狂乱の【ウエポナー!】

拝 印篭

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序章 とち狂った人々

第参話 「ある少女の肖像」

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 制服のブラウスをはだけさせ、乳房を剥き出しにしたままの薫子を横目で見ながら、俺は、それでも奴の事を考えていた。

(あいつを殺してぇ! 俺のたった一つの夢を殺した奴だ! 〝殺し〟には、〝殺し〟で仕返ししてやる。そうしないと俺は先へ進めねぇ!)

「ねぇ、大樹が最近こだわってるあの子、よく見るとかわいいわよねぇ♡」

「てめぇも俺を裏切る気か?」

「こわ! そうじゃなくて、私もパーティーに参加していいかしら?」

 ふん! 良くいうぜ。俺も大概だが、この女も相当イカれてやがるからな。
 見てくれだけで言うと、大和撫子そのものな感じの髪パッツン美人だが、俺と、俺の仲間、そして、被害者だった奴らしか知らない秘密がある。

 こいつの性癖は異常だ!
 なにしろ、初めて会ったのが、六歳の時。小学校に上がる前だ。
 その時、俺は、こいつの四つ上の兄貴が、クラスメートの女の子を苛めてる現場にいた。その兄貴が女の子を裸にひんむいてあちこちいじりまくっていたんだ。で、おれにも触ってみろってんで、色々はじめて女を触りまくったいい思い出だ。
 女の子は、「やめてーっ!」「助けてーっ!」と、何度も懇願していたが、俺たちは、男三人で容赦なく局部も、尻も、散々いじり倒した。
 で、その時、薫子もいっしょに居たんだが、こいつは、その時何をしていたかというと、苛められる女の子を見て、すっごい興奮していた。で、その場でパンツ脱いで自分でおっぱじめていたんだ。
 信じられるか? たった六歳の女が、他人が裸で苛められてるのを見ながらオナニーしてるんだぜ!
 しかも、俺にむかって、
「ちんちんさわらせて~」
 とか言ってきたんだ。
 それから、こいつとは、何度も一緒につるむ様になって、そのうち俺が精通した頃に、どうやって嗅ぎ付けたか知らないが処女をくれやがった。と、いうか、あの歳まで膜が残ってた方がびっくりだったがな。
 それからも、俺たちが誰かを痛めつけてると、そのうち嗅ぎ付けていつの間にか一緒にいる。そして、それを見ながら俺の上で跨ってやがるんだ。

「だって、他人が苦しんでる最中に気持ちいいことすると、一番興奮するんだもん」

 だってよ。ホント、いい趣味してやがる。

「それにしても、あなたも物好きよねぇ。人を使う立場の人間のくせに、わざわざ試験まで受けて人に使われる立場になりたいなんて」

 ! どうして、こいつが知ってる?

「おじさまがぼやいてたわよ。〝あいつは、俺の跡継ぎのくせに妙な夢を見てる〟って」

 なん、だと? 親父は、俺の夢に賛成だったんじゃないのか?

「〝さっさと目を覚まして勉強してくれれば俺も気が楽になるのにな〟って、お父様と話してたわ。そのために理由をつけて試験を落としてくれるよう頼んだんだって」

 くっ! あの糞親父! 俺をハメやがったのか! 最初から俺の夢なんか叶える気が無かったってか?

「! どこに行くのよ!」

「帰る!」

 そうして、俺は屋上から出ていった。背後で薫子が

「小さい男」

 と、言った気がしたが、最早気にしていられなかった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 がっかりしたわ。あいつ、子供の頃の方が素敵だった。私が、感じてる姿をガン見して、目をはなさなかった。おっきくしながら。それなのに、いっちょ前にヤルこと覚えてから、だんだんつまらない男になってきてる。
 これなら、かねてから計画してた、あいつの目の前で他の男とヤルっていうのも、効果絶大かもね。
 それが、あいつが許せないあの子なら、うふふふ。
 ちっちゃなあの男にふさわしい、嫉妬に狂う小物。そう言ってあげられたら、どんなにカワイイ泣きっ面見せてくれるかしら。ああっ、自分の妄想が止まらないわ! 

