106 / 241
六章 金の神殿
106. 進路
しおりを挟む
エステラの家から帰った後、入れ違いでシャロンとヴェリタスがやってきた。
マグダリーナは、お茶会の土産に貰ったハーブティーをマーシャとメルシャに入れてもらう。
「あら、懐かしい味と香りね」
「本当だ。小さい時に冬が近づくと、よく母上が入れてくれたハーブの香りがする」
シャロンとヴェリタスはハーブティーの甘い香りを楽しんだ。
「美味しいこと……優しい味がするわ」
シャロンの言葉に、マグダリーナは頷いた。ハーブティーをくれたミネットのふんわりした人柄が、ブレンドしたお茶にも出ていると思ったから。
そしてエステラの家であったことを、皆んなに共有すると進路の話題になった。
「来年、領地経営科に進むと、ますます女の子の友達を作る機会が減っちゃうわ……レベッカは家政科に行くの?」
ため息をついて、マグダリーナはレベッカに尋ねた。ライアンはマグダリーナと同じ領地経営科志望だった。
「私、魔法科に進もうかと考えていますの。薬草学に興味がありますし」
ヴェリタスが大慌てで止めた。
「魔法科と騎士科は夏と冬に強制魔物討伐があるからやめとけよ。エステラ達とのキャンプほど快適じゃないからな」
「そうですの? でしたら家政科にして、薬草学は別に選択しようかしら……」
中等部からは、各科の必須科目以外は、好きな授業を選べる選択制になる。
「ルタは騎士科?」
マグダリーナが尋ねると、ヴェリタスは首を横に振った。
「魔法科にする。騎士科ほど時間の拘束強くねぇし、さっさと修了証取れるだけとって、エステラ師匠やアーベル師匠に習った方がいい」
なるほど。それは確かに効率的だった。
◇◇◇
「おかしいと思わない?」
エステラは《種族:ハイエルフ》になってしまって、すっかり体調も良くなったとき、いつものショウネシー邸サロンでそう言った。
「誰も私がハイエルフになったことについて、驚かないのよ、ここの領民達!!」
長い耳をぴこぴこ上下に動かして、エステラは納得いかない顔をしている。
元々綺麗な顔をしていたエステラだったが、ハイエルフになってからは光輝くようなという枕言葉が付く幻想的な美しさになった。
極淡い金色の半透明な白金髪は、光を透かし真珠のような不思議な光沢を纏い、金以外の色も反射している。
どの角度から見ても麗しい神秘の美少女だったが、ハイエルフ全員がそんな感じなので、ショウネシーの領民はもう慣れていた。
エステラが美少女なのは前からだし、エステラの耳が伸びたのも、(父エデン、兄ルシンだから)そんなもんかくらいの反応だった。
そしてエステラがハイエルフにグレードアップした影響だろうか、ヒラ、ハラ、モモ、ササミ(メス)達の色艶も増していた。
「エステラお姉様、不思議で綺麗な髪ですわ……」
レベッカがうっとりと言った。
「ありがとう。でもねー今までのハイエルフの中でも、こんな髪の人は居なかったみたいなのよね……お師匠の記憶の情報にも該当するような事例はないし、本当に自分がちゃんとしたハイエルフなのか今ひとつ自信ないのよ……まあ、元々は人だったんだから、ラッキーくらいに思っておけばいいんだろうけど。ただ精石の色がちょっと変わっちゃったのが……お師匠の形見だったのに……」
ディオンヌの精石じゃなくて、本当のエステラの精石になったんだ。きっとディオンヌも喜んでいるさとエデンは笑っていたが、それならにょきにょき本物が生えてきて、お師匠の精石は宝物として取っておきたかったのがエステラ本音だ。
「体調は? 具合が悪いとことか出てない?」
マグダリーナは心配になって聞いた。
「ううん、大丈夫。むしろ前より元気かな。耳の長さにはまだ慣れないけど。動くのよこれ」
エステラは長く尖った耳を、ぴこぴこ動かした。
「かわいいわ!」
マグダリーナは微笑んだ。
それからエステラは、真顔になってマグダリーナに礼を言った。
「ありがとう。あの時助けてくれて」
「役に立てれて良かったわ。いつも助けて貰ってるもの」
マグダリーナには言わないが、エステラはあの時、女神の庭の入り口を覗いていた。嵐のような、逆らえない大きな力に流されて。あの荒波をマグダリーナが鎮めなかったら、おそらく今ここに居なかっただろう。
エステラは、にこっと笑った。
「そんなの、私が楽しいからと、皆んなが大好きだからよ」
マグダリーナは、お茶会の土産に貰ったハーブティーをマーシャとメルシャに入れてもらう。
「あら、懐かしい味と香りね」
「本当だ。小さい時に冬が近づくと、よく母上が入れてくれたハーブの香りがする」
シャロンとヴェリタスはハーブティーの甘い香りを楽しんだ。
