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二章 ショウネシー領で新年を
38.マグダリーナの贈り物…に、何故か返される難題
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結局今回のスライム掬い競走は、いち早く魔法で冒険者ギルドを突破したアンソニーが一着、ヴェリタスが二着、マグダリーナが三着で、後は三人完走という結果だった。
一着のアンソニーが目当ての財布を無事に貰い、ヴェリタスも「ととのえる」の魔法の巻物を手に入れた。
マグダリーナはセドさんに近づいて、何が欲しいですか? と聞いた。
「よいのか?」
「せっかくショウネシー領に来て下さったのですから、良い思い出を持っていって欲しいのです」
「聞いたか? ダーモット、お前の娘はお前に似ず良い娘であるな! ではマグダリーナ、清浄の魔法の巻物を頼む」
マグダリーナは頷いて、商品を取りに行った。
「ダモの友人は、中々楽しそうな人だね」
巻物を渡してくれたニレルを見て、あーこれはバレてるなと思う。
「渡したらダメだったりするかしら?」
「そんな事はないよ。これはリーナのものだから、リーナの好きにしていい。それに清浄の魔法を選んだところは好感が持てる」
マグダリーナは穢れで病になった第一王子を思い出し、きっとこの魔法の巻物が役に立つだろうと思った。
「ありがとう」
巻物を受け取って、マグダリーナはセドリック王とダーモットのいる、アーケード広場へ戻った。
マグダリーナから巻物を受け取って、使い方の説明を受けると、セドリックは大事そうに懐に巻物を仕舞った。
「この巻物の礼にマグダリーナは何か欲しいものがあるか?」
「いいえ、そんなつもりでは……ああ、でも……」
「良い、言うてみよ」
「毎年新年の日には、領に居たいのです。その……女神の花はその日にしか得られないそうなので」
「ああ、あの光でできたような、美しい花だな。あれは一体どういうものなのだ? 説明はできるか?」
その時、ちょうど飲み物を持ったエステラが通りがかるのが見えた。
「少しお待ち下さい。もっと詳しくわかる方がいますので」
マグダリーナはエステラを呼び止めた。
「ダモぉ疲れてない? ヒラと甘酒飲むぅ? 元気出るよぉ」
「ああ、ありがとう。いただくよ」
ダーモットはヒラから甘酒の入ったコップを受け取る。
「ハラ、皆んなの分持ってくるの」
ハラはそう言って、屋台の方へ向かった。
「何故お前はスライムが喋っておるのに、平気なのだ? あとダモって何? なんでそんな仲良しか?」
「ヒラとダモ、仲良しぃ」
「そうだね、私達は仲良しだね」
「でもヒラのいちばん大好きぃは、タラだからねぇ」
「それは、知ってる」
ダーモットは笑った。
「このスライム達はお嬢さんの従魔か?」
エステラは頷いた。
「おじさんはこんなところに居て、大丈夫な人なの?」
完全にバレてた。
「うむ、何故我の身分の高さがわかったか?」
「鑑定で」
「もしかして君ら、全員鑑定魔法できる?」
「まあ一応」
ヒラが皆んなの分の甘酒を持ってきたので、マグダリーナはセドリックに渡した。
ヒラもハラも美味しそうに飲んでいる。
話しが脱線しそうなので、マグダリーナは元に戻すことにした。
「エステラ、この方はセドさん。新年の女神の花の事が知りたいそうなの。セドさん、こちら友人のエステラです」
「うむ、エステラよ、よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
マグダリーナもひと息ついて甘酒を飲む。
「新年の女神の花についてでしたよね? えーと、あれは私達の祈りが、創世の女神に届いた時におこる奇跡です」
「創世の女神、に? 女神エルフェーラの事か?」
創世の女神の存在すら知らないセドリックは、首を傾げる。
エステラは以前エデンがマグダリーナ達に話した創世神話をざっくりセドリックに話す。
