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7話 揉まれた人間サラ・サーブラッド
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2人は廊下を歩く。
先頭はサラ。その後ろ1mほどの距離にヒイロ。
「……。貴方、名前は?」
「……ヒイロ、ヒイロ・……レイシスです」
前を向いたまま発せられた問いかけに、今の名前を、これからの名前を答えたヒイロ・レイシス。
「レイシス君ね。私はサラ・サーブラッド。今は3年、貴方が来る頃には4年よ」
コツコツコツと、廊下に音が響く。
「苗字にレイ、だから、えーっとこの国のクラッド地方とかだっけ?」
「あ、はいそうです。詳しいですね」
「後輩にもそこの出身の子がいてね。まあ広い地方みたいだから知り合いかどうかは分かんないけど」
コツコツコツと、廊下に音を響かせながら歩く。2人は常に同じ距離を保ったまま。
会話の際もサラは振り向かない。
「……」
「ん?どうかした?」
サラは振り向きこそしないが少し顔を上げ後ろに声が通るように、黙ってしまったヒイロへ声をかけた。
「あ、いえ。その……僕の住んでいたところは山奥だったので、僕とお爺さんの家だけでしたから知り合いじゃないと思います」
「そっか」
「はい」
少し遅れたヒイロの返答。だがサラはそれを流し、普通の返答で返す。
会話は途切れた。
石造りの廊下にはコツコツという靴音のみが響く。
ヒイロがティトリニアに案内され歩いた道とは随分違い、障害物と呼べるものはおろか、なんだこれはと思ってしまう不思議なオブジェもない。
いやたまにはある。天井から釣り下がった巨大な鐘、なぜか廊下の奥に置いてある宝箱、振り子のように往復する斧、思わず押したくなるスイッチなど。
サラはそんなものに構わず通り抜け、石造りの壁に手を添える。
するとその部分のブロックは、ガコッ、という音と共に少し奥ヘずれ、新たな道が出来上がった。
呆気にとられるヒイロを横目に、サラはまたさっさと歩く。
ヴィイリニーの部屋は、随分地下にある。知っている者はあまりいない。
2人は長い距離を連れ立って歩く。会話もないまま。
「……」
「……」
「……」
「……」
コツコツコツ、と、石造りの地下に足音が響く。重なっていない、1人分の足音が。
「……レイシス君?」
サラは立ち止まって振り返る。
「――え、うわっ」
「きゃっ」
そして真後ろをちゃんと着いてきていたヒイロと正面からぶつかった。
身長は同じ位。ヒイロが貧弱な体だとしても歩いていれば当然勢いがついている。
ヒイロは俯いて歩いていたため立ち止まられたことに気付かず、減速もしないままサラを押し倒した。
「んっ」
ヒイロは無傷。
サラが下になっているうえに、丁度、サラの身体で一番柔らかい部分がヒイロの顔を包んだからだ。
しかし、その巨大な衝撃緩衝材により無傷ではあったが、同時に全ての視界を奪われた。もがくヒイロ。
「もがっもがぅ」
「ちょ、ちょっと」
そして起き上がろうと手で押しても柔らかすぎて力が上手く伝わらない。
「んんっ」
起き上がらねばと頑張るヒイロ。むんず、と掴む手に力を入れる。
「あんっ」
両手で踏ん張りやっとの思いで顔は緩衝材より上へ上がる。
目と目が合う2人。
ヒイロの視線はゆっくり下がり、自分の手が触れている場所に移る。そしてその柔らかいものが何であったかを、数秒の思考の後にようやく理解した。
先頭はサラ。その後ろ1mほどの距離にヒイロ。
「……。貴方、名前は?」
「……ヒイロ、ヒイロ・……レイシスです」
前を向いたまま発せられた問いかけに、今の名前を、これからの名前を答えたヒイロ・レイシス。
「レイシス君ね。私はサラ・サーブラッド。今は3年、貴方が来る頃には4年よ」
コツコツコツと、廊下に音が響く。
「苗字にレイ、だから、えーっとこの国のクラッド地方とかだっけ?」
「あ、はいそうです。詳しいですね」
「後輩にもそこの出身の子がいてね。まあ広い地方みたいだから知り合いかどうかは分かんないけど」
コツコツコツと、廊下に音を響かせながら歩く。2人は常に同じ距離を保ったまま。
会話の際もサラは振り向かない。
「……」
「ん?どうかした?」
サラは振り向きこそしないが少し顔を上げ後ろに声が通るように、黙ってしまったヒイロへ声をかけた。
「あ、いえ。その……僕の住んでいたところは山奥だったので、僕とお爺さんの家だけでしたから知り合いじゃないと思います」
「そっか」
「はい」
少し遅れたヒイロの返答。だがサラはそれを流し、普通の返答で返す。
会話は途切れた。
石造りの廊下にはコツコツという靴音のみが響く。
ヒイロがティトリニアに案内され歩いた道とは随分違い、障害物と呼べるものはおろか、なんだこれはと思ってしまう不思議なオブジェもない。
いやたまにはある。天井から釣り下がった巨大な鐘、なぜか廊下の奥に置いてある宝箱、振り子のように往復する斧、思わず押したくなるスイッチなど。
サラはそんなものに構わず通り抜け、石造りの壁に手を添える。
するとその部分のブロックは、ガコッ、という音と共に少し奥ヘずれ、新たな道が出来上がった。
呆気にとられるヒイロを横目に、サラはまたさっさと歩く。
ヴィイリニーの部屋は、随分地下にある。知っている者はあまりいない。
2人は長い距離を連れ立って歩く。会話もないまま。
「……」
「……」
「……」
「……」
コツコツコツ、と、石造りの地下に足音が響く。重なっていない、1人分の足音が。
「……レイシス君?」
サラは立ち止まって振り返る。
「――え、うわっ」
「きゃっ」
そして真後ろをちゃんと着いてきていたヒイロと正面からぶつかった。
身長は同じ位。ヒイロが貧弱な体だとしても歩いていれば当然勢いがついている。
ヒイロは俯いて歩いていたため立ち止まられたことに気付かず、減速もしないままサラを押し倒した。
「んっ」
ヒイロは無傷。
サラが下になっているうえに、丁度、サラの身体で一番柔らかい部分がヒイロの顔を包んだからだ。
しかし、その巨大な衝撃緩衝材により無傷ではあったが、同時に全ての視界を奪われた。もがくヒイロ。
「もがっもがぅ」
「ちょ、ちょっと」
そして起き上がろうと手で押しても柔らかすぎて力が上手く伝わらない。
「んんっ」
起き上がらねばと頑張るヒイロ。むんず、と掴む手に力を入れる。
「あんっ」
両手で踏ん張りやっとの思いで顔は緩衝材より上へ上がる。
目と目が合う2人。
ヒイロの視線はゆっくり下がり、自分の手が触れている場所に移る。そしてその柔らかいものが何であったかを、数秒の思考の後にようやく理解した。
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