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四章 死の狼と神獣
69. ヒラの叫び
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「お父さま!!!」
マグダリーナとアンソニーは、アッシに映し出された映像に驚愕する。
「ダモ危ない。ヒラ行ってくるぅ」
「お願い。ハラも行って!」
ヒラに続けて、エステラに頼まれてハラも転移した。
エステラも杖を手にする。が。
「だめぇ!!! タラ絶対来ちゃダメぇ!!!!」
ヒラの叫びが、魔法で響いた。
ニレルは素早くエステラの杖を取り上げる。
「眠れ」
そしてエステラが文句を言う前に、眠らせた。
『伯爵!!』
画面からシャロンの声が聞こえて、ホッとする。
だが、映し出されたその姿は、ドレスが裂け、傷だらけであった。
『おかしなほど防御できると思ったら、やはりこの変な魔獣のせいだったか』
そう言って、真っ黒く枯れ果てた茶マゴーが放り出された。
シャロンの美しい顔が歪む。
『ベンソン……っ』
ぶつ。
そこで映像が途切れた。
「茶マゴー1号、活動停止を確認」
マゴー1号の報告に、イラナが転移しはじめる。
「くそっ」
寸前、エデンがササミ(メス)を掴んで投げた。イラナと一緒に、ササミ(メス)が転移魔法で消える。
「エデン……ヒラの言葉と茶マゴーのあの映像……」
珍しくニレルが険しい顔をする。
「くそっ、ダーモットはダメかもしれん」
クシャクシャとエデンは自らの手で髪を掻き乱す。
「そんな!!!!」
マグダリーナは叫んだ。
マグダリーナとアンソニーの肩をハンフリーが抱く。
マグダリーナは、気づいたら泣いていた。
「イラナのやつ、勝手に行きやがって……!! あの空間は、人数制限付きなんだ」
「あと何人入れるんだ?」
ヴェリタスにエデンは答えた。
「もう定員だ。後は魔獣しか入れん」
「!!」
ニレルは立ち上がり、武器を手にする。
「僕とエデンはとりあえず王宮に行ってくる」
「だったら俺も、」
「ヴェリタス、君はダメだ。あのベンソンという狂人が、君を見て何をするかわからない」
「……っ」
「それからリーナとトニー」
ニレルはそっとマグダリーナの涙を拭った。
「ヒラは回復魔法も得意だ。諦めずに女神に祈っててくれるかい?」
「わかったわ」
アンソニーも涙を堪えて頷く。
「それから二人に頼み事をしていいかい?」
「いいわ、なんでもやる!」
「僕も!」
「エステラが気がついたら、絶対僕らの後を追わないようにしてほしい。あの空間に居るのは、エルフの死の狼……エルフ族がハーフを食べさせる為に作った、穢毒を撒き散らす魔獣だ。死の狼はエステラを見たら、何がなんでも食い殺そうとしてくる筈だから」
「わかったわ!」
「エステラの側にいて、絶対守るよ!」
「いい子達だ」
ニレルは二人の頭を撫でると、王宮へ転移した。
「エデン、ありったけの回復薬を用意しておく。必要ならマゴーに送らせるから、遠慮せずに必ず連絡をしてほしい」
ハンフリーの言葉に頷いて、エデンもニレルの後を追い、転移した。
言葉通りハンフリーはマゴーと回復薬の準備を始める。
ふいにヴェリタスが茶マゴーと出て行こうとする。
気づいたレベッカが、ヴェリタスにしがみついた。
「ちょっと、こんな時にどこに行こうとするのよ!」
「な……っ、放せよ、オーブリー邸に行くだけだ」
ライアンも察して、ヴェリタスの腕を掴む。
「何しに行くつもりだ! 侯爵夫人が帰って来た時、お前が居なかったらどんな顔をすると思ってる」
「そうよ! 今はここから誰一人居なくなったらいけないのよ。じゃないと帰って来る人達が困るでしょう、それくらい私にも分かるわ!」
「あいつらが動いて油断してる間に、あそこの魔導具全部使い物にならないようにしておくんだよ! 今しか機会がない!」
「……確かにそうだね」
ハンフリーが呟いた。
「だろ? だから言ってくる」
「いいや、君が行く必要はないよ。マゴー1号」
「はい、ハンフリー様。特殊黒マゴー部隊整列!」
マゴー1号の言葉に、どこからともなく転移魔法で、全身真っ黒の、黒ゴーグルのマゴーがわらわら現れた。
密かにエステラが作り、シャロンの《影》の訓練を受けさせていたマゴー達だ。
ハンフリーは、本体(眼鏡)をくいっと持ち上げる。