「創世の女神は慈愛に満ちてるので、神界に還られても、私達は今も貴女を慕っていますよと伝えると、その心を受け取った証を下さいます。新年を迎えられた喜びを伝えるために毎年私達は女神に祈りの唄を捧げ、女神の慈愛である奇跡を賜わるのです。それがあの花で、はっきりとわかる奇跡を発現することもあれば、目に見えない気づかないかたちで助けになってくれる場合もあります。そこは人それぞれですね。あと地に落ちて消えた分は、その土地や建物への祝福となります」
「左様か、その希少性と重要性はよくわかった。ならばショウネシー領の貴族は王宮への入場は午後以降でかまわぬこととしよう」
「ありがとうございます!」
マグダリーナは満面の笑みを浮かべて、エステラと喜びあった。
「しかし、創世の女神という存在を知ってしまったからには、我が国の国教を見直さねばならんな」
ニヤリとセドリックは笑んだ。
ダーモットは呆れた顔をした。
「教会を国から追い出すつもりですね、浄化とか魔力鑑定とかどうするつもりです?」
「うむ、そこも含めて色々検討する必要がある。ダモよ、一ヵ月やるから……」
ダーモットはさっと耳を塞いだ。
「しようのないやつめ! では、マグダリーナ」
「はい?!」
突然のご指名に、マグダリーナはびくりとする。
「先程聞いた創世神話や創世の女神の事をまとめたものと、教会が無くなった場合の代替案を、できる範囲で良いので、書面にまとめてみよ」
「私は教会に行った事がないので、教会の事がわかりません」
弱った顔をするマグダリーナを見て、セドリックはダーモットをジト目で見た。
「そこはダーモットから教わると良い。とりあえずは一ヵ月で出来るとこまで書面をまとめて見よ。出来栄えによっては、王立学園の入学試験を免除致そう」
これは絶対断れないやつだと悟ったマグダリーナは、「かしこまりました」と返答するより他なかった。
ところがここでエステラが手を挙げた。
「リーナ一人じゃ大変かもしれない、私も手伝って良いですか?」
「許可しよう。人脈も能力の一つ、マグダリーナよ、何もかも一人でせずとも良い。他にも協力者がいても構わぬ。出来栄えを期待しとるぞ」
手伝って貰えるのは嬉しいけど、もしかしてハードルが上がったかも知れない。
一着のアンソニーが目当ての財布を無事に貰い、ヴェリタスも「ととのえる」の魔法の巻物を手に入れた。
マグダリーナはセドさんに近づいて、何が欲しいですか? と聞いた。
「よいのか?」
「せっかくショウネシー領に来て下さったのですから、良い思い出を持っていって欲しいのです」
「聞いたか? ダーモット、お前の娘はお前に似ず良い娘であるな! ではマグダリーナ、清浄の魔法の巻物を頼む」
マグダリーナは頷いて、商品を取りに行った。
「ダモの友人は、中々楽しそうな人だね」
巻物を渡してくれたニレルを見て、あーこれはバレてるなと思う。
「渡したらダメだったりするかしら?」
「そんな事はないよ。これはリーナのものだから、リーナの好きにしていい。それに清浄の魔法を選んだところは好感が持てる」
マグダリーナは穢れで病になった第一王子を思い出し、きっとこの魔法の巻物が役に立つだろうと思った。
「ありがとう」
巻物を受け取って、マグダリーナはセドリック王とダーモットのいる、アーケード広場へ戻った。
マグダリーナから巻物を受け取って、使い方の説明を受けると、セドリックは大事そうに懐に巻物を仕舞った。
「この巻物の礼にマグダリーナは何か欲しいものがあるか?」
「いいえ、そんなつもりでは……ああ、でも……」
「良い、言うてみよ」
「毎年新年の日には、領に居たいのです。その……女神の花はその日にしか得られないそうなので」
「ああ、あの光でできたような、美しい花だな。あれは一体どういうものなのだ? 説明はできるか?」
その時、ちょうど飲み物を持ったエステラが通りがかるのが見えた。
「少しお待ち下さい。もっと詳しくわかる方がいますので」
マグダリーナはエステラを呼び止めた。
