かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない~現代ダンジョンのある学園都市で、俺はミステリアス美少女ムーブを繰り返す~

不破ふわり

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一章 星詠みの目覚め

第17話 美少女だって過ちの一つや二つ存在する

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ソルシエラ、一体何者なんだ……! 
 俺でーす!!!
 俺俺!
 あのミステリアス美少女は! 
 Sランク認定された美少女は!
 この俺でーす!

 いえーい、ソルシエラでーす!

『■■ー■!』

 お前じゃねえ座ってろ。

『■!?』

 脳内で猛抗議の情報がぶち込まれるが俺はガン無視を決め込む。
 ふはは、身体のない貴様では何もできまい。

 現在、俺は学園にいた。
 昨日は久しぶりのまともな食事をしたおかげで元気が有り余っている。

 ソルシエラとしてミステリアス美少女ロールプレイも楽しめたし、ミズヒ先輩の役にも立てたし、肉も食えた。

 今日もダンジョン救援頑張るぞ!

「今日も肉を……あわよくば良い肉を……って、ミズヒ先輩?」
「っ!? ――あ、ケイか」

 俺が生徒会室に向かっている途中、ミズヒ先輩に遭遇した。
 周囲をしきりに確認した彼女は、俺をちょいちょいと手招きする。

「朝っぱらからどうしたんですか」
「い、いや。何でもない。ダンジョン救援に行くのだろう? さっさと行こう。ほら、な?」
「あ、はい」

 どこか慌てた様子のミズヒ先輩にまくし立てられて頷く。
 
「よ、よし。じゃあ裏口から「裏口からどこに行くんです?」――みっ、ミロク!?」
「あ、ミロク先輩おはようございます」
「はい。おはようございますケイ君……それと、捕まえましたよミズヒ」

 ミロク先輩はニッコリと笑うと、そのまま手をがっちりと握った。

「なっ、離せミロク! ダンジョン救援に向かわないと」
「そんな身体でですか?」

 そう言ってミロク先輩が、ミズヒ先輩の背中をちょんと突く。
 すると、ミズヒ先輩は「いっ!?」と言葉の出来損ないみたいな物を口から漏らして倒れ伏した。

「ミズヒ先輩!?」
「け、ケイ、救援に行く、ぞぉ」
「俺の眼には先輩に救援が必要に見えるんですけど!?」

 プルプルと震えるミズヒ先輩を軽々と抱えたミロク先輩はニッコリ笑顔で口を開いた。

「今のミズヒは戦力外です。昨日のAランクダンジョンの攻略で無茶をしすぎました」
「大丈夫だ。少し、身体に大激痛が走っているだけだ」
「それは大丈夫って言わないですよミズヒ。はい、ツンツン」
「いぎっ!? ちょ、それやめっ――」

 哀れ、一度捕まったミズヒ先輩にはなす術はない。
 好き勝手に身体を突かれて完全に撃沈した。
 
 ミロク先輩、足が痺れた人にいたずらするの好きなタイプっすね。

「ケイ君の方はなんともないですか? もしも、ミズヒ同様に無茶しているなら、一緒に保健室にぶち込みますけど」
「大丈夫です。……いや、身体を突かれても俺はなんともないですよ」
「確かにそのようですね。ふむ、流石というべきでしょうか」

 言うほど、俺自体は強くないので過大評価は困る。
 星詠みの杖さん、ありがとう。

『■■■■』

 でも、必ず売り払う。厄ネタだもん、絶対。

『!?』

 朝から元気な星詠みの杖の抗議をスルーしながら、俺は首を横に振る。

「俺は、途中で戦いから離脱してしまいましたし負担は少ない方かと。あの後、戦っていたのはミズヒ先輩と……」
「――ソルシエラ、ですね」

 ミロク先輩の顔から笑顔が消える。
 この人の真顔が一番怖いかもしれない。

「はい。あの謎の探索者がいなければどうなっていたことか」
「そうですね。でも、ミズヒがこうなった原因の一部でもありますから一概に感謝ができるかと言うと……」
「え、そうなんですか?」

 マジ?
 俺、戦犯疑惑?

