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そのあと、CAさんに少しギャレーに留まってもらうように言われた。
「ブースの設備不具合を理由に移動だって。さすがだなあ」
ギャレーで待っている時にユウ兄が尊敬するように呟いた。
戻ってきたCAさんから、酔っぱらいのブースをぼくたちから遠いところへ移動させたことと、通路巡回を強化することを説明された。酔っぱらいのブースは奥のギャレーを挟んで向こうの区画になったらしい。さらに、区画堺のカーテンが引かれていて向こうの区画からぼくたちは見えないようになっていた。もう安心だ。
すっかりほっとしたぼくを見て、
「席を立つときは念のため周りを確認しろよ」
とユウ兄が釘を刺してきた。ぼくは今回は素直に頷いた。もちろん、スライドドアもぴったり閉める。
ブースに入るとどっと疲れが出た。読書灯もモニターも全てオフにしてブランケットにくるまって目を閉じる。恐怖や不安はもうない。でも神経が昂っていて眠れる気がしなかった。かといって小説を読む気にもなれない。目を閉じたままじっと耳をそばだてていると、ユウ兄が動いている音が聞こえた。
また映画を見始めたのかな。
そういえば、どうしてぼくのピンチに間に合ったのかと不思議に思って聞いたら、ぼくがギャレーに向かう途中で後を追うようにブースから出てきた男の様子が気になったから、と言っていた。そんなの、分かるんだ・・・。
人が歩く気配がして目を開けると、パーテーションの横を過ぎ去るCAさんの後ろ姿が見えた。きれいにまとめた髪型と、ぴんと張った背筋と、揺れる機内を颯爽と歩く姿がかっこいい。
大人ってすごいなあ・・・。
と、ぼんやり頭に浮かんだ。さっきの出来事が遠い過去みたいに思えてきた。
ぼくは自然に眠りに落ちた。
ふと目が覚めて、身体を伸ばすためにブースを出た。短い時間だったけど熟睡できたみたいで頭がスッキリしていた。喉が渇いていて、ギャレーへ炭酸水をもらいに行くことにした。
通路から隣りを覗くとユウ兄は眠っていた。モニターはオフになっている。またドアは開けっ放し、アイマスクもヘッドフォンも耳栓もなし。ユウ兄はいつもはちょっとしたことで目を覚ますけど、さっきそっとドアを開けたかいがあって、いまは目を覚ます様子がない。
すっかり熟睡してるなあ・・・。
ついさっき心配をかけたことを思い出しながら、ぼくはほっとした。
チーフメカニックは2台のマシンメカニックの統括者、つまり管理職だ。作業監理だけでなくミーティングも多くて、いつもピットやパドックをあちこち移動している。レースがない週は本部のファクトリーへ「出勤」する日も少なくない。ぼくの業務は広報で畑違いだから傍から見ているだけだけど、それでもすごく忙しそうなのはよく分かる。実はロングフライトが一番よく休める時なのも知っている。
じいっとユウ兄の寝姿を見つめていると、通路の奥からCAさんが歩いてきた。顔を上げると目が合ってCAさんににっこり笑顔を返される。さっき対応してくれたCAさんだ。だいぶ先の空きブースに身を寄せて、ぼくに通路を譲ってくれた。
「サンキュー」
お礼を言いながら通り過ぎようとしたら、
「いかがお過ごしですか?」
と聞かれた。あのことを指していることは明白だ。
「おかげさまで安心して過ごせています。さっきまですっかり眠っていました」
そう答えると、彼女はほっとしたように微笑んだ。そして、
「頼もしいガーディアンですね」
と続けた。
え? ガーディアン?
