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三章 閃きジーニアス
第77話 追放テンプレート
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ジルニアス学術院について、実は俺はよく知らない。
原作でジルニアス学術院は四大校の中でもトウラク君が直接話に絡まなかったからである。
ジルニアス学術院の生徒がちょくちょく出てきて、イカレタ発明品を置いていくことはあっても舞台として取り上げられることは無かった。
だから、俺は目の前の美少女について何も知らない。
救援はミズヒ先輩のおかげで簡単だった。
元々、そこまでの難易度ではない低ランクのダンジョンという事もあるのだろう。
その場に一人だけいたその美少女は、俺達へと勢いよく頭を下げる。
「――ありがとうっす。おかげで助かったっす!」
茶髪セミロングで大きい胸。
パッと見どこにでも居そうな美少女だが、その口調が余りにも濃すぎた。
君、ネームドだったりしない?
「無事で良かった。それにしても一人か? いくらDランクのダンジョンといえど、一人では危ないだろう」
ミズヒ先輩の言う通り、複数人で攻略するのがダンジョンの基本である。
最低でも二人。
一人で行動など、Aランクからやることだ。
それにしても困ったな。
まだジルニアス学術院の生徒と会う予定は無かったんだけど。
いや、まずは新たな美少女に出会えたことに感謝だな。
「それは事情があって……あ、その前にまずは私の自己紹介っすね」
美少女はそう言うと、人懐っこい笑みを浮かべた。
「私、空無 ミユメっす! ジルニアス学術院整備科の一年生で、趣味は開発。基本的にはダイブギアの修理とかしてるっす」
空無ミユメ……そんな。こんな美少女は俺のデータに無いぞ……!
『君のデータ割と穴だらけじゃないか』
うるせえ。
それにしても、美少女だね。
うーん、キャラとしては後輩キャラか。
同学年だが、キャラの絡みとしては強い。
ソルシエラと組み合わせるとしたら、クールな主と元気な助手で絵面も良い。
決めた。
この子に色々と融通してもらおう。
例えTSマシンをこの子が作れなくても、作れる知り合いを紹介してくれるようにお願いしようか。
美少女なんだし、知り合いも多いだろ。そんでもって、その知り合いも美少女であれ。
「整備科……? ますます一人でいる理由がわからないな」
確かに、ミズヒ先輩の言う通りわからない。
なんでだろうね。整備科だけど強いっていう訳でもなさそうだし。
「いやぁ、それが私……このダンジョンの攻略中にパーティーから追放されちゃって」
どこか恥ずかし気に、悲観した様子もなくミユメちゃんはそう言った。
追放……?
え、現代ダンジョンで追放されるタイプの人……?
まるで主人公みたいだねぇ。
「わざわざ、ダンジョン内で……」
ミズヒ先輩の険しい表情を見て、俺も察する。
確かに、おかしい。
というか、それ殺そうとしてない?
俺、すっごく身に覚えがあるんだけど。
この体の前の持ち主がまさにその先駆者だったんだけど。
「まあ、端的に言ってしまえば殺そうとしたんすよね、私を。いやぁ、急にダンジョンの奥地に置いて行かれたから焦ったっすよー。ダイブギアがあって助かったっす」
「……そうか。間に合ってよかった」
なんとも言えない表情のミズヒ先輩。
そして俺も何を言えば言いのかわからない。
だって、この子殺されかけたんだよ?
それもパーティーを追放されて。
美少女にする仕打ちじゃねえだろ。
「もうBランクの探索者になれたから私のダイブギア整備はいらないらしいんすよ。誰がダイブギアのシステムを改造してあげたのか思い出して欲しいっす! 役立たずの整備師なんて言われて、流石に怒ってるっすよー!」
ん?
なんか、俺の思ってた美少女と違うぞ?
つまり、君はパーティーの強化に物凄く貢献していたけど、そのありがたみを忘れた奴らに馬鹿にされて追放されたって事?
