアちゃん、起きて」
俺は、重砲に抱き着いたまま気絶したトアちゃんを起こす。
「う、うーん…………はっ、ゆ、っゆうれいは!?」
「幽霊はダンジョンを寝ながら攻略したい人たちだったよ」
「????」
目覚めてすぐで、脳が覚醒していないのだろう。
トアちゃんは頭いっぱいに疑問を浮かべているようだった。
また後できちんと説明してあげるからね。
「さて、というわけで――解決しちゃいました。おめでとう!」
「お疲れ様です」
「えっと、どういう事……?」
「ダンジョン攻略スキップ部が幽霊だったんだよ」
「????」
もー、寝ぼけているのかしら。
確かにトアちゃんったらいつもはもう寝ている時間だものね。
ナイトキャップとパジャマでも作ってもらう?
虹色発光するやつ。ついさっきそういうの得意そうな人たちと知り合ったからさ。
「今回の事件の真相を暴いた功績で、私は後一ヶ月は粘れるよ。予算もゴネてバッチリゲットするし。よーし! 今日は私がお夜食を奢っちゃうぞー! ジルニアス学術院は徹夜がデフォだから、夜もやってる飲食店が多いのだー!」
俺とトアちゃんの肩を抱き寄せて、カノンちゃんはそう言って笑う。はい、1ギルティ。
というか、そのお夜食のお金って研究予算っすよね。
『美少女から奢られる飯は美味いか?』
そりゃ美味いでしょ。
そうして事件解決でおしまいムードだった俺は、ふと思い出した。
幽霊の噂は一つだけではなかったのである。
「そう言えば、幽霊が生徒を食うっていう噂は……?」
噂が彼等の物だとしたら、食うっていうのはおかしいのではないだろうか。
「うーん、そうだなぁ」
カノンちゃんは考えることもなく、すぐに笑って答えた。
「デマだよ。そんな事がある訳ないでしょ。近寄らせないように怖がらせるための嘘」
「嘘、ですか」
そう言われれば、もう疑うことは無い。
実際に幽霊問題は解決したのである。
「ステーキ食おうぜステーキ! あ、夜中の食事とか気にするタイプ? そういうのが気になっちゃうお年頃?」
「え、あ、食べれるなら別に私は夜とか関係ないです……」
「いいねぇ。私もなんだよー」
うーん、緩いな。
この緩さから、俺はスピンオフについて確信を持った。
これはアレだ。
ジルニアス学術院で起きるギャグ的事件をミユメちゃんが解決するタイプのスピンオフだ。
もしかしたら四コマ漫画かもしれない。
ジルニアス学術院のコメディ物だわ。
追放後になんか美少女2、3人のグループに助けられてそこから一緒に事件を解決したりするんだろ?
または、最初はカノンちゃんとミユメちゃんの二人だったけど徐々にメンバーが増えていくか。
俺はそういうのに詳しいからわかるんだ。
あのダンジョン攻略スキップ部とかも、絶対に準レギュでしょ。
モブキャラであの濃さはあり得ないもん。
それなら後はそれっぽいキャラを探して、ミユメちゃんとくっつければ良いな!
簡単だ、勝ったわよ。
『そう単純でいいのかい? カノンの様子が一瞬おかしかったんだろう』
別に忘れたわけじゃない。
俺は、それをネームレスが何かしたのだと思っている。
アイツが余計なことをして、ドタバタギャグコメディに水を差したんだ。
カノンちゃんの様子も見ながら、ミユメちゃんの真の仲間も探す。
やれやれ、ミステリアス美少女ってのはやることが多くて困るねぇ。
『ネームレス、一体何者なんだ……!』
それ止めろ、負けた気になるから。
■
機械的な音が規則的に小さく鳴り響く病室で、ソレは突然起き上がった。
時刻はすでに零時を回っている。
「……」
何かが足りない。
そう思った。
この不快感があっては眠ることもできない。
やがて、ソレは無意識の内にお腹を撫でて不快感の正体に気が付いた。
口の中に唾がたまり、胃が鳴いている。
そうだった、自分は空腹だったのだ。
「……おなかへった」
既に、一日食べていない。
生きるとは食べる事である。
ならば、私は食べて生きなければならない。
「ごはん、たべなきゃ」
ソレの行動を支配しているのは本能だった。
靴も履かずに、裸足でぺたりと床に降り立つ。
そして、ふらふらとおぼつかない足取りで病室を後にした。
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