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十章 マグダリーナとエリック
204. 腹心の責任
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エリック王子からマグダリーナに課せられた課題。アルバート王弟殿下を、公務に参加出来るようまともにせよは、クリア出来たと言っていい、と思う。
金と星の工房でのカウンセリングと美健魔法の施術の結果、彼は男性として生きることを受け入れ、おしゃれで動き易いズボンをはき、下着だけ可憐なフリルやリボンを楽しんでいる。見えないところのおしゃれなのだから、自由でいいだろう。
そうやって彼は社交も再開し、存分に美しいドレスを着た美しい貴婦人に取り巻かれているらしいのだ。
なのになぜまた、王宮に呼ばれているのか。
「うむ、マグダリーナよ。無礼講ゆえ、楽にするが良い」
「はあ……」
セドリック王に勧められてテーブルの席につく。すかさず女官さんが、温かい紅茶をカップに注いでくれた。
メンバーはセドリック王にマグダリーナの他は、エリック王子、宰相、エデンにニレル、そしてエステラ、ドーラ伯母様だ。それに初めて見る紫色の髪の貴族がいた。ヴィヴィアンの父親で、オーズリー公爵代理だと紹介される。
この面子から察するに、塩か真珠のことだろうか……なぜそこに自分が? お父様やハンフリーさんじゃなく?
「マグダリーナ・ショウネシー子爵、君は私の腹心であり味方だと信じているぞ」
まずエリック王子がそう言った。
ますます謎である。王子の婚約者候補の件だとしたら、なぜハイエルフとドーラ伯母様がいるのかわからない。
とりあえず、王宮の高級紅茶を味わう事にした。
「さてマグダリーナよ、もし其方が聖エルフェーラ教国の重鎮であったとして、我が国に打撃を与える為に、何をするかな」
ごふっ。
マグダリーナはとうとう、王様の前で紅茶を吹き出した。ささっと、王宮に出張しているマゴーが無かったことにしてくれる。
「王様、戯れも程々にして下さい。私、本当にまだたったの……ついこの間、十二になったばかりの小娘です!」
「うむ、懐かしいな。初めて会ったのは十歳の時であった。あの時の女神教の立案、素晴らしかったぞ」
そこはスルーする事にした。
「どうするもなにも、教国の最大の強みは大陸全土の貨幣を造幣してることでしょう? だったらやる事は一つですよね? まさか、教国がうちに貨幣を売らないって言って来たんですか?」
「いいえ、まだです。ですが時間の問題だろうと……王の誕生祭と、世継ぎの王族の成人祝いには、全ての国に招待状を送る決まりごとになっておりますので」
答えてくれたのは宰相様だ。
つまり教国からやって来るのだ、客人が。
ちらっとみると、エステラはうつらうつらと舟を漕いでいる。
「貨幣の供給を止めると脅して、教国のお嬢様をエリック王子の婚約者にしようとする程度かも知れませんよ?」
マグダリーナはすぐに貨幣の供給が止められるとも思えず、とりあえず現実的な案を出してみる。
「ダメ――――!! 教国のお嬢様はダメ! 出身地の危機だって、タマのカンがビンビン云ってるぅー!!!」
「だそうです」
「出身地やめろ」
エリック王子がぼそっと言った。
「と言う訳で、私はエリック王子の腹心として、教国人のお嫁さんには反対します」
エリック王子はほっとした顔で、頷いた。
「うむ、では当日、エリックのファーストダンスの相手を頼むぞ、マグダリーナ」
「ええ? そういうのは公爵家のご令嬢とかの役目では?!」