「美味しいこと……優しい味がするわ」
シャロンの言葉に、マグダリーナは頷いた。ハーブティーをくれたミネットのふんわりした人柄が、ブレンドしたお茶にも出ていると思ったから。
そしてエステラの家であったことを、皆んなに共有すると進路の話題になった。
「来年、領地経営科に進むと、ますます女の子の友達を作る機会が減っちゃうわ……レベッカは家政科に行くの?」
ため息をついて、マグダリーナはレベッカに尋ねた。ライアンはマグダリーナと同じ領地経営科志望だった。
「私、魔法科に進もうかと考えていますの。薬草学に興味がありますし」
ヴェリタスが大慌てで止めた。
「魔法科と騎士科は夏と冬に強制魔物討伐があるからやめとけよ。エステラ達とのキャンプほど快適じゃないからな」
「そうですの? でしたら家政科にして、薬草学は別に選択しようかしら……」
中等部からは、各科の必須科目以外は、好きな授業を選べる選択制になる。
「ルタは騎士科?」
マグダリーナが尋ねると、ヴェリタスは首を横に振った。
「魔法科にする。騎士科ほど時間の拘束強くねぇし、さっさと修了証取れるだけとって、エステラ師匠やアーベル師匠に習った方がいい」
なるほど。それは確かに効率的だった。
◇◇◇
「おかしいと思わない?」
エステラは《種族:ハイエルフ》になってしまって、すっかり体調も良くなったとき、いつものショウネシー邸サロンでそう言った。
「誰も私がハイエルフになったことについて、驚かないのよ、ここの領民達!!」
長い耳をぴこぴこ上下に動かして、エステラは納得いかない顔をしている。
元々綺麗な顔をしていたエステラだったが、ハイエルフになってからは光輝くようなという枕言葉が付く幻想的な美しさになった。
極淡い金色の半透明な白金髪は、光を透かし真珠のような不思議な光沢を纏い、金以外の色も反射している。
どの角度から見ても麗しい神秘の美少女だったが、ハイエルフ全員がそんな感じなので、ショウネシーの領民はもう慣れていた。
エステラが美少女なのは前からだし、エステラの耳が伸びたのも、(父エデン、兄ルシンだから)そんなもんかくらいの反応だった。
そしてエステラがハイエルフにグレードアップした影響だろうか、ヒラ、ハラ、モモ、ササミ(メス)達の色艶も増していた。
「エステラお姉様、不思議で綺麗な髪ですわ……」
レベッカがうっとりと言った。
「ありがとう。でもねー今までのハイエルフの中でも、こんな髪の人は居なかったみたいなのよね……お師匠の記憶の情報にも該当するような事例はないし、本当に自分がちゃんとしたハイエルフなのか今ひとつ自信ないのよ……まあ、元々は人だったんだから、ラッキーくらいに思っておけばいいんだろうけど。ただ精石の色がちょっと変わっちゃったのが……お師匠の形見だったのに……」
ディオンヌの精石じゃなくて、本当のエステラの精石になったんだ。きっとディオンヌも喜んでいるさとエデンは笑っていたが、それならにょきにょき本物が生えてきて、お師匠の精石は宝物として取っておきたかったのがエステラ本音だ。
「体調は? 具合が悪いとことか出てない?」
マグダリーナは心配になって聞いた。
「ううん、大丈夫。むしろ前より元気かな。耳の長さにはまだ慣れないけど。動くのよこれ」
エステラは長く尖った耳を、ぴこぴこ動かした。
「かわいいわ!」
マグダリーナは微笑んだ。
それからエステラは、真顔になってマグダリーナに礼を言った。
「ありがとう。あの時助けてくれて」
「役に立てれて良かったわ。いつも助けて貰ってるもの」
マグダリーナには言わないが、エステラはあの時、女神の庭の入り口を覗いていた。嵐のような、逆らえない大きな力に流されて。あの荒波をマグダリーナが鎮めなかったら、おそらく今ここに居なかっただろう。
エステラは、にこっと笑った。
「そんなの、私が楽しいからと、皆んなが大好きだからよ」
77
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。
いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。
元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。
登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。
追記 小説家になろう ツギクル でも投稿しております。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる