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二章 蒼星の少女

第50話 反省と衣装

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 調子こいてすんませんでした。

 俺は美少女が丹精込めて作った訓練場を破壊した屑です。
 
『だから来るって言っただろう。私を信じないからこうなるんだ』

 言い返せない……。
 俺はただ、初心に帰ろうと思っただけなのに……。

 なんかミズヒ先輩は朝一番に血相変えて出ていったし。
 トアちゃんも不安そうだし、マジで大反省。

『適当な事を言うからこうなるんだよ。自業自得だねぇ』

 ここぞとばかりに正論で俺を殴りつける星詠みの杖。
 クソ……俺が全面的に悪いから何も言い返せねえ……。

 どうやら、ミズヒ先輩達の中ではミロク先輩がなんか危ない事に巻き込まれている事になっているらしい。

 んなわけ。
 俺と一緒に入院してただけだっての。

 そもそも、俺の目の届く場所で美少女が危ない目に会うわけないだろうが。

『傲慢では?』

 うるさいよ。

 とにかく、そういう訳でミズヒ先輩は病院へ。
 トアちゃんは残った書類の整理。
 俺は反省の意を込めて訓練場を直していた。

「……ふう、こんなものか」

 朝の五時から直し始めて今は九時。
 かなり時間がかかったな。

 やっぱり俺が地面に空けた穴が馬鹿デカかったのが良くない。
 気持ちよくなって、ミズヒ先輩の魔力勝手に吸収しちゃったりしてたもん。

『私の解析をさも自分の知識のように語っていたしねぇ』

 ミステリアス美少女は、相手の能力を早い段階で看破しなければならない。
 相手の能力に驚くようじゃ、二流だぜ。

 後、ミズヒ先輩の能力って焔と水じゃなかったんだね。俺、びっくり。

『人の脳は処理能力に限界があるからねぇ。扱いやすいように、無意識に自分にリミッターでもかけていたのだろう』

 かっけぇ。
 俺もリミッター欲しいんだけど。

『ん? あるが?』

 え。

『よもやただの変態に私が完全に使いこなせていると思ったのかい?』

 スーパーミステリアス美少女タイムで完全解放されているかと思った。
 まだまだ、俺は美少女になれるということか?

『いや、まあ……スーパーミステリアス美少女タイムは正直、私もよくわかっていないし。女になったら魔力量が上がるとか……なにあれ、怖。そもそも正式な手順踏んでないのにどうして私の機能を使えるの……?』

 そりゃミステリアス美少女だからだよ。

『別に万能の回答じゃねえぞミステリアス美少女は』

 じゃあ知らないです。

 それよりも俺はさっさと次にいかなければならない。
 俺も美少女見習いとして、先輩方の役に立つっすよ!

『君が張り切ると碌な事にならないんだけどねぇ』

 大丈夫。
 いつもやってるダンジョン救援だから。

 今日はミズヒ先輩が病院に行ったから、代わりに俺がダンジョン救援に行くことになったんだ。

 つまり、おでかけです。
 救援ついでに、必要なものを買いに行こうね。

『ん? 何か必要なのかい?』

 新しい衣装と、下着。
 
『コイツ……』

 明らかに俺に失望した声だったが、勘違いしないでほしい。

 ダンジョン救援はこなす。
 いつもの十倍の速度でこなす。

 そうして作り上げた時間でお買い物に行くんだよ!

『別に後日でもいいじゃないか』

 駄目だ。
 そうやって明日でいいと先延ばしにしているといつまでもミステリアス美少女は同じビジュアルになってしまう。

 ミステリアス美少女を見た人の感想が「いつもこの服着ているけど、これだけ何着も持っているのかな……」だったら嫌だろ!

 俺は実在するミステリアス美少女だぞ!
 細部にこそ魂を宿らせる。細かい気配りが、やがて大きなミステリアス美少女へと繋がるんだ!

『…………ああ、ごめん。言語の接続切ってた。何か言っていたかい?』

 てめぇ!






 ダンジョン救援なんて、俺にとっては楽勝である。
 だって、星詠みの杖君がいるからね!

 サッと避けて、麻痺を食らわせて身体能力をぶちあげて拳でドンよ。
 ははは。まるでチート系だぁ。

 我、星詠みぞ?
 女王の棺? の継承者ぞ?

