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心の支え
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「言葉が分かるのか」
「えっ、はい」
えっそこから?
私の事"人"だって認識してたよねさっき?
「陛下」
「魔王と意思の疎通が取れるまで数年かかった。遠い国なので文化が違うと…この娘は我が国の民なのだろうか」
「成程、それで先ほどから処遇について目の前で話されていたのですね。ご覧ください今にも逃げだしそうな顔をしていますよ」
いや無理無理、ここに来るまでに何人武器装備した人とすれ違ったと思ってんの。
そんな無謀な事するぐらいなら、クロードに縋り付いて泣きわめくわ!
「それに、その情報も王家の秘密なのでは?勇者の血筋とはいえ私も知らされてませんでしたが」
「そうか、では忘れてくれ」
「ご安心ください」
王様は、クロードのこと信頼してるみたい。
私も忘れますってはっきり宣言したほうがいいのかな?
黙ってた方がいいのかな?どうしていいか、もう分からん!
「我が国の民であれば、裏切るような真似はせぬな。家を援助し、もしもの時は逆に罰を与える」
「そのことですが陛下、彼女が先ほど言った記憶喪失というのは本当のようなのです。召喚の影響か元からそうなのか分かり兼ねますが、まるで幼児のように物を知りません。地名や食べ物の名称、挨拶、文字。自分の名前だけは言えましたが後は身元に繋がる情報もなく…もしかしたらそもそも教育がなされていないのかもしれませんね」
「それは世話が大変だったろう」
こう言ってるけど、道中に話したからクロードは私の記憶がしっかりしてると理解してる。
流石勇者様、困ってる村人Aをほっとけないのね、ありがたい。
「娘、クローアルドの言う事をよく聞き、誠心誠意仕えよ。生活の保障と、働きに見合った褒美を与える」
「あー、ありがたきしあわせ?」
棒読みしつつ、深く頭を下げておく。
助かったみたいだけど、殺すか利用するかの二択で元の場所に送り返そうとか出なかったからやっぱ帰るのは無理かなぁ。
召喚が年単位に一度だし、手順が面倒なだけかもしれないけどね。
返すぐらいならぱぱっと殺しちゃえ、みたいな。
…はぁ。王政怖え。
「今日は泊まっていくのだろう?仕事が終わるまで待っていてくれ、呑もう」
「はい、楽しみにお待ちしております」
二人だけで約束を交わして、王様は出て行った。
なんか、終わってみれば結構あっさりしてたな。
「仲いいね?」
「うん、陛下はおれの…勇者の信者だからねー。おれが産れた時に感動して、新しい勇者の誕生を祝ってって事でうちの一族を城に迎えたぐらいだから。魔王が居た時代の話を先王から色々聞かされて育ったんだろうね、何かと"勇者が何とかしてくれる"って思いこんでる節があるよ」
「子供の時から?」
「産れた時からだってさ」
王様からそんな圧かけられたらさぞプレッシャーだったに違いない。
「でも未だに優遇してくれてるってことは、今まで何とかして欲しかった事は何とかしてあげれたって事だよね。いやぁクロード凄いな、勇者なめてたわ」
「…実際王がおれを頼ったことなんてないんだけどね」
「そんなほいほい軽率に国のトップが小僧に頼み事するわけないじゃん。それよりさー、私このまま帰っていいんだよね?」
「……」
言葉を切って、何か言いたげな目でクロードが私を見る。
二人旅が始まってから、時々こういう妙な間が開くことが増えた。
何考えてるか、ちっとも分かんない。
言いたいことがあるなら言えよー。
「何、連れてきたんだから連れて帰ってよ?」
「うん…うん。やっぱりアンリちゃんって頭使ってないよね、おれには真似できないけど、いいと思うよ」
「最近ちょいちょいディスるよね!そろそろ怒るから!」
言って良いことと悪いことはあるけどね!
***
今日は城の敷地内にある離れに泊まって、明日の朝から帰るそうだ。
さっきクロードが「勇者の一族を城に迎えた」って言ってたやつなんだけど、城内の離宮を丸々家としてもらったんだって、すげぇ。
要するにクロードの実家の住所は城ってことだよね?
お姫様と幼馴染らしいし、急にハイスペックに見えてきた!
これがロイヤルブランド効果ってやつか…!
王様との話が終わっても、暗くなるまでまだ時間があったので城下を散策する事にした。
今まで通ってきたどの街よりも人が多いし、街並みがきれいだし、すれ違う人がいい服を着てる。
やっぱり首都は一味違うな。
「ねーねー、ここまで出張してきた給料払って!」
「何か欲しい物あった?」
「探し中。紅茶屋さんとかある?皆いつもコーヒーだし紅茶とか飲まないよね?青い紅茶があったら欲しいんだけど」
欲しいのは、茶葉の名前は知らないけど茶色じゃなくて青色が出る紅茶だ。
レモンを入れたらピンクになるやつ。
もしあったら、話題性もあるしインパクトもあるしいいかなって。
「クロードが払っちゃだめ。私の事助手として雇うんだよね、そのお金で私が買うから」
「買い物の練習?」
「キースさんへの誕生日プレゼント!」
無事に帰れるから、用意できる。渡すことができる。
…よかった。
「帰ったら、ケーキも買ってさ、誕生日パーティーしようね!」
「えっ、はい」
えっそこから?
