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九章 噂と理不尽
174. 爆誕! モモ・シャリオ号
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至極当然の結果として、領地戦用のマグダリーナが運転する魔導車ができた。
ちょっと異様に仕事が早すぎないかと思って聞くと、いつ魔導車を増やして良いように、基本パーツはいつも在庫を作ってあるからという頼もしい返答が返ってきた。
今回は整備されたショウネシー領の道を走る目的ではなく、エステラ曰く「たとえ海上でも走るほど、何処でも走れる! を全力で目指した」とのこと。今までの魔導車の車体は小型で丸みのあるデザインだったが、今回の新型魔導車は、丸みのある流線を取り入れたデザインであるものの、横幅も縦幅も大きい。
スーパーカーの後ろに切り分けたロールケーキみたいなパーツを付けたような形で、横から見たらカタツムリ……いや、子竜が寝そべっているように見え……なくもない。お尻部分が斜めに切り上がっているのがチャームポイントか?
荷運びや快適住居部分のために、後方は背の高いロールケーキに近い形になっているが、小柄な乙女も運転席を乗り降りしやすいように、前方は低くしたそうな。
色はシャイニーな桜色で、とっても可愛い。正面には青と白の星の模様が塗装され、ライト周辺は金で飾り塗装がされていた。これはモモの桃色星竜形態がモデルなのだと一目でわかった。
「このモモ・シャリオ号は耐久試験ではゼラのブレスに千回耐えたから、防御面と安全性はばっちしよ! なんなら車体ごと敵の基地に突っ込んでもいい」
エステラがイイ笑顔で言った。世界を破滅する使命を与えられたハイドラゴンのブレスに耐えるってなんだろう……素直にマグダリーナはゼラを見たが、ゼラはしょぼんと首を落としていた。
『竜使いが荒いんじゃ。ワシこんなにブレス吐いたの、生まれてはじめてじゃよ。破滅のブレスとは違うとはいえ、ワシ壊すことには自信あったんじゃよ? しかもどういう理屈で破壊できんのか聞いても嬢ちゃん教えてくれんしー』
エステラがちょっと困った顔をした。
「耐久試験だし、本当は一万回以上試験したかったんだけど、ゼラが嫌がって……」
『ルシンだってそんな無茶云わんし!』
マグダリーナは、ゼラのぷにぷにの頭を撫でた。
マグダリーナは領地戦まで、これから毎日、この車を自在に運転できるよう練習あるのみなのだ。前世ではペーパードライバーだったので、不安はあるが。
「まずはリーナを運転手登録するわね。オープン」
エステラがモモ・シャリオ号に手をかざして、オープンと唱えると、車体からピュイっと音がして、フロントガラスごと上部がパカンと持ち上がって開いた。
「これは……!!」
マゴー車は横スライド式で、殆どニレルが運転してる魔導車初代号は各ドアが斜め上に開くタイプ。そのどれよりSF感と魔法感のあるこの乗り込み方は、マグダリーナもテンションが一気に上がった。
内装はマグダリーナの髪と同じミント色だ。
「ささ、まずは運転席に座って」
助手席に座ったエステラに急かされ、マグダリーナは運転席に座った。
「クローズ」
エステラが唱えると、開いていた上部が滑らかな動きで閉まる。これまさかロボットに変形したりしないわよねと思ってしまう。
マグダリーナの身体が、魔法の光に包まれた。
『運転手登録を行いますか?』
ナビゲート機能の音声が流れ、エステラの前にはい、いいえの表示が現れた。
「一応色々な安全性を考慮して、運転手登録はオーナーの私とヒラとハラしかできないようにしてあるの」
はい、の表示を押しながら、エステラは言った。
マグダリーナは素朴な疑問を口にする。
「それはいいとして、どうしてニレルじゃなくてヒラとハラなの?」
マグダリーナを包んでいた光のなかで、更に細かな光が、忙しなく動きはじめた。
「ニレルは割とすぐ魔導車に乗りたがるから、この件に関しては除外したの。耐久試験は自分が車ごとゼラに突っ込むって云うんだもん」
「意外ね……」
「大人になってからハマるものって、妙に深みだったりするもんね……」
『鑑定。マグダリーナ・ショウネシー。運転手として登録しました。各位置調整を行います』
