かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない~現代ダンジョンのある学園都市で、俺はミステリアス美少女ムーブを繰り返す~

不破ふわり

文字の大きさ
上 下
5 / 255
一章 星詠みの目覚め

第5話 ミステリアス美少女はある程度の強さが保証されている

しおりを挟む
 がらがらと崩れ落ちた瓦礫と共に、俺は落下中である。

 幸いにも、探索者の身体能力というのは凄いもので、落ちてすぐに空中で体勢を立て直す事ができた。
 なんなら、このゴスロリ衣装に相応しい、舞い降りたかのような着地も可能だ。無音で。

 そう、こんな感じでね!

 スッとその場に降り立つ。
 それはまるで天より遣わされた天使のようだぜ!

「――――あ、貴女は誰ですか!?」
「え」

 誰かいるぅ!?
 振り返れば、そこには見たことのない少女がいた。
 明らかに染めているとわかる金に紫のメッシュが入ったショートカット。

 そしてあの黒い制服は、騎双きそう学園だったか。

 騎双学園とは、トウラク君と敵対する学園であり、超巨大な学園である。
 俺の騎双学園への印象は悪の帝国だ。

「急に、天井から降ってきましたけど……お嬢さん、お名前は」
「お嬢さん……?」

 そう問われて、俺は理解した。
 女装しているから間違われているらしい。それも暗がりなので違和感は殆どないのだろう。我ながら、自分の美少女レベルの高さが怖ろしい。

 そして、こういう時は全力で美少女に徹するのみである。
 騎双学園とかいう悪の学校の生徒一人騙したところでなんの問題もないだろ。

 俺のロールプレイにつきあえよ。

「貴女こそ、見たことがない顔だけれど。たしか、ここはフェクトム総合学園の初心者用のダンジョンの筈」

 そう言って俺が睨みを聞かせれば、少女はさっと眼を逸らした。

「わ、私はその噂のダンジョンを探検といいますか……配信といいますか」
「配信?」
「そっ、それよりも!」

 少女は慌てて俺に近づく。
 止めろ来るな女装がバレたらどうすんだよ。

「私、追われてて! たぶん、このエリアの防御機構の一つだとは思うんですけど……」

 少女は、パタパタと騒がしく身振り手振りでそう伝えて、自分が逃げてきたという扉を指さした。
 あ、扉吹っ飛んだ。

「ひぃっ!」

 少女が怯えるので、俺もちょっと怖くなってきた。
 が、ビビっているとバレるとダサいし、俺の扮しているミステリアス美少女はビビったりしないので根性で無表情を貫く。

 破壊された扉の向こうから、のそりと人型の影が姿を表した。

 ……ん? 人型?????

「あ、アイツに追われているんです! 気をつけてください!」
「そう」

 アイツ、ミズヒ先輩の言っていたボスじゃね?

 至る所が膨れ上がった肌色の表皮に、全長三メートルを超える人型。

 つまり、気持ち悪い人型。

 どう考えてもボスである。
 そう言う事なら、俺の獲物だ。せっかくだし、美少女の短刀捌きを見てもらおう。

「あれ、私が殺しても構わないの?」
「こっ、殺せるんですか!?  私でもまともに歯が立たなかったのに」

 ははーん、コイツも初心者だな?
 駄目だよ、きちんと練習しなきゃ。あと女装。

「別に、あの程度なら問題ない」

 俺は少女を下がらせてボスの前に立つ。
 そして、ダイブギアに魔力を流し、短刀を召喚! ――しようとした。

「黒い、鎌?」

 少女の声が、俺の背後から聞こえる。

 そう、俺は鎌を手に持っていた。
 あれぇ!?
 いつの間にか赤い腕輪もあるし、どうなってんだ!
 ダイブギア君、返事してよぉ!

「ひいっ、来ますよぉ!」
「問題ない」

 大問題だァ!

 でもやるしかねえ! 鎌なんて使ったことないけど、とにかく戦うぜ!