「ダモぉ疲れてない? ヒラと甘酒飲むぅ? 元気出るよぉ」
「ああ、ありがとう。いただくよ」
ダーモットはヒラから甘酒の入ったコップを受け取る。
「ハラ、皆んなの分持ってくるの」
ハラはそう言って、屋台の方へ向かった。
「何故お前はスライムが喋っておるのに、平気なのだ? あとダモって何? なんでそんな仲良しか?」
「ヒラとダモ、仲良しぃ」
「そうだね、私達は仲良しだね」
「でもヒラのいちばん大好きぃは、タラだからねぇ」
「それは、知ってる」
ダーモットは笑った。
「このスライム達はお嬢さんの従魔か?」
エステラは頷いた。
「おじさんはこんなところに居て、大丈夫な人なの?」
完全にバレてた。
「うむ、何故我の身分の高さがわかったか?」
「鑑定で」
「もしかして君ら、全員鑑定魔法できる?」
「まあ一応」
ヒラが皆んなの分の甘酒を持ってきたので、マグダリーナはセドリックに渡した。
ヒラもハラも美味しそうに飲んでいる。
話しが脱線しそうなので、マグダリーナは元に戻すことにした。
「エステラ、この方はセドさん。新年の女神の花の事が知りたいそうなの。セドさん、こちら友人のエステラです」
「うむ、エステラよ、よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
マグダリーナもひと息ついて甘酒を飲む。
「新年の女神の花についてでしたよね? えーと、あれは私達の祈りが、創世の女神に届いた時におこる奇跡です」
「創世の女神、に? 女神エルフェーラの事か?」
創世の女神の存在すら知らないセドリックは、首を傾げる。
エステラは以前エデンがマグダリーナ達に話した創世神話をざっくりセドリックに話す。
「創世の女神は慈愛に満ちてるので、神界に還られても、私達は今も貴女を慕っていますよと伝えると、その心を受け取った証を下さいます。新年を迎えられた喜びを伝えるために毎年私達は女神に祈りの唄を捧げ、女神の慈愛である奇跡を賜わるのです。それがあの花で、はっきりとわかる奇跡を発現することもあれば、目に見えない気づかないかたちで助けになってくれる場合もあります。そこは人それぞれですね。あと地に落ちて消えた分は、その土地や建物への祝福となります」
「左様か、その希少性と重要性はよくわかった。ならばショウネシー領の貴族は王宮への入場は午後以降でかまわぬこととしよう」
「ありがとうございます!」
マグダリーナは満面の笑みを浮かべて、エステラと喜びあった。
「しかし、創世の女神という存在を知ってしまったからには、我が国の国教を見直さねばならんな」
ニヤリとセドリックは笑んだ。
ダーモットは呆れた顔をした。
「教会を国から追い出すつもりですね、浄化とか魔力鑑定とかどうするつもりです?」
「うむ、そこも含めて色々検討する必要がある。ダモよ、一ヵ月やるから……」
ダーモットはさっと耳を塞いだ。
「しようのないやつめ! では、マグダリーナ」
「はい?!」
突然のご指名に、マグダリーナはびくりとする。
「先程聞いた創世神話や創世の女神の事をまとめたものと、教会が無くなった場合の代替案を、できる範囲で良いので、書面にまとめてみよ」
「私は教会に行った事がないので、教会の事がわかりません」
弱った顔をするマグダリーナを見て、セドリックはダーモットをジト目で見た。
「そこはダーモットから教わると良い。とりあえずは一ヵ月で出来るとこまで書面をまとめて見よ。出来栄えによっては、王立学園の入学試験を免除致そう」
これは絶対断れないやつだと悟ったマグダリーナは、「かしこまりました」と返答するより他なかった。
ところがここでエステラが手を挙げた。
「リーナ一人じゃ大変かもしれない、私も手伝って良いですか?」
「許可しよう。人脈も能力の一つ、マグダリーナよ、何もかも一人でせずとも良い。他にも協力者がいても構わぬ。出来栄えを期待しとるぞ」
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