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三章 閃きジーニアス
第84話 姉妹ハイテンション
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「おおっ、凄い……! 知識が……知識が高まっていく……! こ、こんなに新鮮なソルシエラのデータが沢山……! えへ、えへへへへへへ」
生徒会室の奥。
比較的綺麗なエリアで、俺達は飲み物をごちそうになっていた。
まあ、缶ジュースなんですけどね。
あと、この座ってる椅子も、椅子じゃなくて紙の束を並べたやつだけどね。
……人間性を捨てなければジルニアス学術院には入れないのか?
「ミユメ、よくやってくれましたね! これなら、あの現場主義の馬鹿をぎゃふんと言わせることが出来ますよ……! えへへへへ。あー、脳に情報が刻み込まれるぅ!」
この人、もしかしたらヤバイ人かもしれない。
「ルカさんの役に立てて良かったっす! それでなんですけど……『ナカヨシ! ダンジョン君』をフェクトム総合学園に貸し出しちゃって」
「……は?」
今まで笑顔だったルカちゃんの表情がすとんと落ちる。
「私、あれは絶対に外部に出すなっていいましたよね」
「……はい」
あ、やっぱりヤバイ代物だったんだ。
そりゃそうだよね。俺でも気づくんだからジルニアス学術院の人が気が付かないわけないよね。
ミユメちゃんは、さらに説教をするルカちゃんへと素早く一つのメモリーカードを差し出した。
「これは?」
覚悟を決めた様子のミユメちゃんが言う。
「フェクトム総合学園に所属しているデモンズギア、シエルの詳細なデータっす」
「…………ミユメ」
「はい」
ルカちゃんに名前を呼ばれて、ミユメちゃんは背筋を伸ばす。
うんうんと唸りながらルカちゃんはやがて大きな声で言った。
「今回は不問とします!」
「あざっす!」
ぺこりとミユメちゃんが頭を下げる。
俺はそれを見ながら、こっそりとトアちゃんに耳打ちした。
「ナナちゃんのデータって許可とってるの?」
「うん。ミロクちゃんが契約装置作りたいんだって。だから、これを機にジルニアス学術院と連携したいらしくて」
まあ、四大校と良好な関係を築けるなら良いけど。
あんまりこっちの情報晒し過ぎると取り込まれかねないからなぁ。
その時はソルシエラでいい感じに滅茶苦茶にするけどさ。
警戒を怠るのは良くない。気を引き締めていこうね!
「ミユメ、今回貴女は素晴らしい働きをしてくれたようですね。先程の話を聞くに、どうやらネームレスというソルシエラと共通点のある存在もいるようですし」
ルカちゃんの頬がつり上がっていく。
とても愉快そうに笑っていた。
「知識が、私をさらに満たすでしょう……! あー、気持ちいい」
「喜んでくれて何よりっす」
……うーん。
『どうしたんだい?』
いや、ルカちゃんが想像と違うというか、俺の知る内海ルカじゃないというか。
どうにも、元気で明るいんだ。
内海ルカは、もっと静かで、ダウナー気味で、悲観的な少女だった筈だ。
生徒会長が何か提案して、それをルカちゃんが悲観的に突っ込むみたいな感じだったんだけど。
やっぱりこうして実際に会うと原作と違う人もいるんだな。
あっちも好きだけど、こっちも良いね。
「それに……貴女へと知識をインストールしていたという件も気になりますね。なぜ貴女だったのかがわからない。一応、体の方も検査しておきましょう。幸い、ベッドにはまだ空きがあります」
「珍しいっすね。ルカさんのとこが空くなんて」
その言葉に首を傾げる俺達を見て、ミユメちゃんはまるで自分の事のように自信満々に説明を始めた。
「この人は凄いんすよ! 魔法式による医療を研究している最先端の癒し手なんす! その効果は絶大で、他校からの申し込みも多いんすから!」
「あっちは怪我や病気を治せる。私は新しい魔法式を試せる。win-winです。最近も、騎双学園からなんで生きているのかわからないレベルに衰弱しきった少女が来て……いやぁ、アレは痺れましたね」
うっとりした様子でルカちゃんはそう言った。
「今日中に検査をしますから。今日は本校舎にいてくださいね」
「はいっす」
ミユメちゃんは従順に頷く。
うーん、ミユメちゃんの事も話したし、ネームレスについても何も知らないしそろそろここから去ろうかしら。
俺だけ美少女じゃないってのも忍びないしね。
そう思い、腰を上げたその時だった。
「――ミユメちゃんが帰ってきたって聞いたのだけれど、本当!?」
紙や機械をなぎ倒しながら、新たな美少女が姿を現した。
なんだこの美少女……俺のデータにないぞ!