 初心者用ダンジョンは死なないようになっているらしいし、チャレンジは大事だ。
 最も、この見た目で敗北は許されないのだが。

 俺は向かってきたボスの攻撃を回避する。
 大振りで単純な攻撃だ。というか、遅い。

「まるで児戯おままごとね」

 これなら鎌でも余裕そうだ。
 こんなのにビビっていたの? そんなんじゃ探索者やっていけないよ。

 攻撃をひらひらと躱しながら、俺は鎌を振るっていく。

 楽しい。ゴスロリ衣装に身を包み、可憐に戦う俺……を疑うことなく見ている少女。
 
 この瞬間の全てに、俺は感謝をしていた。

 そうだ。俺はこういう事がしたかった!!!!
 
 ボスの強さは他愛もない。
 時間にして二分ほどで、俺はボスの四肢を切り落として地面に転がしていた。

 さて、どうトドメを刺してくれようか。やっぱり心臓か? ……心臓って何処にあるんだコイツ。

「そいつ、驚異的な再生能力を持っています!  何処を消し飛ばしても復活するんですよ!」
「そう」

 情報感謝。……その口振りだともしかして何回も消し飛ばした? 君、実はそこそこ強い探索者だったりする?

 まあ、今はいいか。俺がボス倒したんだし、俺の方が強いことに変わりはない。
 そんなこんなで俺がトドメに悩んでいたその時だった。

『■■■■■』

 俺の脳に、電撃のようなものが走る。あるいは声と形容することができるだろうか。
 同時に、俺は鎌の使い方を理解した。
 そして、この鎌の名前も。

「――星詠の杖ソルシエラ

 それがお前の名前なんだな。

 ……いや名前は分かったけど、勝手に人の脳に情報流さないでね。

 俺は得た知識通りに、準備をする。
 鎌の切っ先を地面に突き立て、刃とは正反対の柄の先端をボスへと向けた。
 向けた持ち手の先には、銃口。

 まるで、巨大な銃のようなシルエットとなった星詠の杖の柄の側面から、引金付きのグリップが飛び出る。

 ははーん、これを握って引金を引けばいいわけね。

 ボスは少女の言葉通り、四肢を再生し始めている。

 が、もう遅い。

「星々の瞬きを見たことはある?」

 こんな事を言えちゃうくらいには、今の俺には余裕がある。

 ミステリアス美少女が、圧倒的な力で立ちまわる。
 これこれこれ!  こういうのでいいんだよな。 

 俺は気持ちよさの頂点のままに引金を引いた。
 瞬間、辺りに昼が訪れたと錯覚する輝きが部屋を満たす。

 それが鎌の柄の先から放出されているビームだと気が付いた時には、全てが終わっていた。

 三秒もなかっただろう。ビビって引金から指を外したが、既にボスのいた場所は地面も壁も融解して跡形が無くなっており、壁を何枚も突き破ってずっと奥までビームは届いているようだった。

…………やっべ。

「ふう」

 OK、まずは深呼吸だ。
 それから――。

「す、凄い。今のは一体?」

 そうだコイツいるんだったぁ。

 そういうヨイショは嫌いじゃないんだけど、今は遠慮してくれないか。
 こっちは転入早々、学校の大切なダンジョンをぶっ壊した事実でヤバいんだ。

「ソルシエラと言っていましたが、その大鎌の名前なのですか? というか、どこの学園に所属を!? いえ、そもそも貴女のランクは――」
「答える義理はない」

 少女の言葉を遮って、俺は黙らせる。
 俺の感情を悟って空気を読んだのか、鎌は消失し腕輪も体の中に消えていった。

 消えるな。お前は残って良いんだよ。

 ともかく、ここに長居するのはヤバイ。
 さっさと逃げるぞ!

「それじゃ、私はこれで。貴女もさっさと帰りなさい。もうここには何もないわ」

 ボス倒したし、いる意味ないよ。
 じゃあね!

 少女を無視して、俺はその場を後にする。

 …………ん? そういえば、そもそもどうして騎双学園の生徒がここにいたんだろう? まあいいか。アイツら総生徒数が多すぎて何処にでもいるし
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

処理中です...