「……ちなみに、空無さん。そのダイブギアのシステムって君が定期的にダイブギアの整備しなかったら機能しなくなったりします?」
『どうしたんだ急にそんなピンポイントな事を聞いて』
いや、ちょっと気になることがあって。
もしも俺の予想が正しいのなら、この子はただの美少女じゃない。
「ミユメでいいし、敬語もなしっすよー。それにしても、よくわかったっすね。そうっすよ。そもそもダイブギアはリアルタイムで持ち主の体を参照してるんすから、一日ごとに必ず誤差が生まれるっす。だから、毎日の整備は欠かせないんすよね」
「その事はパーティーにはきちんと説明したの?」
ミユメちゃんは、首を横に振って「言っても理解しないっすから」と言った。
ジルニアス学術院の生徒が理解をしないとか、それでいいのか。
だが、これで一つの可能性が浮かんだ。
この子が、追放系テンプレ主人公の可能性である。
「それがどうかしたっすか?」
「いや、なんでもない」
境界のルトラ本編で、ジルニアス学術院のストーリーが無いのは知っていた。
だから油断していた。
ソシャゲもあったんだし、スピンオフが俺の知らないところで生まれてもおかしくないよなぁ。
原作者はスピンオフなら騎双学園かクローマ音楽院だと言っていたが、明らかにこの子の纏う主人公力が高すぎる。
そうかぁ、ジルニアス学術院のスピンオフかぁ。
そうなると俺達は間違いなく――
「イレギュラーだな」
「え? イレギュラー?」
「ああ、こっちの話だよ。ごめん」
つまりこういう事だ。
【ジルニアス学術院の追放者~私の組んだ特殊プログラムが無いと君たちは強くなれないっすけど、もうどうでもいいっすよね。こっちは好きにやらせてもらうっす~】
である。
こんな所でまさか主人公美少女様と出会うとは。
ありがたやありがたや……!
このストーリーって本当はどうなる予定だったんだろう。
誰かがこの窮地を救ったのか、それともミユメちゃんが何かを閃いて窮地を脱したのか。
「ちなみに、このまま誰も来なかったらどうなってたの?」
「死んでたっすね。脱出もできそうにないし、ダンジョン主は倒せないし」
「誰か、助けてくれる人に心当たりは?」
「うーん、別に?」
うーん、どっちが正史かわからんな。
「ケイ、急にそんな事を聞いてどうしたんだ」
「……少し気になったので」
いかんいかん。
こんな所で聞かなくても良い事だったな。
取り敢えず今はこの子と一緒に行動して、スピンオフストーリーっぽい所を見つけたらフワッと軌道修正して、スルッと消えるのが良さそうだ。
後、せっかくだしTSマシンを作れる人とかも紹介してもらおう。
「ミズヒ先輩、一度フェクトム総合学園にこの人と帰りませんか? 彼女が生きているとわかったら、またすぐに彼女をここに置いていった奴らが仕掛けてくるかもしれません」
「確かにそうだな」
この方は美少女主人公様である。
丁重に扱わなければならない。
恐らく、俺達がなんらかのイベントなりフラグなりをへし折ってしまっている。
代案を見つけるまでは共に行動しなければ。
『なんかゴチャゴチャ言っているけど、新しい美少女と少しでも長くいたいだけだよね?』
クール×元気娘!
『隠す気ないねぇ』
後で、ソルシエラで接触してみたーい^^
原作関わってないなら少しくらい接触しても平気やろ、わはは。
大丈夫大丈夫、きちんと最後にはこの子のストーリーに戻すから。
俺、そういうのたくさん読んでいるから話の流れを見極めるのには自信があるんだ。
「というわけで、ミユメちゃんさえ良ければ一度フェクトム総合学園に来ないか?」
「いいんすか? 私、何もお礼はできないっすよ?」
「大丈夫だ。私たちは狭量な学園ではないからな」
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔するっす」
ミユメちゃんはそう言ってぺこりと頭を下げる。
うーん、確かにこうして見ると可もなく不可もなくな髪型と髪色だ。
主人公というか、キャラクリの最初のテンプレというか……本当に見れば見る程主人公だな、この子。
ジルニアス学術院のスピンオフってことはメインストーリーには深く絡まないだろうし、話の規模は小さいだろうな。
美少女同士が集まった開発系ゆるふわ話だったらどうしよう。
話を初っ端からへし折った俺が大戦犯になっちゃう。
ミユメちゃんに関わったことが罪になっちゃう。
『それなら照上ミズヒも同じ罪を背負うんじゃないのかい?』
あの人は美少女だからいいんだよ何言ってんだ。
原作でジルニアス学術院は四大校の中でもトウラク君が直接話に絡まなかったからである。
ジルニアス学術院の生徒がちょくちょく出てきて、イカレタ発明品を置いていくことはあっても舞台として取り上げられることは無かった。
だから、俺は目の前の美少女について何も知らない。
救援はミズヒ先輩のおかげで簡単だった。
元々、そこまでの難易度ではない低ランクのダンジョンという事もあるのだろう。
その場に一人だけいたその美少女は、俺達へと勢いよく頭を下げる。
「――ありがとうっす。おかげで助かったっす!」
茶髪セミロングで大きい胸。
パッと見どこにでも居そうな美少女だが、その口調が余りにも濃すぎた。
君、ネームドだったりしない?