『いつもだろ』
その美少女は茶髪にふわふわのロングヘアで、まるでミユメちゃんの未来のような容姿をしている。
ジルニアス学術院の美少女がここに集まりだしてるの?
確変入った?
「あ、お姉ちゃん」
お姉ちゃん!?
ミユメちゃんお姉ちゃんいたの!?
君、妹属性も兼ね備えていたのか! 御見それいたした。
「もー! 心配したんだから! ミユメちゃんが帰ってないって聞いて、私がどれだけ探し回ったか」
「心配しすぎっすよー! ちょっと、皆の前でやめてほしいっす。恥ずかしいっすから」
ミユメちゃんは、お姉ちゃんに抱きしめられながら顔を赤らめている。
見たまえ星詠みの杖君。
アレが、姉妹百合。
生まれながらにして持つ者と持たざる者が決まる属性だ。
『おお……! 興味深い……!』
アレは努力でどうにかなるものではないからね。
俺達は敗者としてあれを眺めよう。
どれ、一つ心の中で手でも合わせようじゃないか。
ありがたや。
「あ、この子たちが連れてきてくれたの?」
「そうっす。フェクトム総合学園のトアちゃんとケイっす」
「そっかそっか、ありがとうね! 私は空無カノン! この子のお姉ちゃんで、そっちの寝不足ちゃんの同級生でーす!」
「うるさ……。ちょっと、引っ付かないでください。……ええい! 文字が読めんから揺らすなぁ!」
ルカちゃんはカノンちゃんに肩をゆすられて遂にそう叫んだ。
これがジルニアス学術院の百合園なのか。
これはこれで……!
「で、ミユメちゃんはどうして帰ってこなかったの? 家出?」
その言葉に、場の空気が僅かに淀む。
ミユメちゃんから言わせるのは酷だろう。
「俺から説明します――」
そうして俺はミユメちゃんとの出会いと、ネームレスとの接触までを説明した。
カノンちゃんは、黙って聞いていたが、表情が顔に出やすいのだろう。
最後には明らかに怒っているようだった。
「つまり、ミユメちゃんに余計な事をした奴がいるんだね。知識のインストール……はあ、やめてほしいなぁ」
「それと、パーティーを追放した生徒たちですね。私とカノンがいるというのに、随分と豪胆というか、馬鹿というか」
「あ、それは大丈夫」
カノンちゃんは、パッと表情を切り換えて言った。
「だって、ミユメちゃんにそういう事するならその程度ってことでしょ? ジルニアス学術院では生き残れないよ」
暗に、無視しろと、取るに足らない存在だと、そう言っていた。
それよりもネームレスに対してご立腹のようである。
「それにしても、ルカちゃんの所で検査かぁ。じゃあ、一緒にあの事件は追えないね」
「え? 事件ってなんすか?」
ミユメちゃんが興味を持った事が嬉しかったのか、カノンちゃんは鼻を鳴らす。
「ジルニアス学術院にはね、今幽霊が出るって噂なんだ。幽霊を見た者も幽霊になるっていう怖ろしい噂なんだよね」
「それってまたどこかの研究所から魔物が脱走したんじゃないっすか?」
「それかダイブギアに変な新機能を搭載しようとしたか。一か月前は、『怪奇! 虹色発光人間』でしたか? 結局は夜間活動可能なようにダイブギアをいじった結果の失敗作だったじゃないですか」
「君たち、夢がないね!?」
カノンちゃんは見るからにショックを受けた様子だった。
がすぐに気を取り直すと俺達の方を向く。
ロックオンされている気がするんだが。
「ねえねえ、君たちは興味ない? 一緒にジルニアス学術院の謎を解き明かそうぜ!」
「そう言って、貴女自身は研究所に籠る気でしょ。その子達を足に使ってやろうって考えが透けて見えます」
美少女の足にしていただける!?
喜んでこの身を差し出しましょう!
「あはは、バレた? で、どうかな? ジルニアス学術院のこのカノン様と関係を結べるって、中々ないぜ? 自慢じゃないが、私のダイブギア開発は既に向こう一年は予約で埋まっているんだ!」
「あ、フェクトム総合学園のは私が作るっすから、横取りしないでほしいっす!」
「ああそうなの? うーん、じゃあ他に何か欲しいものない? 作ってあげるけど」
え?
