かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない~現代ダンジョンのある学園都市で、俺はミステリアス美少女ムーブを繰り返す~

不破ふわり

文字の大きさ
上 下
1 / 255
一章 星詠みの目覚め

第1話 転生したら普通は美少女になるんじゃないんですか?

しおりを挟む

 美少女化は、人類共通の夢である。

 遥か昔、バベルの塔が存在した時代から共通言語で語られてきたことだ。

――可愛い女の子だけの世界っていいよね。

 美少女になれるなら越したことはない。
 だからこそ、俺は死の間際に願った。
 赤信号を無視した暴走トラックが俺の体をミンチにする一秒にも満たない僅かな時間。

「お願いします神様次は美少女に美少女に美少女に美少女――」

 輪廻転生に大金を積めば美少女になれるプランを用意しろ!!!




「そう思っていたのに……」

 俺はこの世界に生まれて何度目になるかわからないため息をついた。

 結論から言おう。
 俺は美少女になれなかった。

 悪い話と悪い話がある、どっちから聞きたい?

 OK。ではまず悪い話から。
 俺は男に生まれた。いや、目覚めたら男だったというべきか。

 次に悪い話だが――。

「この俺が踏み台だとォ!?」

 俺は序盤のかませ役♂に憑依したみたいだ。
 しかも、既に踏まれ終わった後に。






 俺は憑依転生した。
 憑依先は那滝なろうケイという男。
 名前からすると終身名誉なろう系主人公みたいだが違う。

 こいつは、SNS広告で結果がわかるタイプの序盤のかませ役だ。

「この顔、俺は見覚えがあるぞ」

 俺が読んでいた漫画に現代ダンジョンを題材にした作品があった。
 作品の名前は『鏡界のルトラ』。
 題材はネット小説にありきたりなものだが、漫画家の腕がよく毎週の更新を楽しみにしていたのである。小説版スピンオフも、数巻購入するくらいにはハマっていた。
 
 大まかな内容はこうだ。
 とある名家から追放された主人公が、現代ダンジョンで武器になれる特殊な女の子と契約し成り上がる軽快爽快な冒険譚。

 そして、俺はその切っ掛けを作るお金持ちの家のかませ役♂。
 まともに戦えない主人公をダンジョンにぶち込んで殺そうとしたのだが、そのぶち込んだ先に女の子が封印してあって主人公が契約し見事にダンジョン攻略。

 ケイはダンジョンから出てきた主人公に決闘を挑むが無様に敗北し、今までの嫌がらせも公表されて断罪。
 かませ君のお家からの支援も止まって全部を失うのだ。
 救済措置? ねえよ、んなもん。

「口座は……千三百円」

 俺は通帳を投げ捨てる。
 
 憑依転生したのは三日前だ。
 トラックの衝撃の次には、俺はこの体で立ち尽くしていた。

 彼の自室であろう場所は、至る所が乱れ荒れている。恐らくは主人公に負けて暴れたのだろう。
 俺はそれを三日かけて整頓しつつ、常識をすり合わせて現在に至るわけだが。

「もう、殆ど詰んでいる……」

 こういうのって、普通は赤ん坊の頃からのスタートなんすよ……。全部終わった後によーいスタートって言われてもどうしようもないんですよ……。
 詰みセーブ渡されてどうしろってんだ!

 そして何よりも。

「どうして、女の子じゃないんだ……!」

 俺は激怒している。
 かませ役は受け入れよう。
 過酷な現状もまあ、そこそこ許容しよう。

 だが、どうしてこんなに素敵な世界で男にならなければならないのだ!

「女の子になりたかった……! 謎部活に入ってきららジャンプしたかった……!」

 ただそれだけを願った人生でした。

「クソクソクソォ! この俺がなんでこんな目にィ!」

 言っている姿がかませ役なので、こういうセリフはよく似合う。
 嬉しいね。嬉しくねえよ。

「うぅ……。原作主人公はいいよなぁ。女になれなくてもハーレムで楽しそうだもんな……。でも彼が頑張ってるって知ってるし、嫉めないよ……」

 原作主人公である牙塔がとうトウラク君は頑張り屋の主人公だ。しかも、ヒロインの好意にしっかりと向き合う男前。聖人君主のような彼に、俺が負の感情を向けるのは間違っている。幸せになれ、トウラク。