「無事で良かった。それにしても一人か? いくらDランクのダンジョンといえど、一人では危ないだろう」
ミズヒ先輩の言う通り、複数人で攻略するのがダンジョンの基本である。
最低でも二人。
一人で行動など、Aランクからやることだ。
それにしても困ったな。
まだジルニアス学術院の生徒と会う予定は無かったんだけど。
いや、まずは新たな美少女に出会えたことに感謝だな。
「それは事情があって……あ、その前にまずは私の自己紹介っすね」
美少女はそう言うと、人懐っこい笑みを浮かべた。
「私、空無 ミユメっす! ジルニアス学術院整備科の一年生で、趣味は開発。基本的にはダイブギアの修理とかしてるっす」
空無ミユメ……そんな。こんな美少女は俺のデータに無いぞ……!
『君のデータ割と穴だらけじゃないか』
うるせえ。
それにしても、美少女だね。
うーん、キャラとしては後輩キャラか。
同学年だが、キャラの絡みとしては強い。
ソルシエラと組み合わせるとしたら、クールな主と元気な助手で絵面も良い。
決めた。
この子に色々と融通してもらおう。
例えTSマシンをこの子が作れなくても、作れる知り合いを紹介してくれるようにお願いしようか。
美少女なんだし、知り合いも多いだろ。そんでもって、その知り合いも美少女であれ。
「整備科……? ますます一人でいる理由がわからないな」
確かに、ミズヒ先輩の言う通りわからない。
なんでだろうね。整備科だけど強いっていう訳でもなさそうだし。
「いやぁ、それが私……このダンジョンの攻略中にパーティーから追放されちゃって」
どこか恥ずかし気に、悲観した様子もなくミユメちゃんはそう言った。
追放……?
え、現代ダンジョンで追放されるタイプの人……?
まるで主人公みたいだねぇ。
「わざわざ、ダンジョン内で……」
ミズヒ先輩の険しい表情を見て、俺も察する。
確かに、おかしい。
というか、それ殺そうとしてない?
俺、すっごく身に覚えがあるんだけど。
この体の前の持ち主がまさにその先駆者だったんだけど。
「まあ、端的に言ってしまえば殺そうとしたんすよね、私を。いやぁ、急にダンジョンの奥地に置いて行かれたから焦ったっすよー。ダイブギアがあって助かったっす」
「……そうか。間に合ってよかった」
なんとも言えない表情のミズヒ先輩。
そして俺も何を言えば言いのかわからない。
だって、この子殺されかけたんだよ?
それもパーティーを追放されて。
美少女にする仕打ちじゃねえだろ。
「もうBランクの探索者になれたから私のダイブギア整備はいらないらしいんすよ。誰がダイブギアのシステムを改造してあげたのか思い出して欲しいっす! 役立たずの整備師なんて言われて、流石に怒ってるっすよー!」
ん?
なんか、俺の思ってた美少女と違うぞ?
つまり、君はパーティーの強化に物凄く貢献していたけど、そのありがたみを忘れた奴らに馬鹿にされて追放されたって事?
