69 / 285
四章 死の狼と神獣
69. ヒラの叫び
しおりを挟む
「お父さま!!!」
マグダリーナとアンソニーは、アッシに映し出された映像に驚愕する。
「ダモ危ない。ヒラ行ってくるぅ」
「お願い。ハラも行って!」
ヒラに続けて、エステラに頼まれてハラも転移した。
エステラも杖を手にする。が。
「だめぇ!!! タラ絶対来ちゃダメぇ!!!!」
ヒラの叫びが、魔法で響いた。
ニレルは素早くエステラの杖を取り上げる。
「眠れ」
そしてエステラが文句を言う前に、眠らせた。
『伯爵!!』
画面からシャロンの声が聞こえて、ホッとする。
だが、映し出されたその姿は、ドレスが裂け、傷だらけであった。
『おかしなほど防御できると思ったら、やはりこの変な魔獣のせいだったか』
そう言って、真っ黒く枯れ果てた茶マゴーが放り出された。
シャロンの美しい顔が歪む。
『ベンソン……っ』
ぶつ。
そこで映像が途切れた。
「茶マゴー1号、活動停止を確認」
マゴー1号の報告に、イラナが転移しはじめる。
「くそっ」
寸前、エデンがササミ(メス)を掴んで投げた。イラナと一緒に、ササミ(メス)が転移魔法で消える。
「エデン……ヒラの言葉と茶マゴーのあの映像……」
珍しくニレルが険しい顔をする。
「くそっ、ダーモットはダメかもしれん」
クシャクシャとエデンは自らの手で髪を掻き乱す。
「そんな!!!!」
マグダリーナは叫んだ。
マグダリーナとアンソニーの肩をハンフリーが抱く。
マグダリーナは、気づいたら泣いていた。
「イラナのやつ、勝手に行きやがって……!! あの空間は、人数制限付きなんだ」
「あと何人入れるんだ?」
ヴェリタスにエデンは答えた。
「もう定員だ。後は魔獣しか入れん」
「!!」
ニレルは立ち上がり、武器を手にする。
「僕とエデンはとりあえず王宮に行ってくる」
「だったら俺も、」
「ヴェリタス、君はダメだ。あのベンソンという狂人が、君を見て何をするかわからない」
「……っ」
「それからリーナとトニー」
ニレルはそっとマグダリーナの涙を拭った。
「ヒラは回復魔法も得意だ。諦めずに女神に祈っててくれるかい?」
「わかったわ」
アンソニーも涙を堪えて頷く。
「それから二人に頼み事をしていいかい?」
「いいわ、なんでもやる!」
「僕も!」
「エステラが気がついたら、絶対僕らの後を追わないようにしてほしい。あの空間に居るのは、エルフの死の狼……エルフ族がハーフを食べさせる為に作った、穢毒を撒き散らす魔獣だ。死の狼はエステラを見たら、何がなんでも食い殺そうとしてくる筈だから」
「わかったわ!」
「エステラの側にいて、絶対守るよ!」
「いい子達だ」
ニレルは二人の頭を撫でると、王宮へ転移した。
「エデン、ありったけの回復薬を用意しておく。必要ならマゴーに送らせるから、遠慮せずに必ず連絡をしてほしい」
ハンフリーの言葉に頷いて、エデンもニレルの後を追い、転移した。
言葉通りハンフリーはマゴーと回復薬の準備を始める。
ふいにヴェリタスが茶マゴーと出て行こうとする。
気づいたレベッカが、ヴェリタスにしがみついた。
「ちょっと、こんな時にどこに行こうとするのよ!」
「な……っ、放せよ、オーブリー邸に行くだけだ」
ライアンも察して、ヴェリタスの腕を掴む。
「何しに行くつもりだ! 侯爵夫人が帰って来た時、お前が居なかったらどんな顔をすると思ってる」
「そうよ! 今はここから誰一人居なくなったらいけないのよ。じゃないと帰って来る人達が困るでしょう、それくらい私にも分かるわ!」
「あいつらが動いて油断してる間に、あそこの魔導具全部使い物にならないようにしておくんだよ! 今しか機会がない!」
「……確かにそうだね」
ハンフリーが呟いた。
「だろ? だから言ってくる」
「いいや、君が行く必要はないよ。マゴー1号」
「はい、ハンフリー様。特殊黒マゴー部隊整列!」
マゴー1号の言葉に、どこからともなく転移魔法で、全身真っ黒の、黒ゴーグルのマゴーがわらわら現れた。
密かにエステラが作り、シャロンの《影》の訓練を受けさせていたマゴー達だ。
ハンフリーは、本体(眼鏡)をくいっと持ち上げる。
「君たちの最初の任務だ。オーブリー邸に忍び込み、全ての魔導具を破壊せよ。全てだ。水道も竈もトイレも容赦するな」
「「「「「サーイエッサー!!!」」」」」
マグダリーナとアンソニーは、アッシに映し出された映像に驚愕する。
「ダモ危ない。ヒラ行ってくるぅ」
「お願い。ハラも行って!」
ヒラに続けて、エステラに頼まれてハラも転移した。
エステラも杖を手にする。が。
「だめぇ!!! タラ絶対来ちゃダメぇ!!!!」
ヒラの叫びが、魔法で響いた。
ニレルは素早くエステラの杖を取り上げる。
「眠れ」
そしてエステラが文句を言う前に、眠らせた。
『伯爵!!』
画面からシャロンの声が聞こえて、ホッとする。
だが、映し出されたその姿は、ドレスが裂け、傷だらけであった。
『おかしなほど防御できると思ったら、やはりこの変な魔獣のせいだったか』
そう言って、真っ黒く枯れ果てた茶マゴーが放り出された。
シャロンの美しい顔が歪む。
『ベンソン……っ』
ぶつ。
そこで映像が途切れた。
