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6話 地下の情報屋

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 大笑いされたことから気を逸らしたかったのかヒイロは、ヴィイリニーの言葉を聞いて扉へ向いた。
 来客。
 ヒイロを職員室へ案内してくれるかもしれない、待ち人。

 どんな人だろうかとふと考えたが、考える間もないまま、コツコツ、という石畳を歩く足音が地下特有のこもった形で聞こえてきた。
 もう近い。

 足音は扉の前で止まり、コンコン、とノック音に切り替わる。
 そして部屋の主の返事を待たずに木製の乾いた音がする扉が開けられた。

「はぁいヴィー、頼んできた情報貰いにきたわよ」
 入ってきたのは藍色の髪を肩で切りそろえた女性。ヒイロよりも少し年上で、ヒイロが受けた印象は大人な女性。
 逞しいながらも色気漂う女性。
 その女性が部屋に入って数歩、ヒイロの存在に遅ればせながら気付く。

「あら、先客?ごめんなさいね」
 その女性はわずかな微笑みをヒイロに向け、軽く頭を下げた。ヒイロは慌て、それよりも遥かに深く頭を下げる。

「丁度良かったよサラ。この子を職員室まで案内してやってくれないかい?入学手続きに来たらしいんだが、ティトリニアの馬鹿がここに連れてきたらしくてね」
「ああティトリニア関連」
 それだけで通じるほど、赤く小さくお馬鹿な精霊ティトリニアが起こす事件は数限りないらしい。
 少し項垂れるヒイロだが、これでようやく目的が叶うと安堵した。

「貴方も災難ね。でもどうしてこんな時期に入学手続き?おかしいわね」
「まあ事情はそれぞれ色々あるのさ、で、どうだい?」
 間にヒイロを挟んでいるが、ヒイロの入る余地はないまま会話は進んでいく。

「良いわよ。貴女に恩を売る珍しい機会だから」
「それじゃあよろしく頼むよ。ああ、例の情報だけど、来るみたいだよ。何に使うのか関知はしないけど、あんまり腹黒い真似してると男が逃げるよ」
「そんな男はこっちから願い下げよ。ありがと」

 簡単な短い言葉のやり取りで、ヒイロの願いは叶ったようだ。
 迷い込み、一時は死を覚悟するものだったが、アッサリと。
「あ、ありがとうございます」
 ヒイロは頭を下げて礼をする。それに手を振って笑顔で答え、サラと呼ばれた女性はそのまま部屋の外へヒイロに手招きをしながら出て行く。

 コツコツコツ、と再び廊下に歩く足音が響く。

 ヒイロもそれに続くため、部屋を出ようと外へ歩く。が、立ち止まり、一度ヴィイリニーを見た。
 その目が、何を思っているのかは分からない。
 簡単に言い表せるほど単純な感情ではなく、ヒイロと精霊の関わりは浅くない。

 ペコ、と頭を下げ、ヒイロは部屋を出て扉を閉める。
 ヴィイリニーは、またおいで、と声を出さずにそれに応えた。
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