「……ちなみに、空無さん。そのダイブギアのシステムって君が定期的にダイブギアの整備しなかったら機能しなくなったりします?」
『どうしたんだ急にそんなピンポイントな事を聞いて』
いや、ちょっと気になることがあって。
もしも俺の予想が正しいのなら、この子はただの美少女じゃない。
「ミユメでいいし、敬語もなしっすよー。それにしても、よくわかったっすね。そうっすよ。そもそもダイブギアはリアルタイムで持ち主の体を参照してるんすから、一日ごとに必ず誤差が生まれるっす。だから、毎日の整備は欠かせないんすよね」
「その事はパーティーにはきちんと説明したの?」
ミユメちゃんは、首を横に振って「言っても理解しないっすから」と言った。
ジルニアス学術院の生徒が理解をしないとか、それでいいのか。
だが、これで一つの可能性が浮かんだ。
この子が、追放系テンプレ主人公の可能性である。
「それがどうかしたっすか?」
「いや、なんでもない」
境界のルトラ本編で、ジルニアス学術院のストーリーが無いのは知っていた。
だから油断していた。
ソシャゲもあったんだし、スピンオフが俺の知らないところで生まれてもおかしくないよなぁ。
原作者はスピンオフなら騎双学園かクローマ音楽院だと言っていたが、明らかにこの子の纏う主人公力が高すぎる。
そうかぁ、ジルニアス学術院のスピンオフかぁ。
そうなると俺達は間違いなく――
「イレギュラーだな」
「え? イレギュラー?」
「ああ、こっちの話だよ。ごめん」
つまりこういう事だ。
【ジルニアス学術院の追放者~私の組んだ特殊プログラムが無いと君たちは強くなれないっすけど、もうどうでもいいっすよね。こっちは好きにやらせてもらうっす~】
である。
こんな所でまさか主人公美少女様と出会うとは。
ありがたやありがたや……!
このストーリーって本当はどうなる予定だったんだろう。
誰かがこの窮地を救ったのか、それともミユメちゃんが何かを閃いて窮地を脱したのか。
「ちなみに、このまま誰も来なかったらどうなってたの?」
「死んでたっすね。脱出もできそうにないし、ダンジョン主は倒せないし」
「誰か、助けてくれる人に心当たりは?」
「うーん、別に?」
うーん、どっちが正史かわからんな。
「ケイ、急にそんな事を聞いてどうしたんだ」
「……少し気になったので」
いかんいかん。
こんな所で聞かなくても良い事だったな。
取り敢えず今はこの子と一緒に行動して、スピンオフストーリーっぽい所を見つけたらフワッと軌道修正して、スルッと消えるのが良さそうだ。
後、せっかくだしTSマシンを作れる人とかも紹介してもらおう。
「ミズヒ先輩、一度フェクトム総合学園にこの人と帰りませんか? 彼女が生きているとわかったら、またすぐに彼女をここに置いていった奴らが仕掛けてくるかもしれません」
「確かにそうだな」
この方は美少女主人公様である。
丁重に扱わなければならない。
恐らく、俺達がなんらかのイベントなりフラグなりをへし折ってしまっている。
代案を見つけるまでは共に行動しなければ。
『なんかゴチャゴチャ言っているけど、新しい美少女と少しでも長くいたいだけだよね?』
クール×元気娘!
『隠す気ないねぇ』
後で、ソルシエラで接触してみたーい^^
原作関わってないなら少しくらい接触しても平気やろ、わはは。
大丈夫大丈夫、きちんと最後にはこの子のストーリーに戻すから。
俺、そういうのたくさん読んでいるから話の流れを見極めるのには自信があるんだ。
「というわけで、ミユメちゃんさえ良ければ一度フェクトム総合学園に来ないか?」
「いいんすか? 私、何もお礼はできないっすよ?」
「大丈夫だ。私たちは狭量な学園ではないからな」
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔するっす」
ミユメちゃんはそう言ってぺこりと頭を下げる。
うーん、確かにこうして見ると可もなく不可もなくな髪型と髪色だ。
主人公というか、キャラクリの最初のテンプレというか……本当に見れば見る程主人公だな、この子。
ジルニアス学術院のスピンオフってことはメインストーリーには深く絡まないだろうし、話の規模は小さいだろうな。
美少女同士が集まった開発系ゆるふわ話だったらどうしよう。
話を初っ端からへし折った俺が大戦犯になっちゃう。
ミユメちゃんに関わったことが罪になっちゃう。
『それなら照上ミズヒも同じ罪を背負うんじゃないのかい?』
あの人は美少女だからいいんだよ何言ってんだ。
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