意味が分からなくてきょとんとしていると、彼女は笑顔のままユウ兄のブースの方を指さした。
「さきほど、ドアをお閉めしましょうかとお尋ねしたら、『隣が気になるので開けておいて欲しい』と言われました」
・・・え⁈
予想外の言葉にぼくは本当に驚いた。
まさかユウ兄が、そんな歯の浮くようなセリフを言うなんて‼
何かの冗談かと思ってぼくは後ろを振り返った。距離が遠くてパーテーションの中は見えないけど、たぶんユウ兄はまだ眠っているはず。
CAさんはユウ兄がドアを閉めないのはさっきの出来事があったからだと思っているだろう。けど、ユウ兄がドアを閉めないのはいつものことだ。特別なことじゃない。
はずだけど・・・。
一緒に暮らすようになってからのことを少し思い返す。
いつも一緒にいるのが当たり前。でも、レース以外で真面目な話をすることはほとんどない。サーキットでもホテルでも家でも、お互いにからかいあってふざけてばかりだ。対等に扱ってくれるし、変に過保護でもない。
とは言いつつも・・・思い当たる節はなくはなかった。
あの、席が離れ離れになったフライト。
あの時ぼくは、自分のイヤフォンをフライト中ずっと耳に差し込んで、好きな音楽を聴き続けるか眠るかして、〝あの感覚〟に飲まれないように過ごした。〝あの感覚〟が沸き上がることなくうまく乗り切れて、着陸した時にはほっとした以上に自信さえ沸いていた。
だけど、機体を降りて人波の中にユウ兄を見つけた時、ユウ兄は焦っているような、すごく切羽詰まったような顔で人混みに苦労しながらぼくの方へやってくると、
「大丈夫だったか?」
と開口一番に聞いた。
ぼくは反射的に「うん」と答えたものの、その瞬間、本当にぼくは意味がわからなかった。きょとんとしていたと思う。
そんなぼくに気付いたみたいで、ユウ兄はほっと息をついて「なら、良かった」とだけ言った。だけど、その顔にはちょっと苦笑いが浮かんでいた。
思い返すと、ビジネスクラスだけでなくエコノミーでもアイマスクやイヤフォンを着けて眠っているのを見たことがない。それだけじゃなくて、熟睡しているように見えて、ぼくが動くと大抵気がつく。
「気になるからドアは開けたままで」というのは、ぼくのクセを心配しているから?
もしかして、アイマスクやイヤフォンや耳栓をしないのも同じ理由?
いつ、ぼくが〝あの感覚〟に襲われるか分からないから?
そんなぼくを、いつも守ってくれてるってこと?
本人からわざわざ聞かされたことはない。だけど・・・
ぼくは、こうやっていつもユウ兄に守られていたんだ、と分かってしまった。
もしかして・・・
だから、たった2年であのクセが和らいだ・・・?
ぼくは顔を正面のCAさんへ戻した。
「最高のガーディアンです。ついさっき思い出しました」
にやりとしながらCAさんにジョークを言った。彼女はおかしそうに眉を上げた。
フライト時間は残り5時間。
ぼくは、今まで以上に、安心に包まれていることを改めて知った。
5時間後、飛行機は羽田空港に着陸し、第三ターミナルの駐機場に入った。
シートベルト着用サインが消えて乗客が一斉に収納棚から荷物を取り出し始める。ぼくも自分のザックを取り出そうと通路に出た。それより先にユウ兄が収納棚からぼくのザックを取り出してくれる。ぼくは素直にそれを受け取った。
機体のドアオープンまでほとんどの人が通路に並んで待つ。もう一度忘れ物がないか、通路からブースの中を見回す。うん、完了。
ぼくは5時間前にCAさんから言われたことを思い出して、後ろに立つユウ兄を振り返った。見上げたユウ兄はパーテーションに軽く肘を乗せて、見るとはなしに周りを眺めていた。
「ねえ、ユウ兄」
声をかけるとぼくに顔を向ける。
「ん?」
「ユウ兄が機内で眠る時にいつもブースのドアを閉めないのって、ぼくを守るため?」
「は?」