マジ? TSマシンの棚ぼた展開きた!?
おいおいおいおい、追い風吹いてるねえ!
よっしゃ、適当に理由つけてTSマシン作って貰おうぜ!
「それなr「今のところは何もいらないですよ」……そうです」
トアちゃん、そんな謙虚な……。
「それに、別にそんな事が無くても私たちは力を貸しますよ」
「え?」
俺はトアちゃんの顔を見る。
見れば、やる気に満ち溢れていた。
「もしかしたら、幽霊騒ぎでネームレスに関する手掛かりが掴めるかもしれないでしょ? 何か情報は持ち帰るべきだよ。 ……それに」
トアちゃんはそっと俺に耳打ちをして来る。
美少女の囁きボイス!!!!!
「ここで恩を売っておけば、あとでミロクちゃんに上手い事使って貰えるかも」
優しいし、賢い!
美少女ポイント一億点!
『君が美少女に点数をつけるとは烏滸がましいとは思わないかね』
ポイント制度、廃止!!!!
それにしても……幽霊騒ぎか。
『気になるのかい?』
ああ。
ミユメちゃんの追放から考えると、あまりにもタイミングが良すぎる。
親しい身内からの依頼。
明かな狂言回しの姉。
メタ推理するなら、これはスピンオフの最初の話だろう。
そうなると、ネームレスはスピンオフの関係者っぽくないな。
あれのせいでミユメちゃんは幽霊騒ぎに参加できずに、話が拗れている。
ソルシエラのことを知っていたり、同じ魔法を使ったり、スピンオフにしては設定にノイズが多すぎる。
端的に言って、キャラクターとして浮いているのだ。
そうなると幽霊騒ぎに首を突っ込んでもネームレスの事はわからないだろう。
ミユメちゃんとずっと一緒にいたほうがまだ可能性がある。
と、そこまで考えて俺は目の前の影に気が付いた。
「ん?」
それは、両手を広げたカノンちゃんの姿だった。
「それじゃあ、よろしく頼むよ、新しい助手達!」
パッと手を広げて、カノンちゃんは俺とトアちゃんを抱きしめる。
あー、駄目です!
胸が大きいのもさらに駄目です!
『審議拒否! 死刑!』
まだ何も言ってない!?
生徒会室の奥。
比較的綺麗なエリアで、俺達は飲み物をごちそうになっていた。
まあ、缶ジュースなんですけどね。
あと、この座ってる椅子も、椅子じゃなくて紙の束を並べたやつだけどね。
……人間性を捨てなければジルニアス学術院には入れないのか?
「ミユメ、よくやってくれましたね! これなら、あの現場主義の馬鹿をぎゃふんと言わせることが出来ますよ……! えへへへへ。あー、脳に情報が刻み込まれるぅ!」
この人、もしかしたらヤバイ人かもしれない。
「ルカさんの役に立てて良かったっす! それでなんですけど……『ナカヨシ! ダンジョン君』をフェクトム総合学園に貸し出しちゃって」
「……は?」
今まで笑顔だったルカちゃんの表情がすとんと落ちる。
「私、あれは絶対に外部に出すなっていいましたよね」
「……はい」
あ、やっぱりヤバイ代物だったんだ。
そりゃそうだよね。俺でも気づくんだからジルニアス学術院の人が気が付かないわけないよね。
ミユメちゃんは、さらに説教をするルカちゃんへと素早く一つのメモリーカードを差し出した。
「これは?」
覚悟を決めた様子のミユメちゃんが言う。
「フェクトム総合学園に所属しているデモンズギア、シエルの詳細なデータっす」
「…………ミユメ」
「はい」
ルカちゃんに名前を呼ばれて、ミユメちゃんは背筋を伸ばす。
うんうんと唸りながらルカちゃんはやがて大きな声で言った。
「今回は不問とします!」
「あざっす!」
ぺこりとミユメちゃんが頭を下げる。
俺はそれを見ながら、こっそりとトアちゃんに耳打ちした。
「ナナちゃんのデータって許可とってるの?」
「うん。ミロクちゃんが契約装置作りたいんだって。だから、これを機にジルニアス学術院と連携したいらしくて」
まあ、四大校と良好な関係を築けるなら良いけど。
あんまりこっちの情報晒し過ぎると取り込まれかねないからなぁ。
その時はソルシエラでいい感じに滅茶苦茶にするけどさ。
警戒を怠るのは良くない。気を引き締めていこうね!
