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二章 蒼星の少女
第63話 奪還と決意
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ビル全体に響く大きな揺れに、トアは足を止めた。
「……ケイ君」
六波羅の足止めとして自ら残った青年の姿が脳裏に浮かぶ。
彼が強いという事は知っていた。
しかし、いざ残してしまうとどうしようもない不安と恐怖が時間の経過と共に心の奥底からせり上がってくる。
「トア、足を止めるな。信じると決めたのだ。そうだろう?」
「……うん、そうだね」
トアが歩き出した姿を見て、ミズヒはそれでよいと頷き警備兵を投げ捨てる。
ミズヒの足元には何人もの警備兵や警備ロボットの残骸が転がっていた。
「あの配信者のくれたデータによると……間もなくだな」
中央区に響く爆破音や、サイレンの音によって既に隠密行動は意味をなさなくなっている。
ミズヒ達は向かってくる敵を全てなぎ倒し、やがて一つの扉の前に立った。
「ここか」
真っ白な扉は、本来は公開されていない実験施設への入口である。
(ここで非合法な実験が行われている……ミロクもその被害者の一人なのだろう)
ミズヒは扉に銃口を押し付けると、「行くぞ、トア」と言って引金を引いた。
爆破によって扉が吹き飛ばされる。
自身の能力によってまだ火が残っている入り口を超えて、ミズヒは中へと足を踏みいれた。
「――ミズヒ?」
真っ白な部屋に、彼女はいた。
人とみなされていないであろう実験用病衣を着て、少しだけやつれた表情をしている。
が、それは間違いなくミズヒの知る蒼星ミロクの姿だった。
「あ、ミロクちゃん!」
トアもミロクを見つけて嬉しそうに声を上げる。
が、対してミロクは顔を背けて目を合わせようとはしない。
ミズヒは表情を変えずにミロクに一言告げる。
「帰るぞ」
ミロクは首を横に振るだけだ。
それを見て、ミズヒは何を言うでもなく力づくでミロクを連れ帰るために一歩踏み出す。
その時だった。
『あー、駄目だよ。それは私の大切な実験体なんだから』
部屋に取り付けられたスピーカーから声が響く。
声の主は、部屋の上部にあるガラス張りの部屋の向こうにいた。
ボロボロの肌をそれでも気にせずに掻きむしるおぞましい少女が一人、ミズヒ達を見下ろしている。
「……あれは」
『私の事は知っているかな? 騎双学園稀代の天才。そう、プロフェッサーだ。と言っても、表舞台に立つことは殆どないのだがね。まさか、君たち程度の侵入者がここまで来るとは思わなかったよ。素晴らしいね、フェクトム総合学園の生徒は』
品定めをするような言葉。
ミズヒはプロフェッサーに銃口を向けると、迷わず弾丸を放った。
が、それは不可視のバリアによって受け止められる。
『他愛もない攻撃だ。研究する価値もない。私もここで無駄に戦いたくはないのだが……仕方がない』
プロフェッサーが手元のコンソールを操作する。
その瞬間、彼女のいるガラス張りの部屋の真下が開き、一匹の薄汚れた犬が現れた。
犬の放つ魔力と既存の犬からかけ離れた大きさからそれが魔物であると、ミズヒは断定した。
「コイツを殺してさっさとミロクを連れ帰るぞ」
「うん!」
トアが重砲を顕現させ構える。
その姿を見て、ミロクは口を開いた。
「……何をやっているんですか? まさか、戦うつもりじゃないですよね」
