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19話 顔に弱い人間パルメ・レラシア

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「いや、あれは男だが……。まさか君はあれに用事があるのか?」

 クレイヴを女性かと問う、ヒイロの素っ頓狂な疑問に、リゼは真面目に答える。
 もしかしたら噂か何かで聞いているだけなのかもしれない、そう考えて。
 そちらの疑問に関しては外れだったが、リゼはヒイロがこの階段を上っている疑問について、正しい見当をつけた。

「だったらここを上っていることにも納得だが……、差し支えなければ何の用事か教えてもらっても?」
「あ、はい、僕は――」

 リゼの気遣った質問に、隠すことはないヒイロは答えようとする。
 しかし、その問答は少しの間停滞することとなった。

「君……、以外とイケメンじゃない?」
 先ほどまでヒイロに剣を向けるなどしていた、金髪の少女によって。

 グワッ、と少女の手がヒイロに寄り、ヒイロの前髪を大きくかき上げた。
「やっぱりっ。ねえねえ、君、2年生? 名前は? 年齢は?」
 少し背の低い少女は、若干背伸びしつつヒイロに次々と尋ねる。

 背伸びしているからか、顔は近いし、階段という場所で逃げ道も少ない。
 少女の体は柔らかい部分も含め、大部分がヒイロに密着し始めた。

「え? あ、ヒ、ヒイロ・レイシスです。18歳です、ら、来年ここに入学する予定なんですけど」
「ヒイロ君ね。わたしはパルメ・レラシア。パルメって呼んでね。でもそっか、そうなんだー新入生なんだー。じゃあギルドに参加しにきたのかな? 入学前から学園に来るなんて、優秀なんだね」
 甘い甘い猫なで声。
 先ほどとは全く違う。

 ヒイロはその変わりようにたじろぎながら、すごくたじろぎながら、質問に答える。
 しかしその、顔を赤くして目を逸らしている姿が、パルメの琴線にさらに触れたのか、尚グイグイと。

「こらパルメ。態度を変え過ぎた、困っているじゃないか。はあお前は全く。それで、レイシス、あれへの用事についてだが……」
 リゼに首根っこを掴まれ引き剥がされたパルメ。

 ようやく自由になったヒイロは、先ほど停滞してしまった話をようやく再開できた。
「あ、え、はいっ。クレイ……、メガクレイヴギルドに入ったので、この階段を上がって来い、と」

 だが、その会話は再び停滞することとなる。

「は……?」
「え……」
 2人のドン引きした表情によって。

 やっぱりそうなんだ……、ととても落ち込むヒイロ。

「その……本気か?」
「考え直した方が良いよ、変人だよ? 変人、やばいよ?」
「はい……知ってます」
 2人はあからさまに狼狽し、心配してくれている。
 変人だからやめておけ、と。

 この学園に来てからの視線で、寮以外でもそうなんじゃないかな、と思っていたが一縷の望みは持っていたのか、確定するとヒイロの肩はさらに落ちる。

「まあ、あれの大変さは……、その顔だともう大体は知っているのだろう? それでも入ると言っているなら、まあ止めはしない。理由があるんだろう」
「ええーでもー」
 リゼがパルメの頭に手を置きながら言う。
 ヒイロと同じか、そのくらいの身長のリザは、140センチくらいしかない身長のパルメの頭には、きっと手が置き易いのだろう。なんとなく慣れた光景だった。

「あ、ありがとうございます……」
「構わんさ」
「うーん残念」

「っと、そうだ。早く行かないとペナルティがっ。この先で合ってますかっ?」
「ん? あ、ああ。合ってはいるが」
「合ってるけど……、あ、ちょっとっ」

 ヒイロは階段を急いで駆け上がって行く。

 後ろからリザとパルメがヒイロを呼ぶが、会釈をするだけで止まらず、何も聞かずに。

「あれのギルドは私達のギルドの物置だっ、部屋を経由しないと行けないぞっ」
「朝早いからまだ着替えてる子もいるよーっ」

「……行ってしまったな」
「……そうですね。これってわたし達の責任になるんですかね」
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