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新しい生活
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結局、ラピュレさんと半分ずつシェアすることにした。
小ぶりなホールじゃなくて顔の大きさぐらいはあるホールだったから、半分でも十分だ。
私はケーキと、いつの間に買ってきたのかワインを持たされた。
クロードの両手が塞がってたから寮の扉を開けてあげたら、「あっ」って声を上げてたから
もしかしたら魔法でロックがかかってたのかもしれない。
普通に開いたけどね?
テーブルに料理を並べ終わった丁度いいタイミングで、キースさんは帰ってきた。
「おかえりキースさん」
「帰ってきたのか、二人共…。アンリとはもう会うことはないと思っていたよ」
そう思ってたにしてはさくっと別れたよね。
結構フレンドリーに接してくれるけど、好感度そんなに高くなかったんだろうなぁ。
この世界の人だいたいこんな感じなのかな。
まぁ私は上辺に騙されるわけだけど。
「どうしたんだい、怒ってる?…城で何かあったのか」
「アンリちゃんはケーキを一種類しか食べられないから機嫌悪いんです。二つ買えばよかったのに」
「違うっつーの!そんなに食べれないし」
未練がないと言えば嘘になるけ…ど、
はっ!?
良かった嘘ノーカン!体が動く!
危ない危ない…こんな、ご馳走を前に倒れるとか、死んでも死にきれないわ!
「今日は二人の無事を祝ってのご馳走なんだね」
「それと、遅ればせながら先輩の誕生日祝いですよ」
「ですよ。はいこれプレゼント。こっちはお土産」
包装の文化がないようで、とりあえずリボンを巻いた砂糖漬けの瓶をドンッ。
ワインが注がれた、カップをコンッ。
マグカップにワインって、どうよ?とは思うけど。
薄いガラスのワイングラスは存在していないようで、特に違和感はないらしい。
「本当かい?嬉しいよ、ありがとう」
「それはよかった。じゃ、気を取り直して、乾杯~!」
「……」
「…何それどうやるの?」
はいはいはい、おっけー
分かったからきょとんとした顔でこっち見るのやめてくれない?
めっちゃ恥ずかしいんですけど!
「無事の帰還ありがとーキースさんおめでとー、はーいいただきますっ!」
クロードが居ない間出ずっぱりで、二人で勤務を回していたらしいキースさんを労いつつ。
立ち寄った町の話で盛り上がり、久しぶりに賑やかな食事になった。
***
「おはよー、アンリちゃんいつも早いね」
「おはよ。リルムもね」
この街に帰ってきた次の日から、私は学校に通ってる。
教師は2人で生徒は18人。
10歳から自由に通えるような制度らしく、年少組と年長組というアバウトなクラス分けがされている。
文字や簡単な算数、薬草の知識やモンスターの対処法。
そんな基本的な事を教えてもらえる、年少組に混ざる私。
この世界に来て、カレンダーもないしあんまり日付感覚がなくなってきたんだけど、もう二週間ぐらいはたったかな?
「わたしはお姉ちゃんと一緒に家を出るから」
「同じく。私も出勤に合わせて家出るからさー」
私かリルムが一番乗りで、次は年少組が早い。
大きい子達は朝から家の手伝いをする事が多いみたい。感心しちゃう。
ケーキ屋で会ったリルムは年長組に居るが、既に卒業しているらしい。
年少組を担当するミリィ先生とは姉妹で、仕込み中は暇なので学校を手伝いに来てるそうだ。
だいたいは年少組を2年、年長組を2年で卒業していくみたいで、大人な私が入学してきたのを大いに喜んでくれた。
「文字、読めるようになった?」
「ぼちぼちね。寝る前に10回声出して書くのが日課だよ」
50音表を作って、必死に覚えている最中だ。
ひらがなカタカナ漢字、みたいに種類が豊富ではないのでまだ助かってる。
なんとローマ字方式なので、英語みたいに単語を覚える必要もない!
ただし一文字ずつが装飾的で、微妙な曲がり具合で違う文字だったりするので中々判別できない…。
筆記体で繋げて書かれると模様でしかないのでマジ無理。
「アンリ、今日は授業終わったらおれと探検だからな!」
教室に入るなり宣言したのは、日に焼けた肌が目立つリッド少年。
年少組のちびっ子達によって、私は代わる代わる毎日街を連れまわされているのだ。
いい恰好したい年頃のようで、ドヤ顔で色々案内してくれるので正直助かっている。
子供パワーでぐんぐん街に溶け込めてきてて、超ありがたい。
地元の子供達だから、これからお世話になるかもって親御さんに挨拶もできていい感じなんだよね。
宿屋の息子もいるんだけど、あの"キースさんの手紙"を書いてたメリッサさんの弟だったりした。
色々繋がっていくもんだねー。
「うんうん約束したもんね、覚えてるよ。リッドの家は鍛冶屋だっけ」
「違うよおれんとこは牧場だってば!今日馬をおろしに広場に来てるから、連れてってやるって言っただろ」
馬かー、これもね、乗れるようになりました。
仕事終わりにグレイさんが付き合ってくれたんだけど、ブラッシングの仕方から入門したから騎乗させてもらえるまでに大分かかったわ…。
「聞いてんのか?お前が猫より犬派だって言うから誘ってやってんのに…」
「犬も売ってるの?ペット買いたいな~小型犬こっそり飼おうかなぁ」
「何言ってんだ、ロドは売り物じゃないぞ」
「ってことは飼い犬自慢か。いいよモフらせてね」
「いいぞ、お礼は表通りの焼き鳥な!」
対価に、おやつを買ってあげてwin-winな関係を築いてる。
いやぁ美味しいお店情報もGETできてほんといい事尽くしなんだなこれが。
うん、私、この場所でも楽しく暮らしていけると思う。
小ぶりなホールじゃなくて顔の大きさぐらいはあるホールだったから、半分でも十分だ。
私はケーキと、いつの間に買ってきたのかワインを持たされた。
クロードの両手が塞がってたから寮の扉を開けてあげたら、「あっ」って声を上げてたから
もしかしたら魔法でロックがかかってたのかもしれない。
普通に開いたけどね?