「戦うしかあるまい。元より、無理矢理にでも連れ帰る所存だ」
「ミロクちゃん、帰ろうよ!」
二人の前に、悠然と犬型の魔物が立ち塞がる。
それは、まるでミロクを守っているように見えた。
『まさか、オルトロスを倒すつもりか? 君たちのような凡百な探索者が? ははははは、あり得ないね。それは私の作り上げた一つの作品だ。……まあ、シエルの演算込みでの完成品なのだが』
プロフェッサーが、再びコンソールを操作する。
すると、オルトロスは大きく咆哮した。
同時に、壁面に取り付けてあった水槽が淡い光を放ち始める。
『……っ』
「ナナちゃん、大丈夫ですか」
『問題ありません。演算は私の領分です故』
オルトロスと接続されたシエルの表情が一瞬、歪む。
ミロクが心配そうに声を掛けると、少女は変わらぬ様子で頷いた。
『流石はデモンズギア。それではオルトロスの運用実験をするとしよう。成功すれば、あのクズの作ったウロボロスを超える事ができる筈だ!』
昂り笑うプロフェッサーは、無邪気な子供のようにコンソールを激しく操作した。
「来るぞ、トア!」
「うん!」
オルトロスの口が、ユックリと開く。
ミズヒはその隙をついて何発が銃弾を打ち込むが、まるで効いていない様子だ。
「っ、これは高密度の魔力障壁!?」
『私の発明に隙なんてある訳がないだろう!』
オルトロスの口から光が瞬く。
やがてそれは、ミズヒ達へと向かって放たれた。
「ッ!」
「きゃぁっ!?」
ミズヒは咄嗟にトアへと飛びつき、その勢いのまま転がった。
間もなく、今まで二人がいた場所を閃光が通り抜ける。
オルトロスは、そのまま無造作に光線を放ったまま勢いを殺しきれずに首を持ち上げ天井までをも撃ち貫いた。
溶解し、赤熱した大穴の向こうには夜空が広がっている。
『素晴らしい! これ程の威力とは思わなかった。シエルの演算でこれだけ出力が向上するとは……!』
『誤差調整。次は、反動を抑えます故。天井を貫くような事もないでしょう』
ミズヒはその光景を見て、唾を呑む。
圧倒的な力だった。
一瞬でも判断が遅れていれば死んでいたと理解している体が本能的に震えている。
トアもまた、呆気に取られているようだった。
今まで眼にしたソルシエラの光とは違う。
明確に殺意を持った機械的な光。
人を殺すことを厭わない者の放つ光だ。
「――ミズヒ、トアちゃんと一緒に逃げてください」
ミロクは、淡々と言った。
「貴女は、これからフェクトム総合学園を守っていかなければならないんです。これ以上、無駄なことはしないでください」
「……そうか」
ミズヒは立ち上がる。
そして、銃を構えてオルトロスを睨みつけた。
「やはり、一度ぶっ叩いてやらなければ今のお前は理解出来ないらしい」
「っ、この分からず屋が……! ナナちゃん、お願いします」
オルトロスが咆哮する。
ミズヒはそれよりも早く駆け出していた。
(この巨体……単体ではまともに動けまい。プロフェッサーもご丁寧にあの少女が必要だと言っていた。なら、それらを繋ぐあの機械が無ければこれは無力化できる)
オルトロスへの攻撃を諦めて、ミズヒはそのままオルトロスを横切るとミロクの横にある機械へと銃口を向けた。
少女の浮かんでいる水槽と、それを支える機械的な台座。
それこそがオルトロスの強さの根幹であると知った今、狙うのはそれだけで良い。
『そんな行動、既に予測しています故』
「ッ!? がぁっ!」
横合いから、突然の凄まじい衝撃にミズヒは壁へと叩きつけられる。
(今のは……尾の攻撃か?)