これまた滑らかな動きで、座席やミラー、ハンドルなどの位置、角度などが自動調整されていく。そして最後にボタンやレバー、速度計などのランプが点り、空調が動き出した。
「これでいつでも走り出せるわ」
「……えっと、シートベルトは?」
「防御魔法の応用で、動いたり衝撃があるとシートベルト代わりの魔法が自動展開されるわ。それから、ヘッドセット、って唱えて」
マグダリーナは言われるままに唱えた。
「ヘッドセット」
瞬時にSFアニメでみるようなバイザー型サングラスにマイク付きのイヤホンが装備される。視界はとてもクリアだった。
エステラも同じヘッドセットを付けて、説明する。
「運転手はこれを通して、各コマンドを唱えることでいろんな事ができるわ。後方部のドアの開け閉めとか、別の魔導具とワイヤレスに繋がって通信したりとか」
「えっと、ここからうちのアッシに繋がったりとか?」
「そうそう。あと魔法も使えるから。基本的にはリーナの腕輪と使い方は同じだと思って。やりたいことをイメージして、言葉にする。まああとはドライブしながら説明していくわ。基本的な運転方法はオートマ車と一緒だから。あ、じゃあまずは後部を開けて、ゼラ達を乗せてから出発しようか」
マグダリーナがエステラの指導のもと後部のドアを開けると、ゼラとモモ、そしてヒラとハラがぽろぽろ乗り込んできた。ササミは他の三人の訓練に参加しているらしい。
マグダリーナは意を決して、モモ・シャリオ号を発進させた。
マグダリーナがエステラとわくわくどきどきドライブをしている間、ヴェリタス、ライアン、レベッカの三人は今までの対魔獣用の戦闘ではなく、対人用の戦闘訓練をしていた。
まずはニレルが用意した人型の魔導人形「素体くん」(命名エステラ)で、何処をどのくらい、どう攻撃したら人は死ぬのか、そしてどういう攻撃ならダメージを与えつつ殺さない程度なのか。そう言う事を身体で覚えるまで徹底的に訓練する。
素体くんは、スライム素材で正確に内臓や骨、血管に筋肉に至るまで様々な部位を完璧に模した擬似人体を持つ。体型や性別もバラバラだ。髪型は皆肩上で切り揃えられ、体表の透明度を自在に変えられる。
はじめは攻撃にためらっていたヴェリタス達だったが「ダンジョンに現れる人型モンスターだと思えばいい、ちゃんと自己再生機能もあるよ」と言われて、腹を括った。
ちょっと異様に仕事が早すぎないかと思って聞くと、いつ魔導車を増やして良いように、基本パーツはいつも在庫を作ってあるからという頼もしい返答が返ってきた。
今回は整備されたショウネシー領の道を走る目的ではなく、エステラ曰く「たとえ海上でも走るほど、何処でも走れる! を全力で目指した」とのこと。今までの魔導車の車体は小型で丸みのあるデザインだったが、今回の新型魔導車は、丸みのある流線を取り入れたデザインであるものの、横幅も縦幅も大きい。
スーパーカーの後ろに切り分けたロールケーキみたいなパーツを付けたような形で、横から見たらカタツムリ……いや、子竜が寝そべっているように見え……なくもない。お尻部分が斜めに切り上がっているのがチャームポイントか?
荷運びや快適住居部分のために、後方は背の高いロールケーキに近い形になっているが、小柄な乙女も運転席を乗り降りしやすいように、前方は低くしたそうな。
色はシャイニーな桜色で、とっても可愛い。正面には青と白の星の模様が塗装され、ライト周辺は金で飾り塗装がされていた。これはモモの桃色星竜形態がモデルなのだと一目でわかった。
「このモモ・シャリオ号は耐久試験ではゼラのブレスに千回耐えたから、防御面と安全性はばっちしよ! なんなら車体ごと敵の基地に突っ込んでもいい」
エステラがイイ笑顔で言った。世界を破滅する使命を与えられたハイドラゴンのブレスに耐えるってなんだろう……素直にマグダリーナはゼラを見たが、ゼラはしょぼんと首を落としていた。
『竜使いが荒いんじゃ。ワシこんなにブレス吐いたの、生まれてはじめてじゃよ。破滅のブレスとは違うとはいえ、ワシ壊すことには自信あったんじゃよ? しかもどういう理屈で破壊できんのか聞いても嬢ちゃん教えてくれんしー』
エステラがちょっと困った顔をした。
「耐久試験だし、本当は一万回以上試験したかったんだけど、ゼラが嫌がって……」
『ルシンだってそんな無茶云わんし!』
マグダリーナは、ゼラのぷにぷにの頭を撫でた。
