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七章 腹黒妖精熊事件

151. 終わり良ければ?

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 その場の視線がマグダリーナに集中した。

「私には、エリック王子が危機に陥ることで、国の災厄を軽くしているというか……肩代わりしているようだとも思えるのです。だからそういう方向に印象操作していけば良いのでは……と、幸いマゴマゴ放送もありますし……」

 おずおずとそう提言してみると、セドリックは目を見開いてマグダリーナを見て、ぼそりと呟いた。

「惜しいな……ダーモットの娘でなければ、力づくでエリックの嫁にしたものを……」

 マグダリーナはブルブルと首を振った。
 あの父が王にとって、それほど重要な友人であったことに、心から感謝した。

「私は魔法の使えぬ傷物ですので、王家に嫁ぐのに相応しくありませんっ」

「では私の元で、歴史上初の女性宰相を目指すのは?」

 マグダリーナの近くにいた宰相が、笑顔で両腕を広げていた。



 それじゃあ転移魔法で帰ろうかという時に、ドロシー王女が一緒なのはともかく、ドミニクががっつりとヴェリタスに巻きついて離れなかった。

「うげっ、あんたショウネシーに付いてくるつもりかよ!」
「当然じゃねぇか。こういう時は親族のところに身を寄せるもんだろ、キヒヒ」
「その笑いやめろ」



◇◇◇



 角の取れたアルミラージ達は、解体の巨匠ヒラとハラを前にして、いよいよ新鮮な素材として解体される危機を感じ……

 ピカーっと輝き、進化した。


 角の取れた額には真紅の大きな魔宝石が輝き、身体も縮んで見たまんま垂れ耳の子うさぎとなった。
 背中にささやかな鳥の翼があり、ぱた、ぱたと飛んで、ササミ(オス)の両肩にとまり、ぶっぶっと鳴く。

『うむむ……これでは食べる箇所が少なくなったではないか!』

 残念そうにするササミ(オス)に、ヒラとハラはスライムボディを艶めかせて微笑んだ。

「大丈夫だよぉ」
「大収穫なの」

 子うさぎが飛び出した元には、脱皮のように額に穴を空けたアルミラージの脱け殻が、たっぷりお肉付きでそのまま落ちていた。


◇◇◇



 エデンをニレルに渡したエステラがマグダリーナと手を繋いで駆けてくると、エステラはアルミラージの抜け殻と子うさぎを交互に見て大興奮した。

「カーバンクルだ!! 竜の脳の中の魔石が進化してできる魔獣って本当だったんだ!!!」


 アルミラージを連れたササミ(オス)や、この国の王族の命を狙うという、アカンやらかしをしているケントは、流石に王宮内に入れない。
 誰もいない休暇中の学園の校庭で待機してもらってたのだ。ライアンも付き添いでそちら側にいた。

 従魔達と一緒に帰るというエステラに、マグダリーナもついて行くことにしたのだが、二人が校庭について真っ先に目に入ったのが、スライム二匹の輝きに照らされた、アルミラージの抜け殻だった。
 マグダリーナの表情が、一気に微妙だ。

 暗い校庭で、剣撃の音が響き渡っている。

 少し離れたところで、モモを頭に乗せたゼラが小さな灯りを灯してケントとライアンの手合わせを眺めていた。

 エステラが不思議そうに聞いた。

「ケンちゃんまだ居たの?」
「従魔が一緒でもぉ、子供だけでいるのは良くないってぇ。ついでにランに稽古つけてるぅ」

 ルシンがまともなエルフと言っていただけあって、いい人だ。
 出会いがアレでさえなければとマグダリーナは思った。

「ライアンの装備じゃケンちゃんと打ち合いにもならないと思うんだけど……あ、ちゃんと木剣にして手加減してくれてるんだ……」

 やっぱりいい人だ。

「あと拾ったエルフの顔見知りみたいだから、一応ショウネシーでお話し聞くの」
「「拾ったエルフ???」」

 ハラの言葉に、マグダリーナとエステラはハモった。

「ヒラのぉ収納に仕舞ってあるよぉ。おばあちゃんの魔法の残り香もするのぉ。多分悪いことした人ぉ。でも、タラやルンと同じ血の匂いがするぅ」

 それは、ひょっとして。

 エステラとルシンの父親だろうか……

 そう思ったマグダリーナは、そっとエステラを見た。
 エステラはそっと息をついて、思ったより普通の表情をしていた。

「いいわ、明日の朝になればエデンも回復するし、それから考えましょ」



◇◇◇



 尚、今回の事件の実行犯熊は、剥製になって王宮の宝物庫に収められた。
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