「ミユメ、今回貴女は素晴らしい働きをしてくれたようですね。先程の話を聞くに、どうやらネームレスというソルシエラと共通点のある存在もいるようですし」
ルカちゃんの頬がつり上がっていく。
とても愉快そうに笑っていた。
「知識が、私をさらに満たすでしょう……! あー、気持ちいい」
「喜んでくれて何よりっす」
……うーん。
『どうしたんだい?』
いや、ルカちゃんが想像と違うというか、俺の知る内海ルカじゃないというか。
どうにも、元気で明るいんだ。
内海ルカは、もっと静かで、ダウナー気味で、悲観的な少女だった筈だ。
生徒会長が何か提案して、それをルカちゃんが悲観的に突っ込むみたいな感じだったんだけど。
やっぱりこうして実際に会うと原作と違う人もいるんだな。
あっちも好きだけど、こっちも良いね。
「それに……貴女へと知識をインストールしていたという件も気になりますね。なぜ貴女だったのかがわからない。一応、体の方も検査しておきましょう。幸い、ベッドにはまだ空きがあります」
「珍しいっすね。ルカさんのとこが空くなんて」
その言葉に首を傾げる俺達を見て、ミユメちゃんはまるで自分の事のように自信満々に説明を始めた。
「この人は凄いんすよ! 魔法式による医療を研究している最先端の癒し手なんす! その効果は絶大で、他校からの申し込みも多いんすから!」
「あっちは怪我や病気を治せる。私は新しい魔法式を試せる。win-winです。最近も、騎双学園からなんで生きているのかわからないレベルに衰弱しきった少女が来て……いやぁ、アレは痺れましたね」
うっとりした様子でルカちゃんはそう言った。
「今日中に検査をしますから。今日は本校舎にいてくださいね」
「はいっす」
ミユメちゃんは従順に頷く。
うーん、ミユメちゃんの事も話したし、ネームレスについても何も知らないしそろそろここから去ろうかしら。
俺だけ美少女じゃないってのも忍びないしね。
そう思い、腰を上げたその時だった。
「――ミユメちゃんが帰ってきたって聞いたのだけれど、本当!?」
紙や機械をなぎ倒しながら、新たな美少女が姿を現した。
なんだこの美少女……俺のデータにないぞ!
『いつもだろ』
その美少女は茶髪にふわふわのロングヘアで、まるでミユメちゃんの未来のような容姿をしている。
ジルニアス学術院の美少女がここに集まりだしてるの?
確変入った?
「あ、お姉ちゃん」
お姉ちゃん!?
ミユメちゃんお姉ちゃんいたの!?
君、妹属性も兼ね備えていたのか! 御見それいたした。
「もー! 心配したんだから! ミユメちゃんが帰ってないって聞いて、私がどれだけ探し回ったか」
「心配しすぎっすよー! ちょっと、皆の前でやめてほしいっす。恥ずかしいっすから」
ミユメちゃんは、お姉ちゃんに抱きしめられながら顔を赤らめている。
見たまえ星詠みの杖君。
アレが、姉妹百合。
生まれながらにして持つ者と持たざる者が決まる属性だ。
『おお……! 興味深い……!』
アレは努力でどうにかなるものではないからね。
俺達は敗者としてあれを眺めよう。
どれ、一つ心の中で手でも合わせようじゃないか。
ありがたや。
「あ、この子たちが連れてきてくれたの?」
「そうっす。フェクトム総合学園のトアちゃんとケイっす」
「そっかそっか、ありがとうね! 私は空無カノン! この子のお姉ちゃんで、そっちの寝不足ちゃんの同級生でーす!」
「うるさ……。ちょっと、引っ付かないでください。……ええい! 文字が読めんから揺らすなぁ!」
ルカちゃんはカノンちゃんに肩をゆすられて遂にそう叫んだ。
これがジルニアス学術院の百合園なのか。
これはこれで……!
