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四章 死の狼と神獣
74. 久しぶりの学園
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マグダリーナとヴェリタスは、久しぶりに学園に登校した。
茶マゴーのチャーは学園にヴェリタスの従魔として届け出をだしているので、そのままヴェリタスと一緒にいる。
色々話しあった結果、今学期は午前の授業が終わると、すぐ領地に帰ることにする。サトウマンドラゴラの収穫もあるし。
だが教室に入ると、さっそくアグネス王女が何か言いた気にしているので、今日はサロンでの昼食になりそうな予感がした。
◇◇◇
「とても助かります、ウィーデンさん」
マグダリーナは授業ごとの休憩時間に、隣の席の令嬢に授業の進み具合を教わった。
「このくらいお気になさらないで、ショウネシーさん。ところでショウネシー領にはアスティン侯爵夫人がいらっしゃるんですよね? どういうご縁なのですか?」
「アスティン侯爵夫人は私の母の異母姉なのです。オーブリーと絶縁する時に、なるべくオーブリーと離れた所と思われて、うちの領地にいらっしゃいました」
マグダリーナは嘘ではないが、真実より耳触りの良い言葉を選んで答えた。
「実は我が家はオーブリーの領貴族なの……この先どうなるのか、私ではよくわからないし、きっと学園を休むことになる時もあると思う。その時は休んでた間の授業の確認をショウネシーさんにさせてもらってもいいかしら?」
「ええもちろん! 今の親切を返させて下さいな」
リーン王国の貴族には、ダーモットのように国から爵位と領地を与えられた《拝領貴族》と、シャロンやマグダリーナのように爵位だけ持つ《拝名貴族》、そして拝領貴族に仕えて領地の役職に就く《領貴族》の三種類がある。
オーブリーには沢山の麾下の家門のがあった。
この場合のそれらは《領貴族》となる。
オーブリーの領地はとりあえず国に返還され、おそらく王領となるので、領貴族たちがどういう扱いになるかまでは、マグダリーナも分からない。
社会科の教科書を捲って、それらしいことが載ってないか確認しようと思ったところで、次の授業の鐘が鳴った。
◇◇◇
「マグダリーナ、ヴェリタス、お昼をご一緒しましょう」
午前の授業が終わると、案の定アグネス王女から声がかかった。
「あら? 今日は、あの可愛いらしいお弁当ではないの?」
「ええ、実は今学期は午前の授業が終わったら、すぐ帰ろうと思ってまして……でも今日はお付き合いいたします。」
「そうでしたの? 嬉しいですわ!」
サロンへ行くと、バーナードが真っ先にマグダリーナとヴェリタスに声をかけて来た。
「二人とも元気そうで良かった! 侯爵夫人と伯爵も変わりないか? それにエステラや、ハラやササミ達も」
「王子……」
よほど心配していたのか、バーナードは二人の顔を見て、あからさまに気を抜いた。
この王子は自分が思っていたよりずっと、自分達に心を砕いてくれていたのだなとマグダリーナは胸が温かくなった。
「俺のことは、二人ともバーナードと呼べ。ハラもそう呼ぶぞ」
周囲にも聞こえるように、バーナードはそう言い、マグダリーナを王族専用の衝立までエスコートする。
それを見て、ヴェリタスもアグネス王女をエスコートした。
「バーナード様は随分と紳士的な行動が、身について来ましたね」
マグダリーナは少し驚いた。
「先日ヴェリタスがレベッカの椅子を引いているのを見てな、俺も今からちゃんとしておかないと、社交の本番で恥をかくと思ったのだ。すまんがマグダリーナには練習相手になってもらう」
「そういうことでしたら、喜んで」
バーナードは少し驚いた顔で、マグダリーナを見た。
「嫌ではないのか?」
「どうして? 友人の努力に少しでも力添え出来るのは、嬉しいことですよ」
「そうか……なるほど、そうだな。それが誠の親切なのだな……」
「そんな仰々しく考えないで下さい。普通のことですよ」
「良いのだ。お前にとって普通でも俺にとっては、ようやく気づけた宝物だ。今日の女神への報告にする」
「神殿に通っていらっしゃるんですか?」
「ああ、神殿には毎日祈りにいっているが、女神様と言葉を交わさせていただくのは時々だ。神官にどのようなことを望まれるのか、教えていただきたいのだが、はっきりとはおっしゃらずに不思議な宿題を出されることもある」
どんな宿題を出されるのか興味があったが、衝立の中に入ると、聞くタイミングを逃してしまった。
「ヴェリタス・アスティン子爵、マグダリーナ・ショウネシー子爵、直接言葉を交わすのは初めてだね。エリック・エル・リーンだ。さあ座って。同じ学園の生徒として気負わず接して欲しい」