ユウ兄がぽかんと口を開けた。ぼくの問いが突拍子もなかったようだ。だけど、ぼくは気にせず続ける。
「アイマスクも耳栓もヘッドフォンもしないのも?」
そこまで言うと、なんとなくぼくの言いたいことが伝わったようだ。だんだんユウ兄の顔がレモンを齧ったような顔になる。顔がうっすら赤い。
「前、向けって! そろそろドア開くぞ」
言いながらぼくの後頭部を片手でがしっと掴んで強引に前に向けさせる。
「あっ、暴力反対!」
「注意力散漫!」
ドアが開いたらしく、人の列が進み始めた。ユウ兄がぼくの後頭部から手を離し、自分の胸で軽くぼくを押し出す。
「ほら!」
「もう! 乱暴にしないでよ!」
「してないだろ!」
ユウ兄はザックごとぼくの肩を右腕で包むと、ぼくの歩調に合わせて歩き出した。ドアの近くまで来るとあのCAさんがいた。親しみの籠った笑顔を向けてくれる。
「お世話になりました」
「良い時を過ごされましたか?」
「はい。あれからもう、安心感のゲージが3倍でした」
二人でくすっと笑う。それだけで、お互いに伝わっていることが分かる。
「またのご搭乗、お待ちしています」
ぼくはユウ兄に肩を包まれたまま、CAさんに見送られて飛行機を出た。
冷気が溜まったボーディングブリッジを挟んで暖かいターミナル内へ移ると、ユウ兄はぼくから腕を離してスマホの通知を確認し始めた。見るとユウ兄の眉が寄っている。なんかいやな報告でもあったのかな?
「ユウ兄」
「うん?」
呼びかけるとスマホから目を話さないまま若干上の空な返事が返ってくる。
「ありがとね」
さらっと言ってみる。三秒くらいおいてユウ兄がぼくを見た。
「今度、美味しいチョコレートプディングを作るよ」
ユウ兄を見上げて宣言する。
たぶん、これからまだまだユウ兄のからかいにイライラすることはあると思う。
でも、それとは関係なく、ぼくはぼくの出来ることをしよう。ぼくの出来ることでユウ兄へ感謝を伝えたい。
ぼくをじいっと見ていたユウ兄は、ふわっと笑って
「サンキュ!」
そう言うと、ぼくの背中をいつものように軽くひとつ叩いた。
「ブースの設備不具合を理由に移動だって。さすがだなあ」
ギャレーで待っている時にユウ兄が尊敬するように呟いた。
戻ってきたCAさんから、酔っぱらいのブースをぼくたちから遠いところへ移動させたことと、通路巡回を強化することを説明された。酔っぱらいのブースは奥のギャレーを挟んで向こうの区画になったらしい。さらに、区画堺のカーテンが引かれていて向こうの区画からぼくたちは見えないようになっていた。もう安心だ。
すっかりほっとしたぼくを見て、
「席を立つときは念のため周りを確認しろよ」
とユウ兄が釘を刺してきた。ぼくは今回は素直に頷いた。もちろん、スライドドアもぴったり閉める。
ブースに入るとどっと疲れが出た。読書灯もモニターも全てオフにしてブランケットにくるまって目を閉じる。恐怖や不安はもうない。でも神経が昂っていて眠れる気がしなかった。かといって小説を読む気にもなれない。目を閉じたままじっと耳をそばだてていると、ユウ兄が動いている音が聞こえた。
また映画を見始めたのかな。
そういえば、どうしてぼくのピンチに間に合ったのかと不思議に思って聞いたら、ぼくがギャレーに向かう途中で後を追うようにブースから出てきた男の様子が気になったから、と言っていた。そんなの、分かるんだ・・・。
人が歩く気配がして目を開けると、パーテーションの横を過ぎ去るCAさんの後ろ姿が見えた。きれいにまとめた髪型と、ぴんと張った背筋と、揺れる機内を颯爽と歩く姿がかっこいい。
大人ってすごいなあ・・・。
と、ぼんやり頭に浮かんだ。さっきの出来事が遠い過去みたいに思えてきた。
ぼくは自然に眠りに落ちた。
ふと目が覚めて、身体を伸ばすためにブースを出た。短い時間だったけど熟睡できたみたいで頭がスッキリしていた。喉が渇いていて、ギャレーへ炭酸水をもらいに行くことにした。