「で、ミユメちゃんはどうして帰ってこなかったの? 家出?」
その言葉に、場の空気が僅かに淀む。
ミユメちゃんから言わせるのは酷だろう。
「俺から説明します――」
そうして俺はミユメちゃんとの出会いと、ネームレスとの接触までを説明した。
カノンちゃんは、黙って聞いていたが、表情が顔に出やすいのだろう。
最後には明らかに怒っているようだった。
「つまり、ミユメちゃんに余計な事をした奴がいるんだね。知識のインストール……はあ、やめてほしいなぁ」
「それと、パーティーを追放した生徒たちですね。私とカノンがいるというのに、随分と豪胆というか、馬鹿というか」
「あ、それは大丈夫」
カノンちゃんは、パッと表情を切り換えて言った。
「だって、ミユメちゃんにそういう事するならその程度ってことでしょ? ジルニアス学術院では生き残れないよ」
暗に、無視しろと、取るに足らない存在だと、そう言っていた。
それよりもネームレスに対してご立腹のようである。
「それにしても、ルカちゃんの所で検査かぁ。じゃあ、一緒にあの事件は追えないね」
「え? 事件ってなんすか?」
ミユメちゃんが興味を持った事が嬉しかったのか、カノンちゃんは鼻を鳴らす。
「ジルニアス学術院にはね、今幽霊が出るって噂なんだ。幽霊を見た者も幽霊になるっていう怖ろしい噂なんだよね」
「それってまたどこかの研究所から魔物が脱走したんじゃないっすか?」
「それかダイブギアに変な新機能を搭載しようとしたか。一か月前は、『怪奇! 虹色発光人間』でしたか? 結局は夜間活動可能なようにダイブギアをいじった結果の失敗作だったじゃないですか」
「君たち、夢がないね!?」
カノンちゃんは見るからにショックを受けた様子だった。
がすぐに気を取り直すと俺達の方を向く。
ロックオンされている気がするんだが。
「ねえねえ、君たちは興味ない? 一緒にジルニアス学術院の謎を解き明かそうぜ!」
「そう言って、貴女自身は研究所に籠る気でしょ。その子達を足に使ってやろうって考えが透けて見えます」
美少女の足にしていただける!?
喜んでこの身を差し出しましょう!
「あはは、バレた? で、どうかな? ジルニアス学術院のこのカノン様と関係を結べるって、中々ないぜ? 自慢じゃないが、私のダイブギア開発は既に向こう一年は予約で埋まっているんだ!」
「あ、フェクトム総合学園のは私が作るっすから、横取りしないでほしいっす!」
「ああそうなの? うーん、じゃあ他に何か欲しいものない? 作ってあげるけど」
え?
マジ? TSマシンの棚ぼた展開きた!?
おいおいおいおい、追い風吹いてるねえ!
よっしゃ、適当に理由つけてTSマシン作って貰おうぜ!
「それなr「今のところは何もいらないですよ」……そうです」
トアちゃん、そんな謙虚な……。
「それに、別にそんな事が無くても私たちは力を貸しますよ」
「え?」
俺はトアちゃんの顔を見る。
見れば、やる気に満ち溢れていた。
「もしかしたら、幽霊騒ぎでネームレスに関する手掛かりが掴めるかもしれないでしょ? 何か情報は持ち帰るべきだよ。 ……それに」
トアちゃんはそっと俺に耳打ちをして来る。
美少女の囁きボイス!!!!!
「ここで恩を売っておけば、あとでミロクちゃんに上手い事使って貰えるかも」
優しいし、賢い!
美少女ポイント一億点!
『君が美少女に点数をつけるとは烏滸がましいとは思わないかね』
ポイント制度、廃止!!!!
それにしても……幽霊騒ぎか。
『気になるのかい?』
ああ。
ミユメちゃんの追放から考えると、あまりにもタイミングが良すぎる。
親しい身内からの依頼。
明かな狂言回しの姉。
メタ推理するなら、これはスピンオフの最初の話だろう。
そうなると、ネームレスはスピンオフの関係者っぽくないな。
あれのせいでミユメちゃんは幽霊騒ぎに参加できずに、話が拗れている。
ソルシエラのことを知っていたり、同じ魔法を使ったり、スピンオフにしては設定にノイズが多すぎる。
端的に言って、キャラクターとして浮いているのだ。
そうなると幽霊騒ぎに首を突っ込んでもネームレスの事はわからないだろう。
ミユメちゃんとずっと一緒にいたほうがまだ可能性がある。
と、そこまで考えて俺は目の前の影に気が付いた。
「ん?」
それは、両手を広げたカノンちゃんの姿だった。
「それじゃあ、よろしく頼むよ、新しい助手達!」
パッと手を広げて、カノンちゃんは俺とトアちゃんを抱きしめる。
あー、駄目です!
胸が大きいのもさらに駄目です!
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まだ何も言ってない!?
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