「茶マゴー1号、活動停止を確認」
マゴー1号の報告に、イラナが転移しはじめる。
「くそっ」
寸前、エデンがササミ(メス)を掴んで投げた。イラナと一緒に、ササミ(メス)が転移魔法で消える。
「エデン……ヒラの言葉と茶マゴーのあの映像……」
珍しくニレルが険しい顔をする。
「くそっ、ダーモットはダメかもしれん」
クシャクシャとエデンは自らの手で髪を掻き乱す。
「そんな!!!!」
マグダリーナは叫んだ。
マグダリーナとアンソニーの肩をハンフリーが抱く。
マグダリーナは、気づいたら泣いていた。
「イラナのやつ、勝手に行きやがって……!! あの空間は、人数制限付きなんだ」
「あと何人入れるんだ?」
ヴェリタスにエデンは答えた。
「もう定員だ。後は魔獣しか入れん」
「!!」
ニレルは立ち上がり、武器を手にする。
「僕とエデンはとりあえず王宮に行ってくる」
「だったら俺も、」
「ヴェリタス、君はダメだ。あのベンソンという狂人が、君を見て何をするかわからない」
「……っ」
「それからリーナとトニー」
ニレルはそっとマグダリーナの涙を拭った。
「ヒラは回復魔法も得意だ。諦めずに女神に祈っててくれるかい?」
「わかったわ」
アンソニーも涙を堪えて頷く。
「それから二人に頼み事をしていいかい?」
「いいわ、なんでもやる!」
「僕も!」
「エステラが気がついたら、絶対僕らの後を追わないようにしてほしい。あの空間に居るのは、エルフの死の狼……エルフ族がハーフを食べさせる為に作った、穢毒を撒き散らす魔獣だ。死の狼はエステラを見たら、何がなんでも食い殺そうとしてくる筈だから」
「わかったわ!」
「エステラの側にいて、絶対守るよ!」
「いい子達だ」
ニレルは二人の頭を撫でると、王宮へ転移した。
「エデン、ありったけの回復薬を用意しておく。必要ならマゴーに送らせるから、遠慮せずに必ず連絡をしてほしい」
ハンフリーの言葉に頷いて、エデンもニレルの後を追い、転移した。
言葉通りハンフリーはマゴーと回復薬の準備を始める。
ふいにヴェリタスが茶マゴーと出て行こうとする。
気づいたレベッカが、ヴェリタスにしがみついた。
「ちょっと、こんな時にどこに行こうとするのよ!」
「な……っ、放せよ、オーブリー邸に行くだけだ」
ライアンも察して、ヴェリタスの腕を掴む。
「何しに行くつもりだ! 侯爵夫人が帰って来た時、お前が居なかったらどんな顔をすると思ってる」
「そうよ! 今はここから誰一人居なくなったらいけないのよ。じゃないと帰って来る人達が困るでしょう、それくらい私にも分かるわ!」
「あいつらが動いて油断してる間に、あそこの魔導具全部使い物にならないようにしておくんだよ! 今しか機会がない!」
「……確かにそうだね」
ハンフリーが呟いた。
「だろ? だから言ってくる」
「いいや、君が行く必要はないよ。マゴー1号」
「はい、ハンフリー様。特殊黒マゴー部隊整列!」
マゴー1号の言葉に、どこからともなく転移魔法で、全身真っ黒の、黒ゴーグルのマゴーがわらわら現れた。
密かにエステラが作り、シャロンの《影》の訓練を受けさせていたマゴー達だ。
ハンフリーは、本体(眼鏡)をくいっと持ち上げる。
「君たちの最初の任務だ。オーブリー邸に忍び込み、全ての魔導具を破壊せよ。全てだ。水道も竈もトイレも容赦するな」
「「「「「サーイエッサー!!!」」」」」
176
あなたにおすすめの小説
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜
と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます!
3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。
ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです!
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
非常に申し訳ない…
と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか?
色々手違いがあって…
と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ?
代わりにといってはなんだけど…
と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン?
私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。
なんの謝罪だっけ?
そして、最後に言われた言葉
どうか、幸せになって(くれ)
んん?
弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。
※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします
完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる