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11話 マリステラ寮
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ヒイロは寮の中へと一歩足を踏み入れた。
「あれ?」
そしてすぐさまそんな声をあげる。ヒイロが頭の中に思い描いていた外観から想像できる内観とは、全く違うほど綺麗だったからだ。
「ここがマリステラ寮、見た目はボロいけど、中はマシだろ?」
ヒイロの声から何を考えているか察しがついたのか、スリットはそう応えた。ヒイロは少し安心する。
マリステラ寮の外観は酷いものだ。ボロボロにもほどがある。だが内観は随分綺麗だ。確かに古そうな床や壁だが、補修に補修を重ねられているのか穴が開いていたりはしない。
暮らしていく上での不都合はないだろう。
「けどここに住んでいる奴は大概わけありでね。ま、ここに来たからにはお前さんもそうなんだけどね」
しかし続けられた言葉で、再び不安に陥った。
わけありに、既に苦しめられたことのあるヒイロとしては、敏感にならざるを得ない問題だ。
それにもう1つ。
ヒイロを悩ませる問題が、案内するスリットに着いていく過程で見つかってしまった。
玄関に入ったところには階段があった。ヒイロの部屋は1階らしく階段を上ることはなかったのだが、玄関についているため必ず目に入る。その階段の手すりが剣だった。
錆びているが、手すりの一部が剣になっていた。そして階段の4段目にはバネが仕掛けられており、1段目には金色のとぐろが置かれている。
そして案内される廊下が丸く盛り上がっていたり、剣山のような尖った針が出ていたり、途切れて石が置いてあったり、急に暗くなっていたり。
「この寮にいるやつは昔から一癖も二癖もあるやつばっかりでねえ、そいつらが勝手に寮の補修をするからこんなのになっちまったよ」
……ヒイロはまたさらに不安に陥った。
同時に、学校の地下のよく分からないエリアもここの人達の補修だったんだと直感的に理解した。
ヒイロの直感はあまり優れていないが、今回ばかりは正解だ。
だが落ち込んでばかりはいられない。
ヒイロはきちんと周りを観察する。
そうしないと剣山に突き刺さったり、壁から振り下ろされるハンマーで痛い思いをするからだ。
「でもその中に1人飛びっきりのがいてね、クレイヴって言うんだがね」
「クレイヴさん、ですか?」
「ああ。この寮1番の、いや学園でも1番。いいやそんなもんじゃないね、歴代でも1番の問題児さ。平穏な学園生活を送りたいと思うなら、関わり合いにならないことだね」
こんな風に改装する人達がいる寮で、あの学園で、飛びっきりって一体どんな人なんだ、と、興味よりも恐怖が勝りどんどん不安になってくるヒイロ。
「そう言えばお前さんあてに荷物は届いてなかったけど、今日は手続きだけかい? 鍵はもう渡しちまうが」
「あ、今日から住みたいです。荷物は持って来てます」
切り替わった話にこれ以上不安になりたくないと飛びついたヒイロは、すぐさま答える。
「そうかい? どこだい?」
「え? あ、これです」
持っていたポーチを指差して答えたヒイロ。今度はスリットが少し不安になった。
そしてやっぱりこいつも変わり者だなあと思う。
「と、着いた。ここだよ」
そのすぐ後、2人は鍵のかかった部屋に辿り着いた。
「今日からお前さんの暮らす部屋さ」
「116号室」
ほら、と渡された鍵。ヒイロは受け取った鍵を扉のドアノブの上に付いた鍵穴に差し込み、回す。
ガチャリ、という音と共に、ヒイロがこれから暮らす部屋の扉が開いた。
「あれ?」
そしてすぐさまそんな声をあげる。ヒイロが頭の中に思い描いていた外観から想像できる内観とは、全く違うほど綺麗だったからだ。
「ここがマリステラ寮、見た目はボロいけど、中はマシだろ?」
ヒイロの声から何を考えているか察しがついたのか、スリットはそう応えた。ヒイロは少し安心する。
マリステラ寮の外観は酷いものだ。ボロボロにもほどがある。だが内観は随分綺麗だ。確かに古そうな床や壁だが、補修に補修を重ねられているのか穴が開いていたりはしない。
暮らしていく上での不都合はないだろう。
「けどここに住んでいる奴は大概わけありでね。ま、ここに来たからにはお前さんもそうなんだけどね」
しかし続けられた言葉で、再び不安に陥った。
わけありに、既に苦しめられたことのあるヒイロとしては、敏感にならざるを得ない問題だ。
それにもう1つ。
ヒイロを悩ませる問題が、案内するスリットに着いていく過程で見つかってしまった。
玄関に入ったところには階段があった。ヒイロの部屋は1階らしく階段を上ることはなかったのだが、玄関についているため必ず目に入る。その階段の手すりが剣だった。
錆びているが、手すりの一部が剣になっていた。そして階段の4段目にはバネが仕掛けられており、1段目には金色のとぐろが置かれている。
そして案内される廊下が丸く盛り上がっていたり、剣山のような尖った針が出ていたり、途切れて石が置いてあったり、急に暗くなっていたり。
「この寮にいるやつは昔から一癖も二癖もあるやつばっかりでねえ、そいつらが勝手に寮の補修をするからこんなのになっちまったよ」
……ヒイロはまたさらに不安に陥った。
同時に、学校の地下のよく分からないエリアもここの人達の補修だったんだと直感的に理解した。
ヒイロの直感はあまり優れていないが、今回ばかりは正解だ。
だが落ち込んでばかりはいられない。
ヒイロはきちんと周りを観察する。
そうしないと剣山に突き刺さったり、壁から振り下ろされるハンマーで痛い思いをするからだ。
「でもその中に1人飛びっきりのがいてね、クレイヴって言うんだがね」
「クレイヴさん、ですか?」
「ああ。この寮1番の、いや学園でも1番。いいやそんなもんじゃないね、歴代でも1番の問題児さ。平穏な学園生活を送りたいと思うなら、関わり合いにならないことだね」
こんな風に改装する人達がいる寮で、あの学園で、飛びっきりって一体どんな人なんだ、と、興味よりも恐怖が勝りどんどん不安になってくるヒイロ。
「そう言えばお前さんあてに荷物は届いてなかったけど、今日は手続きだけかい? 鍵はもう渡しちまうが」
「あ、今日から住みたいです。荷物は持って来てます」
切り替わった話にこれ以上不安になりたくないと飛びついたヒイロは、すぐさま答える。
「そうかい? どこだい?」
「え? あ、これです」
持っていたポーチを指差して答えたヒイロ。今度はスリットが少し不安になった。
そしてやっぱりこいつも変わり者だなあと思う。
「と、着いた。ここだよ」
そのすぐ後、2人は鍵のかかった部屋に辿り着いた。
「今日からお前さんの暮らす部屋さ」
「116号室」
ほら、と渡された鍵。ヒイロは受け取った鍵を扉のドアノブの上に付いた鍵穴に差し込み、回す。
ガチャリ、という音と共に、ヒイロがこれから暮らす部屋の扉が開いた。
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