飛びそうになる意識を無理矢理起こして、ミズヒは鞭のようにしなる尾を見る。
(犬の形状から尾による攻撃は予想していなかった。成程、流石にそう簡単にはいかないか)
ミズヒはすぐに行動の方針を変えた。
「トア!」
「……っ! うん!」
名前を呼ばれて、トアは何が必要なのかを即座に理解した。
そして、重砲を構えると辺りにいくつもの魔法陣を展開させる。
それは、魔法の極致とされる収束砲撃の魔法陣に他ならない。
「私がいるのに、トアちゃんのそれを撃たせると思いますか?」
「撃たせるとも。その為に私がいる」
ミズヒは再びシエルの台座へと走り出す。
そして、銃弾をいくつも放った。
(近くにミロクがいる以上、無駄に銃弾を爆破させる事は出来ない。確実に、狙い撃つ)
銃弾の一つ一つが、台座をとらえた凶弾である。
故に、オルトロスはそれを尾を使って防いだ。
「まだ私の銃弾は生きているぞ」
弾かれた銃弾が、焔となって形を形成する。
それは台座を囲うように配置された弾丸となって、台座へと降り注いだ。
「っ、そんな攻撃私は……!」
「知らないだろう、ミロク。学園を去った気になっている今のお前は知るはずもない!」
もはや尾で防げる数を超えている。
オルトロスは駆け出すと、台座とミロクの前に立ちはだかりその弾丸を全て体に展開した魔力障壁で受け止めた。
それを見て、ミズヒは笑う。
「動いたな? 私を相手にするには、動く必要があると理解したな?」
「……まさか、ミズヒ貴女はトアちゃんの収束砲撃が撃てるようになるまで時間稼ぎをするつもりですか」
「いや、本気で壊しに行く。二の矢としてトアを用意したそれだけだ」
防御をするオルトロスを見て、ミズヒは駆け出しいくつも銃弾を放つ。
「コイツは強力だが、それ故にまだ制御しきれていない。私とトアをどちらも相手にする事など出来ない」
ミズヒの作戦、それはオルトロス本体と、それを制御する為に必要な台座の同時攻略である。
(私が引きつけ、トアの収束砲撃で本体を殺す。あの障壁を超えるには収束砲撃しかない。あるいは――)
もう一つ、案が浮かぶがそれをミズヒは不確定として切り捨てた。
『はぁ』
動き回るミズヒの姿を見て、プロフェッサーは呆れたようにため息をつく。
『あー、そういうのは既に私も理解していると思わないのか? まったく、これだから馬鹿な子供は嫌いだ』
プロフェッサーの言葉が響く。
シエルも、驚いた様子もなくただ演算を続けていた。
『演算完了。ミズヒ、貴女がオルトロスと戦闘した場合は七手で詰みます故』
「なら試してみろ」
ミズヒは不敵に笑う。
そして台座へと引金を引いた。
「……ケイ君」
六波羅の足止めとして自ら残った青年の姿が脳裏に浮かぶ。
彼が強いという事は知っていた。
しかし、いざ残してしまうとどうしようもない不安と恐怖が時間の経過と共に心の奥底からせり上がってくる。
「トア、足を止めるな。信じると決めたのだ。そうだろう?」
「……うん、そうだね」
トアが歩き出した姿を見て、ミズヒはそれでよいと頷き警備兵を投げ捨てる。
ミズヒの足元には何人もの警備兵や警備ロボットの残骸が転がっていた。
「あの配信者のくれたデータによると……間もなくだな」
中央区に響く爆破音や、サイレンの音によって既に隠密行動は意味をなさなくなっている。
ミズヒ達は向かってくる敵を全てなぎ倒し、やがて一つの扉の前に立った。
「ここか」
真っ白な扉は、本来は公開されていない実験施設への入口である。
(ここで非合法な実験が行われている……ミロクもその被害者の一人なのだろう)
ミズヒは扉に銃口を押し付けると、「行くぞ、トア」と言って引金を引いた。
爆破によって扉が吹き飛ばされる。
自身の能力によってまだ火が残っている入り口を超えて、ミズヒは中へと足を踏みいれた。
「――ミズヒ?」
真っ白な部屋に、彼女はいた。
人とみなされていないであろう実験用病衣を着て、少しだけやつれた表情をしている。
が、それは間違いなくミズヒの知る蒼星ミロクの姿だった。
「あ、ミロクちゃん!」
トアもミロクを見つけて嬉しそうに声を上げる。
が、対してミロクは顔を背けて目を合わせようとはしない。
ミズヒは表情を変えずにミロクに一言告げる。
「帰るぞ」
ミロクは首を横に振るだけだ。
それを見て、ミズヒは何を言うでもなく力づくでミロクを連れ帰るために一歩踏み出す。
その時だった。
『あー、駄目だよ。それは私の大切な実験体なんだから』
部屋に取り付けられたスピーカーから声が響く。
声の主は、部屋の上部にあるガラス張りの部屋の向こうにいた。