『なら突飛な行動は謹んで欲しいねぇ』

 時刻は十二時。
 お昼のモヤシ弁当~お肉カスタムver~を食べながら、ダンジョン特区を出た。

 もう十件は救援をこなした。余裕でノルマ達成である。
 なんだか、素でも強くなってきた気がするぜ。

 というか、弁当うめー。肉が入っていると、なおさらうめー!
 トアちゃんの手作りお弁当っていうのがもう美味しい。字面が美味。

 失礼のないようにスーパーミステリアス美少女になって食すくらいには美味しい。
 ありがとう。
 今度は、俺のミステリアス美少女手料理を振舞うよ。

『またこんな事にスーパーミステリアス美少女タイムを使って……。え、嘘。魔力の生産量が消費量を上回ってる……!?』

 美少女の弁当食ってるんだから当たり前だろ。
 今なら、半日はこのままスーパーミステリアス美少女でいけそうです。

『演算したけど、本当に可能じゃん……怖』

 サンキュートアちゃん!

 これで俺は衣装合わせを美少女で出来るぜ!
 下着もなぁ!

『それでもソルシエラの姿では行かないんだね』

 そうだね。

 俺は今那滝ケイとして移動している。
 つまり、男装美少女だ。

 ミステリアス美少女が服屋に普通に買いに来るわけない。
 そもそも、他のSランクに追われている俺がソルシエラで買い物してたらヤバいだろ。
 SNS舐めんな。
 一瞬で広まって、各学園から化物が飛んでくるわ。

『君の中の常識のラインがいまいちわからない……』

 ミステリアス美少女は私生活もミステリアスでなければならない。
 
 後、これから衣装を買いに行く騎双学園にはぶっちぎりでヤバイのがいるから、ソルシエラは自殺行為です。

 騎双学園のSランクは二人いるから気をつけなければならない。
 生徒会長はいつも学園に籠っているから大丈夫だけど、六波羅さんはマジでアカン。
 人の密集している場所でエイナ使われてみろ。

 さくっと人類滅びるぞ。

『ははは、エイナに対する評価が高くて私も鼻が高いよ』

 なんで嬉しそうなんだよ。
 持ち主がビビってんだから、君も真面目にやってよ。

『大丈夫大丈夫。魔法でも使わない限りはエイナが気が付くことは無いよ。その為に今、魔力の放出を抑えているんだから』

 助かる~。
 スーパーミステリアス美少女タイムの度に六波羅さんが来たらやってられねえもん。

 あの人は離れて見るから良いのであって、接触はしたくない。
 檻の向こうのライオンと同じである。

『まあそれでも鉢合わせると確実にバレるから買い物中も気を張って、そして手早く終わらせることだ』

 了解した。
 なに、大丈夫。俺と君の演算能力があれば、素晴らしい衣装を買うことが出来るだろう。

『え、私も考えるのかい?』

 考えないなら俺が勝手に買うけど。
 今度は、少しサイバー寄りで光る衣装とかも良いかと思ってるんだ。
 どうかな。

『前から思っていたが、君は美少女全体が好きなあまり理想の美少女像がブレる所がある。サイバーなら最初からそうするべきだった』

 でも、元からマスクとか光ってるじゃん。
 
『君、最近マスク使わないじゃないか。顔を見せたいという欲求が前面に出過ぎだ。もうマスクは忘れたまえ。そもそも、こっちはゴシックでミステリアスな美少女の為に魔法陣をデザインしたんだから、その路線は絶対に譲らないからな。それにサイバーミステリアス美少女は少し属性過多だ』

 ……はは、見事に引っ掛かったなマヌケェ。

『――ハッ、私は何を口走って……』

 今のがお前の中に眠る美少女ソウルだ。
 悪いが、少しだけ強引に呼び出させて貰ったよ。

『美少女ソウルとかいう無い単語を使われている筈なのに納得した自分がいる』

 俺と君、二人でミステリアス美少女なんだ。
 だから、衣装選びには付き合って貰うよ。
 いいだろ?

『……やれやれ、君には敵わないなぁ』

 もしも星詠みの杖に実体があれば、俺達は握手をしていたことだろう。
 それだけ、俺達の心は通じ合っていたのだ。

「『いえーい! 新衣装!』」

 仲良く探そうね!
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