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一章 星詠みの目覚め
第3話 女装だって広義での美少女化
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バイト、おしまい!
おつかれっしたー。
夜九時、俺は三つ目のバイト先を後にした。
体は疲れ切っているが、フェクトム総合学園に戻る足取りは軽い。
何せ、今日は目的のブツが届く日だからだ。
「この日の為にバイトを頑張ったと言っても過言ではない。アレが後払い可能で良かった。本当に良かった……!」
俺はフェクトム総合学園に来て早々とある物を買っていた。
軽く十万以上が吹っ飛ぶ買い物だが、迷いはなかったのだ。
ルンルン気分で俺はゲートを潜り学園に戻る。
廃墟みてえな場所だけど、今は輝いて見えるや。やっぱり、気持ち次第で世界の在り様はいくらでも変わるらしい。
「ただいまっと……これか」
俺が一人で使っている寮の前に複数の段ボールが積まれていた。
勿論開けられた形跡はないし、見られている可能性は無い。これが見られた暁には、俺は爆発四散するだろう。
「さっさと運ぼう」
見られる前に急げー!
荷物を隣室に置く。
まあ、壁がぶっ壊れているから隣も糞もないんですけどね。ほら、部屋同士で移動できるし。
「さあ、御開帳」
俺は夕飯も食べずにさっさと箱を開封した。
中から出てきたのは、様々な化粧品や衣装だ。
特に、この白黒のひらひらが付いたゴスロリ衣装は素晴らしい。
「うむ」
俺は満足して頷く。
そして、ひび割れた鏡の前に化粧品をセットして座った。
もうお分かりだろう。
「やるか、女装……!」
美少女になれないなら、限りなく近いものになるしかねえ。
美少女化願望に対する一種の沈静療法として、女装が有効だということは既に全ての人間が知ることだろう。
日本では安土桃山時代から、「美少女になりたければまずは女装で腕を磨け」と言われていたらしい。流石俺達のご先祖様、未来に生きてやがる。
化粧は初めてだ。
が、この日のためにあらゆるバイト先の先輩から化粧について聞いているし、なんなら練習も付き合ってもらった。
ありがとうございます、バイトリーダー。
「――ふう、こんなものか」
普通の野郎では精々が女装でしかない。
が、俺は那滝ケイ。
顔だけはよく、肌は真っ白で体の線は細い。
彼を女装させるイラストなどを俺は生前によく見かけたものだが、偉大なる先人たちの考えはどうやら間違っていなかったようだ。
「これは……美少女だ」
シュレーディンガーのおちん〇ん状態であれば実質美少女である。
白黒のフリルがあしらわれたゴスロリ衣装に、特注で作らせたケイの髪色と同じ蒼みがかった銀色のカツラ。
ウェーブの掛かった長髪は、輪郭を上手く隠し完全に俺を美少女にしていた。
「おぉ、お、おおおお……!」
俺、感涙。
鏡の向こうに、美少女がいる。
これね、俺なんすよ。今俺にお出しできる最大限の美少女なんですよ……!
「かわいい。……うん、ちょっと素っ気ない言動の方がしっくりきそうだな。闇をかかえている系の」
割れた鏡と、ボロボロの部屋。
退廃的な空間に佇む一人のミステリアス美少女。
完璧である。
「へへっ」
嬉しくて江戸っ子みたいな笑いと共に思わず頬が綻ぶ。
いけね、こんな笑い方をするタイプの美少女じゃねえよな。
ここからが本番だ。
「外に行こう」
女装した。なら後は外に出るだけである。当然だろう。
それもただ外に出るわけではない。
「ダンジョンに行こう」
俺はダンジョン初心者だ。
原作知識はあるものの、戦いは慣れていない。
特に、魔力に対しては殆どが未知である。
この世界で魔力と言えば探索者が身体能力の強化などに使うバフのような意味合いが強い。魔法が存在しないため、呪文などを覚えなくてもよいのが幸いだ。
そういう訳で、バイト終わりに夜な夜な初心者ダンジョンへと向かって、戦い方を学んでいるのである。
各校は初心者用の訓練ダンジョンの設置を義務付けられているため、このフェクトム総合学園にも初心者ダンジョンというものが存在した。
今日で三日目。そろそろボスを倒したいものである。
「ミズヒ先輩は明日までずっと救援申請を受けているって言ってたし、ミロク先輩は夜八時以降は寝ている。トアさんも夜は怖いから基本は自室。つまり、ダンジョンは今は無人! 俺の絶好の女装日和!」
心が躍ってしょうがない。
俺はダンジョン探索に必要な物を用意して部屋を出ようとして、足を止めた。
「……万が一って事があるからな」
注文しておいた見た目だけの口元を覆うガスマスクを付ける。
意味もなく細部が光るゲーミングガスマスクだ。こういうのが似合う美少女が好きなので、一緒に買ったのだ。何か文句はあるか?
「シュコーシュコー……いや、普通に喋れるか」
効果ねえマスクだしな。
「よぉし、気を取り直して行くぞー!」
女装でダンジョン攻略、開始!