ボロボロの肌をそれでも気にせずに掻きむしるおぞましい少女が一人、ミズヒ達を見下ろしている。
「……あれは」
『私の事は知っているかな? 騎双学園稀代の天才。そう、プロフェッサーだ。と言っても、表舞台に立つことは殆どないのだがね。まさか、君たち程度の侵入者がここまで来るとは思わなかったよ。素晴らしいね、フェクトム総合学園の生徒は』
品定めをするような言葉。
ミズヒはプロフェッサーに銃口を向けると、迷わず弾丸を放った。
が、それは不可視のバリアによって受け止められる。
『他愛もない攻撃だ。研究する価値もない。私もここで無駄に戦いたくはないのだが……仕方がない』
プロフェッサーが手元のコンソールを操作する。
その瞬間、彼女のいるガラス張りの部屋の真下が開き、一匹の薄汚れた犬が現れた。
犬の放つ魔力と既存の犬からかけ離れた大きさからそれが魔物であると、ミズヒは断定した。
「コイツを殺してさっさとミロクを連れ帰るぞ」
「うん!」
トアが重砲を顕現させ構える。
その姿を見て、ミロクは口を開いた。
「……何をやっているんですか? まさか、戦うつもりじゃないですよね」
「戦うしかあるまい。元より、無理矢理にでも連れ帰る所存だ」
「ミロクちゃん、帰ろうよ!」
二人の前に、悠然と犬型の魔物が立ち塞がる。
それは、まるでミロクを守っているように見えた。
『まさか、オルトロスを倒すつもりか? 君たちのような凡百な探索者が? ははははは、あり得ないね。それは私の作り上げた一つの作品だ。……まあ、シエルの演算込みでの完成品なのだが』
プロフェッサーが、再びコンソールを操作する。
すると、オルトロスは大きく咆哮した。
同時に、壁面に取り付けてあった水槽が淡い光を放ち始める。
『……っ』
「ナナちゃん、大丈夫ですか」
『問題ありません。演算は私の領分です故』
オルトロスと接続されたシエルの表情が一瞬、歪む。
ミロクが心配そうに声を掛けると、少女は変わらぬ様子で頷いた。
『流石はデモンズギア。それではオルトロスの運用実験をするとしよう。成功すれば、あのクズの作ったウロボロスを超える事ができる筈だ!』
昂り笑うプロフェッサーは、無邪気な子供のようにコンソールを激しく操作した。
「来るぞ、トア!」
「うん!」
オルトロスの口が、ユックリと開く。
ミズヒはその隙をついて何発が銃弾を打ち込むが、まるで効いていない様子だ。
「っ、これは高密度の魔力障壁!?」
『私の発明に隙なんてある訳がないだろう!』
オルトロスの口から光が瞬く。
やがてそれは、ミズヒ達へと向かって放たれた。
「ッ!」
「きゃぁっ!?」
ミズヒは咄嗟にトアへと飛びつき、その勢いのまま転がった。
間もなく、今まで二人がいた場所を閃光が通り抜ける。
オルトロスは、そのまま無造作に光線を放ったまま勢いを殺しきれずに首を持ち上げ天井までをも撃ち貫いた。
溶解し、赤熱した大穴の向こうには夜空が広がっている。
『素晴らしい! これ程の威力とは思わなかった。シエルの演算でこれだけ出力が向上するとは……!』
『誤差調整。次は、反動を抑えます故。天井を貫くような事もないでしょう』
ミズヒはその光景を見て、唾を呑む。
圧倒的な力だった。
一瞬でも判断が遅れていれば死んでいたと理解している体が本能的に震えている。
トアもまた、呆気に取られているようだった。
今まで眼にしたソルシエラの光とは違う。
明確に殺意を持った機械的な光。
人を殺すことを厭わない者の放つ光だ。
「――ミズヒ、トアちゃんと一緒に逃げてください」
ミロクは、淡々と言った。
「貴女は、これからフェクトム総合学園を守っていかなければならないんです。これ以上、無駄なことはしないでください」
「……そうか」
ミズヒは立ち上がる。
そして、銃を構えてオルトロスを睨みつけた。
「やはり、一度ぶっ叩いてやらなければ今のお前は理解出来ないらしい」
「っ、この分からず屋が……! ナナちゃん、お願いします」
オルトロスが咆哮する。
ミズヒはそれよりも早く駆け出していた。
(この巨体……単体ではまともに動けまい。プロフェッサーもご丁寧にあの少女が必要だと言っていた。なら、それらを繋ぐあの機械が無ければこれは無力化できる)
オルトロスへの攻撃を諦めて、ミズヒはそのままオルトロスを横切るとミロクの横にある機械へと銃口を向けた。
少女の浮かんでいる水槽と、それを支える機械的な台座。
それこそがオルトロスの強さの根幹であると知った今、狙うのはそれだけで良い。
『そんな行動、既に予測しています故』
「ッ!? がぁっ!」
横合いから、突然の凄まじい衝撃にミズヒは壁へと叩きつけられる。
(今のは……尾の攻撃か?)