そこには王妃様と同じ桃色の髪の柔和な顔が、微笑んでいた。
茶マゴーのチャーは学園にヴェリタスの従魔として届け出をだしているので、そのままヴェリタスと一緒にいる。
色々話しあった結果、今学期は午前の授業が終わると、すぐ領地に帰ることにする。サトウマンドラゴラの収穫もあるし。
だが教室に入ると、さっそくアグネス王女が何か言いた気にしているので、今日はサロンでの昼食になりそうな予感がした。
◇◇◇
「とても助かります、ウィーデンさん」
マグダリーナは授業ごとの休憩時間に、隣の席の令嬢に授業の進み具合を教わった。
「このくらいお気になさらないで、ショウネシーさん。ところでショウネシー領にはアスティン侯爵夫人がいらっしゃるんですよね? どういうご縁なのですか?」
「アスティン侯爵夫人は私の母の異母姉なのです。オーブリーと絶縁する時に、なるべくオーブリーと離れた所と思われて、うちの領地にいらっしゃいました」
マグダリーナは嘘ではないが、真実より耳触りの良い言葉を選んで答えた。
「実は我が家はオーブリーの領貴族なの……この先どうなるのか、私ではよくわからないし、きっと学園を休むことになる時もあると思う。その時は休んでた間の授業の確認をショウネシーさんにさせてもらってもいいかしら?」
「ええもちろん! 今の親切を返させて下さいな」
リーン王国の貴族には、ダーモットのように国から爵位と領地を与えられた《拝領貴族》と、シャロンやマグダリーナのように爵位だけ持つ《拝名貴族》、そして拝領貴族に仕えて領地の役職に就く《領貴族》の三種類がある。
オーブリーには沢山の麾下の家門のがあった。
この場合のそれらは《領貴族》となる。
オーブリーの領地はとりあえず国に返還され、おそらく王領となるので、領貴族たちがどういう扱いになるかまでは、マグダリーナも分からない。
社会科の教科書を捲って、それらしいことが載ってないか確認しようと思ったところで、次の授業の鐘が鳴った。
◇◇◇
「マグダリーナ、ヴェリタス、お昼をご一緒しましょう」
午前の授業が終わると、案の定アグネス王女から声がかかった。
「あら? 今日は、あの可愛いらしいお弁当ではないの?」
「ええ、実は今学期は午前の授業が終わったら、すぐ帰ろうと思ってまして……でも今日はお付き合いいたします。」
「そうでしたの? 嬉しいですわ!」
サロンへ行くと、バーナードが真っ先にマグダリーナとヴェリタスに声をかけて来た。
「二人とも元気そうで良かった! 侯爵夫人と伯爵も変わりないか? それにエステラや、ハラやササミ達も」
「王子……」
よほど心配していたのか、バーナードは二人の顔を見て、あからさまに気を抜いた。
この王子は自分が思っていたよりずっと、自分達に心を砕いてくれていたのだなとマグダリーナは胸が温かくなった。
「俺のことは、二人ともバーナードと呼べ。ハラもそう呼ぶぞ」
周囲にも聞こえるように、バーナードはそう言い、マグダリーナを王族専用の衝立までエスコートする。
それを見て、ヴェリタスもアグネス王女をエスコートした。
「バーナード様は随分と紳士的な行動が、身について来ましたね」
マグダリーナは少し驚いた。
「先日ヴェリタスがレベッカの椅子を引いているのを見てな、俺も今からちゃんとしておかないと、社交の本番で恥をかくと思ったのだ。すまんがマグダリーナには練習相手になってもらう」
「そういうことでしたら、喜んで」
バーナードは少し驚いた顔で、マグダリーナを見た。
「嫌ではないのか?」
「どうして? 友人の努力に少しでも力添え出来るのは、嬉しいことですよ」
「そうか……なるほど、そうだな。それが誠の親切なのだな……」
「そんな仰々しく考えないで下さい。普通のことですよ」
「良いのだ。お前にとって普通でも俺にとっては、ようやく気づけた宝物だ。今日の女神への報告にする」
「神殿に通っていらっしゃるんですか?」
「ああ、神殿には毎日祈りにいっているが、女神様と言葉を交わさせていただくのは時々だ。神官にどのようなことを望まれるのか、教えていただきたいのだが、はっきりとはおっしゃらずに不思議な宿題を出されることもある」
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「ヴェリタス・アスティン子爵、マグダリーナ・ショウネシー子爵、直接言葉を交わすのは初めてだね。エリック・エル・リーンだ。さあ座って。同じ学園の生徒として気負わず接して欲しい」
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