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ハイスピード二人旅

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クロードが来た。
兵士の制服よりも、身軽で動きやすそうなシンプルな服装
からの、金の刺繍の赤マント。

「何そのヒーローマント」

仮装みたいな派手なそれだけが、めっちゃういてる。

「王から貰った勇者の印だよ」
「勇者?」

勇者もう居たのか…いや、違うな
お前勇者だったんかーい!?

「違う、違うから」

違った。
あだ名か?

「おれは勇者の孫」
「孫!?じゃあ勇者様超高齢?魔王退治できるの?」
「魔王なんてもう居ねぇよ、クロードが城まで最短で護って連れてってくれるから安心しとけ」

あーなるほど、そういうの終った平和な世界だったか。

「夜は街で過ごせるようにするけど、キツいから頑張ってね」
「おっけーおっけー、よろしくお願いしまーす」

魔物が出ても私には効かないし、クロードはしっかりしてるし何も問題ないよね。


って、思えたのは最初の2分ぐらいだけ。
乗馬やばすぎる!

「アンリちゃーん、大丈夫?」

大丈夫じゃないって合図のつもりで、体に回した腕に力を込める。
手綱を握ったクロードの後ろに、私が座ってるわけなんだけど…
めっちゃ安定悪い!
持つところがないからクロードに抱きついてるんだけど、コイツはコイツで馬の振動をいなすのに腰を浮かしたりするから、結局安定しない。

「今日は街を3つ越える予定だから、頑張ってね」

全力でしがみついて、早くも腕が疲れてきてるんですけどー!?
揺れがひどくて首もガクガクで、舌を噛みそうでまともに話せやしない。

今日の目標にしてた街に着いたのは、夕方。
ヘロヘロの私はお風呂でじっくり体をほぐして、食事もそこそこに速攻寝込んだ。

「明日は朝日が出る頃出発するよ」 
「死ぬ…」

宿の一室、寝台が2つ。

「ごめんね、見張りと護衛を兼ねてるから同室なんだ。寝るときは衝立を出すよ」
「全然いいよー、朝適当に起こして。ほっといたらいつまででも寝てるから」

同室でもいいよ別に、とにかくゆっくりさせてくれ…。

「逃げなくていいの?」
「はぁ?何から」
「このまま城に行って、いいの?入ったら自由には出られないよ、きっと」

って言われてもなぁ…。

「怖いなぁ何かあるの?王様に、召喚した責任とってもらいに行くだけじゃないの」

クロードの言葉が、ひっかかる。
私一体何の用で呼び出されてるんだろうね、そういえば。

「アンリちゃんって、魔力を通さない体なんだけどさ」 
「そんな感じの事言ってたね」
「例えば髪の毛だけでもそうなのか、駄目なら皮膚ではどうか。細胞が死んだら駄目なら腕を移植してみたらどうか、とかさ。実験されると思うんだよね。おれならそうするし」
「えー、グロい」

めっちゃ物騒なこと考えてるなぁ。
そんな、数年に一度のそこそこレア召喚な私をそんな…手荒に扱わないよね?
…いやでも…前回の草は研究最中なんだっけ…。
皮膚なら再生するし、もし私の皮膚が魔力弾くってなった場合…治っちゃ剥がしてを繰り返…やだ無理グロい!
皮の盾(私)とかホラーすぎてヤバイ!!!
そもそも痛いじゃん絶対、冗談でも想像したくなかった!

「きもっ、ねぇもしそんな話になったら助けてくれるよね!?」
「…どうして?」

は?どうしてって、そんなの…

「嫌だからに決まってんじゃん!クロードも皮剥がれたら嫌でしょ動物じゃあるまいし!」

これ以上怖い未来を考えたくなくて、布団を頭から被ってぎゅっと目を閉じたら…
すこーんとそのまま眠ってしまっていた。

翌日、宣言通りに日の出と共に出立。
街を観光する暇もなく、また一日中馬に揺られる。
いや、クッキーとかドライフルーツ摘まんだり水分補給でちょいちょい休憩が入るけど
ぐったりしてれば一瞬で終わるからなー。

これ、絶対一般人向けじゃない。
訓練された兵士専用の強行だわ…。
っと気付きつつも強制連行されて、ロデオに耐えている間に一日が終わっていた。

「死ぬ…」
「うん、お疲れ様」

宿に入るなり、また私はベッドにダイブする。

「半分ぐらい来た?明日着く?」
「まだまだ、そうだなぁ…後5日ぐらいかな」
「はい死んだ…キツイ…他に何かないの?馬車あったじゃんあれにしようよ」
「飛ばしたら馬車の方がつらいよ」

後5回もあの苦行を…そろそろお尻の骨にヒビが入るんだけど。
せめて足の筋肉だけでも守ろう…ストレッチ大事よストレッチ。

「…おれさ、昔から助けてってよく言われるんだ」

今日一日中口数が少なかったクロードが、小さく溢すように話し出した。
これは、昨日やや怒鳴りつつ助けろやーって言った分のアンサーっぽい。

「頼られてるんじゃん」
「そうじゃないよ、おれが勇者の血筋だからさ」

ん、シリアス?弱音吐くモード?
助けてって言われるの地雷だったのか…ここは踏み抜いた責任とって励ますかー!

「どうしたどうした、『助けて勇者様~っ』て盗賊退治とかお宝探しとかさせられるの?」

ベッドの上に座り直して、枕を壁と背中の間に挟む。
足を延ばして、前屈しながら…といきたいけど、流石にね~。

早く寝たいっちゃ寝たいけど、夜は長い。
いや、まぁ明日も朝早いんだけどさ…いいよいいよ、付き合うよ。

向こうがどう思ってるのか知らないけど、私にとっては
この世界で優しくしてくれた、…友達みたいなものだからね。
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