飛びそうになる意識を無理矢理起こして、ミズヒは鞭のようにしなる尾を見る。
(犬の形状から尾による攻撃は予想していなかった。成程、流石にそう簡単にはいかないか)
ミズヒはすぐに行動の方針を変えた。
「トア!」
「……っ! うん!」
名前を呼ばれて、トアは何が必要なのかを即座に理解した。
そして、重砲を構えると辺りにいくつもの魔法陣を展開させる。
それは、魔法の極致とされる収束砲撃の魔法陣に他ならない。
「私がいるのに、トアちゃんのそれを撃たせると思いますか?」
「撃たせるとも。その為に私がいる」
ミズヒは再びシエルの台座へと走り出す。
そして、銃弾をいくつも放った。
(近くにミロクがいる以上、無駄に銃弾を爆破させる事は出来ない。確実に、狙い撃つ)
銃弾の一つ一つが、台座をとらえた凶弾である。
故に、オルトロスはそれを尾を使って防いだ。
「まだ私の銃弾は生きているぞ」
弾かれた銃弾が、焔となって形を形成する。
それは台座を囲うように配置された弾丸となって、台座へと降り注いだ。
「っ、そんな攻撃私は……!」
「知らないだろう、ミロク。学園を去った気になっている今のお前は知るはずもない!」
もはや尾で防げる数を超えている。
オルトロスは駆け出すと、台座とミロクの前に立ちはだかりその弾丸を全て体に展開した魔力障壁で受け止めた。
それを見て、ミズヒは笑う。
「動いたな? 私を相手にするには、動く必要があると理解したな?」
「……まさか、ミズヒ貴女はトアちゃんの収束砲撃が撃てるようになるまで時間稼ぎをするつもりですか」
「いや、本気で壊しに行く。二の矢としてトアを用意したそれだけだ」
防御をするオルトロスを見て、ミズヒは駆け出しいくつも銃弾を放つ。
「コイツは強力だが、それ故にまだ制御しきれていない。私とトアをどちらも相手にする事など出来ない」
ミズヒの作戦、それはオルトロス本体と、それを制御する為に必要な台座の同時攻略である。
(私が引きつけ、トアの収束砲撃で本体を殺す。あの障壁を超えるには収束砲撃しかない。あるいは――)
もう一つ、案が浮かぶがそれをミズヒは不確定として切り捨てた。
『はぁ』
動き回るミズヒの姿を見て、プロフェッサーは呆れたようにため息をつく。
『あー、そういうのは既に私も理解していると思わないのか? まったく、これだから馬鹿な子供は嫌いだ』
プロフェッサーの言葉が響く。
シエルも、驚いた様子もなくただ演算を続けていた。
『演算完了。ミズヒ、貴女がオルトロスと戦闘した場合は七手で詰みます故』
「なら試してみろ」
ミズヒは不敵に笑う。
そして台座へと引金を引いた。
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