私の事"人"だって認識してたよねさっき?
「陛下」
「魔王と意思の疎通が取れるまで数年かかった。遠い国なので文化が違うと…この娘は我が国の民なのだろうか」
「成程、それで先ほどから処遇について目の前で話されていたのですね。ご覧ください今にも逃げだしそうな顔をしていますよ」
いや無理無理、ここに来るまでに何人武器装備した人とすれ違ったと思ってんの。
そんな無謀な事するぐらいなら、クロードに縋り付いて泣きわめくわ!
「それに、その情報も王家の秘密なのでは?勇者の血筋とはいえ私も知らされてませんでしたが」
「そうか、では忘れてくれ」
「ご安心ください」
王様は、クロードのこと信頼してるみたい。
私も忘れますってはっきり宣言したほうがいいのかな?
黙ってた方がいいのかな?どうしていいか、もう分からん!
「我が国の民であれば、裏切るような真似はせぬな。家を援助し、もしもの時は逆に罰を与える」
「そのことですが陛下、彼女が先ほど言った記憶喪失というのは本当のようなのです。召喚の影響か元からそうなのか分かり兼ねますが、まるで幼児のように物を知りません。地名や食べ物の名称、挨拶、文字。自分の名前だけは言えましたが後は身元に繋がる情報もなく…もしかしたらそもそも教育がなされていないのかもしれませんね」
「それは世話が大変だったろう」
こう言ってるけど、道中に話したからクロードは私の記憶がしっかりしてると理解してる。
流石勇者様、困ってる村人Aをほっとけないのね、ありがたい。
「娘、クローアルドの言う事をよく聞き、誠心誠意仕えよ。生活の保障と、働きに見合った褒美を与える」
「あー、ありがたきしあわせ?」
棒読みしつつ、深く頭を下げておく。
助かったみたいだけど、殺すか利用するかの二択で元の場所に送り返そうとか出なかったからやっぱ帰るのは無理かなぁ。
召喚が年単位に一度だし、手順が面倒なだけかもしれないけどね。
返すぐらいならぱぱっと殺しちゃえ、みたいな。
…はぁ。王政怖え。
「今日は泊まっていくのだろう?仕事が終わるまで待っていてくれ、呑もう」
「はい、楽しみにお待ちしております」
二人だけで約束を交わして、王様は出て行った。
なんか、終わってみれば結構あっさりしてたな。
「仲いいね?」
「うん、陛下はおれの…勇者の信者だからねー。おれが産れた時に感動して、新しい勇者の誕生を祝ってって事でうちの一族を城に迎えたぐらいだから。魔王が居た時代の話を先王から色々聞かされて育ったんだろうね、何かと"勇者が何とかしてくれる"って思いこんでる節があるよ」
「子供の時から?」
「産れた時からだってさ」
王様からそんな圧かけられたらさぞプレッシャーだったに違いない。
「でも未だに優遇してくれてるってことは、今まで何とかして欲しかった事は何とかしてあげれたって事だよね。いやぁクロード凄いな、勇者なめてたわ」
「…実際王がおれを頼ったことなんてないんだけどね」
「そんなほいほい軽率に国のトップが小僧に頼み事するわけないじゃん。それよりさー、私このまま帰っていいんだよね?」
「……」
言葉を切って、何か言いたげな目でクロードが私を見る。
二人旅が始まってから、時々こういう妙な間が開くことが増えた。
何考えてるか、ちっとも分かんない。
言いたいことがあるなら言えよー。
「何、連れてきたんだから連れて帰ってよ?」
「うん…うん。やっぱりアンリちゃんって頭使ってないよね、おれには真似できないけど、いいと思うよ」
「最近ちょいちょいディスるよね!そろそろ怒るから!」
言って良いことと悪いことはあるけどね!
***
今日は城の敷地内にある離れに泊まって、明日の朝から帰るそうだ。
さっきクロードが「勇者の一族を城に迎えた」って言ってたやつなんだけど、城内の離宮を丸々家としてもらったんだって、すげぇ。
要するにクロードの実家の住所は城ってことだよね?
お姫様と幼馴染らしいし、急にハイスペックに見えてきた!
これがロイヤルブランド効果ってやつか…!
王様との話が終わっても、暗くなるまでまだ時間があったので城下を散策する事にした。
今まで通ってきたどの街よりも人が多いし、街並みがきれいだし、すれ違う人がいい服を着てる。
やっぱり首都は一味違うな。
「ねーねー、ここまで出張してきた給料払って!」
「何か欲しい物あった?」
「探し中。紅茶屋さんとかある?皆いつもコーヒーだし紅茶とか飲まないよね?青い紅茶があったら欲しいんだけど」
欲しいのは、茶葉の名前は知らないけど茶色じゃなくて青色が出る紅茶だ。
レモンを入れたらピンクになるやつ。
もしあったら、話題性もあるしインパクトもあるしいいかなって。
「クロードが払っちゃだめ。私の事助手として雇うんだよね、そのお金で私が買うから」
「買い物の練習?」
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