「そなたエリックの腹心なのであろう? ならばエリックの隣に立ちたければ、このマグダリーナ・ショウネシーの屍を超えてゆけとばかり、令嬢達の前に立ち塞がらねばな」
「いえ、そこまでの忠誠はないので、普通に嫌です」
セドリック王は愉快そうに笑った。
◇◇◇
そしてとうとう、エリック王子の成人祝いの舞踏会の日がやってきた。
ショウネシーの関係者とオーズリー公爵家関係者は前日から王都入りし、金と星の魔法工房にて、スラゴー達の美健魔法で念入りにお手入れされる。
「皆さんとても美しくて素敵です!」
アンソニーが笑顔で褒めてくれる。
彼はまだ舞踏会に参加出来る年齢ではないが、コッコ車の中で会場に入れない従魔達のお世話係をしてくれる。
ショウネシー家のコッコ車の中には、他にもマーシャとメルシャやマゴーがいて、会場前でジョゼフと合流する夫人のために、子守りをしていた。
コッコに慣れたジョゼフの子は、すぐにササミ(メス)を捕まえて、顔を埋めながらキャッキャと笑う。
今回会場入りする従魔はスライム達だけだった。
結局マグダリーナは腹心の責任で、エリック王子のファーストダンスの相手から逃げられなかった。悔しいから、ライアン、ヴェリタス、レベッカにもそれぞれ王族の最初のダンスの相手をしてもらうことを決めてきた。
レベッカがバーナードを前に、緊張せずにいられるかだけがちょっと心配だった。
「レベッカ大丈夫? どうしても無理だったら、ヴィヴィアン様にお願いするわ」
入場の順番を待つ間、どう見ても緊張しているレベッカに、マグダリーナは声をかけた。
「リーナお姉様、お綺麗だわ」
「え?! ありがとう。レベッカもすっごく綺麗よ」
「……そうよ、エステラお姉様の美健魔法で磨き上げられたのだもの、絶対綺麗なはずだわ」
マグダリーナは黙って頷いた。
「私と結婚できないことを、一生後悔させて見せますわ!!」
レベッカは、覚悟の決まった目で顔を上げると、ヴェリタスの手を取った。
今回の入場のパートナーは、オーズリーとショウネシーの同盟関係を示す意味も含め、オーズリー公爵とダーモット、ヴィヴィアンの父である公爵代理とドーラ、ライアンとヴィヴィアンといったペアだ。
なので、レベッカのパートナーはヴェリタスになる。
因みに公爵代理の奥様は、凄腕の服飾職人で、初公式社交場へ出る義妹の為のドレスを精魂込めすぎて作ったため、喜んで夫のパートナーをドーラに任せて寝ているらしい。
そしてマグダリーナは、社交会初登場の、女性足りないハイエルフのパートナーに回された。
因みに領地を空に出来ないと、ハンフリーは逃げた。
そしてヨナスは自分が居なければ、アーベルはデボラの側にいるしかないだろうという戦略的撤退……つまりハンフリーと同じく不参加だ。
金と星の工房でのカウンセリングと美健魔法の施術の結果、彼は男性として生きることを受け入れ、おしゃれで動き易いズボンをはき、下着だけ可憐なフリルやリボンを楽しんでいる。見えないところのおしゃれなのだから、自由でいいだろう。
そうやって彼は社交も再開し、存分に美しいドレスを着た美しい貴婦人に取り巻かれているらしいのだ。
なのになぜまた、王宮に呼ばれているのか。
「うむ、マグダリーナよ。無礼講ゆえ、楽にするが良い」
「はあ……」
セドリック王に勧められてテーブルの席につく。すかさず女官さんが、温かい紅茶をカップに注いでくれた。
メンバーはセドリック王にマグダリーナの他は、エリック王子、宰相、エデンにニレル、そしてエステラ、ドーラ伯母様だ。それに初めて見る紫色の髪の貴族がいた。ヴィヴィアンの父親で、オーズリー公爵代理だと紹介される。
この面子から察するに、塩か真珠のことだろうか……なぜそこに自分が? お父様やハンフリーさんじゃなく?