テーブルに料理を並べ終わった丁度いいタイミングで、キースさんは帰ってきた。
「おかえりキースさん」
「帰ってきたのか、二人共…。アンリとはもう会うことはないと思っていたよ」
そう思ってたにしてはさくっと別れたよね。
結構フレンドリーに接してくれるけど、好感度そんなに高くなかったんだろうなぁ。
この世界の人だいたいこんな感じなのかな。
まぁ私は上辺に騙されるわけだけど。
「どうしたんだい、怒ってる?…城で何かあったのか」
「アンリちゃんはケーキを一種類しか食べられないから機嫌悪いんです。二つ買えばよかったのに」
「違うっつーの!そんなに食べれないし」
未練がないと言えば嘘になるけ…ど、
はっ!?
良かった嘘ノーカン!体が動く!
危ない危ない…こんな、ご馳走を前に倒れるとか、死んでも死にきれないわ!
「今日は二人の無事を祝ってのご馳走なんだね」
「それと、遅ればせながら先輩の誕生日祝いですよ」
「ですよ。はいこれプレゼント。こっちはお土産」
包装の文化がないようで、とりあえずリボンを巻いた砂糖漬けの瓶をドンッ。
ワインが注がれた、カップをコンッ。
マグカップにワインって、どうよ?とは思うけど。
薄いガラスのワイングラスは存在していないようで、特に違和感はないらしい。
「本当かい?嬉しいよ、ありがとう」
「それはよかった。じゃ、気を取り直して、乾杯~!」
「……」
「…何それどうやるの?」
はいはいはい、おっけー
分かったからきょとんとした顔でこっち見るのやめてくれない?
めっちゃ恥ずかしいんですけど!
「無事の帰還ありがとーキースさんおめでとー、はーいいただきますっ!」
クロードが居ない間出ずっぱりで、二人で勤務を回していたらしいキースさんを労いつつ。
立ち寄った町の話で盛り上がり、久しぶりに賑やかな食事になった。
***
「おはよー、アンリちゃんいつも早いね」
「おはよ。リルムもね」
この街に帰ってきた次の日から、私は学校に通ってる。
教師は2人で生徒は18人。
10歳から自由に通えるような制度らしく、年少組と年長組というアバウトなクラス分けがされている。
文字や簡単な算数、薬草の知識やモンスターの対処法。
そんな基本的な事を教えてもらえる、年少組に混ざる私。
この世界に来て、カレンダーもないしあんまり日付感覚がなくなってきたんだけど、もう二週間ぐらいはたったかな?
「わたしはお姉ちゃんと一緒に家を出るから」
「同じく。私も出勤に合わせて家出るからさー」
私かリルムが一番乗りで、次は年少組が早い。
大きい子達は朝から家の手伝いをする事が多いみたい。感心しちゃう。
ケーキ屋で会ったリルムは年長組に居るが、既に卒業しているらしい。
年少組を担当するミリィ先生とは姉妹で、仕込み中は暇なので学校を手伝いに来てるそうだ。
だいたいは年少組を2年、年長組を2年で卒業していくみたいで、大人な私が入学してきたのを大いに喜んでくれた。
「文字、読めるようになった?」
「ぼちぼちね。寝る前に10回声出して書くのが日課だよ」
50音表を作って、必死に覚えている最中だ。
ひらがなカタカナ漢字、みたいに種類が豊富ではないのでまだ助かってる。
なんとローマ字方式なので、英語みたいに単語を覚える必要もない!
ただし一文字ずつが装飾的で、微妙な曲がり具合で違う文字だったりするので中々判別できない…。
筆記体で繋げて書かれると模様でしかないのでマジ無理。
「アンリ、今日は授業終わったらおれと探検だからな!」
教室に入るなり宣言したのは、日に焼けた肌が目立つリッド少年。
年少組のちびっ子達によって、私は代わる代わる毎日街を連れまわされているのだ。
いい恰好したい年頃のようで、ドヤ顔で色々案内してくれるので正直助かっている。
子供パワーでぐんぐん街に溶け込めてきてて、超ありがたい。
地元の子供達だから、これからお世話になるかもって親御さんに挨拶もできていい感じなんだよね。
宿屋の息子もいるんだけど、あの"キースさんの手紙"を書いてたメリッサさんの弟だったりした。
色々繋がっていくもんだねー。
「うんうん約束したもんね、覚えてるよ。リッドの家は鍛冶屋だっけ」
「違うよおれんとこは牧場だってば!今日馬をおろしに広場に来てるから、連れてってやるって言っただろ」
馬かー、これもね、乗れるようになりました。
仕事終わりにグレイさんが付き合ってくれたんだけど、ブラッシングの仕方から入門したから騎乗させてもらえるまでに大分かかったわ…。
「聞いてんのか?お前が猫より犬派だって言うから誘ってやってんのに…」
「犬も売ってるの?ペット買いたいな~小型犬こっそり飼おうかなぁ」
「何言ってんだ、ロドは売り物じゃないぞ」
「ってことは飼い犬自慢か。いいよモフらせてね」
「いいぞ、お礼は表通りの焼き鳥な!」
対価に、おやつを買ってあげてwin-winな関係を築いてる。
いやぁ美味しいお店情報もGETできてほんといい事尽くしなんだなこれが。
うん、私、この場所でも楽しく暮らしていけると思う。
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