通路から隣りを覗くとユウ兄は眠っていた。モニターはオフになっている。またドアは開けっ放し、アイマスクもヘッドフォンも耳栓もなし。ユウ兄はいつもはちょっとしたことで目を覚ますけど、さっきそっとドアを開けたかいがあって、いまは目を覚ます様子がない。
すっかり熟睡してるなあ・・・。
ついさっき心配をかけたことを思い出しながら、ぼくはほっとした。
チーフメカニックは2台のマシンメカニックの統括者、つまり管理職だ。作業監理だけでなくミーティングも多くて、いつもピットやパドックをあちこち移動している。レースがない週は本部のファクトリーへ「出勤」する日も少なくない。ぼくの業務は広報で畑違いだから傍から見ているだけだけど、それでもすごく忙しそうなのはよく分かる。実はロングフライトが一番よく休める時なのも知っている。
じいっとユウ兄の寝姿を見つめていると、通路の奥からCAさんが歩いてきた。顔を上げると目が合ってCAさんににっこり笑顔を返される。さっき対応してくれたCAさんだ。だいぶ先の空きブースに身を寄せて、ぼくに通路を譲ってくれた。
「サンキュー」
お礼を言いながら通り過ぎようとしたら、
「いかがお過ごしですか?」
と聞かれた。あのことを指していることは明白だ。
「おかげさまで安心して過ごせています。さっきまですっかり眠っていました」
そう答えると、彼女はほっとしたように微笑んだ。そして、
「頼もしいガーディアンですね」
と続けた。
え? ガーディアン?
意味が分からなくてきょとんとしていると、彼女は笑顔のままユウ兄のブースの方を指さした。
「さきほど、ドアをお閉めしましょうかとお尋ねしたら、『隣が気になるので開けておいて欲しい』と言われました」
・・・え⁈
予想外の言葉にぼくは本当に驚いた。
まさかユウ兄が、そんな歯の浮くようなセリフを言うなんて‼
何かの冗談かと思ってぼくは後ろを振り返った。距離が遠くてパーテーションの中は見えないけど、たぶんユウ兄はまだ眠っているはず。
CAさんはユウ兄がドアを閉めないのはさっきの出来事があったからだと思っているだろう。けど、ユウ兄がドアを閉めないのはいつものことだ。特別なことじゃない。
はずだけど・・・。
一緒に暮らすようになってからのことを少し思い返す。
いつも一緒にいるのが当たり前。でも、レース以外で真面目な話をすることはほとんどない。サーキットでもホテルでも家でも、お互いにからかいあってふざけてばかりだ。対等に扱ってくれるし、変に過保護でもない。
とは言いつつも・・・思い当たる節はなくはなかった。
あの、席が離れ離れになったフライト。
あの時ぼくは、自分のイヤフォンをフライト中ずっと耳に差し込んで、好きな音楽を聴き続けるか眠るかして、〝あの感覚〟に飲まれないように過ごした。〝あの感覚〟が沸き上がることなくうまく乗り切れて、着陸した時にはほっとした以上に自信さえ沸いていた。
だけど、機体を降りて人波の中にユウ兄を見つけた時、ユウ兄は焦っているような、すごく切羽詰まったような顔で人混みに苦労しながらぼくの方へやってくると、
「大丈夫だったか?」
と開口一番に聞いた。
ぼくは反射的に「うん」と答えたものの、その瞬間、本当にぼくは意味がわからなかった。きょとんとしていたと思う。
そんなぼくに気付いたみたいで、ユウ兄はほっと息をついて「なら、良かった」とだけ言った。だけど、その顔にはちょっと苦笑いが浮かんでいた。
思い返すと、ビジネスクラスだけでなくエコノミーでもアイマスクやイヤフォンを着けて眠っているのを見たことがない。それだけじゃなくて、熟睡しているように見えて、ぼくが動くと大抵気がつく。
「気になるからドアは開けたままで」というのは、ぼくのクセを心配しているから?
もしかして、アイマスクやイヤフォンや耳栓をしないのも同じ理由?