「君たちの最初の任務だ。オーブリー邸に忍び込み、全ての魔導具を破壊せよ。全てだ。水道も竈もトイレも容赦するな」
「「「「「サーイエッサー!!!」」」」」
マグダリーナとアンソニーは、アッシに映し出された映像に驚愕する。
「ダモ危ない。ヒラ行ってくるぅ」
「お願い。ハラも行って!」
ヒラに続けて、エステラに頼まれてハラも転移した。
エステラも杖を手にする。が。
「だめぇ!!! タラ絶対来ちゃダメぇ!!!!」
ヒラの叫びが、魔法で響いた。
ニレルは素早くエステラの杖を取り上げる。
「眠れ」
そしてエステラが文句を言う前に、眠らせた。
『伯爵!!』
画面からシャロンの声が聞こえて、ホッとする。
だが、映し出されたその姿は、ドレスが裂け、傷だらけであった。
『おかしなほど防御できると思ったら、やはりこの変な魔獣のせいだったか』
そう言って、真っ黒く枯れ果てた茶マゴーが放り出された。
シャロンの美しい顔が歪む。
『ベンソン……っ』
ぶつ。
そこで映像が途切れた。
「茶マゴー1号、活動停止を確認」
マゴー1号の報告に、イラナが転移しはじめる。
「くそっ」
寸前、エデンがササミ(メス)を掴んで投げた。イラナと一緒に、ササミ(メス)が転移魔法で消える。
「エデン……ヒラの言葉と茶マゴーのあの映像……」
珍しくニレルが険しい顔をする。
「くそっ、ダーモットはダメかもしれん」
クシャクシャとエデンは自らの手で髪を掻き乱す。
「そんな!!!!」
マグダリーナは叫んだ。
マグダリーナとアンソニーの肩をハンフリーが抱く。
マグダリーナは、気づいたら泣いていた。
「イラナのやつ、勝手に行きやがって……!! あの空間は、人数制限付きなんだ」
「あと何人入れるんだ?」
ヴェリタスにエデンは答えた。
「もう定員だ。後は魔獣しか入れん」
「!!」
ニレルは立ち上がり、武器を手にする。
「僕とエデンはとりあえず王宮に行ってくる」
「だったら俺も、」
「ヴェリタス、君はダメだ。あのベンソンという狂人が、君を見て何をするかわからない」
「……っ」
「それからリーナとトニー」
ニレルはそっとマグダリーナの涙を拭った。
「ヒラは回復魔法も得意だ。諦めずに女神に祈っててくれるかい?」
「わかったわ」
アンソニーも涙を堪えて頷く。
「それから二人に頼み事をしていいかい?」
「いいわ、なんでもやる!」
「僕も!」
「エステラが気がついたら、絶対僕らの後を追わないようにしてほしい。あの空間に居るのは、エルフの死の狼……エルフ族がハーフを食べさせる為に作った、穢毒を撒き散らす魔獣だ。死の狼はエステラを見たら、何がなんでも食い殺そうとしてくる筈だから」
「わかったわ!」
「エステラの側にいて、絶対守るよ!」
「いい子達だ」
ニレルは二人の頭を撫でると、王宮へ転移した。
「エデン、ありったけの回復薬を用意しておく。必要ならマゴーに送らせるから、遠慮せずに必ず連絡をしてほしい」
ハンフリーの言葉に頷いて、エデンもニレルの後を追い、転移した。
言葉通りハンフリーはマゴーと回復薬の準備を始める。
ふいにヴェリタスが茶マゴーと出て行こうとする。
気づいたレベッカが、ヴェリタスにしがみついた。
「ちょっと、こんな時にどこに行こうとするのよ!」
「な……っ、放せよ、オーブリー邸に行くだけだ」
ライアンも察して、ヴェリタスの腕を掴む。
「何しに行くつもりだ! 侯爵夫人が帰って来た時、お前が居なかったらどんな顔をすると思ってる」
「そうよ! 今はここから誰一人居なくなったらいけないのよ。じゃないと帰って来る人達が困るでしょう、それくらい私にも分かるわ!」
「あいつらが動いて油断してる間に、あそこの魔導具全部使い物にならないようにしておくんだよ! 今しか機会がない!」
「……確かにそうだね」
ハンフリーが呟いた。
「だろ? だから言ってくる」
「いいや、君が行く必要はないよ。マゴー1号」
「はい、ハンフリー様。特殊黒マゴー部隊整列!」
マゴー1号の言葉に、どこからともなく転移魔法で、全身真っ黒の、黒ゴーグルのマゴーがわらわら現れた。
密かにエステラが作り、シャロンの《影》の訓練を受けさせていたマゴー達だ。
ハンフリーは、本体(眼鏡)をくいっと持ち上げる。
「君たちの最初の任務だ。オーブリー邸に忍び込み、全ての魔導具を破壊せよ。全てだ。水道も竈もトイレも容赦するな」
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