「ソルシエラによって干渉を起こされていたようで、ミズヒは限界を超えた収束砲撃を放ちました。負荷は最小限にまで抑えられていたものの、ゼロではない。今のミズヒの有様はその反動です」
「だ、大丈夫なんですか?」

 俺の不安そうな声に、ミズヒ先輩は顔を上げることなくサムズアップだけで返す。
 駄目じゃん……。

「すみません、俺のせいで」
「え、どうしてケイ君が?」

 やべ。

「…………俺が残っていれば、そんな攻撃しなくても勝てたのかなって、思って」
「ああ、成程。ケイ君が気にしなくてもいいですよ。高濃度の魔力を間近で浴びたことによる軽い拒否反応ですから。それと、筋肉痛」
「そ、そうだ。それに、あれで私はさらに自身の限界を、ひぎゅっ!?」
「ミズヒは黙って寝てて下さいねー」

 あぶねー、申し訳なさ過ぎて普通に謝罪しちまった。

「それにしても、ソルシエラに二度も関わってしまうとは……。彼女、遂にSランクに認定されたみたいですし」
「他の探索者をSランクまで一時的に引き上げる能力、でしたっけ? 凄いですね。一体、何者なんだ……!」

 エイピス理事会からの発表は俺も知っている。
 俺も知らない能力が勝手に付与されてて困惑した。
 他の探索者をSランクにできる?
 んなわけあるか。そんなにSランクをポンポン生み出せたら苦労しねえよ!

『■■■■』

 できるの?
 じゃあアレってマジでミズヒ先輩を一時的にSランクにしてたの?

 てっきり、俺の美少女的なシナジーがミズヒ先輩と共鳴していい感じにふわっと力を発揮できたと思ったのに……友情パワーとか、効率を無視した二人の合体必殺技的な……。

『■■■■■』

 あ、それはそれで別にあるんだ。
 ……何でもあるな。マジでお前、早く手放さねえとなにかに巻き込まれそうなんだけど。

 明らかに普通ではない聖遺物の事からそっと現実逃避をして、俺は話題を変えた。

「そ、そう言えばミズヒ先輩が救援に来ないってことは俺が一人で行っていいんですか?」
「あ、それは既に新しいケイ君の相棒を用意していますよ」
「相棒?」

 ミロク先輩は頷く。

「あの子は今は生徒会室で朝ご飯を食べていると思います。よかったら、一緒に朝ご飯でもどうですか? 昨日のお肉の余りで野菜炒め作ったんですよ」
「いただきます!」
「わ、私の分は……」

 ミロク先輩に担がれたまま、ミズヒ先輩がおずおずと手を上げる。
 それを見て、ミロク先輩は優しい笑みで言った。

「ミズヒは臓器も疲弊してるので駄目です。ゼリー飲料で」
「も、モヤシより高いのに食べ応えがない……!」
「すみません、ミズヒ先輩……」
「いや、い、いいんだ。私の、身体が弱いことが原因だ。すぐにトレーニングをし――みぎゃっ!?」
「はーい、そうやってすぐにトレーニングを始めようとしない。……次、私に逆らったら、わかりますね?」
「……はい」

 ミズヒ先輩、マジでごめんなさい。
 この場で土下座をしたいくらいに、申し訳なさで溢れている。

 ソルシエラじゃないと勝てなかったのは事実だが、ミズヒ先輩も戦わせる必要はなかった。
 でも、ああやって気まぐれで誰かに手を差し伸べるのもミステリアス美少女っぽいかなって! 
 敵認定されると面倒くさいから、今の内に実はいい奴ムーブもしとこうかなって!

 はい! 全部、自分本位です! 美少女になれたらその時に纏めて反省します!

「それじゃ、行きましょうか」

 ミロク先輩に連れられて、俺は生徒会室へと向かった。



 救援に同行するのがミロク先輩でないのなら、このフェクトム総合学園にいる生徒などあと一人しかいない。

 生徒会室の扉を開けた先で、一人の金髪の少女がお肉を幸せそうに頬張っている。

「というわけで、ダンジョン救援の今日の相棒は、トアちゃんでーす!」

 入室早々のミロク先輩の言葉に、トアちゃんが朝ご飯を頬張ったまま固まる。

 トアちゃんは、俺と目が合うと慌てて立ち上がり何度も頭を下げながら言った。

「きょっ、今日はよろしくお願いします! 私、足を引っ張らないように、頑張りますので!」
「あ、はい」

 でも、ダンジョン救援の歴はトアちゃんの方が長い。
 さらに言えば、ミズヒ先輩の代わりを務められる程の実力者である。

 つまり、この子も強い可能性が高い。

「……み、ミロクちゃん今からでも、ミロクちゃんと交代は……うん、そうだよね。ごめん。や、やるよ、うん」

 ……心配だ。
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