傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ

文字の大きさ
12 / 285
一章 ナイナイづくしの異世界転生

12. 性別などこだわるでナイ

しおりを挟む
「もしかして、あそこにもコッコが居るんでしょうか?」

 アンソニーが手を翳して目を凝らしている方角を見た。
 数キロメートル先にも、紅い光が見える。


 目の前のコッコリーダーの光が収まると、そこには先程の大きな姿とは違い、腕に抱えられるくらいの、球体と言っていいほど丸くて白い鳥がいた。
 きゅるっとした紅い瞳は、ゆるっとした雰囲気を醸し出し、いかにも無害そうではあった。

『どうだ! これなら文句はあるまい!!』

 キュッホーと胸を逸らすコッコリーダー。

『そなたに選ばれぬのは我の誇りが許さぬ! ならば生める身体カラダになればよかろう!』

 その無茶振りに、エステラは呆れた顔を見せた。
「進化と同時に性別変更まで会得するなんて、変態なの? これだから竜種は……」

 ダーモットも目を白黒させている。
「待ってくれ、理解が追いつかない。進化はともかく、何故オスがメスに?」

 その後ろで、ニレルが震えながら笑いを堪えていた。しつこいようだが、そんな様子でも彼は顔が良い。

 もう一度コッコリーダーに鑑定を使うと〈エンペラー&エンプレスコッコカトリス 根性で自在に性別変更可〉となっている。

(そんな根性あるんなら、もう一段階進化できたんじゃないかしら……なんでそんなことに根性使っちゃったの?)

「エステラ……ふ……しょうがないから……ふは……」
 テイムしてあげたら? と最後まで言えず、ニレルはお腹を抱えている。

 顔とスタイルが良いと、そんな様子まで恰好よく魅力的に見えるのだ。エグいなと思う。外見差別主義でないつもりでも、自然と彼に目がいってしまうのだ。もはや暴力だ。
 エステラもとびきり可愛いのだが、彼女の場合は仲良くなって距離が近くなるほど、びっくり箱のように次から次へと飛び出してくる自重しない魔法の方に目がいってしまうからね。

「しょうがないなー、ちゃんと卵、生んでよ」
 そう言って、エステラは雑にテイムした。


 アンソニーがテイムしたコッコ(オス)たちも、ハイコッコカトリスに進化していた。
 群れのリーダーが進化すると、連鎖的に進化する生態のようだ。
 ということは、先ほど紅い光が見えた場所にも進化したコッコカトリスがいるかもしれない。

 キュコッ コッコキュ コキュ コキュ

 アンソニーのテイムしたコッコ(オス)達が、口々にしゃべり出した。
 わたしには何を言ってるのかさっぱりわからないが、テイムしたアンソニーにはわかるよう。

「大変です! コッコのメス達が、金の髪の人間を攫って、巣に連れ込んだそうです。それでえーと……メスを取られたと思って、彼らはここに来たそうです」
「ここに来てどうするの? メスも人間も何処かの巣にいるんでしょ? メスを取り返しに来たわけじゃないのよね?」

 アンソニーは困った顔をする。
「……腹いせに、人間の巣を壊すつもりだったそうです」
「まあ、なんて器が小さいのかしら! 女の子達に相手にされなくてもしょうがないわね」

 わたしの棘のある言葉に、コッコ(オス)たちはしょぼんとした。

「金の髪の人間って、まさかハンフリー様ですか」
 ケーレブがダーモットを振り返る。
「そうだね。彼はアンソニーと同じ綺麗な金髪だった。しかも極度の近眼だから、早く本体を渡してあげないと……」

 そう言って、銀縁の本体(眼鏡)を、そっと内ポケットから取り出した。


◇◇◇


 ――視界がぼやけて、何が起こってるのかさっぱりわからない。

(眼鏡……眼鏡はどこだ……)

 ハンフリー・ショウネシーは必死に自らの本体(眼鏡)を探す。だが手を伸ばしても、温かく、むにむにもちもちで、ふわふわしたものを触るばかりだ。

 薄暗く、乾いた草木と獣の香ばしい匂いがする所にいるが、不思議と居心地は悪くなく、怖くもなかった。


 近年ポツポツと領内で魔獣を見ることがあった。
 大抵は下位の魔獣で、領民で狩ることが出来る程度だった。
 やがて高位の魔獣も現れるようになると、不作のせいもあり領民が次々と他領に流れだした。
 しかたなく冒険者ギルドに依頼を出していたが、一向に冒険者が領内に来る気配もない。

 そんな時、見たことのない、まん丸い鳥のような魔獣を見かけるようになったのだ。

 初めは川の近くで。
 襲ってくる気配は無かったので放っておいたら、段々と遭遇する数も増えた。
 駆除すべきか迷いながらも、うっかりあの丸い姿が一羽、また一羽、そして続けてもう一羽……どんぶらこっこと川に流されて行く情けない姿を見かけた時、つい拾い上げてしまったのだ。

 子供ですら足の付く、浅い川だった。

 それから領主館の前に、卵や木の実、果物などが置いてあるようになり、ぽつりぽつりと領主館の周りで、あの丸い姿を見かけるようにもなった。
 何も知らない領民が、あの子達を狩らないよう、領主館の周りに柵も作った。