おつかれっしたー。
夜九時、俺は三つ目のバイト先を後にした。
体は疲れ切っているが、フェクトム総合学園に戻る足取りは軽い。
何せ、今日は目的のブツが届く日だからだ。
「この日の為にバイトを頑張ったと言っても過言ではない。アレが後払い可能で良かった。本当に良かった……!」
俺はフェクトム総合学園に来て早々とある物を買っていた。
軽く十万以上が吹っ飛ぶ買い物だが、迷いはなかったのだ。
ルンルン気分で俺はゲートを潜り学園に戻る。
廃墟みてえな場所だけど、今は輝いて見えるや。やっぱり、気持ち次第で世界の在り様はいくらでも変わるらしい。
「ただいまっと……これか」
俺が一人で使っている寮の前に複数の段ボールが積まれていた。
勿論開けられた形跡はないし、見られている可能性は無い。これが見られた暁には、俺は爆発四散するだろう。
「さっさと運ぼう」
見られる前に急げー!
荷物を隣室に置く。
まあ、壁がぶっ壊れているから隣も糞もないんですけどね。ほら、部屋同士で移動できるし。
「さあ、御開帳」
俺は夕飯も食べずにさっさと箱を開封した。
中から出てきたのは、様々な化粧品や衣装だ。
特に、この白黒のひらひらが付いたゴスロリ衣装は素晴らしい。
「うむ」
俺は満足して頷く。
そして、ひび割れた鏡の前に化粧品をセットして座った。
もうお分かりだろう。
「やるか、女装……!」
美少女になれないなら、限りなく近いものになるしかねえ。
美少女化願望に対する一種の沈静療法として、女装が有効だということは既に全ての人間が知ることだろう。
日本では安土桃山時代から、「美少女になりたければまずは女装で腕を磨け」と言われていたらしい。流石俺達のご先祖様、未来に生きてやがる。
化粧は初めてだ。
が、この日のためにあらゆるバイト先の先輩から化粧について聞いているし、なんなら練習も付き合ってもらった。
ありがとうございます、バイトリーダー。
「――ふう、こんなものか」
普通の野郎では精々が女装でしかない。
が、俺は那滝ケイ。
顔だけはよく、肌は真っ白で体の線は細い。
彼を女装させるイラストなどを俺は生前によく見かけたものだが、偉大なる先人たちの考えはどうやら間違っていなかったようだ。
「これは……美少女だ」
シュレーディンガーのおちん〇ん状態であれば実質美少女である。
白黒のフリルがあしらわれたゴスロリ衣装に、特注で作らせたケイの髪色と同じ蒼みがかった銀色のカツラ。
ウェーブの掛かった長髪は、輪郭を上手く隠し完全に俺を美少女にしていた。
「おぉ、お、おおおお……!」
俺、感涙。
鏡の向こうに、美少女がいる。
これね、俺なんすよ。今俺にお出しできる最大限の美少女なんですよ……!
「かわいい。……うん、ちょっと素っ気ない言動の方がしっくりきそうだな。闇をかかえている系の」
割れた鏡と、ボロボロの部屋。
退廃的な空間に佇む一人のミステリアス美少女。
完璧である。
「へへっ」
嬉しくて江戸っ子みたいな笑いと共に思わず頬が綻ぶ。
いけね、こんな笑い方をするタイプの美少女じゃねえよな。
ここからが本番だ。
「外に行こう」
女装した。なら後は外に出るだけである。当然だろう。
それもただ外に出るわけではない。
「ダンジョンに行こう」
俺はダンジョン初心者だ。
原作知識はあるものの、戦いは慣れていない。
特に、魔力に対しては殆どが未知である。
この世界で魔力と言えば探索者が身体能力の強化などに使うバフのような意味合いが強い。魔法が存在しないため、呪文などを覚えなくてもよいのが幸いだ。
そういう訳で、バイト終わりに夜な夜な初心者ダンジョンへと向かって、戦い方を学んでいるのである。
各校は初心者用の訓練ダンジョンの設置を義務付けられているため、このフェクトム総合学園にも初心者ダンジョンというものが存在した。
今日で三日目。そろそろボスを倒したいものである。
「ミズヒ先輩は明日までずっと救援申請を受けているって言ってたし、ミロク先輩は夜八時以降は寝ている。トアさんも夜は怖いから基本は自室。つまり、ダンジョンは今は無人! 俺の絶好の女装日和!」
心が躍ってしょうがない。
俺はダンジョン探索に必要な物を用意して部屋を出ようとして、足を止めた。
「……万が一って事があるからな」
注文しておいた見た目だけの口元を覆うガスマスクを付ける。
意味もなく細部が光るゲーミングガスマスクだ。こういうのが似合う美少女が好きなので、一緒に買ったのだ。何か文句はあるか?
「シュコーシュコー……いや、普通に喋れるか」
効果ねえマスクだしな。
「よぉし、気を取り直して行くぞー!」
女装でダンジョン攻略、開始!
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