「あああぁっ! いいっ!」

 ……また、イっちゃった。この頃は、一日何度絶頂しても満足感が無い。

 小さい頃、よく、一緒に遊んでたお兄ちゃんは、近所でも有名ないじめっ子だった。
 お兄ちゃんがいじめをしている場面を良く見ていたの。その頃の夢は、
「私もお兄ちゃんに苛められたい」
 だった。だって、苛められてる人たち、最初は必死に抵抗してたけど、ある時から全く抵抗せずにされるがままになってしまうのだもの。それも、一人の例外も無く。それって、止めて欲しく無いからよね。
 そう思ったら、もう我慢できなくて、お願いしてみたの。そうしたら、ビミョーな顔で、
「俺は、お前だけは苛められない」
 って、いじわるされちゃった。そしてしばらくすると、お兄ちゃんは東京の全寮制の学校に進学した。
 それ以来、私は叶えられなかった欲望の捌け口を探している。
 苛められる人の無様な恰好を見て、自分ならって、想像して。
 私のことを知ってる人たちは、ドSだと思ってるみたいだけど、本当は、私ドMなんだろうなって、自分でも知ってる。あああっ、早く、私の本質に気が付いてくれる王子様、現れないかしら?


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ただいま、帰りました」

 俺は、浜松アリーナの駐車場に止めてある大型トラックの前で練習している団員の皆さんに挨拶してから、自分の家替わりのキャンピングカーに乗り込む。中には、母がまだ準備してる最中だった。

「ただいま。お母さん」

「おかえりなさい、賢治。学校までは遠くて大変でしょ。冷蔵庫の中に清水さんから頂いたゼリーがあるの。お食べなさいな。あ、手はちゃんと洗うのよ?」

 母は、まだ、若くてきれいだ。18の時に俺を生んだのだから、まだ31歳。今でも、花形の空中ブランコを担当している。そして、親父が団長、今年50だから、母とは、俺と母以上の年の差がある。
 そんな二人がよくくっつけたものだと、不思議な気がしてたが、いつも優しい母がたった一度だけ怒った時があった。それが、両親の馴れ初めの話を俺が聞いた時だった。その時は、うつぶせに押し倒され、背中を何度も何度も踏みつけられた。やがて、動けなくなった俺を見つけた父の手で病院へ運ばれたが、背骨の神経が、傷んでいたという。それ以来、本人は分からないが、他人から見ると、俺の歩き方は滑稽なものに見えるそうである。
 だが、人の口に戸は建てられないもので、両親の馴れ初めに関しては、団員たちの噂話などから、推察できるようになってきた。
 端的に言うと、母は、父にレイプされて俺を身籠ったそうだ。まだ若く、将来性のあるスター候補生だった母は、17の時、大手サーカス団からの引き抜きの話があったそうだ。それを当時団を継いだばかりの父に相談したところ、執拗に遺留を懇願され、それでも返事を渋っていると遂には、父が無理やり母を犯し、妊娠させ、転職を止めさせたとか。
 当然、母は、その時の事を恨みに思っていて、夫婦仲は最悪である。だが、その分俺には優しくしてくれている。俺には自慢の母親だ。
 一方、父は、俺が小学校に入る前から俺にサーカスの訓練をさせ始めた。どんなに高い所から落ちても生きていられるように訓練させ、火の輪くぐりをさせ、ナイフ投げや、ナイフを使ったジャグリングなど、サーカスの種目は、一通り出来るように訓練された。母は、それも面白くないのだろう。毎日のように俺が寝床に入ると父と言い争いをするのが日課になった。

 まあ、結果論で言えば、今日も生きて帰ってこれたのは、父のおかげである。何にしろ、技術を身につけられたのは、俺の人生でプラスになっている。

 さて、ゼリーも食べ終わったし、今日も訓練だ。明日からの週末三連休は、最後にアリーナで興行があるので、少し気合いを入れないと。
 俺は、支度をして、両親の待つテント前に向かった。

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