ケイが断罪済みってことは今は高校一年の五月ごろか……。ここから本格的に原作は始まるんだよな。色々とあったなぁ。楽しいイベント」

 俺はふと原作を思い出す。
 秘密裏に作られた生物兵器型のダンジョンとの戦い。
 Sランクダンジョンの攻略権利を賭けた学校対抗戦。天使と呼ばれる生物との戦争。
 学園都市そのものを模倣したダンジョンとの全面戦争など。

 読者としては中々に楽しめるイベントばかりだ。
 まあ、トウラク君は毎回死にかけるんだけどね。怪我してないほうが珍しいってファンからは言われているから。

「ハーレムとしてのラッキーイベントもあるし、なんならトウラク君自身も女になった事だって…………あ」

 脳に衝撃が走る。
 まるで巨大な雷が落ちたかのような衝撃が、駆け巡った。

「そ、そうだ。まだチャンスはある……!」

 気が付いてしまった。
 今から一年後に訪れる千載一遇のチャンスを。

「TSが発動する特殊なダンジョンが登場するはずだ。今から一年後、この世界に!」

 原作ではサービス的なギャグイベントで流されたダンジョン。
 しかし、俺にとっては違う!

「これは……これなら行けるかもしれない」

 成り上がりも、汚名返上もいらない。
 ただ一つ、美少女になるという巨大な夢。
 これになら、手が届くかもしれない。

「始めるか……TSを目指す現代ダンジョン学園生活を!」

 いつの間にか俺は拳を握りしめていた。
 焦がれた夢が一年後に迫っている。

 ならば、その夢の為に邁進するしかないだろう!

「そうと決まればまずは転校しよう!」
 

 美少女は迅速を尊ぶ。
 故に、俺はすぐに方針を打ち出した。

 作品の舞台は太平洋に浮かぶ巨大な人工島、学園都市ヒノツチだ。
 千を優に超える学園が集合するこの都市はダンジョンを攻略する探索者の為の超巨大な教育施設でもある。
 その特徴は学区の自治の殆どが生徒によって行われている事。
 都市外の企業と連携などして、独自の運営を行っているのである。

 そして、俺こと那滝ケイという男がいるのは御景みかげ学園。
 学園都市ヒノツチにおいて四大校と呼ばれるマンモス校の一つであり、生徒数は五十万人を超えるちょっとした都市規模の学園だ。

 それなりに探索者としての技量や知識が求められるこの学園に、ケイはお金の力で入った。
 一応は、探索者の名家出身という事で才能がそこそこあるが、特に努力する気もなかったようで作中での強さは下から数えたほうが早い。
 
「コイツは家からの援助で学園に通っていたから、学費免除の特待生とかではないんだよなぁ」

 独り暮らしでクソデカマンションに住んでいるだけでも金が掛かるのに、さらに金に物を言わせていたのでもう個人ではどうしようもない。

 原作では金を払えずに学園も退学になって、そういった者たちの不良グループに属することになる。ちなみにその後トウラク君に復讐しようとして返り討ちにあって死ぬ。

 が、俺がいるからには同じ道は辿らせない。そして男のままでもいさせない。

「少しでも学費が安い所、安い所……」

 俺はスマホで学園一覧を見る。
  
 まずは転校だ。
 この学園都市内では、結構頻繁に転校が行われている。
 学校というよりは、もはやサークルや部活といった方が近いだろうか。

 様々な校風や、自治が行われているこの都市において安さだけを追及するのはそう難しい事ではない。

「あった! 最安値で寮が無料でついて学費諸々ゼロ円! ……ゼロ円!?!?!?!?」

 どうなってんだよその学校。

「う、嘘じゃないよな。え? 後で高いツボでも買わせるシステム????」
 
 学園の詳細を見ていく。
 どうやら生徒数が激減し、もはやヤケクソであるらしい。
 が、後一年持てば、TSイベントに介入できればそれで良い。

 ダンジョンを攻略するには、どこかの学校の生徒である必要がある。
 生徒という肩書きを得る為なら、良し悪しは問わない。

「フェクトム総合学園……知らねえ」

 聞いたことがない。
 原作では登場しない、知らない学校だ。

 が、それでも構わない。

「行くか、フェクトム!」

 TSの為なら、俺はなんだってする。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

処理中です...