 今日はこの領地の拝領貴族である、ダーモット一家が王都からこの地にやってくる。

 領主として満足な結果を出せていない申し訳なさはあるが、一人で悩むより、博識の彼と相談しながらならば、どうにか立て直せるかも知れないという希望もあった……。

 書類に目を通しながら、そろそろ彼らを迎え入れる準備をしなければいけないことを思い出す。
 なにしろ使用人が居ないのだからと慌てて立ち上がったところで、何かに躓き眼鏡を落とした。

 そしてふわりと柔らかくあたたかい何かに受け止められ、気づけばここまで連れて来られていた。


 コッフ ココッ コッキュ コッコ

 鳴き声が聞こえて、ああ、ここはあの子達の巣なんだなと思う。
 だがなぜ、連れて来られたんだろう……。
 疲労していたハンフリーは、妙に居心地の良い巣で、ゆっくり意識を手放した。


◇◇◇


「絶対、絶対落とさないで下さいね!」

 アンソニーが何度も何度も言い聞かせたおかげか、コッコ(オス)達が魔法も使うからか、コッコ(オス)達は決して振り落とすことなく、わたしとアンソニーを乗せて走る。

 バイク並みの速さでコッコ(オス)達は走った。

 だが走ってる間に小さな虫がぶつかってくることもなく、揺れもなく、悔しいことに思った以上に乗り心地はとても快適だった。

 コッコ(オス)の背中は思ったより広くて、わたしとアンソニーが横座りで二人乗りが可能だ。

 因みにメスの巣に向かっているのは、わたし達の他にケーレブの合計三人。

 コッコリーダーとスライム達を連れたエステラ、ハイエルフのニレルは、強い気配でコッコのメス達を無駄に刺激してしまうかも知れないとのことで、ショウネシー領の主人であるダーモットと領主館で待機だ。

 コッコのメス達の巣は、小さな川の近くの洞窟にあった。

 途中二度ほど魔獣に遭遇したが、それもコッコ(オス)達が難なく倒し、渋々死体を魔法収納に入れた。
 ニレルが隣領りんりょうの冒険者ギルドに確認し、討伐依頼が出ていた魔物だったからだ。

 前世でも今世でも、血の流れる生き物の死体に慣れてなどいないが、魔法収納に入れるだけとはいえ冷静に対処出来たのは、エステラから貰った魔導具により常時展開されてる、精神防御とか精神耐性向上とかのおかげだろう。

 洞窟の前に着くと、中からじっと、まるまるした身体のメスコッコがこちらの様子を伺っていた。
 マグダリーナはアンソニーと視線を交わして、どちらがコッコ(メス)と交渉するか決める。

 まずは女の子同士で話をしてみようと、わたしは頷いてコッコ(オス)から降りた。

「こんにちは。マグダリーナ・ショウネシーと申します。私達はあなた方に敵意はありません。ハンフリーさんを探してここに来ました」

 メスのコッコが気にしてるのは、自分達よりもオスのコッコらしい。警戒するような瞳でジトっと見てるのに気づいて、言葉をつけ足す。

「連れのコッコカトリスは弟のアンソニーの従魔です。決して危害を加えさせないと約束致します」

 すすす、とメスのコッコはオスのコッコに近づき、コフッと鳴く。
 オスがコキュキュウと答えると、すすす、と洞窟の奥に入って行った。
 さほど時間が立たないうちに、十数匹のメスの集団が、成人男性を担ぎながらやってきた。

「ハンフリー様!」

 ケーレブの声に、ハンフリーはゆっくり意識を取り戻す。ケーレブはすかさず彼に眼鏡本体を渡した。

 初めて見たハンフリーさんは、アンソニーと同じ金髪のせいかお父さまよりアンソニーと顔立ちが近い。
 思ったより若く二十代前半くらいだろうか。ほっそりとやつれて目の下に濃い隈があり、見た目に苦労が滲み出ていた。

「ケーレブか、すまない……。すっかり助けてもらったようだ」

 わたしは素早く魔法を使う。
「ととのえよ」

 ハンフリーと彼の周りのコッコ(メス)達が光に包まれ、スッキリ綺麗な状態になる。

「これは……」
「初めまして。マグダリーナ・ショウネシーと申します」
「ありがとう。ハンフリー・ショウネシーです。マグダリーナ嬢、まだ十歳だと聞いていたのに、素晴らしい魔法ですね」
「魔導具のおかげなんです。まずは館に戻って休んでから、明日色々お話ししましょう。コッコには乗れそうですか?」

 マグダリーナがハンフリーと話してる間に、コッコのメス達もアンソニーと話合いのもと、テイムされていた。

「ハンフリー卿、初めまして。アンソニー・ショウネシーです。このコッコ達はハンフリー卿に助けてもらって、すごく親しみを感じているところに、オスのコッコ達の様子が交戦的になってるのを感じて、貴方に危害が及ばないよう、一緒に巣に避難したそうです。今はオス達は僕がテイムしたので、安心だと判断し、ハンフリー卿の側にいたいからと僕にテイムされました。領主館の側に、彼等の小屋を作っても良いでしょうか?」

 ハンフリーさんは、目も口も開いて言葉を無くした。

 そしてコッコ(メス)達は、ハンフリー親衛隊として、すっと彼を取り囲んでいた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません! 神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

処理中です...