いつ、ぼくが〝あの感覚〟に襲われるか分からないから?
そんなぼくを、いつも守ってくれてるってこと?
本人からわざわざ聞かされたことはない。だけど・・・
ぼくは、こうやっていつもユウ兄に守られていたんだ、と分かってしまった。
もしかして・・・
だから、たった2年であのクセが和らいだ・・・?
ぼくは顔を正面のCAさんへ戻した。
「最高のガーディアンです。ついさっき思い出しました」
にやりとしながらCAさんにジョークを言った。彼女はおかしそうに眉を上げた。
フライト時間は残り5時間。
ぼくは、今まで以上に、安心に包まれていることを改めて知った。
5時間後、飛行機は羽田空港に着陸し、第三ターミナルの駐機場に入った。
シートベルト着用サインが消えて乗客が一斉に収納棚から荷物を取り出し始める。ぼくも自分のザックを取り出そうと通路に出た。それより先にユウ兄が収納棚からぼくのザックを取り出してくれる。ぼくは素直にそれを受け取った。
機体のドアオープンまでほとんどの人が通路に並んで待つ。もう一度忘れ物がないか、通路からブースの中を見回す。うん、完了。
ぼくは5時間前にCAさんから言われたことを思い出して、後ろに立つユウ兄を振り返った。見上げたユウ兄はパーテーションに軽く肘を乗せて、見るとはなしに周りを眺めていた。
「ねえ、ユウ兄」
声をかけるとぼくに顔を向ける。
「ん?」
「ユウ兄が機内で眠る時にいつもブースのドアを閉めないのって、ぼくを守るため?」
「は?」
ユウ兄がぽかんと口を開けた。ぼくの問いが突拍子もなかったようだ。だけど、ぼくは気にせず続ける。
「アイマスクも耳栓もヘッドフォンもしないのも?」
そこまで言うと、なんとなくぼくの言いたいことが伝わったようだ。だんだんユウ兄の顔がレモンを齧ったような顔になる。顔がうっすら赤い。
「前、向けって! そろそろドア開くぞ」
言いながらぼくの後頭部を片手でがしっと掴んで強引に前に向けさせる。
「あっ、暴力反対!」
「注意力散漫!」
ドアが開いたらしく、人の列が進み始めた。ユウ兄がぼくの後頭部から手を離し、自分の胸で軽くぼくを押し出す。
「ほら!」
「もう! 乱暴にしないでよ!」
「してないだろ!」
ユウ兄はザックごとぼくの肩を右腕で包むと、ぼくの歩調に合わせて歩き出した。ドアの近くまで来るとあのCAさんがいた。親しみの籠った笑顔を向けてくれる。
「お世話になりました」
「良い時を過ごされましたか?」
「はい。あれからもう、安心感のゲージが3倍でした」
二人でくすっと笑う。それだけで、お互いに伝わっていることが分かる。
「またのご搭乗、お待ちしています」
ぼくはユウ兄に肩を包まれたまま、CAさんに見送られて飛行機を出た。
冷気が溜まったボーディングブリッジを挟んで暖かいターミナル内へ移ると、ユウ兄はぼくから腕を離してスマホの通知を確認し始めた。見るとユウ兄の眉が寄っている。なんかいやな報告でもあったのかな?
「ユウ兄」
「うん?」
呼びかけるとスマホから目を話さないまま若干上の空な返事が返ってくる。
「ありがとね」
さらっと言ってみる。三秒くらいおいてユウ兄がぼくを見た。
「今度、美味しいチョコレートプディングを作るよ」
ユウ兄を見上げて宣言する。
たぶん、これからまだまだユウ兄のからかいにイライラすることはあると思う。
でも、それとは関係なく、ぼくはぼくの出来ることをしよう。ぼくの出来ることでユウ兄へ感謝を伝えたい。
ぼくをじいっと見ていたユウ兄は、ふわっと笑って
「サンキュ!」
そう言うと、ぼくの背中をいつものように軽くひとつ叩いた。
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