「マグダリーナ・ショウネシー子爵、君は私の腹心であり味方だと信じているぞ」
まずエリック王子がそう言った。
ますます謎である。王子の婚約者候補の件だとしたら、なぜハイエルフとドーラ伯母様がいるのかわからない。
とりあえず、王宮の高級紅茶を味わう事にした。
「さてマグダリーナよ、もし其方が聖エルフェーラ教国の重鎮であったとして、我が国に打撃を与える為に、何をするかな」
ごふっ。
マグダリーナはとうとう、王様の前で紅茶を吹き出した。ささっと、王宮に出張しているマゴーが無かったことにしてくれる。
「王様、戯れも程々にして下さい。私、本当にまだたったの……ついこの間、十二になったばかりの小娘です!」
「うむ、懐かしいな。初めて会ったのは十歳の時であった。あの時の女神教の立案、素晴らしかったぞ」
そこはスルーする事にした。
「どうするもなにも、教国の最大の強みは大陸全土の貨幣を造幣してることでしょう? だったらやる事は一つですよね? まさか、教国がうちに貨幣を売らないって言って来たんですか?」
「いいえ、まだです。ですが時間の問題だろうと……王の誕生祭と、世継ぎの王族の成人祝いには、全ての国に招待状を送る決まりごとになっておりますので」
答えてくれたのは宰相様だ。
つまり教国からやって来るのだ、客人が。
ちらっとみると、エステラはうつらうつらと舟を漕いでいる。
「貨幣の供給を止めると脅して、教国のお嬢様をエリック王子の婚約者にしようとする程度かも知れませんよ?」
マグダリーナはすぐに貨幣の供給が止められるとも思えず、とりあえず現実的な案を出してみる。
「ダメ――――!! 教国のお嬢様はダメ! 出身地の危機だって、タマのカンがビンビン云ってるぅー!!!」
「だそうです」
「出身地やめろ」
エリック王子がぼそっと言った。
「と言う訳で、私はエリック王子の腹心として、教国人のお嫁さんには反対します」
エリック王子はほっとした顔で、頷いた。
「うむ、では当日、エリックのファーストダンスの相手を頼むぞ、マグダリーナ」
「ええ? そういうのは公爵家のご令嬢とかの役目では?!」
「そなたエリックの腹心なのであろう? ならばエリックの隣に立ちたければ、このマグダリーナ・ショウネシーの屍を超えてゆけとばかり、令嬢達の前に立ち塞がらねばな」
「いえ、そこまでの忠誠はないので、普通に嫌です」
セドリック王は愉快そうに笑った。
◇◇◇
そしてとうとう、エリック王子の成人祝いの舞踏会の日がやってきた。
ショウネシーの関係者とオーズリー公爵家関係者は前日から王都入りし、金と星の魔法工房にて、スラゴー達の美健魔法で念入りにお手入れされる。
「皆さんとても美しくて素敵です!」
アンソニーが笑顔で褒めてくれる。
彼はまだ舞踏会に参加出来る年齢ではないが、コッコ車の中で会場に入れない従魔達のお世話係をしてくれる。
ショウネシー家のコッコ車の中には、他にもマーシャとメルシャやマゴーがいて、会場前でジョゼフと合流する夫人のために、子守りをしていた。
コッコに慣れたジョゼフの子は、すぐにササミ(メス)を捕まえて、顔を埋めながらキャッキャと笑う。
今回会場入りする従魔はスライム達だけだった。
結局マグダリーナは腹心の責任で、エリック王子のファーストダンスの相手から逃げられなかった。悔しいから、ライアン、ヴェリタス、レベッカにもそれぞれ王族の最初のダンスの相手をしてもらうことを決めてきた。
レベッカがバーナードを前に、緊張せずにいられるかだけがちょっと心配だった。
「レベッカ大丈夫? どうしても無理だったら、ヴィヴィアン様にお願いするわ」
入場の順番を待つ間、どう見ても緊張しているレベッカに、マグダリーナは声をかけた。
「リーナお姉様、お綺麗だわ」
「え?! ありがとう。レベッカもすっごく綺麗よ」
「……そうよ、エステラお姉様の美健魔法で磨き上げられたのだもの、絶対綺麗なはずだわ」
マグダリーナは黙って頷いた。
「私と結婚できないことを、一生後悔させて見せますわ!!」
レベッカは、覚悟の決まった目で顔を上げると、ヴェリタスの手を取った。
今回の入場のパートナーは、オーズリーとショウネシーの同盟関係を示す意味も含め、オーズリー公爵とダーモット、ヴィヴィアンの父である公爵代理とドーラ、ライアンとヴィヴィアンといったペアだ。
なので、レベッカのパートナーはヴェリタスになる。
因みに公爵代理の奥様は、凄腕の服飾職人で、初公式社交場へ出る義妹の為のドレスを精魂込めすぎて作ったため、喜んで夫のパートナーをドーラに任せて寝ているらしい。
そしてマグダリーナは、社交会初登場の、女性足りないハイエルフのパートナーに回された。
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