マグダリーナは領地戦まで、これから毎日、この車を自在に運転できるよう練習あるのみなのだ。前世ではペーパードライバーだったので、不安はあるが。
「まずはリーナを運転手登録するわね。オープン」
エステラがモモ・シャリオ号に手をかざして、オープンと唱えると、車体からピュイっと音がして、フロントガラスごと上部がパカンと持ち上がって開いた。
「これは……!!」
マゴー車は横スライド式で、殆どニレルが運転してる魔導車初代号は各ドアが斜め上に開くタイプ。そのどれよりSF感と魔法感のあるこの乗り込み方は、マグダリーナもテンションが一気に上がった。
内装はマグダリーナの髪と同じミント色だ。
「ささ、まずは運転席に座って」
助手席に座ったエステラに急かされ、マグダリーナは運転席に座った。
「クローズ」
エステラが唱えると、開いていた上部が滑らかな動きで閉まる。これまさかロボットに変形したりしないわよねと思ってしまう。
マグダリーナの身体が、魔法の光に包まれた。
『運転手登録を行いますか?』
ナビゲート機能の音声が流れ、エステラの前にはい、いいえの表示が現れた。
「一応色々な安全性を考慮して、運転手登録はオーナーの私とヒラとハラしかできないようにしてあるの」
はい、の表示を押しながら、エステラは言った。
マグダリーナは素朴な疑問を口にする。
「それはいいとして、どうしてニレルじゃなくてヒラとハラなの?」
マグダリーナを包んでいた光のなかで、更に細かな光が、忙しなく動きはじめた。
「ニレルは割とすぐ魔導車に乗りたがるから、この件に関しては除外したの。耐久試験は自分が車ごとゼラに突っ込むって云うんだもん」
「意外ね……」
「大人になってからハマるものって、妙に深みだったりするもんね……」
『鑑定。マグダリーナ・ショウネシー。運転手として登録しました。各位置調整を行います』
これまた滑らかな動きで、座席やミラー、ハンドルなどの位置、角度などが自動調整されていく。そして最後にボタンやレバー、速度計などのランプが点り、空調が動き出した。
「これでいつでも走り出せるわ」
「……えっと、シートベルトは?」
「防御魔法の応用で、動いたり衝撃があるとシートベルト代わりの魔法が自動展開されるわ。それから、ヘッドセット、って唱えて」
マグダリーナは言われるままに唱えた。
「ヘッドセット」
瞬時にSFアニメでみるようなバイザー型サングラスにマイク付きのイヤホンが装備される。視界はとてもクリアだった。
エステラも同じヘッドセットを付けて、説明する。
「運転手はこれを通して、各コマンドを唱えることでいろんな事ができるわ。後方部のドアの開け閉めとか、別の魔導具とワイヤレスに繋がって通信したりとか」
「えっと、ここからうちのアッシに繋がったりとか?」
「そうそう。あと魔法も使えるから。基本的にはリーナの腕輪と使い方は同じだと思って。やりたいことをイメージして、言葉にする。まああとはドライブしながら説明していくわ。基本的な運転方法はオートマ車と一緒だから。あ、じゃあまずは後部を開けて、ゼラ達を乗せてから出発しようか」
マグダリーナがエステラの指導のもと後部のドアを開けると、ゼラとモモ、そしてヒラとハラがぽろぽろ乗り込んできた。ササミは他の三人の訓練に参加しているらしい。
マグダリーナは意を決して、モモ・シャリオ号を発進させた。
マグダリーナがエステラとわくわくどきどきドライブをしている間、ヴェリタス、ライアン、レベッカの三人は今までの対魔獣用の戦闘ではなく、対人用の戦闘訓練をしていた。
まずはニレルが用意した人型の魔導人形「素体くん」(命名エステラ)で、何処をどのくらい、どう攻撃したら人は死ぬのか、そしてどういう攻撃ならダメージを与えつつ殺さない程度なのか。そう言う事を身体で覚えるまで徹底的に訓練する。
素体くんは、スライム素材で正確に内臓や骨、血管に筋肉に至るまで様々な部位を完璧に模した擬似人体を持つ。体型や性別もバラバラだ。髪型は皆肩上で切り揃えられ、体表の透明度を自在に変えられる。
はじめは攻撃にためらっていたヴェリタス達だったが「ダンジョンに現れる人型モンスターだと思えばいい、ちゃんと自己再生機能もあるよ」と言われて、腹を括った。
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